「箱男」とは、その著作が二十数か国に翻訳され熱狂的な読者を世界中に持つ作家・安部公房が1973年に発表した代表作。 発表以降、幾度かヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督らが映画化を試みたが、企画が立ち上がっては消えるなどを繰り返していた。 そして1986年、最終的に安部公房本人から直接映画化を託されたのは、『狂い咲きサンダーロード』で衝撃的なデビューを飾り、常にジャパン・インディ・シネマの最前線を駆け抜けてきた石井岳龍(当時:石井聰亙)だった。 そしてついに1997年に製作が正式に決定、スタッフ・キャストが撮影地のドイツ・ハンブルクに渡るも、クランクイン前日に撮影が突如頓挫、幻の企画となってしまった・・・。 しかし、石井監督は諦めていなかった。悲劇から27年、奇しくも安部公房生誕100年にあたる2024年、遂に『箱男』を完成させたのだ。しかも、主演に27年前と同じ永瀬正敏、共演に同じく出