森友学園問題:登記簿の「錯誤」について語るのであれば最低限抑えていてほしい事実関係
国から新関空会社への現物出資は、「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律」に基づいて行われている
とのことなので、その法律を見てみる。
関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律
附 則 抄(引用者略)(承継時の出資)第五条(引用者略)8 政府は、第六項の規定による株式の引受けに際し、会社に対し、政府の保有する関西空港会社の株式及び社会資本整備事業特別会計の空港整備勘定に所属する国有財産のうち大阪国際空港に係るものを出資するものとする。9 機構は、第六項の規定による株式の引受けに際し、会社に対し、機構が前条第三項の認可を受けた実施計画(同条第四項の認可があったときは、変更後のもの。次条第三項において「機構承継計画」という。)において定めるところに従い、その財産のうち大阪国際空港に係るもの(次条第四項の規定により同項の政令で定める関係地方公共団体に対して分配される財産を除く。)を出資するものとする。10 前二項の規定により政府及び機構が行う出資に係る給付は、この法律の施行の時に行われるものとする。
関連があるのは上記あたりだろうか。
では「この法律の施工の時」とはいつであったか。
報道発表資料:関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律の施行期日を定める政令について - 国土交通省
関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律の施行日(関西国際空港・大阪国際空港の経営統合日)を平成24年7月1日とする。
これらより、当該出資は平成24(2012)年7月1日に行うと法律で決まっていることがわかる。
そこでこの資料を見ていただきたい。
第119回(平成24年2月14日)開催結果PDFファイル(PDF形式:433KB)
まず、空港本体につきましては、土地が280平方メートルのほか、消防庁舎などの新会社が空港運営上必要とします建物、施設が出資されることになります。また、空港場外にございます、伊丹空港周辺にあります移転補償跡地約80万平方メートルにつきましても出資をされることになります。
ただし、伊丹空港周辺の跡地の中で、近々に処分を予定しているものがございます。1つは昨年本審議会に諮らせていただきました川西市の場外用地、通称「なげきの丘」に係るものでございます。本件につきましては、本年度内の処分に向けて手続を現在進めているところでございます。
また、もう一つは、豊中市野田地区にございます移転補償跡地約9,000平方メートルの土地でございます。
本件につきましては、買い受けを希望されている学校法人と現在処分に向けて調整を進めさせておりまして、調整が完了次第、改めて本審議会に諮らせていただき、処分をしたいというように考えております。
以上の2件につきましては、早期の処分が見込めるために、今回の統合の際の出資対象財産とは考えておりません。
念のため書いておくと、ここの「学校法人」は、いわゆる「別法人」である。
つまり、 問題の土地は、80万平米ある移転補償地の中で、たった2件だけ出資対象財産とならなかった土地のうちの1つである。
出資対象外のものを出資対象として登記してしまった。これは典型的な「錯誤」であり、何も不審な点は見当たらない。
もうひとつの土地、「なげきの丘」は、「本年度内の処分」とあるが、実際には
第120回(平成25年5月28日)開催結果PDFファイル(PDF形式:2.3MB)
にある通り、平成24(2012)年2月23日に1億5000万円で売買契約を締結したとのことである(P28~。PDFが画像なので引用せず)。こちらは既に国有地ではなくなっていたので、錯誤の起こりようがなかっただろう。
ところで、こちらの時系列表では、
【2/27更新】森友学園(大阪市淀川区)と大阪・豊中の国有地 情報集約 | よどきかく
2012年7月1日 国有地を関空会社へ現物出資 登記情報 2012年夏 「希望額が安い(5.8億円)」として、学校法人からの購入を断る 朝日新聞2/11記事
となっており、2012年7月1日以降に交渉が不調となったように読めるが、出典の朝日新聞2/11記事を読んでも具体的な「夏」の期日はわからなかった。
したがって、2012年7月1日以前に交渉は終わっており、改めて出資対象として組み入れることができた可能性はある。
しかしながら、当初出資対象と考えていなかったものを、登記の処理が目前に迫った時期に追加で組み入れることは、手続きにかかる時間を考えると難しいのではないか。
交渉終了が2012年7月1日以降であれば、出資できる期日は法律により2012年7月1日のみなのであるから、なにか法改正がない限り、出資せずに国側で処理するほかないだろう。
「錯誤」の登記に不審なものを感じる人は、このあたりの事実関係は抑えた上でなお怪しむべき事実の存在を提示していただきたい。
(3/26追記)
その後、3/22参議院総務委員会で民進党の江崎孝議員がこのあたりの経緯を質問している。
それによると、大阪音大との交渉が終了したのは7月25日であったということである。
登記にかかる事実経過が当記事で示した通り大阪航空局職員の単純な錯誤であったことも答弁されている。
本件については完全にケリがついたと言っていいだろう。