「仮の生活費」で将来の
家計を予測をしても意味がない

 みなさんは、マネー雑誌などで「将来予測のキャッシュフロー」という表を見たことがあるだろうか。キャッシュフロー表(以下、CF表)は、個人の家計を予測し「年表」のようにまとめたもので、ファイナンシャルプランナーが用いるツールのひとつである。

 上から下に「家族の年齢」、「ライフイベント記入欄」、「収入の内訳」、「支出の内訳」、「年間収支」、「貯蓄残高」の項目が並び、1年単位で左から右へ将来予測の数字が並ぶ。

 数字の羅列だけではわかりにくいため、雑誌ではCFの下に「貯蓄残高の推移」の部分をグラフ化したものも併せて掲載することが多い。「今のままの生活を続けると、60代のうちに貯蓄残高はマイナスに転じる」といったグラフと解説は、マネープランの動機付けにふさわしいため、特集ページの冒頭で使われることが多い。

 一般的に男性は、CF表を見るのが好きである。企業のライフプランセミナーで講師を務める際に、その企業の社員を想定して作ったモデルケースのCFを配布することがあるが、男性はセミナー開始前から「熟読」する人が多い。仕事で使う試算表のような気がして身近に感じるのだろう。ちなみに女性は、CF表よりもレジュメに目を通す人が圧倒的に多い。

 男性は、サンプルのCF表の数字の羅列を理解するのは早いのだが、自分のケースで作成できる人は多くない。40~50代に限ると、ほとんどいないと言っていいだろう。

「自分のケース」を作れないのは、妻が担当している生活費などの支出がわからないからだ。たまに、自分で作ったCF表を持参してコンサルティングを受けに来る人がいるが、そのほとんどが「生活費はよくわからなかったので、仮の数字を入れてみました」と言う。仮の数字ではほとんど意味がないうえ、5年後、10年後の将来予測はラッパ状に大きく変わってくるのだが…。

年間の貯蓄額の差が
老後資金に大きな影響を与える

 精緻なCF表を作るのは、多少の知識が要るし手間もかかる。そこで私は誰でも作れる「簡易CF表」をお勧めしている。

 収入と支出の内訳の項目をなくし、年間収支(=その年の貯蓄額)から将来の貯蓄残高を予測するだけのシンプルなもの。子どもの大学進学などまとまったお金が出ていく「ライフイベント支出」だけは考慮する。