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画像提供依頼：「油すましどん」（熊本県天草市）の石像の写真の画像提供をお願いします。（2008年6月）

油すまし（あぶらすまし）とは、熊本県に伝わる日本の妖怪の一種^[1]。

概要

初出となる昭和初期の郷土史家・浜田隆一の著書『天草島民俗誌』には油ずましの名称で記載されている。それによれば熊本の天草郡栖本村字河内（現・天草市）と下浦村（現・同）とを結ぶ草隅越という峠道を、老婆が孫を連れて通りながら「ここにゃ昔、油瓶さげたん出よらいたちゅぞ」と孫に話していると、「今もー出るーぞー」と言いながら油ずましが現れたという^[1]。この峠は熊本県天草郡有明町（現・天草市）による調査の結果、有明町と天草郡栖本町（現・同）を繋ぐ草越峠だと判明しているが^[2]、それ以外には伝承が少なく謎の妖怪である。

民俗学者・柳田國男の著書『妖怪談義』の「アブラスマシ」の項では、前述の『天草島民俗誌』を引用して「（油すましという）名の怪物」と記述しているが^[3]、この「怪物」が何者でどのような外観なのかは一切記述されていない^[4]。

『妖怪談義』には「（油すましという）名の怪物」と記述しているのに対し、原典『天草島民俗誌』では「油瓶をさげた怪物が出た」ではなく「油瓶さげたん出よらいた」即ち「油瓶を下げたのが出た」とのみ述べられていること、また『妖怪談義』の「アブラスマシ」は「ツルベオトシ」「ヤカンヅル」「サガリ」といった頭上から物が落ちてくる怪異と並べて紹介されていることから、妖怪研究家・京極夏彦は、油すましとは人の姿をした妖怪ではなく、釣瓶落としなどと同様に油瓶が頭上から下がってくる怪異の可能性があると指摘し、調査したものの確証には至っていない（2001年8月時点）^[5]。

類話

熊本ではこの油すましと同様、妖怪の噂話をするとその妖怪が現れるといった怪異譚が他にも伝えられている。

油すましと同じく『天草島民俗誌』によれば、天草郡一町田村益田（現・天草市）で、「うそ峠」という場所を通りかかった2人連れが「昔ここに、血のついた人間の手が落ちてきたそうだ」と話すと「今もー」と声がして、その通りの手が坂から転がり落ち、2人が逃げ切った後に「ここでは生首が落ちてきたそうだ」と話すと、また「今ああ……も」と声がして生首が転がり落ちてきたという^[1]。

また下益城郡豊野村（現・宇城市）下郷小畑では「今にも坂」という場所で大入道が現れるというが、その話をしながら坂を通ると、「今にも」と声がして大入道が現れたという^[6]。

昭和以降の解釈

昭和以降の妖怪関連の書籍ではしばしば、油すましが以下のように解説されている。

全身に蓑を羽織った、すました顔の妖怪。油の入った瓶を持ち、峠に突如出現して通行人を驚かせる。正体は油を盗んだ罪人の亡霊^[7]。

「蓑を羽織った姿」とされるのは、漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する、蓑を羽織った地蔵のような姿の油すましや^[8]、大映映画の妖怪シリーズ『妖怪百物語』『妖怪大戦争』に登場する油すましが、その後の各種媒体に影響を与えたためと見られており、映画『さくや妖怪伝』で大映映画の油すましのオマージュとして登場した妖怪「化け地蔵」も、このデザインを踏襲している^[4]。

これらのオリジナルは、『鬼太郎』の作者である妖怪漫画家・水木しげるの妖怪画だが、これは伝承とは無関係に描かれた創作であり、本来の天草の伝承像とは大きく異なるものと考えられている^[4]^[5]。雑誌『怪』での京極奨励賞を受賞した評論によれば、文楽に用いられる「蟹首」という名称の人形の頭がこの妖怪画のモチーフと指摘されており、妖怪研究家・京極夏彦も自著においてこの説を支持している^[4]^[9]。書籍によっては、すまし顔であることが「すまし」の名の由来とされているが^[10]、前述の『妖怪談義』では「すまし」の名の由来は不明とされる^[3]。また、児童向けの書籍では「頭が良い」「天才的」と解説されていることもあるが、これは前述の映画『妖怪大戦争』で油すましが参謀格として位置づけられていたことが由来と解釈されている^[4]。

史跡

2004年には栖本町河内地区で「油すましどん」と呼ばれる石像の一部が発見された^[2]。これは栖本町中の門・すべりみちという場所に安置されていたものが町道拡張工事で山中の私有地に移転されたもので、首のない石像が両手を合せた姿をしている^[2]^[11]。土地の伝承者によれば、かつては子供がこのすべりみちで遊んでいると「油すましどんが出る」と言って恐れたという^[2]。

地元では『天草島民俗誌』とは異なり「油すまし」の名で発音されているが、「油をしぼる」ことを現地では「油をすめる」と表現したらしく、油絞りの職人が祀られて神になったものが、時を経て妖怪に変じたとの説もある^[2]^[12]。

脚注

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^ ^a ^b ^c 浜田 1932, p. 134
^ ^a ^b ^c ^d ^e “「妖怪油すまし」で町おこし!”. Uoo Project (2004年10月). 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月28日閲覧。
^ ^a ^b 柳田 1956, p. 206
^ ^a ^b ^c ^d ^e 怪 2005, pp. 378–389
^ ^a ^b 京極他 2001, pp. 352–353
^ 日本放送協会編『日本傳説名彙』柳田國男監修、日本放送出版協会、1950年3月、344頁。 NCID BN10317202。
^ 草野巧『幻想動物事典』新紀元社、1997年5月、16頁。ISBN 978-4-88317-283-2。
^ “妖怪大全集油すまし（あぶらすまし）”. 水木しげるの妖怪ワールド. 水木プロダクション. 2008年8月12日閲覧。
^ 怪 2005, p. 113
^ 多田克己『幻想世界の住人たち』 IV、新紀元社〈Truth In Fantasy〉、1990年12月23日、33頁。ISBN 978-4-915146-44-2。
^ 「【火の国をゆく】栖本町「油すましどんの里」」『朝日新聞デジタル』朝日新聞、2005年1月22日。2021年8月18日閲覧。
^ 「妖怪・油すまし」『西日本新聞』西日本新聞社、2004年10月2日。オリジナルの2007年12月27日時点におけるアーカイブ。2014年10月27日閲覧。

参考文献

京極夏彦他『完全復刻妖怪馬鹿』新潮社〈新潮文庫〉、2008年8月（原著2001-2）。ISBN 978-4-10-135351-7。
浜田隆一著「天草島民俗誌」、池田彌三郎編『日本民俗誌大系』第2巻、角川書店、1975年4月（原著1932年）。 NCID BN01838317。
柳田國男『妖怪談義』講談社〈講談社学術文庫〉、1977年4月（原著1956年）。ISBN 978-4-06-158135-7。
『怪』 vol.0018、角川書店〈カドカワムック〉、2005年3月。ISBN 978-4-04-883912-9。

外部リンク

身近なところにひそむ妖怪たち - 水木しげる記念館（「131. 油すまし」に記述あり）

[日本民俗誌大系197504_p134-1] 浜田 1932, p. 134

[fushigi-2] “「妖怪油すまし」で町おこし!”. Uoo Project (2004年10月). 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月28日閲覧。

[妖怪談義197704_p206-3] 柳田 1956, p. 206

[怪200503_p378-4] 怪 2005, pp. 378–389

[妖怪馬鹿200808_352-5] 京極他 2001, pp. 352–353

[6] 日本放送協会編『日本傳説名彙』柳田國男監修、日本放送出版協会、1950年3月、344頁。 NCID BN10317202。

[7] 草野巧『幻想動物事典』新紀元社、1997年5月、16頁。ISBN 978-4-88317-283-2。

[8] “妖怪大全集油すまし（あぶらすまし）”. 水木しげるの妖怪ワールド. 水木プロダクション. 2008年8月12日閲覧。

[9] 怪 2005, p. 113

[10] 多田克己『幻想世界の住人たち』 IV、新紀元社〈Truth In Fantasy〉、1990年12月23日、33頁。ISBN 978-4-915146-44-2。

[11] 「【火の国をゆく】栖本町「油すましどんの里」」『朝日新聞デジタル』朝日新聞、2005年1月22日。2021年8月18日閲覧。

[12] 「妖怪・油すまし」『西日本新聞』西日本新聞社、2004年10月2日。オリジナルの2007年12月27日時点におけるアーカイブ。2014年10月27日閲覧。

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-{{画像提供依頼|「油すましどん」（[[熊本県]][[天草市]]）の石像の写真|date=2008年6月}}
+{{画像提供依頼|「油すましどん」（[[熊本県]][[天草市]]）の石像の写真|date=2008年6月|cat=天草市}}
-'''油すまし'''（あぶらすまし）とは、[[熊本県]]に伝わる日本の[[妖怪]]の一種<ref name="murakami">[[村上健司]]編著 『妖怪事典』 [[毎日新聞社]]、2000年、19頁。ISBN 978-4-620-31428-0。</ref>。
+'''油すまし'''（'''あぶらすまし'''）とは、[[熊本県]]に伝わる[[日本]]の[[妖怪]]の一種<ref name="日本民俗誌大系197504_p134">{{Harvnb|浜田|1932|p=134}}</ref>。
 == 概要 ==
-初出となる昭和初期の郷土史家・浜田隆一の著書『天草島民俗誌』には'''油ずまし'''の名称で記載されている。それによれば熊本の[[天草郡]]栖本村字河内（現・[[天草市]]）と下浦村（現・同）とを結ぶ草隅越という峠道を、老婆が孫を連れて通りながら「ここにゃ昔、油瓶さげたん出よらいたちゅぞ」と孫に話していると、「今もー出るーぞー」と言いながら油ずましが現れたという<ref name="murakami" />。この峠は熊本県天草郡[[有明町 (熊本県)|有明町]]（現・天草市）による調査の結果、有明町と天草郡[[栖本町]]（現・同）を繋ぐ草越峠だと判明しているが<ref name="fushigi">[http://www.uoo.ne.jp/archives/2004/10/post_40.html 「妖怪油すまし」で町おこし!]） [http://www.uoo.ne.jp/ Uoo Project]内）</ref>、それ以外には伝承が少なく謎の妖怪である。
+初出となる昭和初期の郷土史家・浜田隆一の著書『天草島民俗誌』には'''油ずまし'''の名称で記載されている。それによれば熊本の[[天草郡]]栖本村字河内（現・[[天草市]]）と下浦村（現・同）とを結ぶ草隅越という峠道を、老婆が孫を連れて通りながら「ここにゃ昔、油瓶さげたん出よらいたちゅぞ」と孫に話していると、「今もー出るーぞー」と言いながら油ずましが現れたという{{R|日本民俗誌大系197504_p134}}。この峠は熊本県天草郡[[有明町 (熊本県)|有明町]]（現・天草市）による調査の結果、有明町と天草郡[[栖本町]]（現・同）を繋ぐ草越峠だと判明しているが<ref name="fushigi">{{Cite web|和書|author=|date=2004-10|url=http://www.uoo.ne.jp/archives/2004/10/post_40.html|title=「妖怪油すまし」で町おこし!|website=[http://www.uoo.ne.jp/ Uoo Project]|accessdate=2009-06-28|archiveurl=https://archive.is/2d8rn |archivedate=2013-05-01|url-status=dead|url-status-date=2021-08-18}}</ref>、それ以外には伝承が少なく謎の妖怪である。
-民俗学者・[[柳田國男]]の著書『妖怪談義』の「アブラスマシ」の項では、前述の『天草島民俗誌』を引用して「（油すましという）名の怪物」と記述しているが<ref name="youkaidangi">[[柳田國男]] 『妖怪談義』 [[講談社]]〈[[講談社学術文庫]]〉、1977年、206頁。ISBN 978-4-0615-8135-7。</ref>、この「怪物」が何者でどのような外観なのかは一切記述されていない<ref name="kotowari">[[京極夏彦]] 『妖怪の理 妖怪の檻』 [[角川書店]]、2007年、371-373頁。ISBN 978-4-0488-3984-6。</ref>。
+民俗学者・[[柳田國男]]の著書『妖怪談義』の「アブラスマシ」の項では、前述の『天草島民俗誌』を引用して「（油すましという）名の怪物」と記述しているが<ref name="妖怪談義197704_p206">{{Harvnb|柳田|1956|p=206}}</ref>、この「怪物」が何者でどのような外観なのかは一切記述されていない<ref name="怪200503_p378">{{Harvnb|怪|2005|pp=378-389}}</ref>。
+『妖怪談義』には「（油すましという）名の怪物」と記述しているのに対し、原典『天草島民俗誌』では「油瓶をさげた怪物が出た」ではなく「油瓶さげたん出よらいた」即ち「油瓶を下げたのが出た」とのみ述べられていること、また『妖怪談義』の「アブラスマシ」は「[[釣瓶落とし|ツルベオトシ]]」「[[薬缶吊る|ヤカンヅル]]」「[[さがり (妖怪)|サガリ]]」といった頭上から物が落ちてくる怪異と並べて紹介されていることから、妖怪研究家・[[京極夏彦]]は、油すましとは人の姿をした妖怪ではなく、[[釣瓶落とし]]などと同様に油瓶が頭上から下がってくる怪異の可能性があると指摘し、調査したものの確証には至っていない（2001年8月時点）<ref name="妖怪馬鹿200808_352">{{Harvnb|京極他|2001|pp=352-353}}</ref>。
-妖怪漫画家・[[水木しげる]]による妖怪画では、油すましは蓑を羽織った地蔵のような姿の妖怪として描かれているが<ref name="mizuki">[http://www.top-page.jp/site/page/mizuki/complete_works/list/a003/ 妖怪大全集] （[http://www.japro.com/mizuki/ 水木しげるの妖怪ワールド]内） 2008年8月12日閲覧。</ref>、これは水木の創作との説が強く、雑誌『[[怪 (ムック)|怪]]』での京極奨励賞を受賞した評論によれば、[[文楽]]に用いられる「蟹首」という名称の人形の頭がモチーフとされる<ref>角川書店書籍事業部編 『[[怪 (ムック)|怪]]』vol.0018 [[角川書店]]〈カドカワムック〉、2005年、113頁。ISBN 978-4-04-883912-9。</ref>。この水木による妖怪画が読者に浸透したことから<ref name="nishinihon">[http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/2292/ 西日本新聞WordBOX-妖怪・油すまし]</ref>、戦後の妖怪関連の書籍では油すましはしばしば、全身に蓑を羽織り、[[油]]の入った瓶を持った人間の姿の妖怪とされ、峠に突如出現して通行人を驚かせるもので、正体は油を盗んだ罪人の[[亡霊]]などと記述されている<ref>草野巧 『幻想動物辞典』 [[新紀元社]]、1997年、16頁。ISBN 978-4-8831-7283-2。</ref>。これらの書籍では「すまし」の名はすまし顔であることが由来との記述もあるが<ref name="gensousekai">[[多田克己]] 『幻想世界の住人たち IV 日本編』 [[新紀元社]]、1990年、33頁。ISBN 978-4-9151-4644-2。</ref>、前述の『妖怪談義』では「すまし」の名の由来は不明とされる<ref name="youkaidangi" />。
+== 類話 ==
-『妖怪談義』には「（油すましという）名の怪物」と記述しているのに対し、原典『天草島民俗誌』では「油瓶をさげた怪物が出た」ではなく「油瓶さげたん出よらいた」即ち「油瓶を下げたのが出た」とのみ述べられていること、また『妖怪談義』の「アブラスマシ」は「[[釣瓶落とし|ツルベオトシ]]」「[[薬缶吊る|ヤカンヅル]]」「[[さがり (妖怪)|サガリ]]」といった頭上から物が落ちてくる怪異と並べて紹介されていることから、妖怪研究家・[[京極夏彦]]は油すましとは形のある妖怪ではなく、[[釣瓶落とし]]などと同様に油瓶が頭上から下がってくる怪異の可能性もあると述べている<ref name="kotowari" />。その後の京極の調査によれば、油すましの本来の姿は現在よく言われる「油瓶をさげた怪物・妖怪」とは大きく違っていたと判明したものの、京極の推測のように油瓶が下がってくる怪異かどうかの判明にはまだ至っていない<ref>[[京極夏彦]]・[[多田克己]]・[[村上健司]] 『妖怪馬鹿』 [[新潮社]]〈[[新潮文庫]]〉、2001年。156頁。ISBN 978-4-1029-0073-4。</ref>。
+熊本ではこの油すましと同様、妖怪の噂話をするとその妖怪が現れるといった怪異譚が他にも伝えられている。
+油すましと同じく『天草島民俗誌』によれば、天草郡一町田村益田（現・天草市）で、「うそ峠」という場所を通りかかった2人連れが「昔ここに、血のついた人間の手が落ちてきたそうだ」と話すと「今もー」と声がして、その通りの手が坂から転がり落ち、2人が逃げ切った後に「ここでは生首が落ちてきたそうだ」と話すと、また「今ああ……も」と声がして生首が転がり落ちてきたという{{R|日本民俗誌大系197504_p134}}。
-== 史跡 ==
-[[2004年]]には栖本町河内地区で「油すましどん」と呼ばれる石像の一部が発見された<ref name="fushigi" />。これは栖本町中の門・すべりみちという地名に安置されていたものが町道拡張工事で山中の私有地に移転されたもので<ref name="fushigi" />、首のない石像が両手を合せた姿をしている<ref name="kumamoto">[http://mytown.asahi.com/kumamoto/news.php?k_id=44000169999990192 朝日新聞「栖本町-油すましどんの里」]</ref>。土地の伝承者によれば、かつては子供がこのすべりみちで遊んでいると「油すましどんが出る」と言って恐れたという<ref name="fushigi" />。地元では『天草島民俗誌』とは異なり「油すまし」の名で発音されているが、「油をしぼる」ことを現地では「油をすめる」と表現したらしく<ref name="fushigi" />、油絞りの職人が祀られて神になったものが、時を経て妖怪に変じたとの説もある<ref name="nishinihon" />。
+また[[下益城郡]]豊野村（現・[[宇城市]]）下郷小畑では「今にも坂」という場所で[[大入道]]が現れるというが、その話をしながら坂を通ると、「今にも」と声がして大入道が現れたという<ref>{{Cite book|和書|others=[[柳田國男]]監修|editor=日本放送協会|editor-link=日本放送協会|title=日本傳説名彙|date=1950-3|publisher=[[日本放送出版協会]]|ncid=BN10317202|page=344}}</ref>。
-== 登場作品 ==
-=== 漫画 ===
-*[[水木しげる]]の漫画『[[ゲゲゲの鬼太郎]]』では初期の作品には登場しないが、[[1986年]]以降は鬼太郎ほか多くの妖怪がすむ[[ゲゲゲの森]]の村長という設定で登場するようになる。詳細は[[ゲゲゲの鬼太郎の登場人物#その他の仲間妖怪]]を参照。
-*[[水木しげる]]の漫画『[[悪魔くん]]』（少年マガジン版）では髷を結い、[[小豆とぎ]]と組んで悪魔くん&メフィストと戦った。
-*[[立花晶]]の漫画『[[サディステック・19|サディスティック・19]]』にレギュラーで登場、愛称はすまちゃん。言葉を語らず仕草で対話する。
-*[[小山田いく]]の漫画『[[すくらっぷ・ブック]]』では、主人公の一人・柏木晴がギャグ的に変化する姿としてしばしば登場していた。
-*漫画『[[パタリロ]]』で主人公のパタリロがよく間違えられる。
-=== 映画 ===
+== 昭和以降の解釈 ==
+[[File:Sakaiminato Mizuki Shigeru Road Aburasumashi Statue 1.JPG|thumb|right|180px|[[水木しげるロード]]に設置されている油すましのブロンズ像]]
-*[[大映]]映画の『[[妖怪シリーズ]]』に登場しており、特に二作目の『[[妖怪大戦争 (1968年の映画)|妖怪大戦争]]』では日本の妖怪の取り纏め役を務めているが、強い大阪弁を使っている。
+昭和以降の妖怪関連の書籍ではしばしば、油すましが以下のように解説されている。
-*上記の大映映画シリーズに登場した油すましの[[オマージュ]]として、'''化け地蔵'''という名の類似した外見を持つキャラクターが『[[さくや妖怪伝]]』に登場している。
+{{Indent|全身に蓑を羽織った、すました顔の妖怪。[[油]]の入った瓶を持ち、峠に突如出現して通行人を驚かせる。正体は油を盗んだ罪人の[[亡霊]]<ref>{{Cite book|和書|author=草野巧|title=幻想動物事典|date=1997-5|publisher=[[新紀元社]]|isbn=978-4-88317-283-2|page=16}}</ref>。}}
+「蓑を羽織った姿」とされるのは、漫画『[[ゲゲゲの鬼太郎]]』に登場する、蓑を羽織った地蔵のような姿の油すましや<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.top-page.jp/site/page/mizuki/complete_works/list/a003/|title=妖怪大全集 油すまし（あぶらすまし）|work=[http://www.japro.com/mizuki/ 水木しげるの妖怪ワールド]|publisher=[https://www.mizukipro.com/ 水木プロダクション]|accessdate=2008-08-12}}</ref>、[[大映]][[映画]]の[[妖怪シリーズ]]『[[妖怪百物語]]』『[[妖怪大戦争 (1968年の映画)|妖怪大戦争]]』に登場する油すましが、その後の各種媒体に影響を与えたためと見られており、映画『[[さくや妖怪伝]]』で大映映画の油すましの[[オマージュ]]として登場した妖怪「化け地蔵」も、このデザインを踏襲している{{R|怪200503_p378}}。
-=== 特撮番組 ===
-*『[[笛吹童子#テレビ|新諸国物語 笛吹童子]]』（1972年）のレギュラーに油すましの三太郎が登場する。
-*『[[怪奇大家族]]』（2004年）のエンディングに油すましのような妖怪がイラストで登場しており、本作に前述の「さくや妖怪伝」の妖怪が流用されたことを考えれば、化け地蔵の登場が予定されていたのかもしれないが、結局登場せず、真相は不明。
+これらのオリジナルは、『鬼太郎』の作者である妖怪漫画家・[[水木しげる]]の妖怪画だが、これは伝承とは無関係に描かれた創作であり、本来の天草の伝承像とは大きく異なるものと考えられている{{R|怪200503_p378|妖怪馬鹿200808_352}}。雑誌『[[怪 (ムック)|怪]]』での京極奨励賞を受賞した評論によれば、[[文楽]]に用いられる「蟹首」という名称の人形の頭がこの妖怪画のモチーフと指摘されており、妖怪研究家・[[京極夏彦]]も自著においてこの説を支持している{{R|怪200503_p378}}<ref>{{Harvnb|怪|2005|p=113}}</ref>。書籍によっては、すまし顔であることが「すまし」の名の由来とされているが<ref>{{Cite book|和書|author=多田克己|authorlink=多田克己|title=幻想世界の住人たち|date=1990-12-23|publisher=新紀元社|series=[[Truth In Fantasy]]|volume=IV|isbn=978-4-915146-44-2|page=33}}</ref>、前述の『妖怪談義』では「すまし」の名の由来は不明とされる{{R|妖怪談義197704_p206}}。また、児童向けの書籍では「頭が良い」「天才的」と解説されていることもあるが、これは前述の映画『妖怪大戦争』で油すましが参謀格として位置づけられていたことが由来と解釈されている{{R|怪200503_p378}}。
-=== ゲーム ===
-*[[ソニー・コンピュータエンタテインメント|ソニー]]のRPG、『[[ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード]]』に「オイルすまし」という名のモンスターが登場する。
+== 史跡 ==
+[[2004年]]には栖本町河内地区で「油すましどん」と呼ばれる石像の一部が発見された{{R|fushigi}}。これは栖本町中の門・すべりみちという場所に安置されていたものが町道拡張工事で山中の私有地に移転されたもので、首のない石像が両手を合せた姿をしている{{R|fushigi}}<ref>{{Cite news|language=ja|date=2005-01-22|url=http://www.asahi.com/area/kumamoto/articles/MTW20999999440160192.html|title=【火の国をゆく】栖本町「油すましどんの里」|newspaper=[[朝日新聞|朝日新聞デジタル]]|publisher=[[朝日新聞]]|accessdate=2021-8-18}}</ref>。土地の伝承者によれば、かつては子供がこのすべりみちで遊んでいると「油すましどんが出る」と言って恐れたという{{R|fushigi}}。
+地元では『天草島民俗誌』とは異なり「油すまし」の名で発音されているが、「油をしぼる」ことを現地では「油をすめる」と表現したらしく、油絞りの職人が祀られて神になったものが、時を経て妖怪に変じたとの説もある{{R|fushigi}}<ref>{{Cite news|language=ja|date=2004-10-02|url=http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/2292/ |title=妖怪・油すまし|newspaper=[[西日本新聞]]|publisher=[[西日本新聞社]]|accessdate=2014-10-27|archiveurl=https://web.archive.org/web/20071227201709/http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/2292/ |archivedate=2007年12月27日}}</ref>。
 == 脚注 ==
-{{脚注ヘルプ}}{{Reflist}}
+{{脚注ヘルプ}}
+{{Reflist|30em}}
+== 参考文献 ==
+* {{Cite book|和書|author=京極夏彦他|authorlink=京極夏彦|title=完全復刻 妖怪馬鹿|origdate=2001-2|date=2008-8|publisher=[[新潮社]]|series=[[新潮文庫]]|isbn=978-4-10-135351-7|ref={{SfnRef|京極他|2001}}}}
+* {{Cite book|和書|author=浜田隆一|editor=池田彌三郎|editor-link=池田彌三郎|title=日本民俗誌大系|origyear=1932|date=1975-4|publisher=角川書店|volume=第2巻|ncid=BN01838317|chapter=天草島民俗誌|ref={{SfnRef|浜田|1932}}}}
+* {{Cite book|和書|author=柳田國男|authorlink=柳田國男|title=妖怪談義|origyear=1956|date=1977-4|publisher=[[講談社]]|series=[[講談社学術文庫]]|isbn=978-4-06-158135-7|ref={{SfnRef|柳田|1956}}}}
+* {{Cite book|和書|title=[[怪 (ムック)|怪]]|date=2005-3|publisher=[[角川書店]]|series=カドカワムック|volume=vol.0018|isbn=978-4-04-883912-9|ref={{SfnRef|怪|2005}}}}
 == 関連項目 ==
 * [[日本の妖怪一覧]]
+== 外部リンク ==
+* [http://mizuki.sakaiminato.net/road/road_pages/yokai_near/ 身近なところにひそむ妖怪たち] - 水木しげる記念館（「131. 油すまし」に記述あり）
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 [[Category:熊本県の妖怪]]
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