ポルシェ・919ハイブリッド
2014年ジュネーブ・モーターショー | |||||||||||
カテゴリー | ル・マン・プロトタイプ1 (LMP1) | ||||||||||
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コンストラクター | ポルシェ | ||||||||||
デザイナー | アレックス・ヒッチンガー | ||||||||||
先代 | ポルシェ・RSスパイダー | ||||||||||
主要諸元 | |||||||||||
エンジン | ポルシェ 2.0L V4 シングルターボ MID | ||||||||||
主要成績 | |||||||||||
チーム |
ポルシェチーム(2015,2016) ポルシェ・LMPチーム(2017) | ||||||||||
ドライバー |
ティモ・ベルンハルト ブレンドン・ハートレイ マーク・ウェバー マルク・リープ ロマン・デュマ ニール・ジャニ ニック・タンディ アール・バンバー ニコ・ヒュルケンベルグ アンドレ・ロッテラー | ||||||||||
コンストラクターズタイトル | 2015,2016,2017 | ||||||||||
ドライバーズタイトル |
2015 (ベルンハルト、ハートレイ、ウェバー組) 2016 (リープ、デュマ、ジャニ組) 2017 (ベルンハルト、ハートレイ、バンバー組) | ||||||||||
初戦 | 2014年のシルバーストン6時間レース | ||||||||||
最終戦 | 2017年のバーレーン6時間レース | ||||||||||
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ポルシェ・919ハイブリッド (Porsche 919 Hybrid) は、ポルシェがFIA 世界耐久選手権 (WEC) およびル・マン24時間レースに参戦するため、2014年に開発したプロトタイプレーシングカー。
概要
2011年7月、ポルシェはニューマシンを新開発して2014年のル・マン24時間レースにワークス体制で復帰することを表明[1]。2014年のWEC新レギュレーションに準拠するハイブリッド・プロトタイプ (LMP1-H) として919ハイブリッドを開発した。"919"というネーミングにはル・マンで初優勝した917や、ハイブリッド・スポーツカー918との連続性が込められている。
2013年6月にカモフラージュペイントの状態でシェイクダウンを行い[2]、2014年3月4日のジュネーブ・モーターショーにて正式公開された。カラーリングは白地にグレーのラインが縦横に走り、上面から見ると"PORSCHE INTELLIGENT PERFORMANCE"[3]という標語の一部を成していることが分かる[4]。DMG森精機のグループ企業であるDMG森精機AGがオフィシャルパートナーに就き、ノーズやシャークフィンに同社のロゴ (DMG MORI) が描かれた[5]。
特徴
シャーシ
カーボンファイバーと アルミニウム ハニカム コアからなるコンポジットマテリアル構造の モノコック。
エンジン
エンジンは2,000ccのV型4気筒ガソリン直噴エンジンにシングルターボを装着。最高回転数9000回転、最高出力500PS[6]。
また、ブレーキング時の運動エネルギー回生と、エンジン排気の熱エネルギー回生、及びウェイストゲートバルブに取り付けられたタービンによる発電というエネルギー回生システムが搭載される[6]。回生した電力はリチウムイオンバッテリーに蓄電される。回生できるエネルギー放出量は、2014年シーズンの仕様は6MJ(メガジュール)であったが、2015年シーズンの仕様は8MJに引き上げられた[7][注 1]。
レース活動
2014年
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参戦初年度の2014年シーズンのWECには2台体制でエントリー。ドライバーは14号車がロマン・デュマ/ニール・ジャニ/マルク・リープ、20号車がティモ・ベルンハルト/ブレンドン・ハートレイ/マーク・ウェバーというラインナップを組み、参戦。最終戦サンパウロにて20号車が初優勝をもたらした。
2015年
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2015年型ポルシェ919ハイブリッドは、2014年型のコンセプトを保持しつつもシャシーのデザインは大幅に再設計され、エンジンに関しても1周あたりのエネルギー放出量が8MJに拡大された。シリーズのレギュラードライバーは前年と変更なく、17号車がティモ・ベルンハルト/ブレンドン・ハートレイ/マーク・ウェバー、18号車がロマン・デュマ/ニール・ジャニ/マルク・リープというラインナップ。第二戦スパ・フランコルシャンと第三戦ル・マン24時間には、19号車を三台目のマシンとしてニコ・ヒュルケンベルグ/アール・バンバー/ニック・タンディをエントリーする。開幕戦、第二戦では速さを見せたもののアウディの後塵を拝したが、ル・マン24時間では19号車がポルシェワークスとして17年ぶり、通算17勝目の栄冠を得た。ル・マン後のWECでは、アウディやトヨタを圧倒する走りを見せつけ、全てのレースを制し、マニュファクチャラーズ、ドライバーズの両タイトルを独占した。
2016年
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この年のル・マン24時間レースでは、ル・マン史上に残る、中嶋一貴/セバスチャン・ブエミ/アンソニー・デビットソン組のトヨタTS050HYBRID5号車との壮絶な戦いを制し、ニール・ジャニ/ロマン・デュマ/マルク・リープ組の、ポルシェ919Hybrid2号車が、前年に続き、ポルシェにとって通算18回目となるル・マン優勝を成し遂げた。また、WECでは、マニュファクチャラーズ、ドライバーズの両タイトルを勝ち取った。ただし、これには、アウディのミスやトヨタの不運に助けたられたという側面も多く、スピード面では、2015年度程のアドバンテージを保っていたわけではない。
2017年
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この年は、2016年度をもってスポーツカーレースから撤退したアウディスポーツから、新たにアンドレ・ロッテラーをワークスドライバーとして迎え入れ、2台体制でWECに参戦している。開幕戦、第2戦は、ハイダウンフォース仕様の空力パッケージを採用したトヨタTS050 HYBRIDの後塵を拝したが、壮絶なサバイバルレースとなった第3戦ル・マン24時間レースでは、フロントモータートラブルによる約1時間以上に及ぶピットストップを余儀なくされつつも、ティモ・ベルンハルト/アール・バンバー/ブレンドン・ハートレー組のポルシェ919 hybrid2号車が総合優勝を勝ち取った。第4戦ニュルブルクリンクでは、ハイダウンフォース仕様のマシンを投入し、1-2フィニッシュを果たした。その後第5戦メキシコ、第6戦COTAでも1-2フィニッシュを果たした。チャンピオン決定の可能性があった第7戦富士では2号車がポールポジションを獲得するものの、台風による雨に翻弄されトヨタに1-2フィニッシュを奪われ、1号車が3位、2号車が4位に終わる。第8戦上海では3位以内でのフィニッシュで2号車のチャンピオンが決定するレースだった。序盤に1号車がトラブルで失速したものの、トヨタ7号車が他車との接触でトラブルを抱え3位まで挽回。2号車は2位でフィニッシュし、2017年のドライバーズタイトル及び3年連続のコンストラクターズタイトルを決めた。2017年度をもってWECからの撤退を決定したため、ポルシェにとって最終戦となったバーレーンでは1号車がポールポジションを獲得。優勝はトヨタ8号車に奪われたものの2号車が2位、1号車が3位でフィニッシュし、4年に渡るWECを締めくくった。
919ハイブリッドEvo
ポルシェはレースから引退することとなった919ハイブリッドをベースに空力、足回り、パワートレインなど多方面からレギュレーションにとらわれない自由な環境でモディファイし、世界各地のモータースポーツイベントに参加させ、WECのルールにとらわれないマシン本来のポテンシャルを披露するとともにファンにお別れを告げる「919・トリビュート・ツアー」を実施するとアナウンスした。
2018年4月11日、ポルシェは919ハイブリッドの発展型である『ポルシェ919ハイブリッドEvo』を公開した。それと同時に、ニール・ジャニがドライブした919ハイブリッドEvoがスパ・フランコルシャンにおいて1分41秒770のタイムを記録し、これまでのラップレコードを更新したことが発表された。ジャニが記録したタイムは、2017年にルイス・ハミルトンがフォーミュラ1カーのメルセデスW08で記録した予選タイム(1分42秒553)よりも0.783秒速く、通常の919ハイブリッドが2017年のWECで記録したポールポジションタイム(1分54秒097)よりも12秒以上速いものだった。このタイムを記録した周回で、ジャニはケメルストレートにおいて359 km/h (223.1 mph)を記録しており、1周の平均時速は245.61 km/h (152.6 mph)だった[8][9][10][11]。
919ハイブリッドEvoが搭載するV4エンジンは通常型と同じものだが、燃料流量制限が存在しないため、最高出力は500 PSから720 PS (530 kW; 710 hp)に増加した。スパの1周で利用可能な回生エネルギー量が、2017年WECでの6.37メガジュールから8.49メガジュールに引き上げられたことで、電気モーターの出力も400 PSから440 PS (324 kW; 434 hp)にまで増加していた。システム合計は1,160 PS (853 kW; 1,144 hp)になる。軽量化により重量は39kg削減され、乾燥重量は849 kg (1,872 lb)となった。大がかりな空力アップデートも加えられており、2017年WECスパの予選仕様に比べ、ダウンフォースは53%増加、空力的効率は66%増加した[9][10][12][13][11]。
「919・トリビュート・ツアー」の一環として、919ハイブリッドEvoは2018年を通し、各地のイベントにてデモ走行を行う予定となっている。デモ走行は、2018年の「ニュルブルクリンク24時間レース」、「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」、ブランズ・ハッチでの「フェスティバル・オブ・ポルシェ」、ラグナ・セカでの「ポルシェ・レンシュポルト・リユニオンVI」で行われる[9][10]。
2018年6月29日、ティモ・ベルンハルトはニュルブルクリンク北コースで919ハイブリッドEvoを走らせ、5分19秒546の最速ラップタイムを記録した。これにより、長年更新されなかった6分11秒13のラップレコード(ステファン・ベロフがポルシェ・956で記録)が破られた[14][11]。このタイムを記録した周回で、最高時速は369.4 km/h (229.5 mph)を記録しており、1周の平均時速は233.8 km/h (145.3 mph)だった[15][11]。
919 tribute
ポルシェでは919ハイブリッドEvoと同時に、919を完全な電気自動車(EV)仕様とした「919 tribute」も開発している。2018年6月には上述の「919・トリビュート・ツアー」の一環で来日し、富士スピードウェイ及び箱根ターンパイクでのデモ走行を行った[16]。
脚注
- ^ "耐久の雄ポルシェが2014年に復帰! LMP1開発へ". オートスポーツweb.(2011年7月1日)2014年3月9日閲覧。
- ^ "独ポルシェ、WEC/ル・マン24時間に投入する新型車「LMP1スポーツプロトタイプ」をシェイクダウン". Car Watch.(2013年6月13日)2014年3月9日閲覧。
- ^ 「より少ない燃料で、より大きなパワー、より高い効率、より少ないCO2排出量」を掲げるポルシェのフィロソフィ。
- ^ "ポルシェ919のスポンサーにDMG森精機。カラー流出 page2/2". オートスポーツweb.(2014年3月4日)2014年3月9日閲覧。
- ^ "ポルシェ919のスポンサーにDMG森精機。カラー流出 page1/2". オートスポーツweb.(2014年3月4日)2014年3月9日閲覧。
- ^ a b "ポルシェ、新LMP1カーの技術的な詳細を明らかに page2/3". オートスポーツweb.(2014年3月4日)2014年3月9日閲覧。
- ^ “ポルシェ、15年仕様LMP1を発表。8MJを選択”. オートスポーツweb. オートスポーツ (2015年3月26日). 2015年3月30日閲覧。
- ^ “Everything you need to know about the Porsche 919 Evo”. www.goodwood.com. 2018年4月12日閲覧。
- ^ a b c “Porsche 919 Hybrid Evo takes track record at Spa-Francorchamps (BE)”. presse.porsche.de. Porsche. 12 April 2018閲覧。
- ^ a b c “Watch the Porsche 919 Evo Lap Spa Quicker Than an F1 Car” (英語). Road & Track. (2018年4月11日) 2018年4月12日閲覧。
- ^ a b c d 世良, 耕太「ポルシェLMP1マシンの歴史」『Motor Fan illustrated Motorsportのテクノロジー 2018-2019』、三栄書房、2019年、66, 67、ASIN B07DP9TZKF、雑誌68721-08。
- ^ Porsche hybrid race car is faster than Formula One
- ^ “Faster than an F1 car, Porsche breaks Spa-Francorchamps lap record!”. CarsGuide. 2018年4月12日閲覧。
- ^ Porsche smashes all-time Nurburgring record
- ^ 【ビデオ】ポルシェ、ニュルブルクリンク最速記録を35年ぶりに更新した「919ハイブリッドEvo」のオンボード映像を公開!
- ^ ポルシェ919がターンパイク箱根を走った! - MEN'S EX Online・2018年6月22日
関連項目
外部リンク
- ミッション2014。ポルシェのカムバック。(ポルシェジャパン公式)
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