ブラジル、パンタナール大湿原のポルト・ジョフレでのこと。2017年10月の特に暑いある日の午後、2頭のジャガーの姉妹メドロサとジャユが水を飲みに川へ降りていった。
だが、コリッショ・ネグロ川の水にたどり着く前に、オオカワウソが不機嫌そうに大きな声をあげた。
オオカワウソは、食物連鎖の頂点に君臨する捕食者で、パンタナールでは「川のジャガー」と呼ばれることもある。実際、今回の対決では、オオカワウソが大声を出して素速く動いたため、本物のジャガーはいったんすごすごと引き返した。(参考記事:「太古の巨大カワウソ、水辺の支配者か、最新研究」)
「姉妹の母親パトリシアは、ワニの一種であるカイマンを狩る優秀なハンターですが、オオカワウソに立ち向かった記録はありません」と野生のネコ科動物の保護団体「パンセラ」でジャガー・プログラムの活動責任者を務めるラファエル・ホーゲステイン氏はブログに書いた。(参考記事:「【動画】ジャガーとオオアリクイが遭遇、結末やいかに?」)
「母親がオオカワウソと対峙するところを以前に見たことがないため、姉妹は恐れていたのかもしれません」と、この対決を撮影した同氏は言う。
ジャガーが勝った記録は1例だけ
というように、ジャガーとオオカワウソは好敵手だが、ジャガーがオオカワウソを殺した記録は1つしかない。
2012年、ブラジルのアマゾンで、無線器を埋め込んだ首輪を付けられたオオカワウソが倒木の幹の下で寝ていたところを、1頭のジャガーが仕留めた。この論文の著者の結論によると、オオカワウソが1頭だけで陸上にいたことが殺された一因だったのかもしれない。
「オオカワウソは水中にとても適応していて、水中ならジャガーから逃れられることを知っています」と、パンセラの南米北部のプログラム責任者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるエステバン・パジャン氏は話す。
「実際、ジャガーがオオカワウソを捕まえられる唯一の方法は、奇襲でしょう」
パンタナール・ジャガー・キャンプの責任者アイルトン・ララ氏も、「水中では、オオカワウソの方がジャガーよりもはるかに速い」シーンを見たことがある。
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