あなたを笑わせるためだけのサイト「ジェスター」が誕生

もし笑いが最良の薬なら、このサイトはウェブ最高のものの1つということになる。あるいは、サイトがもう少し大きくなれば、そうなるかも。

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David Pescovitz 1998年12月03日

君を笑わせることだけに専念するウェブサイトが生まれた。そして、このサイトを動かしているテクノロジーに、君のジョークの趣味を知られてしまったら、気をつけたほうがいい。

インターネットで初めての自動ジョークお薦めサービス『ジェスター[冗談好きな人]』が今週登場した。このサイトは、会社のクリスマスパーティで飲みすぎたまま上司に披露するような趣味の悪いジョークを探すのにぴったりなところだ。

そして翌週、職安の係員に披露するジョークを探しに、またジェスターをのぞいてみることもできる。

ジェスターは、過去と現在のデータをもとにして選択的に情報を提供する、『コラボレーティブ・フィルタリング』というシステムによって運営されている。『ファイヤーフライ』や『アマゾン・コム』などのサイトが採用しているプロセスと同じものだ。これらのサイトは、現在の閲覧者や過去のユーザーから集められた意見をもとにして、その人にふさわしい情報を薦めている。だがジェスターは、過去の購買調査に基づいてCDや本を薦めるかわりに、「ユーモアのセンス」データベースを提供する。

「誰にでも、笑えないジョークばかり言っている友人の何人かはいるものだ。おもしろいジョークだけを言ってくれる友だちがいたらステキだと思わないかい?」とジェスターの企画責任者、ケン・ゴールドバーグ氏は訊ねる。同氏はカリフォルニア大学バークレー校の工学教授で、ネットサーファーが管理するインスタレーション展示サイト『ギャラリー・インスタレーションズ』の運営者としてもっともよく知られている。

ジェスターのシステムは次のようになっている。まず1人の閲覧者に25のジョークを見せて採点してもらう。ジョークの種類はマイルドなエスニック・ジョークから政治のパロディまでさまざまだ。閲覧者は、ジョークがまったくおもしろくなかったら採点の左を、椅子から転げ落ちるほど笑ったら右をクリックする。ジェスターのデータベースは、閲覧者のユーモアのセンスにぴったり合うジョークを、過去や現在のユーザーのデータベースから探してくる。そしてその後、閲覧者がユーザー名とパスワードを打ち込むと、前回のデータに基づいたジョークが画面に現れる。

「映画や音楽を薦めるのに、ユーザーの好みを分類するのはむずかしい。しかしウェブでは、統計的な方法がうまく働くため、たくさんのサンプルを集めることができる。例を示すのは簡単なので、うまく薦めることができるのだ」とゴールドバーグ教授。「ジョークでも、同様のアプローチがうまくいくのか見てみたい」

だがゴールドバーグ教授と協力者たち学生のデュラブ・グプタ、マーク・ディジョバンニ、ヒロ・ナリタがジェスターを作ったのは、革新的な技術を実験するためであると同時に、ユーモアの心理学をテストするためでもある。

「コメディアンは『起爆剤』を使いこなす。おもしろいジョークを聞いたあとは、その次のジョークがもっとおもしろく聞こえるということだ」とゴールドバーグ教授は言う。「もしコンピュータがこんなジョークはどうですかと薦めてきたら、それがユーザーの反応にどう影響するだろう?」

いままでのところ、ジェスター・チームはユーモアは万国共通ではないことがわかった。

「多くのジョークは明らかに、文化固有のものだ。理解できないジョークは、おもしろいとは思えない。そこで当然のことながら、ジェスターのシステムでは、たとえば外国人に受けるジョーク、エンジニアに受けるジョーク、あるいはその両方を兼ねる人に受けるジョークと、各種取りそろえている」とゴールドバーグ教授は語った。

ジェスターの作者たちが自分たちの理論を適切にテストするためには、アマゾン・コム並みのサイズのデータベースを作る必要があるかもしれない。このサイトは現在、中心となるジョークが70しかないが、ユーザーに自分たちの好きなジョークを投稿するよう薦めている。それらのジョークを分析し、可能ならデータベースに加えるためだ。

「より多くの人がジェスターに参加してくれれば、われわれの薦めるジョークも良くなっていくだろう」とゴールドバーグ教授は言う。「ジェスターのユーザーベースはすぐに大きくなると期待している。ジョークは映画や本より速く採点できるからね」

WIRED NEWS 原文(English)