「携帯電話の電磁波の影響を軽減する」チップ発売(上)

ある企業が、携帯電話が身体に及ぼす影響を軽減するというふれこみの、バッテリー組み込み型マイクロチップ装置を発売した。携帯電話業界にとっては、携帯電話恐怖症との新たな戦いが始まるかもしれない。

Elisa Batista 2000年12月15日

米EMX社は今週、携帯電話の及ぼす「生物学的影響」から身体を守るというふれこみの装置を発表した。携帯電話業界は動揺している。

EMX社は電磁波の影響を軽減する技術を開発している企業。同社が発表したマイクロチップは、携帯電話のバッテリーに組み込まれ、通話中の人の身体の細胞を、携帯電話が発する電磁波から守るという。

この新製品によって、携帯電話の電磁波が健康に害を与えるかどうか、という現在取り沙汰されている問題が、さらに注目を浴びることになる。携帯電話業界は、影響はないと考える研究者たちの意見を根拠に、携帯電話の使用が悪影響を与えることを示す決定的な証拠はまだみつかっていないと主張している。

EMX社の『EMFバイオチップ』(EMF BioChip)は、「テレビ信号のスクランブル」と似た方法で、「ノイズ」、つまりランダムな電子パルスを発して、携帯電話が放射する電磁気的信号を覆い隠し、利用者の身体に及ぼす影響を軽減させる。

EMX社は、携帯電話が発する信号が身体に悪影響を与える可能性があるとまでは明白に言わないまでも、EMX社の技術を裏打ちするヨーロッパと北米のいくつかの大学の研究を引用している。

EMX社の創立者で最高経営責任者(CEO)でもあるトーマス・マグナッセン博士によれば、アメリカ・カトリック大学、ウェスタン・オンタリオ大学、コロンビア大学、デンマークのアールボルグ大学、ワシントン大学シアトル校の研究者たちはいずれも、携帯電話の電磁信号が、「脳細胞や、人体の他の部分の細胞を、ストレス状態やショック状態にさせる」ことを発見したという。

「細胞の代謝が変化し、ストレス蛋白が生じる。これは、保護のためのメカニズムだ」と、マグナッセン博士は語る。「このように、細胞は携帯電話の電磁波放射によって実際に悪い影響を受けるのだ」

だが、携帯電話業界の企業や一部の科学者たちは懐疑的で、携帯電話が発する周波数の信号は微弱すぎて身体に影響を与えるには至らないと語っている。

(12/18に続く)

[日本語版:森さやか/合原弘子]

WIRED NEWS 原文(English)