ロシアより、制裁への返礼「宇宙では米国と提携しない」

ロシア副首相は、ロケットエンジンの米国への販売を停止し、国際宇宙ステーションにおける協力も2020年までにすると表明した。ロシアにある米国のGPS地上局11カ所の運用も停止される可能性がある。
ロシアより、制裁への返礼「宇宙では米国と提携しない」
2009年に撮影された国際宇宙ステーションISS)。スペースシャトル「エンデバー」がドッキングしている。

ロシアの副首相ドミトリー・ロゴージンは5月13日(現地時間)、米国は2024年まで国際宇宙ステーション(ISS)を利用したいと希望しているが、ロシアは米国への協力を2020年までで終わりにすると述べた。

米国航空宇宙局(NASA)は現在、ISSプロジェクトで使える有人飛行用ロケットを持っておらず、軌道を回るISSへは、料金を支払って、ロシアのロケットに乗組員を搭乗させている。米国は現在、宇宙飛行士をISSに運ぶために、ひとりあたり約6,000万ドルをロシアに支払っている。NASAは有人宇宙飛行の打ち上げロケットを開発中(日本語版記事)だが、これは2017年までは確たるものにはならない。

ロゴージン副首相はまた、ロシアはロケットエンジン「RD-180」と「NK-33」を、米国に対して軍事目的ではもう販売しないと語った。RD-180は、軍事衛星など、米軍の積載物も含むさまざまな荷物を打ち上げるのに使われている米国のロケット「Atlas V」に採用されている。

ロゴージン副首相はさらに、両国が合意に至ることができなければ、米国はロシア国内にあるGPS地上局11カ所の運用を6月1日に停止することが必要になると語った。6月1日の期限以降、ロシアは3か月の交渉期間を認めるが、ここで合意に至らなければ、11カ所の地上局は「永久に停止される」とロシア政府は述べていると、「RT」(旧称ロシア・トゥデイ、ロシア政府が所有するニュースサイト)は報じている

さらにロゴージン副首相はTwitterで、「ロ中首脳会談前夜の5月19日、われわれは北京のパートナーたちと、宇宙における2国間協力の今後のプロジェクトについて話し合う」とツイートした。

NASAは4月初め、職員に対して、ロシア政府関係者とのかかわりを停止するよう指令した(日本語版記事)。しかしそれ以降も、Boeing社とLockheed-Martin社の合弁事業であるUnited Launch Alliance(ULA)社に対しては、Atlas Vの打ち上げに使うロケットエンジンRD-180の購入を許可していた。NK-33ロケットエンジンについても、ロシアからの輸入がまだ可能だった。

一方、米国の民間宇宙企業SpaceX社は、米国連邦請求裁判所(United States Court of Federal Claims)に対して、ULA社の宇宙事業契約の差し止め請求を行い、4月30日に請求が認められた(日本語版記事)。SpaceX社は、この契約は競争入札の過程を経ていないほか、打ち上げロケットの大部分がNPO Energomash社製のRD-180ロケットエンジンを採用しているが、同社はロシア政府が所有し、コントロールしている企業だと指摘していた。

この差し止め命令はその後取り消されたが、ロシアがロケットエンジンの提供打ち切りを決めたことで、イーロン・マスク率いるSpaceX社は結局、希望していた方向に向かえそうだ。

※この翻訳は抄訳です。

TEXT BY MEGAN GEUSS

PHOTO BY NASA

TRANSLATION BY RYO OGATA/GALILEO