リアルな銃を操作する「Receiver 2」は、1発の弾を撃つ行為の恐ろしさを浮き彫りにする:ゲームレヴュー

ゲーム「Receiver 2」では、銃を撃つメカニズムが並のゲームに比べるとかなり複雑になっている。このリアルな操作感は、このゲームが暗黙のうちに示すテーマを強化している。つまり、「銃を撃つのは恐ろしい」というテーマだ──。『WIRED』US版によるレヴュー。
リアルな銃を操作する「Receiver 2」は、1発の弾を撃つ行為の恐ろしさを浮き彫りにする:ゲームレヴュー
「Receiver 2」では、銃を撃つメカニズムが、並のゲームに比べるとかなり複雑になっている。そして、それがこのゲームのいいところなのだ。IMAGE BY WOLFIRE GAMES

銃というのは恐ろしい道具である。しかし、その恐ろしさがほとんどのゲームでは実感できない。ゲームに出てくる銃はたいてい危険なこともなく、便利に使えて、わかりやすい。ゲーム内の武器は単なるレーザーポインターにすぎないが、そこには死がからんでくる。

武器を向けると、相手は死ぬ。敵が防具を着けていたり、ヒットポイントの上限値が高かったりする場合は、武器を長く向ける。そうすれば、やはり相手は死ぬ。

こうしたインタラクションが、ゲームでは一般的であることは理解できる。シンプルで達成感があり、破綻の少ないプレイになるからだ。ゲームの銃では、いろいろなことができる。一方で、それによってプレイヤーが危険におびえることは決してない。

そんな認識を変えるゲームシリーズの2作目として登場したのが、「Receiver 2」だ。開発者が集まって短時間でゲームを制作するイヴェント「ゲームジャム」でつくられたゲームをベースにしてWolfire Gamesが開発したこの「Receiver」は、ファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)にリアルな操作感を込めることに心血を注いでいるシリーズである。

そして、その構想を最大限高度に洗練させた「Receiver 2」は、つい引き込まれてしまうような仕上がりだ。そしてゲーム界に不穏な新風を吹き込んでいる。

まるで本物の銃の取り扱い

「Receiver 2」では、銃は本物のように操作できる。最初のミッションで使うのはリヴォルヴァーだ。簡単だと思うだろう。しかし、この銃を使いこなして撃つのは簡単ではない。ゲーム以外で銃を扱ったことがないなら、なおさらだ。

あるボタンを押して薬室を開く。また別のボタンを押して、空の薬莢を排出する。ボタンを押して弾をひとつずつ込める。ボタンを押して薬室のシリンダーを回転させ、またボタンを押してシリンダーを戻す。ボタンを押して撃鉄を起こす。堂々と1発の弾を撃つまでに、これだけのことをしなければならない。

そうやって、がらんとした薄気味悪い自動生成されたステージに配された敵と戦っていくことになる。その敵とは、さまざまな種類の銃を操る無人機だ。初期のステージに出てくるのは、静止した無人偵察機にマシンガンが搭載されたもので、要は弾丸を撃ってくるカメラである。こちらが敵の視界に入ると撃ってきて、命中すれば1発ですぐ殺されてしまう。

敵が機械だと、武器に意識が向くようになる。そして敵が扱う銃も、こちらが使っている銃についても、その危険性があらゆる場面で強調される。銃に弾を込めて準備万端で無人機を撃ちに行っても、的を外してしまうこともある。不発に終わったり、弾や薬きょうがどこかに引っかかったりすることもある。ちゃんと撃てたと思っても、轟音はするし振動も強い。安全ではないし、予想通りでもまったくない。

このゲームのなかでは、銃を撃つたびに神経をすり減らすことになる。そして、ミスも起こりやすい。きちんと予防措置を講じていないと、ホルスターにしまおうとしただけで銃をうっかり発射させてしまい、自分がけがをしたり、死んでしまったりすることすらあるのだ。

「銃を撃つのは恐ろしい」というテーマ

ステージが進むごとに、どんどん新しく複雑な銃が導入され、エスカレートしていくこのシステムをとりまくのは、細かいところが省略されすぎていてよくわからない妄想のようなストーリーだ。このストーリーは正直に言って、かなり意味不明である。

プレイヤーは、何らかのカルトに新しく加入した人物として、シミュレーションか夢のようにも思える現実の世界に存在している。がらんとした空間で、この現実世界について隠されていた事実を教えてくれるテープを探して回るのだ。

テープを探すクエストは、目指すものという意味ではゲームの焦点なのだが、プレイ時間のほとんどは無人機の相手をすることに費やされる。だが、自動生成されたステージを使ってプレイするたびにチャレンジを変えてくるこの構造は、あまりうまく機能していない。

本作でうまくいっているのは、妄想と危険に溢れた世界のなかで、プレイヤーが夢中になって扱う武器の危険性を強調することだ。世界は空虚で壊れやすく、誰もいない。鏡に写った自分の姿を見ると、そこにいるのは人間ではなく、射撃場で標的に使われるダミー人形になっている。

それは不安になる世界だ。そしてその不穏さが、このゲームが暗黙のうちに示すテーマを強化している。つまり、「銃を撃つのは恐ろしい」というテーマだ。「Receiver 2」は、銃自体を憎んでいるようには見えない。だが、銃は危険で、簡単には使いこなせない恐ろしいものとして捉えられるべきだ、つまりリアルに捉えられるべきだと訴えている。

銃を軽視してはならないという主張

このゲームの世界における銃は、最も文字通りの意味で「非人間的に」扱われている。プレイヤーも敵も、予測可能な殺傷ロボットになっている。そのようにして、暴力や、その実行に使われる道具である銃を軽視してはならないと主張しているのだ。甘く見ていると、よくて不注意の事故、最悪の場合は人の命を奪うことになる。

この主張は、ゲーム業界全体が学ぶべきものだろう。暴力について真剣なストーリーを伝えようとするゲームは多い。それは事実上のテーマが暴力になっているゲームがこれだけ多いことを考えれば、当然のことだ。しかし、暴力を骨抜きにし、安全で楽しいものにしてしまうと、その危険性について真剣なストーリーを伝えるのは難しくなる。

ファンタジーの世界を生み出すのは構わない。そうしたファンタジーが暴力的であってもいいとする議論もあるし、「DOOM」のようなゲームの存在が有害であるとは一概には言えない。

だが、銃を撃つということに関して、もっと考え抜かれたゲームは存在しうる。銃について「Receiver 2」の半分でもいいから真剣に扱うタイトルが増えれば、ゲームはすぐにいま以上に洗練されたメディアになるだろう。

※『WIRED』によるゲームのレヴュー記事はこちら


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TEXT BY JULIE MUNCY

TRANSLATION BY AKARI NAKARAI/GALILEO