「話のおもしろい人」の法則』(野呂エイシロウ著、アスコム)は、放送作家として『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『ザ!鉄腕!DASH!!』『奇跡体験!アンビリバボー』『ズームイン!!SUPER』などのヒット番組に携わってきたことで知られる著者が、人の心をつかむための話し方をレクチャーした書籍。

「話し方の法則」について、さまざまな角度から考察しています。きょうは、ビジネスのシーンに最も活用できそうな第2章「会話が続く人、続かない人の話し方の法則」を見てみたいと思います。

会話が続く人は、意表をついて驚かせる。続かない人は、天気の話をして退屈がられる

本題へ入る前に「天気の話から入る」という常套手段がありますが、会話を続けたいのならそれは絶対に避けるべきだと著者は主張しています。なぜなら天気の話題を振られた相手は、「そうですね」としか返しようがなく、話が広がっていかないから。会話のきっかけは、それをとっかかりにして話が広がる可能性のあるものでないといけないといいます。

ただし、天気の話であっても、おもしろくできて話を広げられる自信があるなら話は別。たとえばゲリラ豪雨に当たったら、著者はわざとズブ濡れになって現れ、ウケを狙うのだとか。でも、そこまではなかなかできるものではありませんし、地雷を踏むことになる危険性もある気が...。あまり冒険をせず、天気の話を避けるのに徹することが無難かもしれません。(72ページより)

会話が続く人は、ググる。続かない人は、グチる

日ごろからできる雑談の上手な仕込み方を考えるうえで大切なのは、相手(の会社)に対するポジティブな話題を振っていくことだといいます。そのため、まずは検索エンジンで相手についての最新の話題を調べる。そしてそのなかからネガティブな情報は外し、ポジティブなものだけをメモしておく。

すると相手は悪い気がせず、思わぬ内部情報を教えてくれることもあり得るというわけです。そしてなにより、相手に「あ、こいつ勉強しているな」という印象を与えることができる。雑談のネタをちょっと仕込んでいくだけで、いろいろな効果が期待できるということです。(76ページより)

会話が続く人は、本題の前にリスクを犯さない。続かない人は、本題の前にリスクを犯す

「出版界も本が売れなくて大変じゃないですか」

「やっぱり、東日本大震災以降、エネルギー問題は心配じゃないですか」

(81ページより)

このように「質問調の言葉を挟んで、いちいち同意を求めてくる」話し方が決定的にまずいのは、本題へ入る前に反論されてしまうリスクがあること。聞くべき必要のないところで不用意に同意を求め反論されてしまうと、そのあとで展開したい本題とかみ合わなくなり、そこから結論を導こうと思っていたシナリオは簡単に崩壊。最悪の場合はそこで会話が終わってしまう場合も。

「〜じゃないですか」という言葉でいちいち同意を求めたくなるのは、小さなイエスを積み重ねていけば、最終的な目標に対してもイエスと言ってもらいやすくなると思っているからかも。しかし、そんな戦術にひっかかってくれるのは、相手のレベルが低い場合だけだと著者は指摘しています。あるいは自信がないため、いちいち同意を求めなければ不安で先に進めないというパターン。

「〜じゃないですか」は、多くの人が無意識に使いがち。しかし小さな同意を引き出して結論を誘導しようとするくらいなら、いきなり本題に入った方がお互いにスッキリすると著者は記しています。(80ページより)

会話が続く人は、自分の話をする。続かない人は、会社の話をする

ビジネスにおいてありがちな、話し方のまずい例は、会社の話ばかりをするパターンだそうです。会社なんてしょせん器。目の前にいるあなたがどんな人間なのか、どんな実積や力を持ち、どう進もうとしているのかを聞かない限り、なにも話しようがないという意見には納得できるものがあります。例外的に、いきなり会社の話をしていいのは経営者だけだとか(特に、ソフトバンクの孫正義さんのような創業経営者)。

ここで著者が引き合いに出しているのは、野球場でビールを売っている売り子さんとお客さんとの関係です。彼女たちはビールを買ってもらうため、かわいい目印をつけたり、歩く速度を変えてみたり、さまざまな工夫をしているもの。でも,その売り子さんがお客さんに対して、キリンビールの由来や、エビスビールにおいしさを自分のことのように語りはじめたら購買意欲も減退するはず。極端な例ではありますが、「いきなり会社を語りはじめる行為とは、そのくらい痛々しいこと」だというわけです。(98ページより)

人気放送作家であるだけに、ひとつひとつの話題は、(ときに派手すぎな気もしますが)フックとしても機能しています。話下手で悩んでいる人は、何かしらのヒントをつかめるかもしれません。

(印南敦史)