JALのトップ人事は異例ずくめだった、女性社長「0.7%」の現状に投じた一石
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年明け早々に羽田空港で起きたショッキングな事故からわずか2週間。1月17日、日本航空(JAL)が発表したトップ人事が大きな注目を集めた。
4月1日付で新社長に就く鳥取三津子氏(59)は客室乗務員(CA)出身。女性としても初めての社長となる。伝統的な日本の大企業で女性がトップに就くのは異例だ。
鳥取氏は長崎県の短大を卒業し1985年、日本エアシステム(JAS)の前身の東亜国内航空に入社。客室本部長など主に客室畑を歩み、現在は最高顧客責任者(CCO)を務めている。本流とされる経営企画部門の経験はなく、異例ずくめの人事にネット上では「まさかCAが社長に」「日航も変わった」などと驚きの声が上がった。
羽田事故に言及
「一人残らずお客様を脱出させるんだという使命感が9名全員にあった。本当に誇らしく思う」
白いスーツ姿で就任会見に臨んだ鳥取氏は羽田事故に関し、自身の後輩にあたるCAらの誘導で乗客全員が脱出に成功したことをそう振り返った。炎上する機体の映像を日本中が
とはいえ、真価が問われるのはこれからだ。顧客対応のプロとはいえ経営手腕は未知数。コロナ禍からの反転途上にあるJALを成長軌道に乗せられるかが課題となる。
女性社長わずか0.7%
異例ずくめのトップ就任で注目されたJALだが、そもそも女性が社長を務める企業はどのくらいあるのだろうか。
帝国データバンクが行った「全国『女性社長』分析調査」(2023年)によると、昨年10月時点で全国約119万社の事業会社のうち女性社長の割合は8.3%。前年の8.2%からわずかに増加し、1990年の統計開始以来で最高となったが、依然として1ケタ台と低水準が続いている。JALのような東証プライム上場企業に限ると、女性社長比率はわずか0.7%という調査結果もある。
最近では、昨年6月に就任したマネックスグループの清明祐子社長(46)や、森トラストの伊達美和子社長(52)ら大手企業トップへの女性就任も増えてはきているが、まだまだ少数派だ。
政府が昨年6月に打ち出した「女性版骨太の方針2023」では、東証プライム上場企業に対し、2030年までに女性役員比率を30%まで高めるよう求めている。企業活動において女性活躍が叫ばれ、女性リーダー育成の必要性が指摘される中、実際のところは十分に進んでいないのが実情だ。
内閣府によると、東証プライム上場の約1800社のうち、女性の役員比率は11.4%(2022年)にとどまる。日本を除く先進7か国(G7)平均が38.8%であるのに比べ、はるかに見劣りする。
帝国データバンクの担当者は「女性の登用は拡大しているものの、海外に比べるとまだまだ低水準で、芳しいとは言いがたい」と指摘。また「比率の向上を目的にした起用には落とし穴も多い。ポジションを用意しても適材適所でなく、役職が務まらないといったケースも散見される」と課題を述べている。
このところ社外取締役に女性アナウンサーやユーチューバーなどを招く事例も散見されるが、単に女性比率向上のみを目的とし、経営に的確な助言が行えなければ本末転倒だろう。
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