桜島と鹿児島市街地を結ぶ錦江湾横断道路構想が、現実味のある政策課題として浮上してきた。トンネル掘削か橋の架設かで地元意見がまとまっていないなどの障壁があったが、昨年11月に関係4団体が包括的な協議会を設立。桜島フェリーの経営健全化問題や火山大噴火時の避難道の必要性が指摘され、国政に強い影響力を持つ森山裕自民党幹事長も「実現したい」と前向きだ。今月19日に桜島で決起大会を開き、実現へ機運を高める。
横断道構想は当初、鹿屋市や垂水市など大隅半島の経済関係者や自治体が実現に向けて熱心に運動してきた。ただ、整備先となる鹿児島市側の動きが鈍かった。
2021年1月に鹿児島市の経済関係者らが中心となって「桜島大橋推進協議会」が誕生。23年11月には桜島地域の町内会長ら住民有志が「桜島架橋建設推進協議会」を発足させた。会長の磯辺昭信さん(72)=鹿児島市=は「鹿児島市側の機運を高めないと実現は見えない」と理由を語る。
大隅側を含めた4団体は24年11月、「錦江湾横断道路推進連携協議会」の設立にこぎ着けた。会長に就任した磯辺さんは「足並みがそろってきた」と話す。
整備手法については、海底トンネルと橋の2通りの案がある。トンネルを推す人たちは、降灰の影響を受けづらく景観に影響を与えないことを利点に挙げる。一方で災害時の安全性や観光地化を念頭に橋とすべきとの意見もある。新たな協議会では整備手法にこだわらずに「道を作る」という目標を掲げることで一致。歩調を合わせた。
経営健全化を理由に桜島フェリーが昨年7月に値上げし、夜間運航見直しの動きがあることも運動加速の背景にある。利用者らに、家計の圧迫や災害時の避難の遅れに対する不安があるという。住民の一人は「横断道構想の実現を諦めていた人も必要性を改めて感じるようになった」と話す。
今月19日の決起大会には大隅半島を地盤とする森山幹事長も出席予定。森山氏は取材に、鹿児島市が運航する桜島フェリーの財政問題にも触れ「桜島の爆発による島民避難を考えると、錦江湾横断道路を考えないといけない。実現には地元の熱気が必要」と話した。
他の国会議員や県議らも出席予定。協議会の幹部らは「複数の団体が結束して呼びかけたことで、多くの議員に来てもらえることになった。森山氏には議員生活の集大成として力を入れてほしい」と期待する。
県は2009〜12年に横断道の実現可能性調査をし、21年には、高規格道路としての役割が期待されるが起終点が未定の「構想路線」に位置付けた。ただ、実現に向けて動きを加速させる気配はない。塩田康一知事は今月17日の定例会見で「採算性や技術的な課題を一つ一つ検討していく必要がある」と述べるにとどめた。