米国と欧州連合の2つの巨大な脳研究プロジェクトは、当初描いていた壮大な成果を出せていないのが現状だ。リミットはあと数年、研究者たちは複雑な脳をどこまで解明できるのだろうか。 by Emily Mullin2021.09.07 71 4 25 2011年9月、英国の田園地帯にある絵画のように美しい建物で、神経科学とナノサイエンスの分野融合を目指すシンポジウムが、両分野の研究者を集めて開催された。 このシンポジウムで、コロンビア大学の神経生物学者ラファエル・ユステ教授とハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ教授は、大胆な提案をした。ヒトの脳全体の活動を、個々のニューロンのレベルでマッピングし、それらが形成する神経回路の詳細を明らかにすると宣言したのだ。これにより得られる知見は、アルツハイマー病、自閉症、統合失調症、うつ病、外傷性脳損傷といった、さまざまな脳の病気の治療に役立つはずだ。そして