ドローン5G解禁でエンタメ用途拡大 空飛ぶクルマは2030年代に自律飛行へ

「空の交通」の規制緩和が続いている。上空での5G利用が解禁されることで、ドローンはエンタメ分野へと用途が拡大する。2025年以降は、空飛ぶクルマの普及も進みそうだ。

ドローンの上空利用をめぐって、2024年度中にも5G利用が解禁される予定だ。

上空での5G利用が可能になることで、「ドローンを使ったサービスの幅が広がるだろう」と三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 主席研究員の大木孝氏は話す。高精細映像をリアルタイムに観客に届けるといった、エンターテインメント分野における新たなサービスの創出が期待できるという。

三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 主席研究員 大木孝氏

三菱総合研究所 モビリティ・通信事業本部 主席研究員 大木孝氏

野村総合研究所 ICT・コンテンツ産業コンサルティング部 エキスパートコンサルタントの名武大智氏も「カーレースやロードレース、アルペンスキーなどアウトドアで行われる試合の中継で、特定の選手を上空のカメラから追尾した映像を配信するなど、従来にはないコンテンツが実現可能になる」と指摘する。

野村総合研究所 ICT・コンテンツ産業 コンサルティング部 エキスパートコンサルタント 名武大智氏

野村総合研究所 ICT・コンテンツ産業 コンサルティング部 エキスパートコンサルタント 名武大智氏

2023年12月に総務省が公表した「周波数再編アクションプラン(令和5年度版)」には、9つの重点的取組の1つに、「ドローンによる上空での周波数利用」が盛り込まれた。

LTE/5Gだけでなく、ローカル5G、2.5GHz帯を使用するBWA、5GHz/6GHz帯の無線LANについても他の無線システムへの混信を防止しつつ、ドローンなどによる上空利用の検討を進めることで利用拡大を促す狙いだ。

名武氏はなかでもローカル5Gに注目しており、「ローカル5Gの上空利用が可能になれば、産業分野でのドローン活用がさらに広がるだろう」と予想する。例えば、災害発生時のインフラ点検のように、「特定のエリアでリアルタイムに高精細映像を送ることが求められるユースケースに有効」だという。

セルラーはテレメトリングにニーズ

ドローンの上空利用はこれまで高度150m以下に制限されていたが、電波法の制度整備が行われ、2023年4月より高度150m以上においても、簡素化した手続きでモバイル通信を利用することが可能となった。

電波法の規制緩和では、ドローンなどの無人航空機だけでなく、ヘリコプターや空飛ぶクルマといった航空機も適用対象に含まれている。

米Joby Aviationの空飛ぶクルマ「Joby Aviation S4」

米Joby Aviationの空飛ぶクルマ「Joby Aviation S4」

ヘリコプターは現状、地上の運航会社や管制機関との連絡に、VHF帯航空無線電話を使用する。

空飛ぶクルマとは、電動化や自動化といった航空技術や、垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段のこと。操縦士が必要なため航空機として扱われ、ヘリコプターと同様、通信手段にはVHF帯航空無線電話を使う。

VHF帯航空無線電話は、使用できるチャネルが限られている。ヘリコプターの場合はそれで問題ないが、空飛ぶクルマはまだ登場して日が浅いこともあり、安全対策などの観点から、「モーターの回転数やバッテリーの残量といった機体のステータス情報を地上の運航会社でモニタリングしたいというニーズがあり、そこにセルラー通信の活用が期待されている」(大木氏)という。

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