嘘日記

全部嘘の日記です

10/14(月) 蛾よりチュロスが食べたい

 

 私は6歳のカラスです。平均寿命が7~8年なので、あともう少しで終わり。人間は何年生きるんだろうとか、考えたことはない。

 この季節になると蛾が大量に発生するので、仲間たちと食べに行く。

 

 Googleで調べてみたところ、蛾は栄養素が豊富らしい。羽だけは食べない。不味いので。「関連する質問」が勝手に出てきて、「蛾は何のために存在しているのですか?」と出てきた。以下、引用。

 

蛾が栽培種の花粉を多く運んでいた事実だ。イチゴ、かんきつ類、核果など、人間が口にする食べ物を受粉する役割を果たしているのだ。

 

「蛾は在来種や野生の植生にとって重要な生物であるだけでなく、わたしたちの食糧供給に直接役立つ生物なのです」とコスマは語る。

 

 何を言ってるのか分からなかった。別に蛾は人間の役に立つために生きてるわけではない。

 

 今日は夕焼けがきれいな時間帯に、みんなで電柱と電柱の間の紐(配電線というらしい)で座ってた。空が燃えてるようで綺麗だった。「夕焼け」と名付けた人も同じ気持ちだったんだろうな。

 

 歩いてる人を見る。チュロスを食べていて美味しそうだ。蛾よりチュロスが食べたい。だけど、人間から拝借しようとすると、いつも怖がられるので自粛している。もう6年も生きたから、何をしたらどうなるか、分かるようになってしまった。

 

 たまに私を怖がらないでくれる人がいるので、ありがたいなと思う。私も好きです。みんな蛾を食べに行ったけど、あまり気乗りしない。Googleで「蛾 栄養」で検索。

 ナショナル ジオグラフィック日本版のサイトで「眠っている鳥の涙を飲む蛾を発見、世界で3例目」というタイトルを見つけて、グッときてしまった。短歌じゃん、これ。私にも書けるのかな。寿命あと1年だけど。書いてみたい。

 

スピッツしろくま』を聞いて寝る。

 

今すぐ抜け出して 君としゃべりたい まだ間に合うはず
地平線を知りたくて ゴミ山登る 答え見つけよう
なんとなくでは終われない
星になる少し前に

 

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10/11(金) ズッ友と自撮りしてたら、父(48歳)が映り込んでる

 9時半起床。今日も学校遅刻です。朝マックには絶対遅刻したくないので、大急ぎでマックへ走る。これが「疾走」だっ!と感じる。私はとても賢いので、疾走を体現できる。

 いつもソーセージマフィン。安いし美味い。小遣い増やせよ。

 

 遅延証明書はストックがたんまりあるので、担任にいくらでも渡せる。嘘の遅延証明って気付いてるぽいけど。私の高2も折り返してしまうな。教室の窓から流れてくる、秋の風が心地よい。いつも眠ってしまう。

 

 andymoriってバンド、ちょい前にバズってて「1984」って曲も聞いたけど、歌詞は意味分かんないのに、それな〜なんかディスティニー!って感じで泣いた。でもわけもわからないまま5限が終わるの待ってて、律儀すぎるな。

 

 4時間目の途中から登校して、6時間目の地学まで、ほぼ記憶なし。

 

 帰り道の地下歩道。鏡の前で10年ズッ友のまゆぴと、いつも通りの惰性でTikTok用の自撮りを始める。最近は踊るのもしんどみなので、なんとなく身体を左右に揺らしてるだけです。

 

 動画撮影をスタートし始めたら、背後におじさんが映り込んでる。超くたびれたスーツ皺だらけのサラリーマン。「おいおいおいおいおい」と思う。JKのTikTokに一番映り込んだらダメなんだよ、私はいいんだけど、世間が許さないっぽいから。

 

 まゆぴは怪訝そう。私も「マジでな〜」って適当に相槌打ってて。よくよくおじサラリーマンを見てみたら、父(48歳)だった。

 「おいおいおいおいおい」Part2だよ、まじで。私は絶賛反抗期で、もう1年くらい話してない。臭いし、小遣い少ないし、だから朝マックソーセージマフィンだよ。何より私が毎日朝マックして遅刻してるの、ずっと言ってくるな。もう諦めろよって思うけど、全然諦めないし。キモすぎ。

 

 でも、あんなくたびれてたっけ父。皺だらけだよスーツが。どんな仕事してるのかも、よく分かんない。なんか私のこと諦めないくせに、自分の人生諦めてる?自撮り用のビデオは止まってない。カメラは止まらない。

 

 あーーー!なんか私の脳みその中でパチっと音がして、気づいたらまゆぴを吹っ飛ばしてた。鏡に映り込む父と私のツーショット。誰が求めているのか分からないこのツーショットは、私のiCloudに保管され、TikTokに放流されることはない。見ることも当分ない。

 

 いつかこのツーショット、まともに見れる日が来るのかな。そうだといい。まゆぴはギャーギャー叫んでる。うるさいから無視して、私は帰路に疾走。『1984』を聞いて帰るのは、なんだか癪に触るので、TOMOO『あわいに』を聞きながら。駅のホームで8分後の電車を待っていた。

 

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10/9(水) 記者会見に2人しか来なかった

 7時半起床。朝ごはんバナナと白湯。ここは鳥取の過疎地で、私は町長です。

 18時から今後の町政に関する記者会見。何を言っていいのか分からない。なぜなら、何も言いたいことがないからだった。

 

 会場入り。記者が2人しか来てない。記者の1人が欠伸をしながらインスタを見てるようです。三毛猫が寝てるやつ、私も朝同じの見ました。

 

 会見スタート。淡々と広報部が用意したカンペを読みながら、10分くらいで言い終わる。プロンプター(カンペを透明な板に電子的に写すやつ)を先日総務部のお局が買ってくれたので、使ってみる。下を向かなくていいので、カンペ見てる感がない。いいじゃんこれ!と思った。

(予算余ってるから、使い切らないと来年予算減らされる!と言っていたが、それは私に伝えていいことなのだろうか)

 

 想定質問に移る。質問に対する回答は、なぜか広報部が作るのだるいという理由で総務部の新人が作ったらしい。

 

 誰も質問をしない。1人はずっと三毛猫のインスタを見てる。もう1人はひたすら私が会見で言った言葉の中で「カタカナ」の単語を、「私のカタカナ列伝〜Part3〜」と表紙に書かれたノートに書き写している。

 

 帰宅。スーパーで半額だったビビンバを食べて、就寝。

 

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10/3(木) コンビニで絶対通路を譲らなかったら、iPhone8が死んだ

 19時半。仕事終わり、帰り道のセブンでいつものストゼロ(ダブルレモン)、買う。

 

 金原ひとみって芥川賞(?)取った女性が「ストロングゼロ」って小説書いてるらしいけど、読む気しない。私にくれよ芥川。てか芥川って誰だよ。おーい。

 村上春樹は知ってる。なんかエロい小説書いてる人だよね。村上賞とかあんのかな。やれやれってよく言ってる?それは分かるよ。やれやれだよね。それだけは分かる。私だって文学分かるんだよな。舐めんなよ。1,000万ください。

 

 あーだるい。ストゼロだけ買って帰る日が28日に続いてる。『28日後...』ってゾンビ映画、そういや昔見たな〜などと思いつつ、レジに並んでたら。前方から村上春樹の新刊を全部単行本で揃えてそうな男性が、「避けますよね?普通は。どうやら?」みたいなムーブで向かってくる。(Yahoo!ニュースでバーで毎年あちゃーってやってんの、ちゃんと見てんだよ。Yahoo!ニュース絶対見ろよ。風の歌聴いてみたいな。私も。)

 

 私はコンビニの棚と棚の間。いつもど真ん中にいる。そして絶対に、絶対に避けない。私が中心だから。コンビニでストゼロ買ってるときくらい、世界の中心にいたいから。いさせてくれよ。中心で叫んでんだよ。気づけよ。避けたら終わりなんだよ。

 

 村上春樹単行本男は、小蝿を見るような目つきで迂回してったな。小蝿の方が尊いけど。てかコンビニ来ないでよ。レジでお会計。PayPay開くのもだるいと思ってたら、アプリが起動しない。おい、ふざけんなよ。PayPayできねえじゃねえか。

 

 アプリを何度も起動、削除、起動、削除、起動、削除。バッテリーが熱くなっていく。手のひらの温もり。今日は寒いから。いや、そうじゃなくて。PayPayが開かない。ストゼロ買いたいだけなのに、私のiPhone8がバッテリー最大容量55%だからですか?もう10分くらいレジにいるけど、もう何もかも許されたいよ、と思ってたら急にiPhone8の画面が真っ暗になった。電源を何度も、何度も押す。付かない。

 

 付いてよ。付いてよ、iPhone8。何年一緒にやってきたんだよ。もう今のiPhone意味分かんないよ。目玉みたいなカメラ3つ付いてるし、画面もクソでかだし。人間は欲深いから、とどまることを知らない。てかスマホってなんだよ。もういいんです。カメラ1つで。画面もこの大きさで。

 

 そのまま、退店した。ストゼロを買わなくても、生き延びれるんだ。明日iPhone8を修理に持っていく。私にはiPhone8しかないのか。ひび割れたフィルムも、茶色に変色したケースも。愛しいのか捨て去りたいのか、よく分からない。

 

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10/2(水) 浜辺で浜崎あゆみらしき人が叫んでた

 奄美大島にいる。無職のため。大浜海浜公園の浜辺で、ぼんやり海のさざなみを見つめていたら、遠方でキラキラと陽気を振り撒く方々(全員金髪で女性1人男性10人くらい)が高級クルーザーで海を切り裂いてる。肩を組み、上下に飛び跳ねたり、突然海に落ちたりしている。とても大変そうです。

 

 ぼんやり寝落ちしかけたら、クルーザーがとても近接。「難しい話いらんから笑ってみよー!君が笑ってくれれば、なんかいいねー!こっち来ますかー??」と金髪の女性が叫んでる。私に。

 

 浜崎あゆみ、なのだろうか。『BLUE BIRD』の歌詞みたいなことを言っている。視力0.1なのに眼鏡もコンタクトもしてないので、分からない。

 「そうかもしれないです!いいんでしょうか!?」とこちらも叫んだ。全く聞こえてないよう。しばらく誰とも話してないので、「叫ぶ」ことの定義から外れてるのかもしれない。私の声量が。 

 

 「しんどいなら、翼さずけるかも!レッドブルってあんま意味ないから飲まない方がいいよ、ほんとに。カフェインだけだからな、あれ。またどこかで〜!楽しんでね〜」と浜崎あゆみらしき女性の叫びを乗せながら、クルーザーが高速で過ぎ去っていく。待ってくれ。「待ってください!!!」と私は叫んだ。取り囲みの金髪男の1人が、一瞬振り返った気がした。

 

 ホテルに戻り、奄美名物の鶏飯を食べる。明日は11:30の便で、実家に帰る。

 

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9/27(金) バイトで震えながらホットコーヒーを3分の2溢す

 今日もバイト。カフェで先月採用されたけど、接客全般が致命的に向いてないので、いまだにコーヒーを持つ手は、毎日小刻みに震えている。

 

 注文は全部アイスコーヒーでお願いします、頼みます。春夏秋冬、年中無休で。持つの、とても楽で、火傷もしないので。ホットはカップとソーサーが、必ずカタカタします。勘弁してほしい。カタカタするように、一体どこの誰が開発したんですか。緊張なんてしたことない、どこかの権力者が開発したんだろう。

 

 緑色の艶やかな服装の、上品でゆったりしたお婆様が来店。私の好きゃ〜な感じの人だ。(オードリーの若林の「好きゃ〜」です)

 お婆様、ホットコーヒーを注文。やめてくれ。どれだけ、どれほど、好ましい人が来ても。ホットコーヒーを頼まれるだけで一瞬で「敵」として認知が切り替わる。本当はあなたのことが好きなのに。

 

 毎度のこと小刻みに震えながらホットコーヒーを持っていく。「お待たせしました〜」と小声で言いながら、(声も震えるから、小声にしてる)テーブルにホットコーヒーを置こうとしたら、震えが臨界点を超えたようで、ソーサーにコーヒーが溢れ始める。

 

 「まだいける、やれる、できます」と私は思ってた。もう何もかも手遅れだって、誰か言ってあげてほしい。もう半分くらい溢れてるよ、諦めろって。メタ認知はいつも遅れてやってくる。もう半分くらいはとっくに溢れていて、床にぼたぼたとコーヒーの茶色い点が、沢山できてる。なんだか美しいな。ホットコーヒーは250円だから、125円分溢した。そうか。125円返金すれば帳尻は合います。

 

 震えが大きくなる。コーヒーは溢れ続ける。とどまることを知らない時の中で。(そういえば最近ミスチル聞いてないな)お婆様はどんな表情をしてるだろうか。見ない。もっと震えてしまうから。

 

 そして置き切った。頑張った、わたしは。コーヒーは3分の1くらいの量に減っていて、お婆様は心配そうな顔をして私を見つめていた。1杯250円、3分の1だと割り切れない。83.3円くらいだ。「大丈夫かしら・・・」と話しかけてくれたので「全然、大丈夫なので。ありがとうございます。」と伝え、その場を立ち去った。店長が何か言いながら急行してくる姿が、朧げに見えてた、気がする。私は本日分震え終わったので、定時3時間前だけど帰ることにした。震えたくないから。

 

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9/24(火) ホテルの池にバスローブを落とすな

 今日も仕事、夜晩。勤務先は1人1泊4万くらいする全客室スイートルームのぎり高級ホテル、という体裁でやってるホテル。エントランスに暖炉っぽいのある雰囲気醸し出してるけど、暖炉はない。洒落た洋書が、洒落た本棚に入ってる。蚊取り線香の匂いがする。

 

 客室は20室でフルで客が入れば60人。1日でフル稼働させれば、単純計算で240万。私の給料は手取り18万。

 

 ホテルにはやけに水流の強い池が設置されてる。池をバックに円安を利用した海外の富裕層ぎみカップルたちが、日々インスタに投稿するであろう写真を撮りまくってる。

 私は、ホテルのインスタ担当だけど、彼らの投稿にいいねを押したことがない。手取り30万超えたら、押そうと思います。

 

 夜。風呂上がりの外国人旅行客が、「池にバスローブを落とした!!」とフロントに来る。なぜか外国人はパジャマの上にバスローブを羽織って、池を風呂上がりにうろついてる率が異常に高い。なぜ。

 

 池に行く。池に浮かんだバスローブが、死体にしか見えない。犬神家の一族ですね。めちゃくちゃ面白いのに、「ホテルのコンセプトと違いますから、インスタ投稿は絶対やめてください。やめろ。」と支配人に強く言われているので、私はとても悔しい。

 

 とても悔しいな〜と思っている間に、やけに水流の強い池であることを失念。どんどんバスローブ(死体)が池の最果てまで流されていく。

 急いで取りに行けば、そこら辺のボッコで掬い取れたのに。ボートで取りに行った。バスローブはびしょびしょでした。池の水を抜いたら、小銭が沢山出てきてほしい。

 

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