ビューは MVC アーキテクチャの一部を成すものです。 ビューはエンド・ユーザにデータを表示することに責任を持つコードです。 ウェブ・アプリケーションにおいては、ビューは、通常、ビュー・テンプレート の形式、すなわち、 主として HTML コードと表示目的の PHP コードを含む PHP スクリプト・ファイルとして作成されます。 そして、ビュー・テンプレートを管理する [[yii\web\View|ビュー]] アプリケーション・コンポーネント が、ビューの構築とレンダリングを助けるためによく使われるメソッドを提供します。 なお、簡潔さを重視して、ビュー・テンプレートまたはビュー・テンプレート・ファイルを単にビューと呼ぶことがよくあります。
前述のように、ビューは HTML と PHP コードが混ざった単なる PHP スクリプトです。 次に示すのは、ログイン・フォームを表示するビューです。 ご覧のように、PHP コードがタイトルやフォームなど動的なコンテントを生成するのに使われ、HTML コードがそれらを編成して表示可能な HTML ページを作っています。
<?php
use yii\helpers\Html;
use yii\widgets\ActiveForm;
/* @var $this yii\web\View */
/* @var $form yii\widgets\ActiveForm */
/* @var $model app\models\LoginForm */
$this->title = 'ログイン';
?>
<h1><?= Html::encode($this->title) ?></h1>
<p>次の項目を入力してログインしてください:</p>
<?php $form = ActiveForm::begin(); ?>
<?= $form->field($model, 'username') ?>
<?= $form->field($model, 'password')->passwordInput() ?>
<?= Html::submitButton('ログイン') ?>
<?php ActiveForm::end(); ?>
ビューの中では、このビュー・テンプレートを管理しレンダリングしている [[yii\web\View|ビュー・コンポーネント]] を参照する
$this
にアクセスすることが出来ます。
$this
以外に、上記の例の $model
のように、事前に定義される変数をビューの中に置くことが出来ます。
このような変数は、ビューのレンダリング をトリガする コントローラ
などのオブジェクトによってビューに プッシュ されるデータを表します。
Tip: 上の例では、事前に定義される変数は、IDE に認識されるように、ビューの先頭のコメント・ブロックの中にリストされています。 これは、ビューにドキュメントを付けるのにも良い方法です。
HTML ページを生成するビューを作成するときは、エンド・ユーザから受け取るデータを表示する前にエンコード および/または フィルタすることが重要です。 そうしなければ、あなたのアプリケーションは クロス・サイト・スクリプティング 攻撃を こうむるおそれがあります。
プレーン・テキストを表示するためには、まず [[yii\helpers\Html::encode()]] を呼んでエンコードします。 例えば、次のコードはユーザの名前を表示する前にエンコードしています。
<?php
use yii\helpers\Html;
?>
<div class="username">
<?= Html::encode($user->name) ?>
</div>
HTML コンテントを表示するためには、[[yii\helpers\HtmlPurifier]] を使って、最初にコンテントをフィルタします。 例えば、次のコードは、投稿のコンテントを表示する前にフィルタしています。
<?php
use yii\helpers\HtmlPurifier;
?>
<div class="post">
<?= HtmlPurifier::process($post->text) ?>
</div>
Tip: HTMLPurifier は、出力を安全なものにすることにおいては素晴らしい仕事をしますが、速くはありません。 アプリケーションが高いパフォーマンスを要求する場合は、フィルター結果を キャッシュ することを考慮すべきです。
コントローラ や モデル と同じように、ビューを編成するための規約があります。.
- コントローラによって表示されるビューは、デフォルトでは、ディレクトリ
@app/views/ControllerID
の下に置かれるべきものです。 ここで、ControllerID
は コントローラ ID を指します。 例えば、コントローラ・クラスがPostController
である場合、ディレクトリは@app/views/post
となります。PostCommentController
の場合は、ディレクトリは@app/views/post-comment
です。 また、コントローラがモジュールに属する場合は、ディレクトリは [[yii\base\Module::basePath|モジュール・ディレクトリ]] の下のviews/ControllerID
です。 - ウィジェット で表示されるビューは、デフォルトでは、
WidgetPath/views
ディレクトリの下に置かれるべきものです。 ここで、WidgetPath
は、ウィジェットのクラス・ファイルを含んでいるディレクトリを指します。 - 他のオブジェクトによって表示されるビューについても、ウィジェットの場合と同じ規約に従うことが推奨されます。
これらのデフォルトのビュー・ディレクトリは、コントローラやウィジェットの [[yii\base\ViewContextInterface::getViewPath()]] メソッドをオーバーライドすることでカスタマイズすることが可能です。
コントローラ の中でも、ウィジェット の中でも、または、その他のどんな場所でも、ビューをレンダリングするメソッドを呼ぶことによってビューをレンダリングすることが出来ます。 これらのメソッドは、下記に示されるような類似のシグニチャを共有します。
/**
* @param string $view ビュー名またはファイル・パス (実際のレンダリング・メソッドに依存する)
* @param array $params ビューに引き渡されるデータ
* @return string レンダリングの結果
*/
methodName($view, $params = [])
コントローラ の中では、ビューをレンダリングするために次のコントローラ・メソッドを呼ぶことが出来ます。
- [[yii\base\Controller::render()|render()]]: 名前付きビュー をレンダリングし、 その結果に レイアウト を適用する。
- [[yii\base\Controller::renderPartial()|renderPartial()]]: 名前付きビュー をレイアウトなしでレンダリングする。
- [[yii\web\Controller::renderAjax()|renderAjax()]]: 名前付きビュー をレイアウトなしでレンダリングし、登録されている全ての JS/CSS スクリプトおよびファイルを注入する。 通常、AJAX ウェブ・リクエストに対するレスポンスにおいて使用される。
- [[yii\base\Controller::renderFile()|renderFile()]]: ビュー・ファイルのパスまたは エイリアス の形式で指定されたビューをレンダリングする。
- [[yii\base\Controller::renderContent()|renderContent()]]: 静的な文字列をレンダリングして、現在適用可能な レイアウトに埋め込む。 このメソッドは バージョン 2.0.1 以降で使用可能。
例えば、
namespace app\controllers;
use Yii;
use app\models\Post;
use yii\web\Controller;
use yii\web\NotFoundHttpException;
class PostController extends Controller
{
public function actionView($id)
{
$model = Post::findOne($id);
if ($model === null) {
throw new NotFoundHttpException;
}
// "view" という名前のビューをレンダリングし、レイアウトを適用する
return $this->render('view', [
'model' => $model,
]);
}
}
ウィジェット の中では、ビューをレンダリングするために、次のウィジェット・メソッドを使用することが出来ます。
- [[yii\base\Widget::render()|render()]]: 名前付きビュー をレンダリングする。
- [[yii\base\Widget::renderFile()|renderFile()]]: ビュー・ファイルのパスまたは エイリアス の形式で指定されたビューをレンダリングする。
例えば、
namespace app\components;
use yii\base\Widget;
use yii\helpers\Html;
class ListWidget extends Widget
{
public $items = [];
public function run()
{
// "list" という名前のビューをレンダリングする
return $this->render('list', [
'items' => $this->items,
]);
}
}
[[yii\base\View|ビュー・コンポーネント]] によって提供される下記のメソッドのどれかを使うと、ビューの中で、別のビューをレンダリングすることが出来ます。
- [[yii\base\View::render()|render()]]: 名前付きビュー をレンダリングする。
- [[yii\web\View::renderAjax()|renderAjax()]]: 名前付きビュー をレンダリングし、登録されている全ての JS/CSS スクリプトおよびファイルを注入する。 通常、AJAX ウェブリクエストに対するレスポンスにおいて使用される。
- [[yii\base\View::renderFile()|renderFile()]]: ビュー・ファイルのパスまたは エイリアス の形式で指定されたビューをレンダリングする。
例えば、ビューの中の次のコードは、現在レンダリングされているビューと同じディレクトリにある _overview.php
というビュー・ファイルをレンダリングします。
ビューでは $this
が [[yii\base\View|ビュー]]・コンポーネントを参照することを思い出してください。
<?= $this->render('_overview') ?>
場所がどこであれ、Yii::$app->view
という式によって [[yii\base\View|ビュー]]・アプリケーション・コンポーネントにアクセスすることが出来ますから、
前述の [[yii\base\View|ビュー]]・コンポーネント・メソッドを使ってビューをレンダリングすることが出来ます。例えば、
// ビュー・ファイル "@app/views/site/license.php" を表示
echo \Yii::$app->view->renderFile('@app/views/site/license.php');
ビューをレンダリングするとき、ビューを指定するのには、ビューの名前か、ビュー・ファイルのパス/エイリアスか、どちらかを使うことが出来ます。 たいていの場合は、より簡潔で柔軟な前者を使います。名前を使って指定されるビューを 名前付きビュー と呼びます。
ビューの名前は、以下の規則に従って、対応するビュー・ファイルのパスに解決されます。
- ビュー名はファイル拡張子を省略することが出来ます。その場合、
.php
が拡張子として使われます。 例えば、about
というビュー名はabout.php
というファイル名に対応します。 - ビュー名が二つのスラッシュ (
//
) で始まる場合は、対応するビュー・ファイルのパスは@app/views/ViewName
となります。 つまり、ビュー・ファイルは [[yii\base\Application::viewPath|アプリケーションのビュー・パス]] の下で探されます。 例えば、//site/about
は@app/views/site/about.php
へと解決されます。 - ビュー名が一つのスラッシュ (
/
) で始まる場合は、ビュー・ファイルのパスは、ビュー名の前に、現在アクティブな モジュール の [[yii\base\Module::viewPath|ビュー・パス]] を置くことによって形成されます。 アクティブなモジュールが無い場合は、@app/views/ViewName
が使用されます。 例えば、/user/create
は、現在アクティブなモジュールがuser
である場合は、@app/modules/user/views/user/create.php
へと解決されます。 アクティブなモジュールが無い場合は、ビュー・ファイルのパスは@app/views/user/create.php
となります。 - ビューが [[yii\base\View::context|コンテキスト]] を伴ってレンダリングされ、そのコンテキストが [[yii\base\ViewContextInterface]] を実装している場合は、
ビュー・ファイルのパスは、コンテキストの [[yii\base\ViewContextInterface::getViewPath()|ビュー・パス]] をビュー名の前に置くことによって形成されます。
これは、主として、コントローラとウィジェットの中でレンダリングされるビューに当てはまります。
例えば、コンテキストが
SiteController
コントローラである場合、about
は@app/views/site/about.php
へと解決されます。 - あるビューが別のビューの中でレンダリングされる場合は、後者のビュー・ファイルを含んでいるディレクトリが前者のビュー名の前に置かれて、
実際のビュー・ファイルのパスが形成されます。
例えば、
item
は、@app/views/post/index.php
というビューの中でレンダリングされる場合、@app/views/post/item
へと解決されます。
上記の規則によって、コントローラ app\controllers\PostController
の中で $this->render('view')
を呼ぶと、
実際には、ビュー・ファイル @app/views/post/view.php
がレンダリングされ、一方、そのビューの中で $this->render('_overview')
を呼ぶと、
ビュー・ファイル @app/views/post/_overview.php
がレンダリングされることになります。
ビューの中でデータにアクセスするためのアプローチが二つあります。「プッシュ」と「プル」です。
ビューをレンダリングするメソッドに二番目のパラメータとしてデータを渡すのが「プッシュ」のアプローチです。
データは、「名前-値」のペアの配列として表わされなければなりません。
ビューがレンダリングされるときに、PHP の extract()
関数がこの配列に対して呼び出され、ビューの中で使う変数が抽出されます。
例えば、次のコードはコントローラの中でビューをレンダリングしていますが、report
ビューに二つの変数、
すなわち、$foo = 1
と $bar = 2
をプッシュしています。
echo $this->render('report', [
'foo' => 1,
'bar' => 2,
]);
「プル」のアプローチは、[[yii\base\View|ビュー・コンポーネント]] またはビューからアクセス出来るその他のオブジェクト (例えば Yii::$app
) から積極的にデータを読み出すものです。
下記のコード例のように、ビューの中では $this->context
という式でコントローラ・オブジェクトを取得することが出来ます。
その結果、report
ビューの中で、コントローラの全てのプロパティやメソッドにアクセスすることが出来ます。
次の例ではコントローラ ID にアクセスしています。
The controller ID is: <?= $this->context->id ?>
通常は「プッシュ」アプローチが、ビューでデータにアクセスする方法として推奨されます。なぜなら、ビューのコンテキスト・オブジェクトに対する依存がより少ないからです。 その短所は、常にデータ配列を手作業で作成する必要がある、ということです。 ビューが共有されてさまざまな場所でレンダリングされる場合、その作業が面倒くさくなり、また、間違いも生じやすくなります。
[[yii\base\View|ビュー・コンポーネント]] が提供する [[yii\base\View::params|params]] プロパティを使うと、 ビューの間でデータを共有することが出来ます。
例えば、about
というビューで、次のようなコードを使って、
パン屑リストの現在の区分を指定することが出来ます。
$this->params['breadcrumbs'][] = 'About Us';
そして、レイアウト ファイル (これも一つのビューです) の中で、[[yii\base\View::params|params]] によって渡されたデータを使って、 パン屑リストを表示することが出来ます。
<?= yii\widgets\Breadcrumbs::widget([
'links' => isset($this->params['breadcrumbs']) ? $this->params['breadcrumbs'] : [],
]) ?>
レイアウトは、複数のビューの共通部分をあらわす特殊なタイプのビューです。 例えば、たいていのウェブ・アプリケーションでは、ページは共通のヘッダとフッタを持っています。 すべてのビューで同じヘッダとフッタを繰り返すことも出来ますが、もっと良い方法は、 そういうことはレイアウトの中で一度だけして、コンテント・ビューのレンダリング結果をレイアウトの中の適切な場所に埋め込むことです。
レイアウトもまたビューですので、通常のビューと同様な方法で作成することが出来ます。
デフォルトでは、レイアウトは @app/views/layouts
ディレクトリに保存されます。
モジュール の中で使用されるレイアウトについては、[[yii\base\Module::basePath|モジュール・ディレクトリ]] の下の views/layouts
ディレクトリに保存されるべきものとなります。
デフォルトのレイアウト・ディレクトリは、アプリケーションまたはモジュールの
[[yii\base\Module::layoutPath]] プロパティを構成することでカスタマイズすることが出来ます。
次の例は、レイアウトがどのようなものであるかを示すものです。説明のために、レイアウトの中のコードを大幅に単純化していることに注意してください。 実際には、ヘッドのタグやメイン・メニューなど、もっと多くのコンテントを追加する必要があるでしょう。
<?php
use yii\helpers\Html;
/* @var $this yii\web\View */
/* @var $content string */
?>
<?php $this->beginPage() ?>
<!DOCTYPE html>
<html lang="en">
<head>
<meta charset="UTF-8"/>
<?= Html::csrfMetaTags() ?>
<title><?= Html::encode($this->title) ?></title>
<?php $this->head() ?>
</head>
<body>
<?php $this->beginBody() ?>
<header>My Company</header>
<?= $content ?>
<footer>© 2014 by My Company</footer>
<?php $this->endBody() ?>
</body>
</html>
<?php $this->endPage() ?>
ご覧のように、レイアウトはすべてのページに共通な HTML タグを生成しています。
<body>
セクションの中でレイアウトが $content
という変数をエコーしていますが、これは、コンテント・ビューのレンダリング結果を表すものであり、
[[yii\base\Controller::render()]] が呼ばれるときに、レイアウトにプッシュされるものです。
上記のコードに示されているように、たいていのレイアウトは次に挙げるメソッドを呼び出さなければなりません。 これらのメソッドは、主としてレンダリングの過程に関するイベントをトリガするもので、 他の場所で登録されたスクリプトやタグが、メソッドが呼ばれた場所に正しく注入されるようにするためのものです。
- [[yii\base\View::beginPage()|beginPage()]]: このメソッドがレイアウトの冒頭で呼ばれなければなりません。 これは、ページの開始を示す [[yii\base\View::EVENT_BEGIN_PAGE|EVENT_BEGIN_PAGE]] イベントをトリガします。
- [[yii\base\View::endPage()|endPage()]]: このメソッドがレイアウトの末尾で呼ばれなければなりません。 これは、ページの終了を示す [[yii\base\View::EVENT_END_PAGE|EVENT_END_PAGE]] イベントをトリガします。
- [[yii\web\View::head()|head()]]: このメソッドが HTML ページの
<head>
セクションの中で呼ばれなければなりません。 このメソッドは、ページのレンダリングが完了したときに、登録された head の HTML コード (リンク・タグ、メタ・タグなど) に置き換えられるプレースホルダを生成します。 - [[yii\web\View::beginBody()|beginBody()]]: このメソッドが
<body>
セクションの冒頭で呼ばれなければなりません。 このメソッドは [[yii\web\View::EVENT_BEGIN_BODY|EVENT_BEGIN_BODY]] イベントをトリガし、 body の開始位置をターゲットとする登録された HTML コード (JavaScript など) によって置き換えられるプレースホルダを生成します。 - [[yii\web\View::endBody()|endBody()]]: このメソッドが
<body
> セクションの末尾で呼ばれるなければなりません。 このメソッドは [[yii\web\View::EVENT_END_BODY|EVENT_END_BODY]] イベントをトリガし、 body の終了位置をターゲットとする登録された HTML コード (JavaScript など) によって置き換えられるプレースホルダを生成します。
レイアウトの中では、事前定義された二つの変数、すなわち、$this
と $content
にアクセスすることが出来ます。
前者は、通常のビューにおいてと同じく、[[yii\base\View|ビュー]] コンポーネントを参照します。
一方、後者は、コントローラの中で [[yii\base\Controller::render()|render()]] メソッドを呼ぶことによってレンダリングされる、コンテント・ビューのレンダリング結果を含むものです。
レイアウトの中でその他のデータにアクセスする必要があるときは、ビューの中でデータにアクセスする の項で説明されている「プル」の方法を使う必要があります。 コンテント・ビューからレイアウトにデータを渡す必要があるときは、ビューの間でデータを共有する の項で説明されている方法を使うことが出来ます。
コントローラでのレンダリング の項で説明されているように、
コントローラの中で [[yii\base\Controller::render()|render()]] メソッドを呼んでビューをレンダリングすると、レンダリング結果にレイアウトが適用されます。
デフォルトでは、@app/views/layouts/main.php
というレイアウトが使用されます。
[[yii\base\Application::layout]] または [[yii\base\Controller::layout]] のどちらかを構成することによって、異なるレイアウトを使うことが出来ます。
前者は全てのコントローラによって使用されるレイアウトを決定するものですが、後者は個々のコントローラについて前者をオーバーライドするものです。
例えば、次のコードは、post
コントローラがビューをレンダリングするときに @app/views/layouts/post.php
をレイアウトとして使うようにするものです。
その他のコントローラは、layout
プロパティに触れられていないと仮定すると、
引き続きデフォルトの @app/views/layouts/main.php
をレイアウトとして使います。
namespace app\controllers;
use yii\web\Controller;
class PostController extends Controller
{
public $layout = 'post';
// ...
}
モジュールに属するコントローラについては、モジュールの [[yii\base\Module::layout|layout]] プロパティを構成して、 モジュール内のコントローラに特定のレイアウトを使用することも出来ます。
layout
プロパティは異なるレベル (コントローラ、モジュール、アプリケーション) で構成されうるものですので、
Yii は舞台裏で二つのステップを踏んで、特定のコントローラで実際に使われるレイアウト・ファイルが何であるかを決定します。
最初のステップで、Yii はレイアウトの値とコンテキスト・モジュールを決定します。
- コントローラの [[yii\base\Controller::layout]] プロパティが
null
でないときは、それをレイアウトの値として使い、 コントローラの [[yii\base\Controller::module|モジュール]] をコンテキスト・モジュールとして使う。 - [[yii\base\Controller::layout|layout]] が
null
のときは、コントローラの祖先となっている全てのモジュール (アプリケーション自体も含む) を探して、 [[yii\base\Module::layout|layout]] プロパティがnull
でない最初のモジュールを見つける。 見つかったモジュールとその [[yii\base\Module::layout|layout]] の値をコンテキスト・モジュールと選ばれたレイアウトの値とする。 そのようなモジュールが見つからなかったときは、レイアウトは適用されないということを意味する。
第二のステップでは、最初のステップで決定されたレイアウトの値とコンテキスト・モジュールに従って、実際のレイアウト・ファイルを決定します。 レイアウトの値は下記のいずれかであり得ます。
- パス・エイリアス (例えば、
@app/views/layouts/main
)。 - 絶対パス (例えば、
/main
): すなわち、スラッシュで始まるレイアウトの値の場合。 実際のレイアウトファイルはアプリケーションの [[yii\base\Application::layoutPath|レイアウト・パス]] (デフォルトでは@app/views/layouts
) の下で探される。 - 相対パス (例えば、
main
): 実際のレイアウト・ファイルはコンテキスト・モジュールの [[yii\base\Module::layoutPath|レイアウト・パス]] (デフォルトでは [[yii\base\Module::basePath|モジュール・ディレクトリ]] の下のviews/layouts
ディレクトリ) の下で探される。 - 真偽値
false
: レイアウトは適用されない。
レイアウトの値がファイル拡張子を含んでいない場合は、デフォルト値である .php
を使います。
ときとして、あるレイアウトの中に別のレイアウトを入れたい場合があるでしょう。 例えば、ウェブ・サイトの別々のセクションにおいて、違うレイアウトを使いたいけれども、 それらのレイアウトは全て、全体としての HTML5 ページ構造を生成する同一の基本レイアウトを共有している、という場合です。 この目的を達することは、次のように、子レイアウトの中で [[yii\base\View::beginContent()|beginContent()]] と [[yii\base\View::endContent()|endContent()]] を呼ぶことで可能になります。
<?php $this->beginContent('@app/views/layouts/base.php'); ?>
... 子レイアウトのコンテントをここに ...
<?php $this->endContent(); ?>
上のコードが示すように、子レイアウトのコンテントは [[yii\base\View::beginContent()|beginContent()]] と [[yii\base\View::endContent()|endContent()]] によって囲まれなければなりません。 [[yii\base\View::beginContent()|beginContent()]] に渡されるパラメータは、親レイアウトが何であるかを指定するものです。 レイアウトのファイルまたはエイリアスのどちらかを使うことが出来ます。
上記のアプローチを使って、2レベル以上のレイアウトを入れ子にすることも出来ます。
ブロックを使うと、ある場所でビューコンテントを定義して、別の場所でそれを表示することが可能になります。ブロックはたいていはレイアウトと一緒に使われます。 例えば、ブロックをコンテント・ビューで定義して、それをレイアウトで表示する、ということが出来ます。
[[yii\base\View::beginBlock()|beginBlock()]] と [[yii\base\View::endBlock()|endBlock()]] を呼んでブロックを定義します。
すると、そのブロックを $view->blocks[$blockID]
によってアクセス出来るようになります。
ここで $blockID
は、定義したときにブロックに割り当てたユニークな ID を指します。
次の例は、どのようにブロックを使えば、レイアウトの特定の部分をコンテント・ビューでカスタマイズすることが出来るかを示すものです。
最初に、コンテント・ビューで、一つまたは複数のブロックを定義します。
...
<?php $this->beginBlock('block1'); ?>
... block1 のコンテント ...
<?php $this->endBlock(); ?>
...
<?php $this->beginBlock('block3'); ?>
... block3 のコンテント ...
<?php $this->endBlock(); ?>
次に、レイアウト・ビューで、得ることが出来ればブロックをレンダリングし、 ブロックが定義されていないときは何らかのデフォルトのコンテントを表示します。
...
<?php if (isset($this->blocks['block1'])): ?>
<?= $this->blocks['block1'] ?>
<?php else: ?>
... block1 のデフォルトのコンテント ...
<?php endif; ?>
...
<?php if (isset($this->blocks['block2'])): ?>
<?= $this->blocks['block2'] ?>
<?php else: ?>
... block2 のデフォルトのコンテント ...
<?php endif; ?>
...
<?php if (isset($this->blocks['block3'])): ?>
<?= $this->blocks['block3'] ?>
<?php else: ?>
... block3 のデフォルトのコンテント ...
<?php endif; ?>
...
[[yii\base\View|ビュー・コンポーネント]] はビューに関連する多くの機能を提供します。
ビュー・コンポーネントは、[[yii\base\View]] またはその子クラスの個別のインスタンスを作成することによっても取得できますが、
たいていの場合は、view
アプリケーション・コンポーネントを主として使うことになるでしょう。
このコンポーネントは アプリケーションの構成情報 の中で、次のようにして構成することが出来ます。
[
// ...
'components' => [
'view' => [
'class' => 'app\components\View',
],
// ...
],
]
ビュー・コンポーネントは、次に挙げるビュー関連の有用な機能を提供します。それぞれについては、独立のセクションで更に詳細に説明されます。
- テーマ: ウェブ・サイトのテーマを開発し変更することを可能にします。
- フラグメント・キャッシュ: ウェブ・ページの中の断片をキャッシュすることを可能にします。
- クライアント・スクリプトの取り扱い: CSS と JavaScript の登録とレンダリングをサポートします。
- アセット・バンドルの取り扱い: アセット・バンドル の登録とレンダリングをサポートします。
- 代替のテンプレート・エンジン: Twig、Smarty など、 他のテンプレート・エンジンを使用することを可能にします。
次に挙げるマイナーではあっても有用な諸機能は、ウェブ・ページを開発するときに頻繁に使用するでしょう。
どんなウェブ・ページにもタイトルが無ければなりません。通常、タイトル・タグは layout の中で表示されます。 しかし、実際においては、多くの場合、タイトルはレイアウトではなくコンテント・ビューで決められます。 この問題を解決するために、[[yii\web\View]] は、タイトル情報をコンテント・ビューからレイアウトに渡すための [[yii\web\View::title|title]] プロパティを提供しています。
この機能を利用するためには、全てのコンテント・ビューにおいて、次のようにタイトルを設定します。
<?php
$this->title = 'My page title';
?>
そして、レイアウト・ビューで、<head>
セクションに次のコードを忘れずに書くようにします。
<title><?= Html::encode($this->title) ?></title>
ウェブ・ページは、通常、いろいろな関係者によって必要とされるさまざまなメタ・タグを生成する必要があります。
ページ・タイトルと同じように、メタ・タグは <head>
セクションに出現して、通常はレイアウトの中で生成されます。
どのようなメタ・タグを生成するかをコンテント・ビューの中で指定したい場合は、下記のように、 [[yii\web\View::registerMetaTag()]] をコンテント・ビューで呼ぶことが出来ます。
<?php
$this->registerMetaTag(['name' => 'keywords', 'content' => 'yii, framework, php']);
?>
上記のコードは、ビュー・コンポーネントによって "keywords" メタ・タグを登録するものです。 登録されたメタ・タグは、レイアウトがレンダリングを完了した後でレンダリングされます。 すなわち、レイアウトの中で [[yii\web\View::head()]] を呼び出した場所に、次の HTML コードが生成されて挿入されます。
<meta name="keywords" content="yii, framework, php">
[[yii\web\View::registerMetaTag()]] を複数回呼び出した場合は、メタ・タグが同じものか否かに関係なく、 複数のメタ・タグが登録されることに注意してください。
ある型のメタ・タグのインスタンスが一つだけになることを保証したい場合は、このメソッドを呼ぶときに第二のパラメータとしてキーを指定することが出来ます。 例えば、次のコードでは、二つの "description" メタ・タグを登録していますが、二番目のものだけがレンダリングされることになります。
$this->registerMetaTag(['name' => 'description', 'content' => '俺が Yii で作ったクールなウェブ・サイトだぜぃ!!'], 'description');
$this->registerMetaTag(['name' => 'description', 'content' => '面白いアライグマに関するウェブ・サイトです。'], 'description');
メタ・タグ と同じように、リンク・タグも多くの場合において有用なものです。例えば、favicon をカスタマイズしたり、RSS フィードを指し示したり、OpenID を別のサーバに委任したり、等々。 リンク・タグも、[[yii\web\View::registerLinkTag()]] を使って、メタ・タグと同じような方法で取り扱うことが出来ます。 例えば、コンテント・ビューにおいて、次のようにしてリンク・タグを登録することが出来ます。
$this->registerLinkTag([
'title' => 'Yii ライブ・ニューズ',
'rel' => 'alternate',
'type' => 'application/rss+xml',
'href' => 'https://www.yiiframework.com/rss.xml/',
]);
上記のコードは、次の結果になります。
<link title="Yii ライブ・ニューズ" rel="alternate" type="application/rss+xml" href="https://www.yiiframework.com/rss.xml/">
[[yii\web\View::registerMetaTag()|registerMetaTag()]] と同じように、[[yii\web\View::registerLinkTag()|registerLinkTag()]] を呼ぶときにキーを指定すると、 同じリンク・タグを繰り返して生成するのを避けることが出来ます。
[[yii\base\View|ビュー・コンポーネント]] はビューをレンダリングする過程においていくつかのイベントをトリガします。 これらのイベントに反応することによって、ビューにコンテントを注入したり、エンド・ユーザに送信される前にレンダリング結果を加工したりすることが出来ます。
- [[yii\base\View::EVENT_BEFORE_RENDER|EVENT_BEFORE_RENDER]]: コントローラでファイルをレンダリングする前にトリガされます。
このイベントのハンドラは、[[yii\base\ViewEvent::isValid]] を
false
にセットして、レンダリングのプロセスをキャンセルすることが出来ます。 - [[yii\base\View::EVENT_AFTER_RENDER|EVENT_AFTER_RENDER]]: ファイルのレンダリングの後、[[yii\base\View::afterRender()]] を呼ぶことによってトリガされます。 このイベントのハンドラは、レンダリング結果をプロパティ [[yii\base\ViewEvent::output]] を通じて取得して、 それを修正してレンダリング結果を変更することが出来ます。
- [[yii\base\View::EVENT_BEGIN_PAGE|EVENT_BEGIN_PAGE]]: レイアウトの中で [[yii\base\View::beginPage()]] を呼ぶことによってトリガされます。
- [[yii\base\View::EVENT_END_PAGE|EVENT_END_PAGE]]: レイアウトの中で [[yii\base\View::endPage()]] を呼ぶことによってトリガされます。
- [[yii\web\View::EVENT_BEGIN_BODY|EVENT_BEGIN_BODY]]: レイアウトの中で [[yii\web\View::beginBody()]] を呼ぶことによってトリガされます。
- [[yii\web\View::EVENT_END_BODY|EVENT_END_BODY]]: レイアウトの中で [[yii\web\View::endBody()]] を呼ぶことによってトリガされます。
例えば、次のコードはページの body の最後に現在の日付を注入するものです。
\Yii::$app->view->on(View::EVENT_END_BODY, function () {
echo date('Y-m-d');
});
静的なページというのは、主たるコンテントのほとんどが静的なもので、 コントローラからプッシュされる動的なデータにアクセスする必要がないページを指します。
静的なページは、そのコードをビューに置き、そして、コントローラで次のようなコードを使うと表示することが出来ます。
public function actionAbout()
{
return $this->render('about');
}
ウェブ・サイトが多くの静的なページを含んでいる場合、同じようなコードを何度も繰り返すのは非常に面倒くさいでしょう。 この問題を解決するために、[[yii\web\ViewAction]] という スタンドアロン・アクション をコントローラに導入することが出来ます。 例えば、
namespace app\controllers;
use yii\web\Controller;
class SiteController extends Controller
{
public function actions()
{
return [
'page' => [
'class' => 'yii\web\ViewAction',
],
];
}
}
このようにすると、ディレクトリ @app/views/site/pages
の下に about
という名前のビューを作成したときに、
次の URL によってこのビューを表示することが出来るようになります。
http://localhost/index.php?r=site%2Fpage&view=about
view
という GET
パラメータが、どのビューがリクエストされているかを [[yii\web\ViewAction]] に教えます。
そこで、アクションはこのビューをディレクトリ @app/views/site/pages
の下で探します。
[[yii\web\ViewAction::viewPrefix]] を構成して、ビューを探すディレクトリを変更することが出来ます。
ビューはエンド・ユーザが望む形式でモデルを表現することに対して責任を持ちます。一般的に、ビューは
- 主として表示目的のコードを含むべきです。例えば、HTML、または、データをたどって書式化してレンダリングする簡単な PHP コードなど。
- DB クエリを実行するコードは含むべきではありません。そのようなコードはモデルの中で実行されるべきです。
$_GET
や$_POST
のようなリクエスト・データに直接アクセスするべきではありません。それはコントローラの仕事です。 リクエスト・データが必要な場合は、コントローラからビューにプッシュされるべきです。- モデルのプロパティを読み出すことが出来ます。しかし、それを修正するべきではありません。
ビューを管理しやすいものにするために、複雑すぎるビューや、冗長なコードをあまりに多く含むビューを作ることは避けましょう。 この目的を達するために、次のテクニックを使うことが出来ます。