ギターピックアップの種類と特徴

[記事公開日]2025/04/18 08:12
[最終更新日]2025/04/18 08:12

ギター・ピックアップ

ピックアップは弦振動を電気信号に変換する、エレキギターの心臓に例えられる重要部品。エレキギターのサウンドに影響する割合としては、「ピックアップ7に対してギター本体3」とも、「ピックアップ8に対してギター本体2」ともいわれます。さまざまなピックアップからさまざまなサウンドが得られますが、状態の良いヴィンテージピックアップは一個1万ドルに達することもあり、また技術革新や新しい発想から今でもイノベーションが重ねられています。そんなわけでここではピックアップに注目し、包括的な全体像から各ピックアップの特徴やメンテナンス法まで、いろいろなところを見ていきましょう。

小林健悟
ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

エレキギター博士
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エレキギター博士
コンテンツ制作チーム

webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。


  1. そもそも、ピックアップとは何か?
  2. ピックアップの歴史と進化
  3. ピックアップの主な種類
  4. ピックアップの位置(ポジション)について
  5. 主なピックアップ配列
  6. ピックアップの選び方
  7. 様々なピックアップ・ブランド
  8. ピックアップの調整やカスタマイズ
  9. ピックアップの交換にチャレンジする
  10. ピックアップを自作する
  11. ピックアップに関連するよくある質問

ピックアップとは何か?

ピックアップは何をし、どれほど重要なのか

ピックアップは「拾い上げる(pick up)」という語源の通り、弦振動を拾い上げ、電気信号に変換し、アンプに送り出す部品です。エレキギターの「エレキ」の部分において最も重要な部品であり、ピックアップの付いていないギターはエレキギターと呼ぶことができません。

「マイク」と呼ばれることもありますが、弦の「音」ではなく弦の「振動」を拾い上げるというところが、普通のマイクとは大きく異なるポイントです。特別な条件の重なったレアケースを除いては、ピックアップに向かってどれだけ叫んでもアンプから声が聞こえることはありません。

ギターサウンドにどれだけ影響するのか

例えばシングルコイルとハムバッカーでは、まったく違うサウンドが得られます。またギターのどこに設置されるかでも音が違い、ブリッジに近いリアピックアップは硬質な、ネックに近いフロントピックアップは柔らかな印象になります。セッティングでもサウンドは変化し、弦に接近させる(オンマイク)と音量のある太く重い音に、弦から遠ざける(オフマイク)と音量を抑えた繊細な軽い音になります。

モデルによってもサウンドキャラクターはさまざまで、出力や倍音構成、ピッキングへの追従性などいろいろな個性があります。比較的カンタンに交換でき、また元に戻すこともできますから、ギターのサウンドをアップグレードさせたり、より理想に近づけたりといったチャレンジがしやすいのが魅力です。

ピックアップの仕組み

ピックアップの基本構成は、「磁石」と「コイル」の組み合わせです。さまざまなピックアップは一様に、いろいろな磁石といろいろな配線をいろいろな巻き数で巻いたコイルとを合わせています。たったこれだけのもので、どのようにして弦振動を電気信号に変換するのか、その秘密は「電磁誘導」にあります。

「電磁誘導の原理」とは?

ジャズギター用ピックアップの大家ケント・アームストロング氏は、「ピックアップは、発電機だ」と仰います。エレキギターの弦振動によりピックアップ内で「電磁誘導(でんじゆうどう)」が起こり、交流電流が生まれるのです。この交流電流が電気信号としてアンプに送られ、ギターサウンドになります。

電磁誘導の基本原理は非常にシンプルで、「ファラデーの法則(1831年。磁場を変化させると、電場が生まれる)」にまとめられています。磁石から生じる磁力線の束を磁束と言い、磁束が展開された空間を磁場と言います。コイルと磁石を組み合わせた状態で、磁性体(鉄など)を持ってきて磁場を変化させると、コイルの中で電流が発生する、というわけです。

弦振動が電気信号になり、ギターサウンドになる。

磁場に影響させる必要があるため、エレキギターの弦は鉄など磁性体(磁石につっくつ物質)でできている必要があります。ピックアップの付近で弦を振動させると磁場が動いて、弦振動に応じた電気が発生する、というわけです。作られた電気信号はアンプに送られて増幅され、スピーカやヘッドホンを振動させて実際のギターサウンドになり、私たちの耳に届きます。ピックアップはその発明以来、さまざまな試行錯誤を経ていろいろな設計が考案され、いろいろなサウンドを生み出しました。

ピックアップの歴史と進化

ピックアップがどんな歴史を歩んできたか、戦前から現代までをざっと見していきましょう。そこには色々な人たちの試行錯誤とチャレンジがありました。

《1930年代》電磁誘導式ピックアップの発明

1939年ごろの雑誌広告 Wikipediaより引用 1939年ごろの雑誌広告。ボディトップの「点」は、ボディ内に収める巨大な磁石を固定するためのもの。

世界初のエレキギター用ピックアップはリッケンバッカーのラップスチールギター、「Frying Pan(1931年)」のものです。これは電磁誘導式ピックアップとしても世界初の成功例で、ほどなくして電気蓄音機(電蓄)に応用されました。また抱えて演奏するスパニッシュ・スタイルで商業的に成功した電気式ギターとしては、名手チャーリー・クリスチャン氏が愛用したギブソンES-150(1936年)が最初だと伝えられます。

しかしこの時代の磁石でじゅうぶんな磁力を得るにはかなり頑張らなければならず、Flying Panでは金属製のカバーを弦に被せ、ES-150ではボディ中央にまで達する大型の磁石を採用する必要がありました。

《1938年》アルニコ磁石の発明で、ピックアップの未来が開かれた

ここでピックアップに使われる磁石の定番、アルニコ磁石が発明されるまでの略歴を追ってみましょう。電磁誘導の発見以来モーターや通信で磁石が使われましたが、充分な磁力が得られず性能は頭打ちでした。この状況に対して1917年、東北大学の本多光太郎博士と高木弘博士により、世界初の実用レベルの強力な永久磁石「KS鋼」が発明されます。

1931年に東京大学の三島徳七博士が「MK鋼(鉄・ニッケル・アルミニウム)」を発明、本多光太郎博士はこのMK鋼にコバルト、チタンを加え、1934年に「NKS鋼」を発明、アルニコ磁石の基盤技術が完成します。

アメリカのGE社は1938年、NKS鋼に銅を加えたアルニコ磁石を発表。1943年に量産が始まり、まずレーダーや通信機など軍需品に使用されました。やがて民生用として普及、ピックアップに使われるようになったわけです。

《戦後》フェンダーとギブソンがピックアップのスタンダードとなる

1950年代にはさまざまなギターメーカーが独自のエレキギターを発表、さまざまなピックアップを開発しましたが、最終的にはフェンダーのシングルコイル、ギブソンのP-90とP.A.F.(ハムバッカー)という3つのピックアップがスタンダードなスタイルとして支持を集めました。

《1946~》フェンダーのシングルコイル開発

テレキャスターのピックアップ

のちに世界的なギターメーカー「フェンダー」を立ち上げることとなったレオ・フェンダー氏は、もとリッケンバッカーのギター設計者ドク・カウフマン氏と「K&F Manufacturing Corporation(1944年)」を設立、1946年に最初のエレクトリック・ラップスチール・ギターを発表します。

これを出発点に1950年、テレキャスターのご先祖様であるピックアップ1基の「エスクワイア」、ピックアップ2基の「ブロードキャスター」を発表、商業的に大成功を収めます。フェンダーのピックアップは、コイルの内側に磁石を立てる構造が特徴です。細く集中した磁界を展開することで、乾いたフェンダー・トーンが生まれます。

《1946~》ギブソンのシングルコイル「P-90」

ギブソンP-90

1930年代式ピックアップの後継機として1946年に誕生したのが、ギブソンの定番シングルコイル「P-90」です。ホロウボディにマウントする目的のドッグイヤー型が普及し、1952年にはソリッドボディ向けに本体の高さ調節も可能なソープバー型が開発されます。P-90はコイルの底面に磁石を配置し、金属製のポールピースを立たせるのが基本構造で、広い磁界による丸みのあるサウンドが持ち味です。

《1957~》ギブソンのハムバッカー「P.A.F.」

PAFピックアップ

シングルコイルにどうしても付きまとうハムノイズを除去するべく1957年に誕生したのが、正式名称「P-490」、「P.A.F」の愛称で知られるハムバッカー・ピックアップです。逆相のシングルコイルを直列につなぐというアイデアで、音量を倍化しつつハムノイズを相殺させます。コイル底面に磁石を配置する基本構造はP-90を引き継いでいましたが、二つのコイルの巻き数の違いなどいろいろな偶然が重なり、魔法のようなサウンドが生まれました。

《1970年代~》ピックアップメーカーの台頭

Super Distortion DiMarzio「Super Distortion」

それまでピックアップはギターメーカーがおのおの開発するものでしたが、1970年代になってピックアップを専門とするメーカーが登場、数々のイノベーションと共に支持を集めていきます。こうしたピックアップメーカーが出てくることで、ギター本体の設計に専念するギターメーカーも登場していきます。

DiMarzio(early 1970s~)

1970年代初頭、ピックアップメーカーDiMarzioを立ち上げる前のラリー・ディマジオ氏は世界初の交換用ピックアップ「Fat Strat(現在のFS-1)」を開発、次いで定番機種となるハムバッカーの名機「Super Distortion」を開発します。のちにDiMarzioはピックアップのトップブランドとして数々の技術革新を果たし、ギターメーカーやアーティストとのコラボレーションを重ねています。

Seymour Duncan(1976~)

Seymour Duncan(セイモア・ダンカン)は、ピックアップも含めて修理&改造したテレキャスターをかのジェフ・ベック氏が使用したことで名を上げたセイモア・ダンカン氏が1976年に立ち上げたブランドです。この改造テレキャスターに載せられたリアハムバッカーは「JB Model」として現在も定番の位置に君臨しています。

EMG(1976~)

「アクティブ・ピックアップ」という新機軸を打ち出したのがEMGです。内蔵するプリアンプを駆動させるためには電池が必須ですが、ロー・インピーダンス化によって強化されたサウンドはノイズに強く、高音域の響きが豊かで、長いシールドでも劣化しにくいという高いオーディオ性能が得られます。

Lace Sensor(1985~)

プリアンプに頼らず、パッシブのままノイズを大幅にカットする「ノイズレス・ピックアップ」というイノベーションを果たしたのが、「Lace Sensor(レースセンサー)」です。発表した1985年から1996年までフェンダーのギターに搭載され、ジェフ・ベック氏やエリック・クラプトン氏のシグネイチャーモデルにも採用実績があります。

現代の技術革新

Alumitone Humbucker LACE「Alumitone Humbucker」

ピックアップの技術革新はとどまるところを知らず、次々と新たなチャレンジが積み上げられています。特に話題になった技術革新を3つ見ていきましょう。

LACE「Almitone(2007~)」

レースセンサーで一世を風靡したLACE社の次なるイノベーションは、一見するとコイルの無い「Almitone(アルミトーン)」です。コイルに使用する銅線をアルミに置き換えることを第一に、電圧駆動だった従来のピックアップの対極を成す「電流駆動」で設計され、パッシブのままローインピーダンス化を達成しました。

Fishman「Fluence(2013~)」

「Fluence(フルエンス)」は、アコースティックギター用ピエゾピックアップで特に名高いFishmanのイメージを180度ひっくり返したピックアップです。48枚のプリント基板を重ねた「Fluence Core(フルエンス・コア)」をコイルに使用、無上の静粛性と単体での音色切り替えが可能な多機能性を両立させています。

EVERTONE PICKUP(2022~)

EVERTONE(エヴァートーン)は「エンベロープカーブのデザイン」という全く新しいコンセプトで設計する、世界初のピックアップです。エンベロープカーブがデザインされた音はグルーヴが生まれやすく、バンドアンサンブルにおいては他のパートと衝突しにくいという、これまでにないメリットが享受できます。

ピックアップの主な種類と特徴

一言でピックアップと言っても様々な種類のものが存在します。それぞれどんな特徴があるのか、見ていきましょう。

品目 ポット抵抗値(推奨) 特徴
フェンダー型シングルコイル 250kΩ 密集した磁界を展開。輝きのある鋭い音。
ギブソン型シングルコイル(P-90) 300kΩ 広い磁界を展開。鋭さと甘さを両立。
シングルサイズ・ハムバッカー 500kΩ ハムバッカーのパワーと音質を持ちながら、ややブライト。
PAF型ハムバッカー 500kΩ 力強く太い、高密度な音。
アクティブ・ピックアップ 25kΩ ノイズや音質劣化に強い。ハムでもシングルでもポット抵抗値は同じ。
ピエゾ・ピックアップ プリアンプ仕様に準拠 アコースティックギターのサウンドが得られる。
各ピックアップの特徴まとめ

シングルコイル・ピックアップ

Model 330 MG Rickenbacker「Model 330 MG」

「シングルコイル・ピックアップ」はその名の通り、1基あたりコイルを1つ使用するピックアップ。最も基礎的なピックアップであり、フェンダーが有名ですが他にもリッケンバッカー、モズライト、グレッチ、ギブソンなどさまざまなメーカーで採用されてきました。

材料や巻き数のほか磁石の位置、コイルの幅や高さで音のキャラクターは分かれるものの、総じて音色はピュアかつストレートで、トーンやEQの工夫、またファズで飽和させるなどの工夫でズ太いサウンドもカバーできます。「ハムノイズが出る」という弱点を克服するチャレンジが各社で展開される一方で、昔ながらの設計を守るヴィンテージ系のシングルコイルも熱く支持されています。

《王道》フェンダー型のシングルコイル

American Professional II Stratocaster Fender「American Professional II Stratocaster」

シングルコイルの分野で最も一般的に普及していると見られるのはストラトキャスターに代表されるフェンダー型で、コイルの内側に磁石を立て、磁石自体をポールピースにします。磁石は欠けやすいのでネジとして使う事はできませんが、弦ごとの音量調節ができない代わりに細く集中した磁界を展開し、特に高音域が豊かに明るく響くクリアなサウンドを獲得しています。ギブソン型のハムバッカーとルックス的に共存しやすいことも手伝い、さまざまなブランドのギターの心臓部として採用されています。

太く甘い音色が持ち味「P-90」

Les Paul Special TV Yellow Gibson「Les Paul Special TV Yellow」

ギブソンのシングルコイル「P-90」は、フェンダーのテレキャスター(1950年)に先立つ1946年に誕生、今なお愛用者の絶えない熱い支持を誇ります。ホロウボディにも設置できる「ドッグイヤー」型とソリッドボディに設置する「ソープバー」型があり、ソープバー型はピックアップ本体の高さ調節が可能です。

音を拾う原理こそフェンダーと同じですが、P-90はコイルの底面に磁石を横たえ、ネジ式のポールピースを立てるという基本構造にフェンダー型シングルコイルとの違いがあります。この構造により広い磁界を展開し、フェンダー型と異なる甘さと太さを帯びたサウンドが得られます。また、ポールピースの高さを調節することで弦ごとの音量を揃えることもできます。

ハムバッキング(ハムバッカー)・ピックアップ

Les Paul Custom Gibson Custom Shop「Les Paul Custom, Light Aged Earl Grey」

ハムバッカー(ハムバッキング)・ピックアップは、「1対のコイルでハムノイズを相殺させる」というアイデアで作られたピックアップです。また2つのコイルを直列につないでいることから、シングルコイルと比べて倍の音量が得られます。現在ではP.A.F.に代表されるギブソン型が圧倒的にスタンダードですが、ほぼ同時期に登場したグレッチの「Filter’Tron(フィルタートロン)」も、同じ原理を利用したハムバッカーです。

並んだ二つのシングルコイルで弦振動を読み取る、厳密に言えば2か所の弦振動を読み取るのもシングルコイルとの大きな違いです。その効果で高域の響きは若干丸くなり、相対的に中高域の存在感が際立つ甘く太いサウンドが得られます。このキャラクターはドライヴサウンドとの相性が特に良好で、ハードロック、パンクロック、メタル系の低音の効いた太い歪みを作り出すことができます。

シングルコイル・サイズのハムバッカー

Ibanez JBM9999 Ibanez「JBM9999」
リアはギブソン型ハムバッカー、フロントがシングルサイズのハムバッカー。

「楽器本体はそのままで、ストラトキャスターにハムバッカーを付けられないか」という考えで考案されたのが、シングルコイル・サイズのハムバッカー。楽器本体への加工なく取り付けられること、必要とあらば元の状態に戻すことができること、この2点が大きなメリットです。

シングルコイルと同じサイズの本体に1対のコイルを収めており、基本構造は完全にハムバッカーと同じ。P.A.F.型ハムバッカーと比べてコイルの間隔が狭いことから完全に同じ音にはなりませんが、モデルによっては標準サイズのハムバッカーを凌駕する出力を持ちます。また逆に、この構造を純粋にハムバッキング効果を得るためだけに使用する低出力モデルもあり、ルックスだけではどちらか判別できないステルス性も面白さの一つです。

《裏技》「コイルタップ」など特殊配線でサウンドバリエーションを増加できる

現代仕様のハムバッカーでは、特殊な配線により通常とは異なるサウンドを得ることができます。その代表例が「コイルタップ」で、片側のコイルのみを使用することでシングルコイル同様のサウンドを得ます。しかしもう片方のコイルを使わないので、ハムバッキング効果は得られません。
次に用例の多い配線が「パラレル」で、二つのコイルを並列につなぎかえることにより、出力を抑えたブライトめの音色が得られます。こちらは両方のコイルを使用するため、ハムバッキング効果が得られます。
このほか位相を反転(フェイズ)させたり抵抗やコンデンサを挿入したりと、さまざまな特殊配線が考案されています。

電池で駆動する「アクティブ・ピックアップ」

E-II「ARROW FR」 E-II「ARROW FR」

EMGに端を発するアクティブ・ピックアップは、内蔵するプリアンプにより電気信号を「ロー・インピーダンス」化するのが最大の特徴です。ロー・インピーダンス化した信号は電気抵抗の影響を受けにくくて劣化しにくく、また外来ノイズの影響を受けにくいのがメリット。高音域のロスが抑えられることから、高域の響きが豊かでクリアな音色が持ち味です。

アクティブ・ピックアップはスタジオミュージシャン必携のピックアップとして普及しましたが、現在ではディストーションサウンドとの蜜月とも呼べる相性の良さから、ヘヴィ路線のプレイヤーに特に熱く支持されています。

電池でプリアンプを駆動させる。

アクティブ・ピックアップの駆動には電池が必要。近年ではUSB充電式のバッテリーを使用するモデルも登場していますが、四角い9V電池(006P)を使用するモデルが大多数です。アウトプットジャックが起動スイッチになっており、ギターにシールドを挿すと同時に電源が入ります。

アクティブ・ピックアップはプリアンプと一体化していますから、電池が切れたら音は出なくなってしまいます。ユーザーには電池残量を気にかけること、予備の電池を携行することが求められます。

他社製ピックアップとのミックスは、おすすめできない。

アクティブ・ピックアップをギターに搭載する時は「フロント、リアともにEMG」のようにピックアップメーカーを統一するのが基本です。インピーダンスのミスマッチが起こるので、例えば電池を使用しないパッシブ・ピックアップとのハーフトーンは高確率で使用に耐えない音になります。また、プリアンプの設計が各社各様ですから、ブランドの異なるアクティブ・ピックアップを組み合わせるのも非推奨です。

エレアコで使用される「ピエゾ・ピックアップ」

SE Custom 24 Semi-Hollow Piezo PRS「SE Custom 24 Semi-Hollow Piezo - 2025」

ピエゾ・ピックアップは石英など特定の結晶に圧力を加えると電荷が発生する「圧電効果(ピエゾ効果)」を利用したピックアップで、弦振動が電場を変化させることで電流が発生します。クッキリとしたアタックの強い音色が持ち味で特にエレアコで盛んに使用されますが、磁場を利用せず弦が鉄製でなくても使えることからウクレレやクラシックギターにも使われます。

エレキギターではアコースティックサウンドを得るためブリッジに仕込まれるモデルがあり、またデジタルモデリングギターの振動検出用に使われることもあります。

ピックアップの位置(ポジション)について

弦振動の振幅 ピックアップが設置される位置は、弦振動の振幅との深い関係が。

最初期のストラトキャスターは同じ設計のシングルコイル・ピックアップを3か所に、最初期のレスポールは同じ設計のハムバッカー・ピックアップを2か所に設置しています。同じ設計のピックアップなのに、切りかえると確かに音色が変わります。これは、ピックアップを設置するポジションに重要な意味があるからです。

私たちの耳は振動する弦全体の音を聴きますが、ピックアップは自分の目の前の振動だけをキャッチします。弦の振幅は中央が最大で、両端に行くに従って小さくなっていきます。ピックアップにとっては設置されるポジションによって目の前の振幅に大きな違いが出て、これがサウンドの違いに反映されます。

フロント(ネック側)とリア(ブリッジ側)の音の違い

マウント位置 上:ESP「HORIZON-III」、下:Charvel「Pro-Mod San Dimas Style 1 HH FR」 縮尺を揃えて2台を並べてみた。同じHH配列でもフロント/リア共に微妙にマウント位置が異なる。

フロントピックアップは振幅の大きい弦振動をキャッチします。この影響で音量の大きい、倍音成分の多い、厚みと柔らかさを帯びたウォームな音になる傾向があります。メロディにもコードにも使用されますが、透明感もあるため柔らかく包みこむようなニュアンスを持たせることもできます。

リアピックアップは振幅の小さな弦振動をキャッチします。この影響で倍音成分の整理されたタイトかつ硬質な音になる傾向にあります。高密度な響きがあるためドライブサウンドとの相性が良く、特にパワーコードで音の壁を作りたい場面はリアピックアップの独壇場です。

ピックアップの位置は、ギター本体の仕様や設計コンセプトにも影響されます。例えば24フレット仕様のフロントピックアップは22フレット仕様より若干ブリッジに近くなり、ちょっと引き締まった音色になります。リアピックアップについてはギターの開発コンセプトにより、ブリッジ間近まで寄せて思い切り硬質にすることも、標準位置よりブリッジから遠ざけて若干和らげることもあります。

センター・ピックアップの存在意義は?

GT-PRO Deluxe Steinberger「GT-PRO Deluxe」

センター・ピックアップはフロントとリアのちょうど中間地点に設置されるのが普通で、フロントとリアの中間のキャラクターを持ちます。ストラトキャスターでは、これを利用したハーフトーンを2タイプ手に入れられるのが強みになります。HH配列のセンターにシングルコイルを追加したHSH配列では、フロント&リアのパワフルなハムバッカーに、センターのシングルコイルという幅広いサウンドバリエーションが手に入ります。

主なピックアップ配列

世の中にはさまざまなピックアップ配列がありますが、単一構成型と異種混合型、そして一意専心型に大別して考えてみましょう。

《単一構成型》同じスタイルのピックアップを並べた配列

単一構成型ピックアップ配列

1960年代までに開発されたトラッドなエレキギターのほとんどが、SSSやHHなど同じスタイルのピックアップを並べた「単一構成型」のピックアップ配列を採用しています。各ピックアップの音量が均一でポジションごとのキャラクターに統一感もあるため、オーバードライブなど出力に影響されるエフェクターも、ポジションを気にせずに使いやすいのがメリットです。

《異種混合型》異なるピックアップを並べた配列

異なるピックアップを並べた配列

SSHやHSHなど異なるピックアップを並べた「異種混合型」の配列はコイルタップなど特殊配線を採用する例も多く、鋭く繊細な音から太く力強い音まで幅広くカバーできます。エフェクターや演奏内容など目的に合わせてピックアップを選択して使うための配列なので、ポジションごとにキャラクターの違いや音量差がそれなりにあります。

《一意専心型》ピックアップを1基のみ搭載する

1基のみ搭載

1Sや1Hのようにピックアップを1基しか載せない「一意専心型」は、演奏したい音楽や出したいサウンドが絞られているプレイヤーのための、特殊な配列です。演奏に専念できるのがメリットで、ボリュームやトーン、またエフェクターの操作、あるいはピッキングのタッチによってサウンドバリエーションが得られます。

ピックアップの選び方

ピックアップは比較的カンタンに交換でき、また元に戻すこともできます。理想の音を求めるギタリストは、いろいろなピックアップを試しながら、自分の要求にマッチするピックアップを求めて旅を続けるものです。ぜひ、自分のギターにマウントすべきピックアップが何かを考えてみてください。現状に不満が無ければよし、もし満たされない何かがあったら、今がその旅に出る時です。ブランドやアーティストのイメージ、演奏動画など判断材料はさまざまですが、ここではピックアップの主要スペック、磁石と抵抗値に注目してみましょう。

《磁石》の種類により、音量とサウンドは異なる。

アルニコ磁石の材料となる、アルミとニッケルとコバルト。

ピックアップに使われる磁石は主にアルニコ磁石とセラミック磁石で、アルニコは3、2、4、5、8の5種類が使われます。アルニコ5がスタンダードで、単にアルニコと言われたらだいたい5です。一方でセラミック磁石にも、材料やグレードの種類があります。しかし音色への影響は少ないとみなされており、仕様書にその種類が書かれることはありません。磁石の種類によるピックアップへの影響について、「磁力」と「倍音構成」という二つの視点で見ていきましょう。

磁石の種類により磁力は異なり、出力に影響する。

磁石の強さはピックアップの出力に影響し、弱ければ低出力に、強ければ高出力になります。磁力が強ければそれだけ磁束密度が高く、弦によって作られる磁界の変化も大きくなります。すると電磁誘導の効果も大きくなり、より強い電流が発生、出力が上がる、という仕組みです。

磁石が発する磁力は、素材と寸法で強さが決まります。5種類のアルニコは材料の配分が微妙に異なり、3が最弱で、残りは番号順で強くなっていきます。セラミック磁石は強く、同じ寸法ならアルニコ最強の8よりも強力です。

磁石の大きさも重要な要素で、例えばグレッチ「Filter’Tron」の磁石はギブソン「P.A.F.」より大きな磁石を使っていたと伝えられます。セイモア・ダンカンでは、セラミック磁石の大小でDuncan Custom(SH-5)とDuncan Distortion(SH-6)という二つのモデルをリリースしています。

磁石の材料は、倍音構成に影響する

例えば5種類のアルニコならば、3はコバルトを含まず、4は逆にコバルトの配分が最大で、8はチタンを少量含みます。こうした材料の配分が倍音構成に影響します。

  • AlNiCo 3:クリアで温かみのある低域、充実した中域、ソフトな高域
  • AlNiCo 2:柔らかく明瞭な低音域、広く豊かな中音域、甘い高音域
  • AlNiCo 4:2よりタイトな低域、均一な中域、2より明るく5より甘い高域
  • AlNiCo 5:タイトな低域、わずかに削られたバランスの良い中域、パワフルでシャープな高域
  • AlNiCo 8:太くタイトな低域、存在感のある中域、太くスムーズな高域

だいたい以上のような傾向があると言われています。一方でセラミックはこうした倍音への影響がほぼ無く、低音から高音までバランス良く響き、高域の反応が鋭い「速い音」になると言われます。

《抵抗値》は出力だけでなく、サウンドにも影響する

仕様書に書かれることの多い直流抵抗(DC Resistance)はコイルに巻かれる銅線の長さや太さで決まり、同じ銅線で抵抗値が高ければそれだけ巻き数が多いと考えることができます。巻き数が多いと電磁誘導で発生する電流量も多くなりますから、ピックアップの出力は上がります。

しかし、出力だけではありません。巻き数が増えると、それに従って高域が削られるという現象が起こります。超スーパー高出力のピックアップを作ろうとしてバームクーヘンのようなコイルを巻いたら、輝きの無いぶっとい低音しか出なかった、なんてことが起こりえるわけです。これにはコイルを巻いたことで生じる「インダクタンスの上昇」が関与します。

巻けば巻くほど、高域は丸くなる。

巻いてもまっすぐでも、銅線の直流抵抗に変化はありません。しかし電気を通す時に発生する磁場は、巻いた時の方が密集しますからより強力になります。この現象が誘導係数、インダクタンスを上昇させるのです。インダクタンスは電流の流れる速さに影響し、大きくなるにつれて高域をカットしていき、相対的に中低域を強調していきます。

ただし、このインダクタンスはコイルの巻き数にだいたい連動するため、直流抵抗と分けて表示する意味がほぼありません。キツく巻き付けるかユルく巻き付けるかで上下することもありますが、そこから先はメーカーとしては秘匿したいレシピになるわけで、仕様書にインダクタンスまで表示されることはあまりありません。

以下、タイプ別に抵抗値のだいたいの目安を紹介します。

ピックアップのタイプ 抵抗値(kΩ) サウンド傾向
ヴィンテージ系ストラト 5~6 クリアでブライト
モダン系ストラト 6~8 高音域が強調されつつも力強い
ヴィンテージ系ハムバッカー 7~9 柔らかくバランスが良い
モダン系ハムバッカー 9~ 高出力でパワフル

【サウンド比較】ピックアップのコイルの巻き数によって音はどう違う?異なる5つの回転数のPUを作って比べてみた!

様々なピックアップ・ブランド

国内メーカーはさほど多くありませんが、海外にはさまざまなピックアップのブランドが台頭し、覇を競っています。ピックアップを主軸に置くブランドも自社のギターに載せるピックアップを販売しているブランドも、自社のピックアップを載せるためにギターまで作ったブランドもあります。

ピックアップを供給するギターメーカー

ピックアップを主軸とするブランド

日本のピックアップ・ブランド

ピックアップの調整やカスタマイズ

ピックアップについていろいろ見てきましたが、ここでは自分のギターに載っているピックアップがポテンシャルを発揮しているか、またどうやって理想に近づけるか、そんな観点で調整やカスタマイズについて見ていきましょう。

ピックアップの高さ調整

ピックアップの高さ 弦とピックアップ間の距離によってサウンドが変化する

弦とピックアップとの距離は、ギターサウンドの迫力や繊細さのほか各弦の音量バランスも左右します。ピックアップの高さが適切であれば、全弦がバランスよく響き、ピックアップの性能を活かした音色が得られるわけです。状態のチェックはなるべく新しい弦で、弦高オクターブ・ピッチを整えた状態で行なうのがおすすめです。

ピックアップの高さが適切な状態とは?

ピックアップの高さが適切なギターは、

  • 全弦の音量バランスが等しい、もしくは可能な限り整っている
  • ピックアップを切り替えても、音量に目立った差がない
  • 弦が自然に振動し、明瞭な響きが得られる

という状態です。アンプをフラットなクリーンやメインで使うクリーンに設定し、スケールやアルペジオなどで各弦を1本ずつ鳴らしてみましょう。1弦と6弦(芯線)では弦振動のエネルギーに4~5倍ほどの差がありますが、ピックアップの高さが適切であれば各弦の音量差はさほど気になりません。またSSHやHSHなど異種混合の配列でなければ、ピックアップ同士の音量差はあまり目立たない状態が理想的です。

ピックアップが高すぎて弦に接近しすぎると、ピックアップの磁力が弦振動に影響し、サスティンを損なったり音が濁ったりします。

ピックアップ本体の高さ調節

高さ調節 ストラトキャスターでのピックアップの高さ調節方法

ピックアップを弦に近づける(オンマイク)と太くパワフルなサウンドに、遠ざける(オフマイク)と繊細なサウンドになります。各弦の音量差を埋めるためには1弦側が高くなるよう、少し傾いた状態が良いです。ピックアップ同士の音量差を調整するには、まずリアピックアップの高さを基準にするのがおすすめ。フロントピックアップを基準にしてしまうと、リアピックアップを過剰に高くしなければバランスが取れません。

ポールピースの高さ調節

ポールピースがネジになっているピックアップでは、各弦の音量バランスを整えることができます。このときポイントとなるのは3弦と4弦です。4弦の芯線は3弦よりも細いため、ピックアップがキャッチする弦振動のエネルギーは3弦の方が強くなりがちです。

配線の改造

配線をいじることで、より理想的なサウンドを出したり新しいサウンドバリエーションを獲得したりできます。これについては歴史上、無数とも言えるチャレンジが重ねられています。さすがに語り尽くすことはできませんから、ここではパッシブピックアップにおけるボリュームとトーンのポットに絞って紹介します。

注目するのはその「抵抗値」で、抵抗値が低いと高音域は丸く抑えられます。高音の響きやすいシングルコイルには低い抵抗値、甘い音の出やすいハムバッカーには高い抵抗値のポットを選ぶのが普通。こだわる人はコントロールポットにテスターを当てて抵抗値の個体差を探ることもあり、もう少しトレブルが欲しい、もう少し甘くしたい、と言った方向付けに利用します。なお、ピックアップごとの一般的な抵抗値は以下の通りです。

  • ストラト用シングルコイル:250kΩ
  • P-90:300kΩ
  • ハムバッカー:500kΩ
  • ヴィンテージ・テレキャスター:1MΩ

ピックアップカバーを外す

フロントはカバード、リアはオープン Gibson Custom Shop「Les Paul Custom, Chrome Hardware Andromeda Black」 フロントはカバード、リアはカバーを外したオープンタイプ。

ギブソン型ハムバッカーの金属製カバーは、コイルの保護とノイズ除去のためにつけられています。特に外部の電界を遮蔽する金属製シールド「ファラデーケージ」として働きますが、カバー自体に電磁誘導による渦電流(かでんりゅう)が起こり、高音域が少し吸収されます。このハムバッカーに対し、ロックミュージックが烈しさと派手さを増していく流れの中で、カバーを外すという改造が流行しました。カバーを外す改造は比較的カンタンで、最低限はんだごてとドライバーがあれば遂行できます。

カバーを外すことで高域のロスが無くなり、ハムバッカーは明るく派手なサウンドを生みだします。この改造が流行したことで、最初からカバーのないハムバッカーも作られるようになります。そして従来のスタイルに「カバード・タイプ」、カバーを外したものに「オープン・タイプ」という新たな呼び方が生まれました。

ピックアップの交換にチャレンジする

ピックアップ交換

ピックアップ交換は、理想の音への近道だと言われます。今のピックアップを調整しても、どうしても理想に届かない、もっとパワーが欲しい/パワーを抑えたい、そうなったら理想の音が出そうなピックアップに交換してしまいましょう。違う形状のピックアップに替えるのでなければギター本体への加工もほぼないので、ぜひ自力での交換にチャレンジしてみてください。

交換時の注意点

どんな道具が必要か、どんな作業になるのかをチェックする

電気工作が初めての人は、まず必要な道具類を揃える必要があります。ピックアップ交換をテーマにしたレポート記事や動画をチェックすることで、だいたいどんな作業をして、どんな道具が必要なのかを読み取ることができます。ドライバーとはんだごては必須で、テスターは基礎的な通電チェックや位相の確認、抵抗値の測定などさまざまな用途に活躍します。

三和電気計器(sanwa)アマログマルチテスター「SP-18D」

sanwa SP-18D

各社のテスターは想定される用途に合わせたモデル展開をしています。エレキギターのメンテナンスに使うなら、抵抗値(Ω)の測定レンジがピックアップ抵抗値(5KΩ~20KΩ程度)やコントロールポットの抵抗値(250KΩ~1MΩ)をカバーでき、ピックアップの位相確認のため0.1V~2V程度の低い直流電圧(DCV)を測定できることが必要です。また位相確認では、数値で表示されるデジタルテスターよりも針の動く方向で直感的に読み取れるアナログテスターの方が有利です。

sanwa「SP-18D」は以上の条件をすべて満たすアナログテスターで、針の示す値を正確に読み取れるミラースケールを装備、一体型のケースは傾斜スタンドとしても使えます。日本製のプロ仕様ですが、高すぎない価格設定に抑えられているところも魅力です。

ピックアップ相互の音量差を把握しよう

SSSやHH、SSHなど、セットになっているピックアップを利用する場合には音量差の心配はありません。しかしリア・ピックアップだけ交換したり、異なるブランドのピックアップを混ぜたりする場合には、ピックアップ同士の音量差がどうなるか読みにくいので注意が必要です。

テスターを使えばピックアップの直流抵抗を測定でき、出力を想定することができます。しかし正確に測るためには、いったんピックアップの配線を回路から外す必要があります。

ピックアップを自作する

【サウンド比較】自作ピックアップと、元々ストラトに搭載していたピックアップ、比べてみた!!

若かりし頃のエドワード・ヴァン・ヘイレン氏は、ES-335のP.A.F.を自分で巻き直した自作ハムバッカーを使い、数々の名演を残しました。ピックアップは自分で作っちゃっても良いのです。高級ピックアップの紹介に「手巻き」とよく表示されますが、これは実際に手でぐるぐると巻いているわけではありません。モーターでボビンを回転させ、巻き付ける銅線を手指でコントロールするのです。設備と材料さえあれば、手巻きピックアップは簡単に作れます。

ピックアップメーカーを立ち上げた創始者たちの中には、ミシンやテープレコーダーなど家電品の部品からコイルを巻く装置を自作した猛者も少なくありません。しかし現代ではコイルを巻く「ワインディング・マシン」が一般に販売されています。コレを買うのはなかなかの胆力が必要ですが、意外とリペアショップが持っていることもあります。

ピックアップに関連するよくある質問

Q&A

Q:「シャーー」っていうノイズは、どうやったら消えますか?

A:アースの確認と回路のアップグレード、そしてシールド処理がおすすめです。

音量を上げたり歪ませたりしたときに大きくなる「シャーー」というノイズは、一般的にホワイトノイズやヒスノイズと呼ばれます。この原因にはいくつかあり、エフェクターやシールドに原因がある場合もあります。

  • 電子回路の熱雑音:抵抗やトランジスタなど電子部品が熱を持つことで電子の熱運動が起き、微小な電圧変動が発生してノイズになる
  • 高周波ノイズ:エフェクターやアンプ内の電源、また付近の電子機器から高周波成分が混入してノイズになる
  • アース不良:アースに逃がすべきノイズが信号に混入してしまう
  • 増幅器のゲインによるノイズ増幅:ゲインを上げることでノイズまで増幅される

だいたい以上の4つが主な原因で、ギター側で特にチェックする必要があるのはアース不良の確認と高周波ノイズで、アースの確認だけで解決することもあります。回路の部品をグレードの高いものに交換し、適切なハンダ付けをするのがその次です。アッセンブリ・キャビティ内に導電塗料を塗ったりアルミテープを貼ったりして、ノイズを遮断する(シールド処理)のも効果的です。

Q:シングルからハムに交換するとき、ボリュームとトーンのポットも交換した方が良いですか?

A:交換が推奨ですが、一考の余地があります。

レスポールのようにピックアップごとにボリュームとトーンが備わっているギターの場合、ピックアップごとに適切な抵抗値のポットを使うのがベストです。

ストラトキャスターのような1ボリュームのギターでリアだけハムバッカーにする場合は、いろいろな選択肢があります。ボリュームポットの抵抗値がシングルコイルに合わせた250kΩのままだと、他のピックアップの音を維持できますがリアハムバッカーが本来の音より甘くなりすぎる可能性があります。新しく乗せ替えたリアハムを活かすために500kΩのポットに交換すると、他のシングルコイルの高域が持ち上がり、以前と同じ音は得られません。トーンのコンデンサーも交換することで、良好な状態を模索することが可能です。

ある程度は割り切るのが良いですが、これ以上追求するにはプロのリペアマンに相談するのが一番です。

Q:ピックアップの高さはどのくらいが理想ですか?

A:1弦の最終フレットを押さえた状態で、リアピックアップと弦との距離が2~3mmほどが目安です。

音量バランスのため、低音弦側はもう少し離します。そんなに高いポジションを弾かないと決めているなら、自分の使用する最も高いポジションに合わせるのも良いでしょう。

また、リアピックアップの高さを基準にしてから、他のピックアップの高さを調節するのがおすすめです。

Q:異なるメーカーのピックアップを組み合わせると、位相ズレが起こることがありますか?

A:はい、起こりえます。

異なるメーカー間では、配線の極性(ホット/コールド)が異なる場合があります。A社製のフロントとB社製のリアを説明書通りに配線したのに、ミックスポジションでフェイズアウトが起こって細い音になってしまう、ということも日常茶飯事です。この場合、どちらかのピックアップのホットとコールドを入れ替えるだけで一件落着します。


以上、ピックアップをテーマに仕組みや歴史、類型やメンテナンス法など様々な観点を見ていきました。サウンドを決定する非常に重要な部品なので、ぜひいろいろとチェックしてみてください。なお、冒頭で述べましたようにエレキギターのサウンドに影響する割合としては、「ピックアップ7に対してギター本体3」とも、「ピックアップ8に対してギター本体2」ともいわれます。しかしこれは、決してギター本体の価値を卑下している意見ではありません。音の立ち上がりやサスティンといったエンベロープ的な要素はギター本体の音響特性によるものが大きいですし、ネックの握り心地やボディの抱え心地といった演奏性、またボディシェイプやカラーリングと言ったルックス的な要素が演奏者に及ぼす影響は余りにも甚大です。良い音は人間が出すのであり、良いギターはその人間の最高のパフォーマンスを弾き出すのです。ぜひ良いギターに良いピックアップを載せて、素晴らしいサウンドを鳴り響かせてください。


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