過酸化ベンゾイルのソースを表示

{{Otheruses|化学物質|その他のBPO|BPO}}
{{Chembox
| ImageFile=Benzoyl-peroxide.svg
| IUPACName=ジベンゾイルジオキシダン
| 別称=過酸化ジベンゾイル
|Section1={{chembox Identifiers
| CASNo=94-36-0
| KEGG = D03093
| 日化辞番号=J2.843F
| PubChem=
| RTECS=DM8575000
| SMILES=c1ccccc1C(=O)OOC(=O)c2ccccc2
 }}
|Section2={{chembox Properties
|C=14|H=10|O=4
| Density=1.334 g/cm<sup>3</sup>
| RationalFormula =(C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>CO)<sub>2</sub>O<sub>2</sub>
| MeltingPt=103&ndash;5 °C ''分解''
| Solubility=0.1g/100ml（26℃）
| Solvent=Water
 }}
|Section3={{Chembox Hazards
|  ExternalSDS = {{ICSC-small|0225}}
|  EUClass={{Hazchem E}}{{Hazchem Xi}}
|  EUIndex=617-008-00-0
|  MainHazards=爆発性 ('''E''')<br/>刺激性 ('''Xi''')
|  NFPA-H=1
|  NFPA-F=4
|  NFPA-R=4
|  NFPA-O=ox
|  RPhrases=
|  SPhrases=
|  Autoignition=125°C
 }}
}}
'''過酸化ベンゾイル'''（かさんかベンゾイル、{{lang-en|Benzoyl peroxide}}, [[略語]]: '''BPO'''）は、酸化剤の一種で、抗菌作用、皮膚の[[角質]]の堆積を改善する作用がある<ref name="含有製剤"/>。'''過酸化ジベンゾイル'''（かさんかジベンゾイル、{{lang-en|Dibenzoyl perxoide}}）とも<ref name="駒井">{{cite journal|和書|title=過酸化ジベンゾイル|author=駒井 猛|journal=有機合成化学協会誌|volume=45|issue=5|year=1987|pages=481–482|issn=0037-9980|doi=10.5059/yukigoseikyokaishi.45.481}}</ref>。工業、[[漂白剤]]、[[尋常性痤瘡|ニキビ]]の治療に使用される。

ニキビ治療薬として、[[抗生物質]]の[[薬剤耐性]]菌問題に代わって推奨度が高くなった<ref name="含有製剤"/>。[[消防法]]による[[危険物]]（第5類 自己反応性物質、第1種自己反応性物質）に指定されている[[ペルオキシド|有機過酸化物]]。

== 形状と性質 ==
白色粒状で無臭の固体で、[[水]]には溶けない（0.1g/100ml〈26℃〉）が、[[有機溶剤]]には溶ける。強い酸化作用があり、80℃まで加熱すると発火、さらに100℃を超えると白煙を発生して激しく分解する。加熱・摩擦・衝撃、光に当たることによっても分解し、[[爆発]]する恐れがある<ref name="駒井"/>。

また乾燥したり、強酸や[[有機物]]に接触することによっても爆発するので、保管には注意を要する。市販品は爆発防止のため、25%の水で湿らせて純度75%にしている。

== 合成 ==
過酸化ベンゾイルは、[[塩化ベンゾイル]]と[[過酸化ナトリウム]]から合成される<ref name="駒井"/>。

== 用途 ==
[[画像:Dibenzoylperoxid-Zerfall.svg|500px|BPOの[[熱分解]]]]

加熱により酸素-酸素結合が[[ホモリシス|ホモリティック]]に開裂し、ベンゼンカルボキシルラジカルを与え、そこから[[二酸化炭素]]が脱離してフェニルラジカルとなる。この性質を利用し、[[ラジカル (化学)|ラジカル]][[ラジカル開始剤|開始剤]]として[[ポリマー]]の合成などに使用される。

他の一般的な用途として[[染髪]]や[[歯]]の漂白剤が挙げられる。ヨーロッパでは[[過酸化水素]]の使用が制限されているため、特に利用される傾向がある。また、[[小麦粉]]の製造の際にも使われる。

=== 医療 ===
[[尋常性痤瘡]]（ニキビ）の治療に承認されている。[[21世紀]]になって抗菌薬（[[抗生物質]]）の長期使用による[[薬剤耐性]]菌の出現が問題となり、薬剤耐性の心配のない過酸化ベンゾイルの使用が推奨されるようになった<ref name="含有製剤">{{Cite journal |和書|author=北村正樹 |date=2015 |title=尋常性ざ瘡治療薬 過酸化ベンゾイル含有製剤 |journal=耳鼻咽喉科展望 |volume=58 |issue=3 |pages=183-185 |doi=10.11453/orltokyo.58.3_183 |url=https://doi.org/10.11453/orltokyo.58.3_183}}</ref>

2015年に、過酸化ベンゾイルのみの'''ベピオ'''、抗菌薬[[クリンダマイシン]]との合剤'''デュアック'''が日本で販売された<ref name="含有製剤"/>。もっとも[[欧米]]では、[[1960年代]]からニキビの治療に使用されていた<ref>{{Cite journal |和書|author=菊川義宣 |date=2015 |title=ベピオゲル2.5％ |journal=ファルマシア |volume=51 |issue=11 |pages=1082-1083 |doi=10.14894/faruawpsj.51.11_1082 |url=https://doi.org/10.14894/faruawpsj.51.11_1082}}</ref>。また2016年に[[アダパレン]]と合剤の'''エピデュオ'''が承認された<ref>{{Cite web|和書|date=2016-7-19 |author=北村正樹 |url=https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201607/547568.html |title=耐性菌出現懸念のないにきび治療薬 |publisher=日経メディカル |accessdate=2019-07-08}}</ref>。

主な副作用としては、[[接触皮膚炎]]がある<ref>{{Cite journal |和書|author1=飯島茂子 |author2=角田孝彦 |date=2017 |title=過酸化ベンゾイルによる接触皮膚炎の7例 |journal=日本皮膚科学会雑誌 |volume=127 |issue=1 |pages=23-30 |doi=10.14924/dermatol.127.23 |url=https://doi.org/10.14924/dermatol.127.23}}</ref>。

== 事故事例 ==
1990年5月、東京都[[板橋区]]の化学工場で爆発があり、死者8名、負傷者18名を出す惨事となった<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.shippai.org/fkd/cf/CC0200059.html|author=特定非営利活動法人失敗学会 |title=過酸化ベンゾイルの爆発・火災|accessdate=2020-01-06}}</ref>。実験室でも、金属さじによる取り扱いは避ける。

==出典==
{{reflist}}

{{DEFAULTSORT:かせんかへんそいる}}
[[Category:重合開始剤]]
[[Category:ペルオキシド]]
[[Category:ベンゼン誘導体]]
[[Category:第5類危険物]]
[[Category:皮膚に作用する薬]]