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{{Multiple images|direction=vertical|width=250
'''救難員'''(きゅうなんいん)は、[[航空自衛官]]の職域の一つで[[航空救難団]]の[[救難隊]](Air Rescue Squadron)に属し、捜索・救難ジェット機の[[U-125 (航空機)|U-125A]]や救難ヘリの[[UH-60J (航空機)|UH-60J]]に搭乗して、高度3000m([[エアボーン|空挺]]・[[山岳救助]])~深度30m([[水難救助]]・[[スクーバダイビング|潜水]])の活動領域での過酷な救難救助活動に従事するとも言われる[[航空自衛隊]]の隊員である。
|image1=JASDF medics carrying wounded on snow.jpg
|caption1=スキーを装着し、雪上で負傷者を搬送する救難員
|image2=JASDF medics during air-sea rescue operation.jpg
|caption2=洋上で負傷者の吊り上げ作業を行う救難員
}}
'''救難員'''(きゅうなんいん、{{Lang-en|JASDF medic}})は、[[航空自衛隊]]の[[航空士 (自衛隊)|航空士]]職域の一つ。[[航空救難団]]の[[救難隊]]に属し、[[UH-60J (航空機)|UH-60J]]や[[U-125 (航空機)|U-125A]]などの[[救難機]]に搭乗して、[[遭難]]者や[[傷病]]者の機内への収容などを担当する{{Sfn|杉山|2007|p=89}}。


過酷な状況下で[[捜索救難]]活動を行うために高い能力が求められ、選抜試験に合格した後も、[[陸上自衛隊]]の[[レンジャー (陸上自衛隊)#空挺レンジャー|空挺レンジャー]]や[[海上自衛隊]]の[[スクーバダイビング|開式スクーバ]]などの課程を履修する{{Sfn|航空幕僚監部|2006|p=641}}。『航空自衛隊50年史』では、「知力・体力・気力に秀で、困難な状況下にあっても、冷静な判断と果断な行動をもって人命救助できる屈強な隊員で構成されている」と述べている{{Sfn|航空幕僚監部|2006|p=641}}{{Efn2|[[海上保安庁]]の潜水士が『[[海猿]]』と俗称されるのに対し、メディックは陸上でも活動することから『海猿であり山猿』と解説されることもある<ref>{{Cite news|和書|url=https://www.sankei.com/article/20171018-KJNDJ46665NTDNC36K7TPT4V6Y/ |title=夜間捜索訓練中に消息絶った救難ヘリ「最後の砦」 メディック…自衛隊随一の精強|date=2017-10-18|newspaper=[[産経新聞|産経ニュース]]|publisher=[[産業経済新聞社]]}}</ref>。}}。
== 概要 ==
[[ファイル:ParaMedic.jpg|thumb|right|250px|パラシュート降下訓練を行う救難員(2007年、浜松基地にて)]]
航空救難の場では、[[救難機|救難・救助機]]よる着陸・着水や救助員などによる海上・陸上への降下が行なわれるが、航空自衛隊の救難隊では、それらに加えて[[パラシュート]]を使った救難員の空挺降下が行なわれる。また、創設当初より救難捜索機や救難救助ヘリコプターに搭乗する全ての救難員は、救急医療を含む救護・看護などの訓練や教育を受けており、現在では航空自衛隊の[[衛生兵|衛生員]]として[[准看護師]]や[[救急救命士]]の資格を持つ者もいる。これらの救難員が必要な場合は、救難機からパラシュート降下などを行ない要救助者の救護・看護等を行なうことも出来る。これらのことから、'''パラメディック'''(PARA-MEDIC)とも呼ばれるが、一般的にはパラシュート降下の意味を略した「'''[[メディック]]'''」の呼称で知られている。なお、[[救急救命士]]を表す英語の“Paramedic<small>([[:en:Paramedics in the United States|英語版]])</small>”は、[[戦場]]でパラシュート降下を行なう医療技術を持った衛生隊員([[軍医]]・衛生兵)が語源ともされている。航空自衛隊のパラメディックは、Paratrooper<small>([[:en:Paratrooper|英語版]])</small>の短縮形であるparaと衛生兵を意味するMedic<small>([[:en:Medic|英語版]])</small>との造語。


== 教育課程 ==
救難員の養成については「救難員候補者衛生員選抜試験(救難員選抜試験を含む)」に合格した航空自衛隊の衛生員([[衛生兵]])として勤務する者や、28歳以下の他の職種の空曹・空士隊員の中で「救難員選抜試験」などに合格した者から選抜される。隊員の希望により適性検査、体力測定、水泳測定を行い選抜される。救難員教育課程の導入教育では、[[岐阜基地]]内の自衛隊岐阜病院で救護法などを学習し、[[陸上自衛隊]][[第1空挺団 (陸上自衛隊)|第1空挺団]](千葉県・[[習志野駐屯地]])で約5週間のパラシュート基本降下課程や救助・潜水訓練が[[小牧基地]]の[[救難教育隊]]で実施される。
=== 救難員課程 ===
約8ヶ月の救難員課程は、どんな困難な状況においても人命を救わねばならない(実際、山岳遭難において[[山岳警備隊]]や[[山岳救助隊 (消防)|山岳救助隊]]でも対処が困難な場合の“最後の砦”として、[[災害派遣]]の形で出動要請が出る)事から、その訓練は過酷かつ厳しさを極め、潜水、パラシュート降下、[[懸垂下降|ラペリング降下]]、山岳救助などを習得する。
救難員は、航空自衛隊員の中からの志願者で、部隊長推薦を受けて選抜試験に挑戦・合格したものである{{Sfn|航空幕僚監部|2006|p=641}}。試験を受験するための資格要件は、28歳以下の空曹または空士長であり、特技職の中級(5レベル)以上の特技を付与されていて、長期勤務の意思が強固で、かつ、勤務成績が優良な者とされている<ref name=救難員募集>{{Cite web|和書|author=航空救難団|title=救難員募集|url=https://www.mod.go.jp/asdf/arw/kyuunanninn_bosyuu/kyuunanninn_bosyuu.html|accessdate=2022/06/09}}</ref>。選抜試験では面接試験と適性検査、航空身体検査および水泳実技が行われる<ref name=救難降下訓練生>{{Cite report|和書|date=1979/06/22|author=航空幕僚長 空将 竹田 五郎|title=救難降下訓練生の取扱い等に関する達|url=http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1979/gy19790622_00017_000.pdf|publisher=航空自衛隊}}</ref>。募集回数は年1回{{Efn2|{{Harvnb|坂本|2018|pp=186-189}}では年2回としている。}}、1回あたりの募集定員は4-5名程度といずれも少なく、試験の倍率は少なくとも5倍という狭き門である{{Sfn|杉山|2007|p=89}}。
最終訓練では、実際に冬の雪山に登山し遭難者をヘリコプターで救助する総合訓練を実施する。その後は各地の救難隊に配属され、陸上自衛隊の第1空挺団でのレンジャー課程や海上自衛隊の[[第1術科学校]]での潜水課程に入校して訓練を受ける。


この結果に基づいて、まず救難降下訓練生の要員が選抜され、[[小牧基地]]の[[救難教育隊]]において救難員(衛生)課程に入校する<ref name=救難降下訓練生/>。[[自衛隊病院]]での応急手当訓練のほか{{Sfn|杉山|2007|p=89}}{{Sfn|杉山|2007|p=83}}{{Efn2|2007年当時は岐阜病院で行われていたが{{Sfn|杉山|2007|p=89}}{{Sfn|杉山|2007|p=83}}、同院は2022年に閉院した<ref>{{Cite web|和書|author=自衛隊岐阜病院長 空将補 森本 浩吉|date=2022年3月|title=自衛隊岐阜病院閉鎖のご挨拶|url=https://www.mod.go.jp/asdf/gifu/gifuhospital/index.html|accessdate=2022/06/09}}</ref>。}}、降下課程を控えていることもあり、特に小牧基地での導入訓練では降下のための体力練成が重視される{{Sfn|杉山|2007|p=86}}。衛生課程を修了すると救難降下訓練生として正式に指定され、[[陸上自衛隊]]での委託課程である[[陸上自衛隊空挺教育隊|基本降下課程]]を経て<ref name=救難降下訓練生/>、約24週の救難員課程を履修する<ref name=基本教育>{{Cite report|和書|date=1966/07/01|author=航空幕僚長 空将 牟田 弘国|title=航空自衛隊の基本教育に関する達(登録報告)|url=http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1966/gy19660701_00018_000.pdf|publisher=航空自衛隊}}</ref>。ここでは、救難員業務や航空機取り扱いについての座学のほか、航空士として航空機の搭乗や点検について学習する{{Sfn|杉山|2007|p=86}}。
航空自衛隊救難隊の救難員の最終目標は、[[有事]]の際の交戦空域での戦闘救難(コンバットレスキュー)であり、陸上自衛隊の[[レンジャー (陸上自衛隊)|レンジャー]]に匹敵するサバイバル技術を有している(実際、救難員の多くはレンジャー資格を取得するための訓練も受けるが、優秀な成績でレンジャー資格を取得している)。実際の救難ヘリ(UH-60J)での救難作業では、専属の[[航空機関士|フライトエンジニア]]が専属パイロットと共同してのホバリング操作やホイスト[[ウインチ]]の昇降操作を行い、救難員が要救助者を確保して機内に収容する。


海上行動に備えた訓練として、プールでの基本泳法や水上安全法、[[スキンダイビング]]、[[スクーバダイビング]]を学び、仕上げに海での総合実習を行う{{Sfn|杉山|2007|p=86}}。このうち、特にスキンダイビングの訓練については、スクーバダイビングの基礎となる部分であり、意図的に一番負荷がかかるようにされていることもあり、救難員課程のなかでも最も過酷な部分とも評される{{Sfn|杉山|2007|p=86}}。そして陸上行動に備えた訓練として、登攀や懸垂下降、救助技術を学んだのち、夏季山岳と積雪地でそれぞれ総合実習を行って、卒業となる{{Sfn|杉山|2007|p=86}}。
救難隊のモットーは「That others may live(他の人を生かすためになさん・かけがえのない命を救うため・他を生かすために生きる<ref>[http://www.mod.go.jp/asdf/chitose/rq/commander.html 航空自衛隊 航空救難団千歳救難隊 隊長挨拶] </ref>)」であり、約100名の救難員が全国の基地で365日24時間常に救難待機を行い日夜活躍している<ref>[http://www.mod.go.jp/asdf/chitose/rq/introduction.html 航空自衛隊 航空救難団千歳救難隊 部隊概要 任務] </ref>。
なお、[[アメリカ空軍]]では[[空軍特殊作戦コマンド]]に所属する“[[:en:Pararescuemen|Pararescuemen]]”と呼ばれ、略称は“PJs”(Pararescue Jumpers)が航空自衛隊の救難員と同様の作戦や捜索救難活動に従事している。[[海上自衛隊]]の[[救難飛行隊|救難部隊]]では、類似の職種として[[機上救護員]]または[[降下救助員|機上救助員]]があるが、{{要出典範囲|date=2012年5月|それぞれの職種は分担が決められており、救難員の職務とは若干の違いがある}}。


== 採用基準 ==
=== 配属後の課程 ===
救難員課程を卒業した時点で基本的な技術はマスターされているが、救難員としての技術は配属されてから身につくものと看做されている{{Sfn|杉山|2007|p=86}}。このため、救難隊に配属されてもすぐに救難任務に出動することはできず、様々な訓練を重ねて任務資格付与({{Lang|en|Operation Readiness, OR}})検定に合格して初めて実出動を行うことができるようになる{{Sfn|杉山|2007|p=89}}。
航空自衛官の衛生員や他の職種の特技レベル5以上の空曹・空士の中から設けられた選抜基準により選抜される。


ORの資格を取ったあとも、更に陸上自衛隊[[第1空挺団 (陸上自衛隊)|第1空挺団]]の[[レンジャー (陸上自衛隊)#空挺レンジャー|空挺レンジャー課程]]や[[海上自衛隊第1術科学校]]の専修科開式[[スクーバダイビング|スクーバ]]課程などに入校し、研鑽を重ねていくことになる{{Sfn|杉山|2007|p=89}}。特に空挺レンジャー課程は、必修というわけではないもののほとんど全員が履修しているとされる{{Sfn|杉山|2007|p=70}}。また近年では、[[日本の看護師#准看護師|准看護師]]や[[救急救命士]]など[[医療従事者]]としての課程を履修する場合も増えている{{Sfn|航空幕僚監部|2006|p=641}}。
救難員要員候補者選抜試験基準 (種目と選考基準)
* 体力測定
** 握力 左右50kg以上
** 懸垂 12回以上
** 50m走 7秒3以内
** 300m走(60m×2往復半) 62秒以内
** 1,500m走 5分40秒以内
** 屈み跳躍 45回以上
** 腕立て伏せ 45回以上
** 起き上がり(腹筋) 2分以内に45回以上
** 背筋力 110kg以上
** 重物搬送(30kg) 素養確認


なお、救難員は航空士の資格を取得し、毎日航空機に登場して任務を実施しているにもかかわらず、当初は陸自の空挺隊員と同様の「乗客」扱いで、落下傘隊員手当(30%)が適用されていたが、後に[[特殊勤務手当#航空手当(第7条)|航空手当]]([[ジェット機]]では初号俸×80%、[[回転翼機]]では60%)が加算されるようになった{{Sfn|杉山|2024}}。
* 泳力測定

** クロール 100m 2分以内
== 装備 ==
** 平泳ぎ 100m 2分20秒以内
救難員は、飛行士や他の航空士と同様の[[飛行服#自衛隊|航空服装]]を着用していることもあるが、多くの場合は機外での救難作業に対応して、[[制服 (自衛隊)#特殊服装|救難服装]]を着用したうえで各種の装備を装着・携行している{{Sfn|杉山|2007|pp=72-75}}。特に冬季の[[山岳救助]]任務の場合、遭難者救助に必要な装備だけでなく、救難員自身が現場に取り残される場合を想定し、食料や水、[[ビバーク]]用の[[ツェルト]]など、サバイバルに必要なものを一通り携行する{{Sfn|杉山|2007|pp=72-75}}。
** 自由形 500m 12分以内

** 横潜水 25m以上
洋上進出時には、水温が暖かい場合は動きやすい[[ウェットスーツ]]を着用するが、水温が低い場合のほか、[[航空機]]が海上に墜落して破片が漂流したり[[航空燃料]]が流出したりしている場合には、保護効果が高い[[ドライスーツ]]を着用する{{Sfn|杉山|2007|pp=72-75}}。ウォータースポーツ用ヘルメットと[[シュノーケル]]、[[ダイビング器材#マスク|ダイビングマスク]]と[[フィン]]のほか、必要に応じてスクーバ器材も使用する{{Sfn|杉山|2007|pp=72-75}}。
** 呼吸停止 水深4mにおいて30秒以上

** 縦潜水(水深3m 3回連続) 素養確認
また航空自衛隊の救難員を特徴づけるのが、[[パラシュート]](落下傘)による救難降下能力である<ref name=救難降下訓練生/>{{Efn2|このことから、「航空自衛隊の救難員を表すメディックという言葉の語源は、戦場でパラシュート降下を行なう医療技術を持った衛生隊員“Paramedic”に由来する」と解説する[[ウェブページ]]もあるが<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.akagi-aaa.co.jp/report/kyuunan/kyuunan-no1.html|year=2012|author=赤城工業株式会社|title=航空自衛隊 航空救難団 救難教育隊|accessdate=2022/06/10}}</ref>、英単語としての“[[:en:Paramedic|Paramedic]]”は、元来は(救難降下能力の有無に関わらず)[[衛生兵]]を指す言葉であり、後には民間で[[外傷病院前救護ガイドライン|病院前救護]]を担当する要員をも指すようになった<ref>{{Cite web|title=Paramedic|website=Merriam-Webster.com Dictionary|publisher=[[メリアム=ウェブスター|Merriam-Webster]]|url=https://www.merriam-webster.com/dictionary/paramedic|accessdate=10 June 2022}}</ref>。}}。従来は円形の落下傘(JE-1改)を使用していたのに対し{{Sfn|杉山|2007|pp=72-75}}、[[2000年代]]には操縦性能に優れた方形傘(MC-5)の導入が図られて、2005年5月より松島救難隊での運用研究が着手されたのち、2006年以降、各救難隊での普及教育を開始した{{Sfn|杉山|2007|p=115}}。従来は[[自動開傘索]]による降下のみを行っていたのに対し、方形傘の導入によって高高度からの[[自由降下]](HALO/HAHO)も可能になったが、この場合は酸素マスクを着用する{{Sfn|杉山|2007|pp=72-75}}。
** 浮き身 5分 素養確認

** 立ち泳ぎ 5分 素養確認
<gallery widths="200px" heights="150px">
File:JASDF medics climbing a rock wall.jpg|登攀訓練を行う救難員
File:JASDF medic during scuba diving.jpg|スクーバダイビングを行う救難員
File:JASDF medic with Ram-Air-Parachute.jpg|方形傘を用いて降下する救難員
</gallery>


== 配属基地 ==
== 配属基地 ==
* [[千歳基地]]:千歳救難隊
* [[千歳基地]]:[[千歳救難隊]]
* [[秋田分屯基地]]:秋田救難隊
* [[秋田分屯基地]]:[[秋田救難隊]]
* [[松島基地]]:松島救難隊
* [[松島基地]]:[[松島救難隊]]
* [[新潟分屯基地]]:新潟救難隊
* [[新潟分屯基地]]:[[新潟救難隊]]
* [[百里飛行場|百里基地]]:百里救難隊
* [[百里飛行場|百里基地]]:[[百里救難隊]]
* [[小松基地]]:小松救難隊
* [[小松基地]]:[[小松救難隊]]
* [[浜松基地]]:浜松救難隊
* [[浜松基地]]:[[浜松救難隊]]
* [[小牧基地]]:救難教育隊
* [[小牧基地]]:救難教育隊
* [[芦屋基地]]:芦屋救難隊
* [[芦屋基地]]:[[芦屋救難隊]]
* [[新田原基地]]:新田原救難隊
* [[新田原基地]]:[[新田原救難隊]]
* [[那覇基地]]:那覇救難隊
* [[那覇基地]]:[[那覇救難隊]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* {{Citation|和書|editor-link=航空幕僚監部|editor=航空幕僚監部|year=2006|title=航空自衛隊50年史 : 美しき大空とともに|ncid=BA77547615}}
* {{Citation|和書|last=坂本|first=明|year=2018|title=最強 自衛隊図鑑|publisher=学研プラス|isbn=9784059169192}}
* {{Citation|和書|last=杉山|first=潔|year=2007|chapter=航空自衛隊航空救難団の実力|title = よみがえる空 RESCUE WINGS公式ガイドブック|publisher=[[ホビージャパン]]|series=ホビージャパンMOOK 214|pages=43-115|isbn=978-4-89425-583-8}}
* {{Citation|和書|last=杉山|first=潔|year=2024|month=2|title=航空救難団活動記録 第138回 OB列伝6 阿部久幸(その5)|journal=[[航空ファン (雑誌)|航空ファン]]|publisher=文林堂|volume=73|number=2}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[よみがえる空 -RESCUE WINGS-]]
* [[よみがえる空 -RESCUE WINGS-]]
* [[救助員 (海上自衛隊)#機上救助員|機上救助員]] - [[海上自衛隊]]の類似要員
* [[航空救難団]](航空自衛隊)
* [[救難]](航空自衛隊)
* [[機動救難]] - [[海上保安庁]]の類似要員
* [[航空機動衛生隊]](航空自衛隊)
* [[降下救助員]](海上自衛隊)
* [[潜水士]](海上自衛隊・海上保安庁)
* [[水中処分員]](海上自衛隊)
* [[特殊救難隊|羽田特殊救難基地]](海上保安庁)
* [[ヘリコプター救急]]
* [[ヘリコプター救急]]
* [[戦闘捜索救難]]
* [[空飛ぶ広報室]](TBSテレビのドラマ)- 第7話でmedicが活躍
* [[リコカツ]](TBSテレビのドラマ)- medicが主役の相手役


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.mod.go.jp/ 防衛省]
* [https://www.mod.go.jp/asdf/arw/index.html 航空救難団]
* [http://www.mod.go.jp/asdf/ 航空自衛隊]
* [http://www.mod.go.jp/asdf/arw/index.html 航空救難団]
* [http://www.mod.go.jp/asdf/gifu/index.html 岐阜基地]
{{日本の救助隊}}
{{日本の救助隊}}


[[Category:航空自衛隊|きゆうなんいん]]
{{デフォルトソート:きゆうなんいん}}
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[[Category:航空自衛隊]]
[[Category:航空従事者|きゆうなんいん]]
[[Category:航空従事者]]
[[Category:救助部隊|きゆうなんいん]]
[[Category:救助部隊]]
[[Category:海難救助]]

2024年5月12日 (日) 04:04時点における最新版

スキーを装着し、雪上で負傷者を搬送する救難員
洋上で負傷者の吊り上げ作業を行う救難員

救難員(きゅうなんいん、英語: JASDF medic)は、航空自衛隊航空士職域の一つ。航空救難団救難隊に属し、UH-60JU-125Aなどの救難機に搭乗して、遭難者や傷病者の機内への収容などを担当する[1]

過酷な状況下で捜索救難活動を行うために高い能力が求められ、選抜試験に合格した後も、陸上自衛隊空挺レンジャー海上自衛隊開式スクーバなどの課程を履修する[2]。『航空自衛隊50年史』では、「知力・体力・気力に秀で、困難な状況下にあっても、冷静な判断と果断な行動をもって人命救助できる屈強な隊員で構成されている」と述べている[2][注 1]

教育課程

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救難員課程

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救難員は、航空自衛隊員の中からの志願者で、部隊長推薦を受けて選抜試験に挑戦・合格したものである[2]。試験を受験するための資格要件は、28歳以下の空曹または空士長であり、特技職の中級(5レベル)以上の特技を付与されていて、長期勤務の意思が強固で、かつ、勤務成績が優良な者とされている[4]。選抜試験では面接試験と適性検査、航空身体検査および水泳実技が行われる[5]。募集回数は年1回[注 2]、1回あたりの募集定員は4-5名程度といずれも少なく、試験の倍率は少なくとも5倍という狭き門である[1]

この結果に基づいて、まず救難降下訓練生の要員が選抜され、小牧基地救難教育隊において救難員(衛生)課程に入校する[5]自衛隊病院での応急手当訓練のほか[1][6][注 3]、降下課程を控えていることもあり、特に小牧基地での導入訓練では降下のための体力練成が重視される[8]。衛生課程を修了すると救難降下訓練生として正式に指定され、陸上自衛隊での委託課程である基本降下課程を経て[5]、約24週の救難員課程を履修する[9]。ここでは、救難員業務や航空機取り扱いについての座学のほか、航空士として航空機の搭乗や点検について学習する[8]

海上行動に備えた訓練として、プールでの基本泳法や水上安全法、スキンダイビングスクーバダイビングを学び、仕上げに海での総合実習を行う[8]。このうち、特にスキンダイビングの訓練については、スクーバダイビングの基礎となる部分であり、意図的に一番負荷がかかるようにされていることもあり、救難員課程のなかでも最も過酷な部分とも評される[8]。そして陸上行動に備えた訓練として、登攀や懸垂下降、救助技術を学んだのち、夏季山岳と積雪地でそれぞれ総合実習を行って、卒業となる[8]

配属後の課程

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救難員課程を卒業した時点で基本的な技術はマスターされているが、救難員としての技術は配属されてから身につくものと看做されている[8]。このため、救難隊に配属されてもすぐに救難任務に出動することはできず、様々な訓練を重ねて任務資格付与(Operation Readiness, OR)検定に合格して初めて実出動を行うことができるようになる[1]

ORの資格を取ったあとも、更に陸上自衛隊第1空挺団空挺レンジャー課程海上自衛隊第1術科学校の専修科開式スクーバ課程などに入校し、研鑽を重ねていくことになる[1]。特に空挺レンジャー課程は、必修というわけではないもののほとんど全員が履修しているとされる[10]。また近年では、准看護師救急救命士など医療従事者としての課程を履修する場合も増えている[2]

なお、救難員は航空士の資格を取得し、毎日航空機に登場して任務を実施しているにもかかわらず、当初は陸自の空挺隊員と同様の「乗客」扱いで、落下傘隊員手当(30%)が適用されていたが、後に航空手当ジェット機では初号俸×80%、回転翼機では60%)が加算されるようになった[11]

装備

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救難員は、飛行士や他の航空士と同様の航空服装を着用していることもあるが、多くの場合は機外での救難作業に対応して、救難服装を着用したうえで各種の装備を装着・携行している[12]。特に冬季の山岳救助任務の場合、遭難者救助に必要な装備だけでなく、救難員自身が現場に取り残される場合を想定し、食料や水、ビバーク用のツェルトなど、サバイバルに必要なものを一通り携行する[12]

洋上進出時には、水温が暖かい場合は動きやすいウェットスーツを着用するが、水温が低い場合のほか、航空機が海上に墜落して破片が漂流したり航空燃料が流出したりしている場合には、保護効果が高いドライスーツを着用する[12]。ウォータースポーツ用ヘルメットとシュノーケルダイビングマスクフィンのほか、必要に応じてスクーバ器材も使用する[12]

また航空自衛隊の救難員を特徴づけるのが、パラシュート(落下傘)による救難降下能力である[5][注 4]。従来は円形の落下傘(JE-1改)を使用していたのに対し[12]2000年代には操縦性能に優れた方形傘(MC-5)の導入が図られて、2005年5月より松島救難隊での運用研究が着手されたのち、2006年以降、各救難隊での普及教育を開始した[15]。従来は自動開傘索による降下のみを行っていたのに対し、方形傘の導入によって高高度からの自由降下(HALO/HAHO)も可能になったが、この場合は酸素マスクを着用する[12]

配属基地

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脚注

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注釈

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  1. ^ 海上保安庁の潜水士が『海猿』と俗称されるのに対し、メディックは陸上でも活動することから『海猿であり山猿』と解説されることもある[3]
  2. ^ 坂本 2018, pp. 186–189では年2回としている。
  3. ^ 2007年当時は岐阜病院で行われていたが[1][6]、同院は2022年に閉院した[7]
  4. ^ このことから、「航空自衛隊の救難員を表すメディックという言葉の語源は、戦場でパラシュート降下を行なう医療技術を持った衛生隊員“Paramedic”に由来する」と解説するウェブページもあるが[13]、英単語としての“Paramedic”は、元来は(救難降下能力の有無に関わらず)衛生兵を指す言葉であり、後には民間で病院前救護を担当する要員をも指すようになった[14]

出典

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  1. ^ a b c d e f 杉山 2007, p. 89.
  2. ^ a b c d 航空幕僚監部 2006, p. 641.
  3. ^ 夜間捜索訓練中に消息絶った救難ヘリ「最後の砦」 メディック…自衛隊随一の精強」『産経ニュース産業経済新聞社、2017年10月18日。
  4. ^ 航空救難団. “救難員募集”. 2022年6月9日閲覧。
  5. ^ a b c d 航空幕僚長 空将 竹田 五郎『救難降下訓練生の取扱い等に関する達』(レポート)航空自衛隊、1979年6月22日http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1979/gy19790622_00017_000.pdf 
  6. ^ a b 杉山 2007, p. 83.
  7. ^ 自衛隊岐阜病院長 空将補 森本 浩吉 (2022年3月). “自衛隊岐阜病院閉鎖のご挨拶”. 2022年6月9日閲覧。
  8. ^ a b c d e f 杉山 2007, p. 86.
  9. ^ 航空幕僚長 空将 牟田 弘国『航空自衛隊の基本教育に関する達(登録報告)』(レポート)航空自衛隊、1966年7月1日http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1966/gy19660701_00018_000.pdf 
  10. ^ 杉山 2007, p. 70.
  11. ^ 杉山 2024.
  12. ^ a b c d e f 杉山 2007, pp. 72–75.
  13. ^ 赤城工業株式会社 (2012年). “航空自衛隊 航空救難団 救難教育隊”. 2022年6月10日閲覧。
  14. ^ Paramedic”. Merriam-Webster.com Dictionary. Merriam-Webster. 10 June 2022閲覧。
  15. ^ 杉山 2007, p. 115.

参考文献

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  • 航空幕僚監部 編『航空自衛隊50年史 : 美しき大空とともに』2006年。 NCID BA77547615 
  • 坂本明『最強 自衛隊図鑑』学研プラス、2018年。ISBN 9784059169192 
  • 杉山潔「航空自衛隊航空救難団の実力」『よみがえる空 RESCUE WINGS公式ガイドブック』ホビージャパン〈ホビージャパンMOOK 214〉、2007年、43-115頁。ISBN 978-4-89425-583-8 
  • 杉山潔「航空救難団活動記録 第138回 OB列伝6 阿部久幸(その5)」『航空ファン』第73巻、第2号、文林堂、2024年2月。 

関連項目

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外部リンク

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