「M32 戦車回収車」の版間の差分
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{{戦闘車両 |
{{戦闘車両 |
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|名前=M32戦車回収車 |
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|画像=[[ファイル:M32_Recovery_Vehicle.jpg|300px]] |
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|画像の説明=M32<br />HVSS型懸架装置装備の車両 |
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|全長=7.26m |
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|全幅=2.68m |
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|全高=2.95m ※戦闘室天面まで/6.4m ※[[クレーン]]最大展開時 |
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| 全高=2.95m |
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|重量=29.2t ※M32 |
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|乗員数=5名 |
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|乗員配置= |
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|装甲=最大51mm |
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|主武装=[[ブローニングM2重機関銃|12.7mm重機関銃M2]] |
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|副武装=[[M1 81mm 迫撃砲]] ※[[発煙弾|煙幕弾]]発射用 |
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|備考=[[ウインチ]]牽引力:27.22t<br/>クレーン吊上能力:9,072kg<ref name="M32-00">吊上移動状態での最大値</ref>/13.61トン(静止最大) |
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| 備考=牽引力:20t<br/>吊り上げ能力:9t |
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|速度=39km/h ※M32 |
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|整地速度= |
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|不整地速度=24km/h ※M32 |
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|エンジン=[[コンチネンタル・モータース|コンチネンタル]] R975-C1<br />9気筒4サイクル星型[[ガソリンエンジン]] 400馬力 2,400回転/分(最大) ※M32 |
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|懸架・駆動=垂直渦巻スプリング式<br />/水平渦巻スプリング式 |
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|行動距離=190km ※M32 |
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|出力重量比=13.67hp/t<br />'''重量出力比'''=0.073hp/t ※M32 |
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'''M32 戦車回収車''' |
'''M32 戦車回収車'''('''M32 TRV'''('''T'''ank '''R'''ecovery '''V'''ehicle)は、[[アメリカ合衆国]]の[[装甲回収車]]である。'''M32 ARV'''('''A'''rmored '''R'''ecovery '''V'''ehicle)とも呼ばれる。 |
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本項目では発展型のM74 TRVについても併せて解説する。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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[[M4中戦車]]の車体を流用した装甲回収車両で、機甲部隊に追随し故障戦車の救出、応急 |
[[M4中戦車]]の車体を流用した[[装甲回収車]]両で、機甲部隊に追随し、故障もしくは損傷した[[戦車]]の救出、応急修理を行うための装備である。[[第二次世界大戦]]後半-[[朝鮮戦争]]にかけて使用され、第二次大戦後はM4が[[アメリカ軍]]の他、世界各国に供与されたのと併せてM32も広く世界各国に供与された。 |
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重砲牽引用の高速牽引車の不足を補うため、回収装備を撤去した'''M34 砲牽引車'''(M34 PrimeMover<ref>"PrimeMover"とは直訳すれば「原動力」だが、ここでは「動力付牽引車」を意味する。これらの車両を英語的に正確に表記する場合は「full-tracked artillery prime mover(全装軌式動力付砲兵牽引車)」となるが、軍事用語としては単に"PrimeMover"とのみ書かれることが多い</ref>)に改装された車両が少数生産されている。 |
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[[陸上自衛隊]]にも80両がM4A3E8と共に供与され、M4以外の車両を装備する戦車・自走砲部隊でも広く用いられた。国産の[[61式戦車]]が開発・導入されると61式の派生型として[[70式戦車回収車]]が開発されたが予算不足のために少数生産に終わったため、その後も1970年代を通して使用され、[[1980年]]をもって全車が退役した。 |
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== 開発・ |
== 開発・運用 == |
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[[M3中戦車]]改造の[[ |
[[M4中戦車]]が制式化されることに合わせ、[[M3中戦車]]改造の[[M31 戦車回収車]]の後継として'''G-185'''の計画名称で開発された。[[1943年]]には'''T5'''の名称が与えられた試作車の仕様が固まり、基体車両のM4は[[エンジン]]の形式の差異により多くのバリエーションがあったため、T5もエンジンの形式の異なる各種の試作車が製作され、1943年[[12月9日]]には'''M32'''の名称で制式化された。 |
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1943年12月には最初の量産型である'''M32B1'''の生産(もしくは既存車よりの改造)が開始され、[[1945年]]の大戦終結までに各形式を合わせて約1,500両が新造もしくはM4よりの改造により生産された。初期生産車を実戦で運用した結果に基づき、後期の生産車にはいくつかの改良が加えられている<ref>最も顕著な改良点は、吊下作業中にクレーンが曲がってしまう事故が起きたことに対応するため、クレーンを構成する部材が直径4.5インチ(11.4cm)の鋼鉄製円柱から直径5.5625インチ(14.13cm)の鋼鉄製肉厚円柱に変更された点である</ref>。 |
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部隊配備は[[1944年]]3月より開始され、M4及びM4の派生型車両を装備する部隊に配備が進められたが、[[第二次世界大戦]]中には全ての部隊でM31との更新が完了せず、M31とM32は並行して装備された。現場ではM32よりもM31の方が使い勝手が良い、との評価もあった。 |
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第二次大戦後は[[朝鮮戦争]]でも用いられ、[[アメリカ軍]]では[[1950年代]]初頭に後継のM74 装甲回収車が制式化され、1950年代に順次置き換えられるまで主力[[装甲回収車]]として装備されていた。M4が[[州兵]]部隊も含めて完全に退役し、併せてM32の全車が退役したのは朝鮮戦争後の1950年代末のことである。 |
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大戦後、M4が世界各国に供与されたのと併せてM32も広く世界各国に供与され、それらの国では長らく使われた。退役後、民間に払い下げられて[[無限軌道|装軌]]式のクレーン車や重牽引車として使用されたものも存在する。 |
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=== 陸上自衛隊での運用 === |
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[[陸上自衛隊]]にも[[1954年]]より80両が[[M4中戦車|M4A3E8]]と共に供与され、M4以外の車両を装備する[[戦車]]・[[自走砲]]部隊でも広く用いられた。 |
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中古車両のため状態の悪いものが多いことと、[[空冷エンジン|空冷]]星型[[ガソリンエンジン]]は発火事故が多発するために部隊での運用には困難が多く、[[1960年代]]も半ばを過ぎると予備部品の調達に難を生じ、稼働率の維持に苦労したが、陸上自衛隊唯一の[[装甲回収車|戦車回収車]]として[[機甲科]]の部隊運用を支えて活躍した。 |
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国産の[[61式戦車]]が開発・導入されると61式の派生型として[[70式戦車回収車]]が開発されたが、予算不足のために少数生産に終わったため、M32はその後も[[1970年代]]を通して使用され、[[1980年]]をもって全車が退役した。 |
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== 特徴 == |
== 特徴 == |
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[[ファイル:M32-ARV-HVSS-latrun-1.jpg|right| |
[[ファイル:M32-ARV-HVSS-latrun-1.jpg|right|250px|thumb|クレーンを展開してM4中戦車の砲塔を吊り上げようとする状態で展示されるM32<br/>(鋳造型車体、HVSS型懸架装置装備の車両)<ref name="M32-1">これらの画像の車両はいずれもイスラエルのM1/M50スーパーシャーマンを回収車として改造した車両である</ref>]] |
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[[M4中戦車]]の砲塔を撤去して車体内部に[[ウ |
[[M4中戦車]]の[[砲塔]]を撤去して車体内部に[[ウインチ]]を増設、上面に円周状の開口部とM4の初期型のものと同じ[[指揮官|車長]]用ハッチを備えた準オープントップの砲塔型戦闘室(旋回はできない)を搭載し、Aフレーム形と呼ばれる全長18フィート(約5.5メートル)の枠形[[クレーン]]を装備したもので、クレーンの起倒は基部右側の起倒ワイヤー引掛部を右起動輪外側に装備されているボビンにワイヤーで結んだ状態で車両が前/後進する事によって行われる。クレーンは先端部に小型のAフレーム形支持脚を備えており、これを車体に結合することで後方に倒した状態でも用いることができた。 |
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牽引用ウインチは最大で60,000ポンド(27.22トン)の牽引力を発揮でき、クレーンは展開した状態で最大30,000ポンド(13.61トン)の物体を吊り上げる事ができ、20,000ポンド(9,072kg)までのものを吊り上げたまま移動することができた。なお、クレーンで10,000ポンド(4,536kg)以上のものを吊り下げる場合には、左右3つのサスペンションボギーのうち最前部と最後部を固定する必要があり、そのための固定機構を装備している。 |
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戦闘中に回収作業を行う状況に備え、戦闘室天蓋には[[ブローニングM2重機関銃|M2 12.7mm重機関銃]]のリングマウント式銃架を装備し、車体上部正面には煙幕弾投射用の[[M2 60mm 迫撃砲|M2 60mm]]もしくは[[M1 81mm 迫撃砲|M1 81mm迫撃砲]](携行弾数30発)を搭載している。車体前部右側の[[ブローニングM1919重機関銃|M1919 7.62mm重機関銃]]用のマウントはほとんどの車両がそのまま装備されている<ref>マウント部分を鋼板で塞いでいる車両の写真もある。</ref>が、車体機銃自体は装備していない車両が多い<ref>車体機銃に限らず武装に関しては搭載していない車両も多く、戦後の使用車両はほとんどが武装していないが、[[イスラエル国防軍]]の車両を始め車体機銃も含めて武装している記録写真も多く存在する</ref>。また、戦後にアメリカ軍以外で使用された車両では、煙幕展開用に迫撃砲ではなく専用の煙幕弾発射装置を追加装備しているものが多い。 |
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クレーンの他に大小2種類の棒型牽引具(DrowBarと呼ばれる)を備え、車体前部及び後部には牽引用のピントルフックが装備されている。車両の任務性格上、車体や戦闘室の側面には各種予備部品が搭載され、各所に工具箱や備品箱が増設されている。ピントルフックを用いた場合の牽引力は最大72,000ポンド(32.66トン)である。 |
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回収装備以外の部分は基本的にM4中戦車と同一だが、極少数の新造車両以外は損傷もしくは故障などで後方に送られてきた車両を改造して製作された車両がほとんどであり、基体となったM4中戦車の仕様が多岐に渡っているのと同様に、車体や懸架装置、エンジンの形式に多くのバリエーションがあり、供与された国で独自に各形式の仕様を混載して改良された車両も数多く存在する。 |
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<gallery> |
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戦闘中に回収作業を行う状況に備え、戦闘室天面の開口部には[[ブローニングM2重機関銃|12.7mm重機関銃M2]]のリングマウント式[[銃架]]を装備し、車体上部正面には[[発煙弾|煙幕弾]]投射用の[[M2 60mm 迫撃砲|M2 60mm]]もしくは[[M1 81mm 迫撃砲|M1 81mm迫撃砲]](携行弾数30発)を搭載している。車体前部右側の[[ブローニングM1919重機関銃|7.62mm重機関銃M1919]]用の車体機銃用ボールマウントはほとんどの車両にそのまま装備されている<ref>マウント部分を鋼板で塞いでいる車両の写真もある</ref>が、車体機銃自体は装備していない車両が多い<ref>車載機銃に限らず武装に関しては搭載していない車両も多く、戦後の使用車両はほとんどが武装していないが、[[イスラエル国防軍]]の車両を始め車載機銃も含めて武装している記録写真も多く存在する</ref>。また、戦後に[[アメリカ軍]]以外で使用された車両では、煙幕展開用に[[迫撃砲]]ではなく専用の[[発煙弾発射機|煙幕弾発射装置]]を追加装備しているものが多い。 |
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ファイル:M32-ARV-VVSS-latrun-1.jpg|VVSS型懸架装置、鋳造型車体の車両<ref name="M32-1">これらの画像の車両はいずれもイスラエルのM1/M50スーパーシャーマンを回収車として改造した車両である。</ref> |
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ファイル:M32-ARV-batey-haosef-2.jpg|HVSS型懸架装置、初期型溶接車体の車両<ref name="M32-1">これらの画像の車両はいずれもイスラエルのM1/M50スーパーシャーマンを回収車として改造した車両である。</ref> |
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回収装備以外の部分は基本的にM4と同一だが、基体となったM4の仕様が多岐に渡っているのと同様に、車体や懸架装置、[[エンジン]]の形式に多くのバリエーションがあり、M4がそうであったように修理の過程で各所の仕様が混在しているものも多い。供与された国で独自に各形式の仕様を混載して改良された車両も数多く存在する。 |
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<gallery widths="180px" heights="150px"> |
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ファイル:M32-ARV-VVSS-latrun-1.jpg|VVSS型懸架装置、溶接型車体の車両<ref name="M32-1">これらの画像の車両はいずれもイスラエルのM1/M50スーパーシャーマンを回収車として改造した車両である</ref> |
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ファイル:M32-ARV-batey-haosef-2.jpg|HVSS型懸架装置、溶接型車体の車両<ref name="M32-1">これらの画像の車両はいずれもイスラエルのM1/M50スーパーシャーマンを回収車として改造した車両である</ref> |
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</gallery> |
</gallery> |
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== 派生型及びバリエーション == |
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== 各型及び派生型 == |
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;T-5 |
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;T5 |
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:試作型。初期型溶接車体、3ピース型デファレンシャルギアカバーのM4 初期型車両を改造して製作された。量産型に比べ、戦闘室が曲面のない平面溶接構造となっているのが特徴である。 |
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:試作型。初期型溶接車体、3ピース型デファレンシャルギアカバーの[[M4中戦車|M4]]初期型車両を改造して製作された。量産型に比べ、戦闘室が曲面のない平面溶接構造となっているのが特徴である。 |
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:T5の試作車は後に[[地雷]]処理装置のテストベッド車に転用された。 |
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:;T5E1 |
|||
::M4A1がベース車体の試作型。制式化されM32B1となる。 |
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:;T5E2 |
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::M4A2がベース車体の試作型。制式化されM32B2となる。 |
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:;T5E3 |
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::M4A3がベース車体の試作型。制式化されM32B3となる。 |
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:;T5E4 |
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::M4A4がベース車体の試作型。制式化されM32B4となるが、試作車1両のみが製造された。 |
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;M32 |
;M32 |
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;(Sherman ARV III Mk.I) |
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:最初の製造型。M4より改造された車両。コンチネンタル社製 R975-C1 星型9気筒空冷ガソリンエンジン(400馬力)搭載。163両生産。 |
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:M4より改造された車両。コンチネンタル社製 R975-C1 星型9気筒[[空冷エンジン|空冷]][[ガソリンエンジン]](400馬力)搭載。 |
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;;M32A |
|||
:[[1944年]]1月よりデトロイト戦車工廠(Detroit Tank Arsenal)及び[[プレスト・スチール・カンパニー|プレスドスチール]]社において163両が生産された。 |
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::M32のエンジンをM4A3型と同じフォード社製 GAA V型8気筒液冷ガソリンエンジン(500馬力)に換装した型。迫撃砲を撤去し、クレーンの能力を改良している。 |
|||
:;M32A |
|||
::M32の[[エンジン]]をM4A3型と同じフォード社製 GAA [[V型8気筒]][[液冷エンジン|液冷]]ガソリンエンジン(500馬力)に換装した型。[[迫撃砲]]を撤去し、[[クレーン]]の起倒方式を改良している。 |
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::他の型とは、車体上面のエンジングリル及び車体後面パネルの差異、戦闘室前面の[[ウインチ]]ワイヤー繰出部が拡大されていること、車体前面上部にワイヤー支持架台が新設されていること、及びクレーン右側基部の起倒ワイヤー引掛部と右起動輪外側のボビンがないことで識別できる。 |
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;M32B1 |
;M32B1 |
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;(Sherman ARV III Mk.II) |
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:M4A1より改造された車両。コンチネンタル社製 R974-C4 星型9気筒空冷ガソリンエンジン(460馬力)搭載。M4A1が元になっているためにほぼ全車が鋳造車体となっている。大多数の生産車はこの-B1型である。1055両生産。 |
|||
:M4A1より改造された車両。コンチネンタル社製 R975-C4 星型9気筒空冷ガソリンエンジン(460馬力)搭載。M4A1が元になっているためにほぼ全車が鋳造車体となっている。大多数の生産車はこのB1型である。 |
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;;M32A1B1 |
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:[[1943年]]12月よりプレスドスチール社、連邦機械溶接社(Federal Machine and Welder Company)、[[ボールドウィン・ロコモティブ・ワークス|ボールドウィン機関車製造所]]の3社により1,055両が生産された。 |
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::M4A1より改造された車両で、生産時よりHVSS型懸架装置を持つ型。コンチネンタル社製 R974-C4星型エンジン (400馬力)搭載。37両生産。 |
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:;M32A1B1 |
|||
::M4A1より改造された車両で、生産時よりHVSS型懸架装置を持つ型。 |
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::[[1945年]]5月よりボールドウィン機関車製造所により37両を生産。 |
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;M32B2 |
;M32B2 |
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:M4A2より改造された車両。ゼネラルモーターズ社製 GM6046 直列6気筒2ストローク液冷ディーゼルエンジン2基 |
:M4A2より改造された車両。ゼネラルモーターズ社製 GM6046 [[直列6気筒]][[2ストローク機関|2ストローク]]液冷[[ディーゼルエンジン]]2基(計443馬力)を搭載。 |
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:1943年6月より[[ライマ・ロコモティブ・ワークス|リマ機関車製造所]]により26両を生産。 |
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;M32B3 |
;M32B3 |
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:M4A3より改造された車両。フォード |
:M4A3より改造された車両。フォード GAA液冷V型エンジン搭載。 |
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:1944年5月よりリマ機関車製造所及びプレスドスチール社により318両を生産。 |
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:後に60両が'''M74B1'''に再改造されている。 |
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:;M32A1B3 |
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::M4A3より改造された車両で、生産時よりHVSS型懸架装置を持つ型。 |
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::1945年5月よりボールドウィン機関車製造所及び[[:en:International_Harvester|インターナショナル・ハーベスター]]社により80両を生産。 |
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::戦後、何両かはM74 戦車回収車の試作車である'''T74'''に改造され、制式採用後'''M74B1'''として再就役している。 |
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;M32B4 |
;M32B4 |
||
:M4A4 |
:M4A4を元とした車両。クライスラー社製 A-57"マルチバンク" 複列30気筒液冷ガソリンエンジン(直列6気筒ガソリンエンジン5基結合、計425馬力)搭載。 |
||
:制式化されたものの、「エンジンの構成が複雑すぎて整備運用に問題がある」という理由によりM4A4がアメリカ軍ではほとんど運用されなかった<ref>M4A4型は生産数の大半がイギリス軍に供与されたが、英国ではM4戦車の回収型としては独自に改装した車両を装備していたため、本車は提供されていない</ref>ため、本車も試作車1両のみが完成したに留まった。 |
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※VVSS(垂直渦巻スプリング式サスペンション)型懸架装置を装備する車両から改造されたものは後にHVSS(水平渦巻スプリング式サスペンション)型の懸架装置に換装しているものがあり、それらはそれぞれ |
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;M32A1 |
;M32A1 |
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;(Sherman ARV III Mk.IY) |
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:M32より改造された車両 |
:M32より改造された車両 |
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;M32A1B2 |
:;M32A1B2 |
||
:M4A2より改造された車両 |
::M4A2より改造された車両 |
||
と呼ばれる。 |
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;M32A1B3 |
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:M4A3より改造された車両 |
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とも呼ばれる。 |
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また、[[第二次世界大戦]]後も使用された車両の多くにはM32Aに準じた改修が行われており、M32Aと同様に戦闘室前面のウインチワイヤー繰出部が拡大されている他、クレーンが起倒ワイヤー引掛部のないものに交換されている。 |
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;M34 |
|||
:クレーン等の回収用機材を降ろして装甲牽引車に改装した型。主に砲兵部隊で重砲牽引及び補給支援等に使用。M32B1より少数が改造された。 |
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<gallery> |
<gallery widths="180px" heights="150px"> |
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ファイル:M32_M4-A1_at_Sinsheim.JPG|M32B1 HVSS型懸架装置装備の車両<ref>M32A1B1の可能性あり</ref> |
ファイル:M32_M4-A1_at_Sinsheim.JPG|M32B1 HVSS型懸架装置装備の車両<ref>M32A1B1の可能性あり</ref> |
||
ファイル:Baldwin_Locomotive_Works_M32B3_Tank_Recovery_Vehicle_pic2.JPG|M32B3< |
ファイル:Baldwin_Locomotive_Works_M32B3_Tank_Recovery_Vehicle_pic2.JPG|M32B3<br />[[オランダ軍|オランダ海兵隊]]の装備していた車両 |
||
</gallery> |
</gallery> |
||
M32はイギリス軍および英連邦軍に供給されたものは「'''Sherman ARV III'''」の名称で呼ばれている<ref>イギリス軍がM4中戦車を独自に装甲回収車両に改造した Sherman ARV I、及びSherman ARV IIが存在する。</ref>。また、イスラエルではM4中戦車を独自改良した[[スーパーシャーマン|M1/50 スーパーシャーマン]]の各型をM32に準拠した戦車回収車に改造した車両も使われており、これらの車両は特に区別されず「M32」と呼称されている。 |
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[[File:Full-Track_Prime_Mover_M34.jpg|200px|thumb|M34 砲牽引車]] |
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;M34 砲牽引車(M34 PrimeMover) |
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:クレーンを撤去<ref>ウインチはそのまま搭載されている</ref>して装甲牽引車に改装した型。 |
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:配備が遅延した[[M6トラクター|M6高速牽引車]]の代理として[[砲兵]]部隊での重砲牽引及び支援などに用いるために急遽生産された。 |
|||
:1944年6月までに[[チェスター (ペンシルベニア州)|チェスター]]補給廠にてM32B1より24両が改造されたが、実戦ではほとんど使われることなく終わった。 |
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{{-}} |
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== その他 == |
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[[イギリス軍]]および[[イギリス連邦]]軍に供給されたM32は「'''Sherman ARV III'''」の名称で呼ばれている<ref>イギリス軍がM4中戦車を独自に装甲回収車両に改造した Sherman ARV I、及びSherman ARV IIが存在する</ref>。また、[[イスラエル]]では[[M4中戦車]]を独自改良した[[スーパーシャーマン|M1/50 スーパーシャーマン]]の各型をM32に準拠した[[装甲回収車|戦車回収車]]に改造した車両も使われており、これらの車両も「M32」と呼称されている。 |
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== 諸元 == |
== 諸元 == |
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※M32のもの |
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*全長:7.32m |
*全長:7.32m |
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*全幅:2.68m |
*全幅:2.68m |
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90行目: | 142行目: | ||
*行動距離:190km |
*行動距離:190km |
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*最高速度:39km/h |
*最高速度:39km/h |
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*エンジン:コンチネンタル社製R975-C1星型エンジン |
*エンジン:コンチネンタル社製R975-C1[[星型エンジン]](400馬力) |
||
*出力:350ps/2400rpm |
*出力:350ps/2400rpm |
||
*武装 |
*武装:※脚注[2]を参照のこと |
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**[[ブローニングM2重機関銃| |
**[[ブローニングM2重機関銃|12.7mm重機関銃M2]] |
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**[[ブローニングM1919重機関銃| |
**[[ブローニングM1919重機関銃|7.62mm重機関銃M1919]] |
||
**[[M2 60mm 迫撃砲|M2 60mm]]もしくは[[M1 81mm 迫撃砲|M1 81mm迫撃砲]] |
**[[M2 60mm 迫撃砲|M2 60mm]]もしくは[[M1 81mm 迫撃砲|M1 81mm迫撃砲]] |
||
*主クレーン最大吊上能力:9t |
*主クレーン最大吊上能力:9t |
||
*主ウインチ最大牽引能力:27t |
*主ウインチ最大牽引能力:27t |
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--> |
|||
== M74 戦車回収車 == |
== M74 戦車回収車 == |
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{{戦闘車両 |
{{戦闘車両 |
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| |
|名前=M74 戦車回収車 |
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| |
|画像=[[ファイル:M74_Armoured_Recovery_Vehicle_(6073363197).jpg|300px]] |
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| |
|画像の説明=M74 TRV<br />[[ジンスハイム自動車・技術博物館]]の展示車両 |
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| |
|全長=7.92m |
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| |
|全幅=3.0m |
||
| |
|全高=3.35m |
||
| |
|重量=27.98t |
||
| |
|乗員数=5名 |
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| |
|乗員配置= |
||
| |
|装甲=最大108mm(車体前面下部)<br/>最大64mm(戦闘室前面) |
||
| |
|主武装=[[ブローニングM2重機関銃|12.7mm重機関銃M2]] |
||
| |
|副武装=[[ブローニングM1919重機関銃|7.62mm重機関銃M1919]] |
||
|備考=[[ウインチ]]牽引力:42.83t<br/>[[クレーン]]吊上能力:11.43t<ref name="M32-00">吊上移動状態での最大値</ref>/24.95t(静止最大) |
|||
| 備考=牽引力:41t<br/>吊り上げ能力:23t |
|||
| |
|速度=42km/h |
||
| |
|整地速度= |
||
| |
|不整地速度= |
||
| |
|エンジン=フォードGAA<br/>[[液冷エンジン|液冷]][[V型8気筒]][[ガソリンエンジン]] 525馬力 2,600回転/分 |
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| |
|懸架・駆動=水平渦巻スプリング式サスペンション |
||
| |
|行動距離=161km |
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=== 概要 === |
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第二次世界大戦後、アメリカ軍の主力戦車がM4中戦車からより大型で重い[[M26パーシング|M26]]/[[M46パットン|M46]] |
[[第二次世界大戦]]後、[[アメリカ軍]]の[[主力戦車]]が[[M4中戦車]]からより大型で重い[[M26パーシング|M26]]/[[M46パットン|M46]]に更新されたことに合わせ、M26の車体を用いた[[装甲回収車]]として「T12 TRV」が開発されたものの量産されなかったため、M32の後継として基本的な構成はほぼ同じだがベースとなる車体を[[M4中戦車#バリエーション|M4A3E8型]]に統一し、回収用機材の能力を強化した'''M74 戦車回収車'''('''M74 TRV'''('''T'''ank '''R'''ecovery '''V'''ehicle、'''M74ARV'''('''A'''rmored '''R'''ecovery '''V'''ehicle)とも呼ばれる)が開発されている。 |
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=== 開発・配備 === |
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'''T74'''の試作名称でM32B3の懸架装置をHVSS型に換装した車両(M32A1B3)より開発され、[[1952年]]に'''M74 TRV'''として制式化された。[[1954年]]-[[1955年]]にかけて約1,000両が生産された他、[[1958年]]までに少数が既存のM32B3より改造されて製造されており、これらは'''M74B1'''の形式番号で呼ばれる。 |
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1954年2月より主に[[M47パットン|M47]]を装備する部隊に配備され、[[アメリカ軍]]以外にもいくつかの[[西側諸国]]に供与された。後に、[[スペイン]]などでは[[エンジン]]を[[デトロイトディーゼル]]社製 8V-71T 2ストローク[[V型8気筒]][[液冷エンジン|液冷]][[ディーゼルエンジン]](405馬力)に換装する改良が行われている。 |
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[[アメリカ軍]]では更に大型大重量の[[M48パットン|M48]]が開発されたことに伴い、M48の回収車型である[[M88装甲回収車]]に更新される形で[[1960年代]]半ばから退役が進んだが、アメリカ軍以外で使用された車両には[[1980年代]]まで現役で使用されたものも存在する。また、M32同様に民間に払い下げられて[[無限軌道|装軌]]式のクレーン車や重牽引車としても使用されている。 |
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=== 構成 === |
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M74はM32と同様の |
M74はM32と同様の構造を持つが、吊上用と牽引用の2基の[[ウインチ]]を持ち、[[クレーン]]の吊上能力を静止55,000ポンド(24.95トン)/移動25,000ポンド(11.34トン)、主ウインチの牽引能力を90,000ポンド(42.83トン)に強化し、クレーンの起倒を油圧シリンダーを用いた動力作動式に改良、車体前面に作業時の安定性向上のために駐鋤(スペード)を装備している。前照灯などの細部装備品も更新され、赤外線前照灯と[[暗視装置]]を装備している。 |
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戦闘室上面は開口部のない密閉型となり、[[M4中戦車#バリエーション|M4A3E8]]の[[砲塔]]に装備されているものに類似した[[機関銃|機銃]]マウント付き[[キューポラ]]を装備している。この他、戦闘室前面が円筒形状から角型形状となり、牽引能力10,000ポンド(4.5トン)、吊り下げ能力2,000ポンド(900kg)をもつ油圧駆動式ウインチが装備された。このウインチは汎用として様々な用途に用いられ、駐鋤の展開/収納にも使用される。 |
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== 登場作品 == |
== 登場作品 == |
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; 『[[西武新宿戦線異状なし DRAGON RETRIEVER]]』 |
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*『[[パットン大戦車軍団]](原題:''Patton'')』(1970年) |
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: [[押井守]]原作、[[大野安之|おおのやすゆき]]作画の漫画作品。作中に準同型車両が登場する。 |
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:[[バストーニュの戦い|バストーニュ救出作戦]]のシーンに米軍車両の1つとしてM74 TRVが登場する。ロケ地のスペイン軍に供与された車両である。 |
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: 作中の台詞では「型式不明の[[装甲回収車|戦車回収車]]」となっており、M32とは明記されていない。画としてはM32B1の車体に戦闘室ではなくM4(76)中戦車の76.2mm[[砲塔]]を搭載し、[[主砲]]に76.2mm砲ではなく[[銃砲身|短砲身]]の[[工兵]]用破砕砲を搭載した、M32TRVとM4(76)中戦車の特徴の混ざったデザインの車両である。 |
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*『[[西武新宿戦線異状なし DRAGON RETRIEVER]]』(1992-1993年) |
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; 『[[パットン大戦車軍団]](原題:'''Patton''')』 |
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:[[押井守]]原作、[[大野安之|おおのやすゆき]]作画の漫画作品。作中に準同型車両が登場する。 |
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: [[バストーニュの戦い|バストーニュ救出作戦]]のシーンに[[アメリカ軍|米軍]]車両の1つとしてM74 TRVが登場する。ロケ地の[[スペイン軍]]に供与された車両である。 |
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:*作中の台詞では「型式不明の戦車回収車」となっており、M32とは明記されていない。画としてはM32B1の車体に戦闘室ではなくM4(76)中戦車の76.2mm砲塔を搭載し、主砲に76.2mm砲ではなく短砲身の工兵用破砕砲を搭載した、M32TRVとM4(76)中戦車の特徴の混ざったデザインの車両である。 |
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=== ゲーム === |
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; 『[[トータル・タンク・シミュレーター]]』 |
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: 米国、フランス、イタリア、ポーランドの回収車M32として登場。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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*[[朝雲新聞社]] '74[[自衛隊装備年鑑]] |
*[[朝雲新聞社]] '74[[自衛隊装備年鑑]] |
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*[[上田信 (イラストレーター)|上田信]] |
*[[上田信 (イラストレーター)|上田信]]:著『戦車メカニズム図鑑』(ISBN 978-4876871797) [[グランプリ出版]] 1997年 |
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*スティーヴン・ザロガ:著 岡崎淳子:訳『<small>オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 5</small> シャーマン中戦車 1942‐1945』(ISBN 978-4499227292) 大日本絵画 2000年 |
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*スティーヴン・ザロガ:著 武田 秀雄:訳『<small>オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 19</small> M26/M46パーシング戦車 1943-1953』(ISBN 978-4499228022) [[大日本絵画]] 2003年 |
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*スティーヴン・ザロガ:著 三貴雅智:訳『<small>オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 29</small> M4(76mm)シャーマン中戦車 1942‐1965』(ISBN 978-4499228473) 大日本絵画 2004年 |
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*スティーヴン・ザロガ著『<small>オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 36</small> M3リー&グラント中戦車 1941‐1945』(ISBN 978-4499229586) 大日本絵画 2008年 |
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*『<small>グランドパワー 2013年 09月号別冊</small> M4シャーマン戦車 Vol.4 [派生型/戦域別写真集]』[[ガリレオ出版]] 2013年 |
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;U.S.ARMY Technical manuals |
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*TM 9-738 Tank Recovery Vehicles M32, M32B1, M32B2, M32B3, M32B4 (9 Dec 1943) |
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*TM 9-1750, 1750A,B Ordnance Maintenance: Power train unit for medium tanks M3, M4 and modifications |
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*TM 9-2800-1,Vehicle, Tank Recovery, M32 Series(February 1953) |
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*Supply Catalog SNL-G-185,6,7,8 |
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*TM 9-7402 M74 Recovery Vehicle (1956) |
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*TM 9-7403-2 M74 Recovery Vehicle Misc. Components (1956) |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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{{Commons|Category:M32_Tank_Recovery_Vehicle}} |
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*[[装甲回収車]] |
*[[装甲回収車]] |
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*[[回収戦車]] |
*[[回収戦車]] |
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*[[M4中戦車]] |
*[[M4中戦車]] |
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*[[M31 戦車回収車]] |
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== 外部リンク == |
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*[[70式戦車回収車]] |
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{{Commons|Category:M32_Tank_Recovery_Vehicle}} |
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*[[78式戦車回収車]] |
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{{Commons|Category:M74_Tank_Recovery_Vehicle|M74 戦車回収車}} |
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* [http://www.theshermantank.com/tag/m32/ The Sherman Tank Site>M30 and M74 series of Armored Recovery Vehicles: Tanks Get Stuck, ARVs get them unstuck] |
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* [http://afvdb.50megs.com/index.html AFV DATABASE] |
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** [http://afvdb.50megs.com/usa/trvm32.html Tank Recovery Vehicle M32] |
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** [http://afvdb.50megs.com/usa/ftpmm34.html Full-track Prime Mover M34] |
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** [http://afvdb.50megs.com/usa/trvm74.html Medium Tank Recovery Vehicle M74] |
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*[https://www.youtube.com/watch?v=oFL80cnevoc YouTube>Lading a Sherman M32B1 recovery tank on a trailer] - 現存するM32B1の動画 |
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{{M4中戦車}} |
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{{第二次世界大戦のアメリカの装甲戦闘車両}} |
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{{自衛隊の装甲戦闘車両}} |
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{{イスラエルの装甲戦闘車両}} |
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{{DEFAULTSORT:M0032せんしやかいしゆうしや}} |
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[[Category:戦車 |
[[Category:アメリカ合衆国の装甲戦闘車両]] |
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[[Category:アメリカ合衆国の装甲戦闘車両|せんしや]] |
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[[Category:陸上自衛隊の装甲戦闘車両]] |
[[Category:陸上自衛隊の装甲戦闘車両]] |
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[[Category:M4シャーマン]] |
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[[Category:装甲回収車]] |
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[[en:Armoured_recovery_vehicle#United_States]] |
2024年7月26日 (金) 08:26時点における最新版
M32 HVSS型懸架装置装備の車両 | |
基礎データ | |
---|---|
全長 | 7.26m |
全幅 | 2.68m |
全高 | 2.95m ※戦闘室天面まで/6.4m ※クレーン最大展開時 |
重量 | 29.2t ※M32 |
乗員数 | 5名 |
装甲・武装 | |
装甲 | 最大51mm |
主武装 | 12.7mm重機関銃M2 |
副武装 | M1 81mm 迫撃砲 ※煙幕弾発射用 |
備考 |
ウインチ牽引力:27.22t クレーン吊上能力:9,072kg[1]/13.61トン(静止最大) |
機動力 | |
速度 | 39km/h ※M32 |
不整地速度 | 24km/h ※M32 |
エンジン |
コンチネンタル R975-C1 9気筒4サイクル星型ガソリンエンジン 400馬力 2,400回転/分(最大) ※M32 |
懸架・駆動 |
垂直渦巻スプリング式 /水平渦巻スプリング式 |
行動距離 | 190km ※M32 |
出力重量比 |
13.67hp/t 重量出力比=0.073hp/t ※M32 |
M32 戦車回収車(M32 TRV(Tank Recovery Vehicle)は、アメリカ合衆国の装甲回収車である。M32 ARV(Armored Recovery Vehicle)とも呼ばれる。
本項目では発展型のM74 TRVについても併せて解説する。
概要
[編集]M4中戦車の車体を流用した装甲回収車両で、機甲部隊に追随し、故障もしくは損傷した戦車の救出、応急修理を行うための装備である。第二次世界大戦後半-朝鮮戦争にかけて使用され、第二次大戦後はM4がアメリカ軍の他、世界各国に供与されたのと併せてM32も広く世界各国に供与された。
重砲牽引用の高速牽引車の不足を補うため、回収装備を撤去したM34 砲牽引車(M34 PrimeMover[2])に改装された車両が少数生産されている。
開発・運用
[編集]M4中戦車が制式化されることに合わせ、M3中戦車改造のM31 戦車回収車の後継としてG-185の計画名称で開発された。1943年にはT5の名称が与えられた試作車の仕様が固まり、基体車両のM4はエンジンの形式の差異により多くのバリエーションがあったため、T5もエンジンの形式の異なる各種の試作車が製作され、1943年12月9日にはM32の名称で制式化された。
1943年12月には最初の量産型であるM32B1の生産(もしくは既存車よりの改造)が開始され、1945年の大戦終結までに各形式を合わせて約1,500両が新造もしくはM4よりの改造により生産された。初期生産車を実戦で運用した結果に基づき、後期の生産車にはいくつかの改良が加えられている[3]。
部隊配備は1944年3月より開始され、M4及びM4の派生型車両を装備する部隊に配備が進められたが、第二次世界大戦中には全ての部隊でM31との更新が完了せず、M31とM32は並行して装備された。現場ではM32よりもM31の方が使い勝手が良い、との評価もあった。
第二次大戦後は朝鮮戦争でも用いられ、アメリカ軍では1950年代初頭に後継のM74 装甲回収車が制式化され、1950年代に順次置き換えられるまで主力装甲回収車として装備されていた。M4が州兵部隊も含めて完全に退役し、併せてM32の全車が退役したのは朝鮮戦争後の1950年代末のことである。
大戦後、M4が世界各国に供与されたのと併せてM32も広く世界各国に供与され、それらの国では長らく使われた。退役後、民間に払い下げられて装軌式のクレーン車や重牽引車として使用されたものも存在する。
陸上自衛隊での運用
[編集]陸上自衛隊にも1954年より80両がM4A3E8と共に供与され、M4以外の車両を装備する戦車・自走砲部隊でも広く用いられた。
中古車両のため状態の悪いものが多いことと、空冷星型ガソリンエンジンは発火事故が多発するために部隊での運用には困難が多く、1960年代も半ばを過ぎると予備部品の調達に難を生じ、稼働率の維持に苦労したが、陸上自衛隊唯一の戦車回収車として機甲科の部隊運用を支えて活躍した。
国産の61式戦車が開発・導入されると61式の派生型として70式戦車回収車が開発されたが、予算不足のために少数生産に終わったため、M32はその後も1970年代を通して使用され、1980年をもって全車が退役した。
特徴
[編集]M4中戦車の砲塔を撤去して車体内部にウインチを増設、上面に円周状の開口部とM4の初期型のものと同じ車長用ハッチを備えた準オープントップの砲塔型戦闘室(旋回はできない)を搭載し、Aフレーム形と呼ばれる全長18フィート(約5.5メートル)の枠形クレーンを装備したもので、クレーンの起倒は基部右側の起倒ワイヤー引掛部を右起動輪外側に装備されているボビンにワイヤーで結んだ状態で車両が前/後進する事によって行われる。クレーンは先端部に小型のAフレーム形支持脚を備えており、これを車体に結合することで後方に倒した状態でも用いることができた。
牽引用ウインチは最大で60,000ポンド(27.22トン)の牽引力を発揮でき、クレーンは展開した状態で最大30,000ポンド(13.61トン)の物体を吊り上げる事ができ、20,000ポンド(9,072kg)までのものを吊り上げたまま移動することができた。なお、クレーンで10,000ポンド(4,536kg)以上のものを吊り下げる場合には、左右3つのサスペンションボギーのうち最前部と最後部を固定する必要があり、そのための固定機構を装備している。
クレーンの他に大小2種類の棒型牽引具(DrowBarと呼ばれる)を備え、車体前部及び後部には牽引用のピントルフックが装備されている。車両の任務性格上、車体や戦闘室の側面には各種予備部品が搭載され、各所に工具箱や備品箱が増設されている。ピントルフックを用いた場合の牽引力は最大72,000ポンド(32.66トン)である。
戦闘中に回収作業を行う状況に備え、戦闘室天面の開口部には12.7mm重機関銃M2のリングマウント式銃架を装備し、車体上部正面には煙幕弾投射用のM2 60mmもしくはM1 81mm迫撃砲(携行弾数30発)を搭載している。車体前部右側の7.62mm重機関銃M1919用の車体機銃用ボールマウントはほとんどの車両にそのまま装備されている[5]が、車体機銃自体は装備していない車両が多い[6]。また、戦後にアメリカ軍以外で使用された車両では、煙幕展開用に迫撃砲ではなく専用の煙幕弾発射装置を追加装備しているものが多い。
回収装備以外の部分は基本的にM4と同一だが、基体となったM4の仕様が多岐に渡っているのと同様に、車体や懸架装置、エンジンの形式に多くのバリエーションがあり、M4がそうであったように修理の過程で各所の仕様が混在しているものも多い。供与された国で独自に各形式の仕様を混載して改良された車両も数多く存在する。
各型及び派生型
[編集]- T5
- 試作型。初期型溶接車体、3ピース型デファレンシャルギアカバーのM4初期型車両を改造して製作された。量産型に比べ、戦闘室が曲面のない平面溶接構造となっているのが特徴である。
- T5の試作車は後に地雷処理装置のテストベッド車に転用された。
- T5E1
- M4A1がベース車体の試作型。制式化されM32B1となる。
- T5E2
- M4A2がベース車体の試作型。制式化されM32B2となる。
- T5E3
- M4A3がベース車体の試作型。制式化されM32B3となる。
- T5E4
- M4A4がベース車体の試作型。制式化されM32B4となるが、試作車1両のみが製造された。
- M32
- (Sherman ARV III Mk.I)
- M4より改造された車両。コンチネンタル社製 R975-C1 星型9気筒空冷ガソリンエンジン(400馬力)搭載。
- 1944年1月よりデトロイト戦車工廠(Detroit Tank Arsenal)及びプレスドスチール社において163両が生産された。
- M32B1
- (Sherman ARV III Mk.II)
- M4A1より改造された車両。コンチネンタル社製 R975-C4 星型9気筒空冷ガソリンエンジン(460馬力)搭載。M4A1が元になっているためにほぼ全車が鋳造車体となっている。大多数の生産車はこのB1型である。
- 1943年12月よりプレスドスチール社、連邦機械溶接社(Federal Machine and Welder Company)、ボールドウィン機関車製造所の3社により1,055両が生産された。
- M32A1B1
- M4A1より改造された車両で、生産時よりHVSS型懸架装置を持つ型。
- 1945年5月よりボールドウィン機関車製造所により37両を生産。
- M32B2
- M4A2より改造された車両。ゼネラルモーターズ社製 GM6046 直列6気筒2ストローク液冷ディーゼルエンジン2基(計443馬力)を搭載。
- 1943年6月よりリマ機関車製造所により26両を生産。
- M32B3
- M4A3より改造された車両。フォード GAA液冷V型エンジン搭載。
- 1944年5月よりリマ機関車製造所及びプレスドスチール社により318両を生産。
- 後に60両がM74B1に再改造されている。
- M32A1B3
- M4A3より改造された車両で、生産時よりHVSS型懸架装置を持つ型。
- 1945年5月よりボールドウィン機関車製造所及びインターナショナル・ハーベスター社により80両を生産。
- 戦後、何両かはM74 戦車回収車の試作車であるT74に改造され、制式採用後M74B1として再就役している。
- M32B4
- M4A4を元とした車両。クライスラー社製 A-57"マルチバンク" 複列30気筒液冷ガソリンエンジン(直列6気筒ガソリンエンジン5基結合、計425馬力)搭載。
- 制式化されたものの、「エンジンの構成が複雑すぎて整備運用に問題がある」という理由によりM4A4がアメリカ軍ではほとんど運用されなかった[7]ため、本車も試作車1両のみが完成したに留まった。
※VVSS(垂直渦巻スプリング式サスペンション)型懸架装置を装備する車両から改造されたものは後にHVSS(水平渦巻スプリング式サスペンション)型の懸架装置に換装しているものがあり、それらはそれぞれ
- M32A1
- (Sherman ARV III Mk.IY)
- M32より改造された車両
- M32A1B2
- M4A2より改造された車両
と呼ばれる。
また、第二次世界大戦後も使用された車両の多くにはM32Aに準じた改修が行われており、M32Aと同様に戦闘室前面のウインチワイヤー繰出部が拡大されている他、クレーンが起倒ワイヤー引掛部のないものに交換されている。
- M34 砲牽引車(M34 PrimeMover)
- クレーンを撤去[9]して装甲牽引車に改装した型。
- 配備が遅延したM6高速牽引車の代理として砲兵部隊での重砲牽引及び支援などに用いるために急遽生産された。
- 1944年6月までにチェスター補給廠にてM32B1より24両が改造されたが、実戦ではほとんど使われることなく終わった。
その他
[編集]イギリス軍およびイギリス連邦軍に供給されたM32は「Sherman ARV III」の名称で呼ばれている[10]。また、イスラエルではM4中戦車を独自改良したM1/50 スーパーシャーマンの各型をM32に準拠した戦車回収車に改造した車両も使われており、これらの車両も「M32」と呼称されている。
M74 戦車回収車
[編集]
M74 TRV ジンスハイム自動車・技術博物館の展示車両 | |
基礎データ | |
---|---|
全長 | 7.92m |
全幅 | 3.0m |
全高 | 3.35m |
重量 | 27.98t |
乗員数 | 5名 |
装甲・武装 | |
装甲 |
最大108mm(車体前面下部) 最大64mm(戦闘室前面) |
主武装 | 12.7mm重機関銃M2 |
副武装 | 7.62mm重機関銃M1919 |
備考 |
ウインチ牽引力:42.83t クレーン吊上能力:11.43t[1]/24.95t(静止最大) |
機動力 | |
速度 | 42km/h |
エンジン |
フォードGAA 液冷V型8気筒ガソリンエンジン 525馬力 2,600回転/分 |
懸架・駆動 | 水平渦巻スプリング式サスペンション |
行動距離 | 161km |
出力重量比 |
18.76hp/t 重量出力比=0.069hp/t |
概要
[編集]第二次世界大戦後、アメリカ軍の主力戦車がM4中戦車からより大型で重いM26/M46に更新されたことに合わせ、M26の車体を用いた装甲回収車として「T12 TRV」が開発されたものの量産されなかったため、M32の後継として基本的な構成はほぼ同じだがベースとなる車体をM4A3E8型に統一し、回収用機材の能力を強化したM74 戦車回収車(M74 TRV(Tank Recovery Vehicle、M74ARV(Armored Recovery Vehicle)とも呼ばれる)が開発されている。
開発・配備
[編集]T74の試作名称でM32B3の懸架装置をHVSS型に換装した車両(M32A1B3)より開発され、1952年にM74 TRVとして制式化された。1954年-1955年にかけて約1,000両が生産された他、1958年までに少数が既存のM32B3より改造されて製造されており、これらはM74B1の形式番号で呼ばれる。
1954年2月より主にM47を装備する部隊に配備され、アメリカ軍以外にもいくつかの西側諸国に供与された。後に、スペインなどではエンジンをデトロイトディーゼル社製 8V-71T 2ストロークV型8気筒液冷ディーゼルエンジン(405馬力)に換装する改良が行われている。
アメリカ軍では更に大型大重量のM48が開発されたことに伴い、M48の回収車型であるM88装甲回収車に更新される形で1960年代半ばから退役が進んだが、アメリカ軍以外で使用された車両には1980年代まで現役で使用されたものも存在する。また、M32同様に民間に払い下げられて装軌式のクレーン車や重牽引車としても使用されている。
構成
[編集]M74はM32と同様の構造を持つが、吊上用と牽引用の2基のウインチを持ち、クレーンの吊上能力を静止55,000ポンド(24.95トン)/移動25,000ポンド(11.34トン)、主ウインチの牽引能力を90,000ポンド(42.83トン)に強化し、クレーンの起倒を油圧シリンダーを用いた動力作動式に改良、車体前面に作業時の安定性向上のために駐鋤(スペード)を装備している。前照灯などの細部装備品も更新され、赤外線前照灯と暗視装置を装備している。
戦闘室上面は開口部のない密閉型となり、M4A3E8の砲塔に装備されているものに類似した機銃マウント付きキューポラを装備している。この他、戦闘室前面が円筒形状から角型形状となり、牽引能力10,000ポンド(4.5トン)、吊り下げ能力2,000ポンド(900kg)をもつ油圧駆動式ウインチが装備された。このウインチは汎用として様々な用途に用いられ、駐鋤の展開/収納にも使用される。
登場作品
[編集]- 『西武新宿戦線異状なし DRAGON RETRIEVER』
- 押井守原作、おおのやすゆき作画の漫画作品。作中に準同型車両が登場する。
- 作中の台詞では「型式不明の戦車回収車」となっており、M32とは明記されていない。画としてはM32B1の車体に戦闘室ではなくM4(76)中戦車の76.2mm砲塔を搭載し、主砲に76.2mm砲ではなく短砲身の工兵用破砕砲を搭載した、M32TRVとM4(76)中戦車の特徴の混ざったデザインの車両である。
- 『パットン大戦車軍団(原題:Patton)』
- バストーニュ救出作戦のシーンに米軍車両の1つとしてM74 TRVが登場する。ロケ地のスペイン軍に供与された車両である。
ゲーム
[編集]- 『トータル・タンク・シミュレーター』
- 米国、フランス、イタリア、ポーランドの回収車M32として登場。
脚注
[編集]- ^ a b 吊上移動状態での最大値
- ^ "PrimeMover"とは直訳すれば「原動力」だが、ここでは「動力付牽引車」を意味する。これらの車両を英語的に正確に表記する場合は「full-tracked artillery prime mover(全装軌式動力付砲兵牽引車)」となるが、軍事用語としては単に"PrimeMover"とのみ書かれることが多い
- ^ 最も顕著な改良点は、吊下作業中にクレーンが曲がってしまう事故が起きたことに対応するため、クレーンを構成する部材が直径4.5インチ(11.4cm)の鋼鉄製円柱から直径5.5625インチ(14.13cm)の鋼鉄製肉厚円柱に変更された点である
- ^ a b c これらの画像の車両はいずれもイスラエルのM1/M50スーパーシャーマンを回収車として改造した車両である
- ^ マウント部分を鋼板で塞いでいる車両の写真もある
- ^ 車載機銃に限らず武装に関しては搭載していない車両も多く、戦後の使用車両はほとんどが武装していないが、イスラエル国防軍の車両を始め車載機銃も含めて武装している記録写真も多く存在する
- ^ M4A4型は生産数の大半がイギリス軍に供与されたが、英国ではM4戦車の回収型としては独自に改装した車両を装備していたため、本車は提供されていない
- ^ M32A1B1の可能性あり
- ^ ウインチはそのまま搭載されている
- ^ イギリス軍がM4中戦車を独自に装甲回収車両に改造した Sherman ARV I、及びSherman ARV IIが存在する
参考文献
[編集]- 朝雲新聞社 '74自衛隊装備年鑑
- 上田信:著『戦車メカニズム図鑑』(ISBN 978-4876871797) グランプリ出版 1997年
- スティーヴン・ザロガ:著 岡崎淳子:訳『オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 5 シャーマン中戦車 1942‐1945』(ISBN 978-4499227292) 大日本絵画 2000年
- スティーヴン・ザロガ:著 武田 秀雄:訳『オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 19 M26/M46パーシング戦車 1943-1953』(ISBN 978-4499228022) 大日本絵画 2003年
- スティーヴン・ザロガ:著 三貴雅智:訳『オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 29 M4(76mm)シャーマン中戦車 1942‐1965』(ISBN 978-4499228473) 大日本絵画 2004年
- スティーヴン・ザロガ著『オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦車 イラストレイテッド 36 M3リー&グラント中戦車 1941‐1945』(ISBN 978-4499229586) 大日本絵画 2008年
- 『グランドパワー 2013年 09月号別冊 M4シャーマン戦車 Vol.4 [派生型/戦域別写真集]』ガリレオ出版 2013年
- U.S.ARMY Technical manuals
- TM 9-738 Tank Recovery Vehicles M32, M32B1, M32B2, M32B3, M32B4 (9 Dec 1943)
- TM 9-1750, 1750A,B Ordnance Maintenance: Power train unit for medium tanks M3, M4 and modifications
- TM 9-2800-1,Vehicle, Tank Recovery, M32 Series(February 1953)
- Supply Catalog SNL-G-185,6,7,8
- TM 9-7402 M74 Recovery Vehicle (1956)
- TM 9-7403-2 M74 Recovery Vehicle Misc. Components (1956)