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'''ブルーベリー'''({{lang-en-short|blueberry}})は、[[ツツジ科]][[スノキ属]]シアノコカス節に分類される[[落葉低木]]およびその[[果実]]([[ベリー]])の総称<ref name="TUAT-bb">[[東京農工大学]]ブルーベリー研究会、[http://web.tuat.ac.jp/~engei/bbsg/HTML/profile1004.html ブルーベリーとは]。2023年5月15日閲覧。</ref><ref name="小学館-ニッポニカ-bb">[[小学館]]『[[日本大百科全書|日本大百科全書 ニッポニカ]]』「ブルーベリー」(飯塚宗夫)</ref><ref name="JBB-基礎">一般社団法人日本ブルーベリー協会、[http://japanblueberry.com/info/base.html ブルーベリーの基礎知識]。2023年5月15日閲覧。</ref><ref>地方独立行政法人[[北海道立総合研究機構]]、農業研究本部、小果樹類の特性と栽培技術、[http://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/syuppan2/kaju/index7.html III ブルーベリー]、2023年5月15日閲覧。</ref>。果実は生食・加工いずれにも用いられる<ref name="平凡百科-bb">[[平凡社]]『[[世界大百科事典]]』「ブルーベリー」(松井仁)。2023年5月15日、[[JapanKnowledge]]により閲覧。</ref>。別名はヌマスノキ<ref>{{Cite web |url=https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-113 |title=ブルーベリーとは|育て方がわかる植物図鑑 |access-date=2024-08-17 |publisher=株式会社NHK出版}}</ref>。英名のブルーは果実の青紫色に由来し、ベリーは「小さな実」の意味である{{sfn|亀田龍吉|2014|p=49}}。いくつかの系統と品種があり、[[果樹]]や[[庭木]]として植えられる<ref name="鈴木ほか2014"/>。
'''ブルーベリー'''({{lang-en-short|blueberry}})は、[[ツツジ科]][[スノキ属]]シアノコカス節に分類される北アメリカ原産の低木果樹の総称である。落葉または半常緑性であり、寒い地方では冬季に葉を落とすが、温暖な地では葉が残る<ref>{{Cite web|title=ブルーベリー|url=http://www.uekipedia.jp/落葉広葉樹③/ブルーベリー/|website=庭木図鑑 植木ペディア|accessdate=2020-06-01|language=ja-JP}}</ref>。葉は紅葉して美しい<ref name=":0">中川重年著 『日本の樹木・下』 小学館、1991年、42項。</ref>。


ブルーベリーは大別して6系統(種・タイプ)あるが、食用として重要なのはハイブッシュ系・ラビットアイ系・ローブッシュ系の3系統(種・タイプ)である。そのうち、栽培種にはハイブッシュ系とラビットアイ系の2系統ある{{sfn|亀田龍吉|2014|p=49}}。細かい品種は数百種にも及ぶ。
== 概要 ==
栽培品種の成木の樹高は1.5-3m。春に白またはピンク色の[[ドウダンツツジ]]に似た釣鐘状の花を咲かせ、花後に0.5-1.5cmほどの青紫色の小果実が生る。北米大陸でのみ栽培される野生種に近い品種は数十cm程度の低木である。果実は[[北アメリカ]]では古くから食用とされてきたが、20世紀に入り[[果樹]]としての[[品種改良]]が進み、ハイブッシュ系、ラビットアイ系、ハーフハイブッシュ系、ローブッシュ系の交配により多くの品種が作出された。詳細は後述の[[ブルーベリー#種と品種|種と品種]]の節参照。


== 植物としての形態・生態 ==
ブルーベリーは6系統(種・タイプ)あるが食用として重要なのは3系統(種・タイプ)である。細かい品種は数百種にも及ぶ。
<!--[[落葉樹|落葉性]]または半[[常緑植物|常緑]]性で寒い地方では冬季に葉を落とすが、温暖な地では葉が残る。 多様な品種がある上に、「寒い地方」と「温暖な地」を一緒くたにして落葉性云々を冒頭部で記述するのは無理がある。『日本大百科全書』では「多くは落葉性」、集英社イミダスでは「落葉」、東京農工大と『世界大百科事典』では「落葉」云々には触れず、品種ごとの「耐寒性」の差異に言及。-->
;ハイブッシュブルーベリー系統(栽培種)
成木の樹高は品種によって違うが、概ね1 - 3[[メートル]] (m) になる<ref name="鈴木ほか2014"/>。北アメリカ大陸でのみ栽培される野生種に近い品種は数十cm程度の低木である。幹は単生、あるいは株立ちすることもある<ref name="鈴木ほか2014"/>。[[樹皮]]は灰褐色で縦に筋があり、やがて裂けて剥がれる<ref name="鈴木ほか2014">{{Harvnb|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=72}}</ref>。若い枝は淡灰褐色で毛がある<ref name="鈴木ほか2014"/>。花期は4 - 5月(日本の場合)<ref name="鈴木ほか2014"/>。春に、[[ドウダンツツジ]]に似た白またはピンク色の釣鐘状の花を咲かせ、花後に0.5 - 1.5[[センチメートル]] (cm) ほどの青紫色の小果実が生る。
: このタイプはさらにノーザンハイブッシュ系とサザンハイブッシュ系、ハーフハイハイブッシュ系の3グループに分けられ、それぞれのグループにたくさんの品種がある。
;ラビットアイブルーベリー系統(栽培種)
: ラビットアイブルーベリーにもたくさんの栽培品種がある。このタイプは、果実が成熟する前にウサギの目のようにきれいなピンク色になることから名付けられた<ref>{{Cite web|title=一般社団法人 日本ブルーベリー協会|url=http://japanblueberry.com/|website=一般社団法人 日本ブルーベリー協会|accessdate=2020-06-01|language=ja}}</ref>。
;ローブッシュブルーベリー(野生種)<ref name="協会">『ブルーベリー全書』35p</ref>


[[葉]]は秋に[[紅葉]]して美しい<ref name=":0">中川重年『日本の樹木 下』([[小学館]]、1991年)42頁</ref>。葉や果実に含まれる[[アントシアニン]]という物質が、葉を赤く紅葉させる主要色素でもある{{sfn|亀田龍吉|2014|p=49}}。枝ごとに葉色が異なったり、他の葉の陰の部分が黄色になるなど一枚の葉の中でも濃淡があったり、紅葉の色幅は豊かである{{sfn|亀田龍吉|2014|p=49}}。[[冬芽]]は卵形で紅紫色、6 - 10枚の芽鱗に包まれていて、芽鱗の縁は褐色である<ref name="鈴木ほか2014"/>。枝先に[[仮頂芽]]がつき、[[側芽]]は枝に[[互生]]し、枝に下の方の側芽は小さい<ref name="鈴木ほか2014"/>。葉痕は半円形で、[[維管束]]痕が1個つく<ref name="鈴木ほか2014"/>。
細かく見ると数百種あるブルーベリーの品種の多くはアメリカで作られた。品種の中には日本、[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]などで作られた品種もある。日本で導入されている品種は100種にも及び多くはアメリカ産品種だが、日本で開発された品種も栽培されている<ref>『ブルーベリー全書』60-61p</ref>。
<gallery mode="nolines" widths="180px">
File:Blueberry tree at the Ibaraki Botanical Garden 01.jpg|ブルーベリーの木の枝
File:Blueberry flower buds at the Ibaraki Botanical Garden.jpg|花蕾
File:Blueberry flowers at the Ibaraki Botanical Garden.jpg|花
</gallery>


== 起源 ==
== 歴史 ==
ブルーベリーのなった植物は[[南アメリカ]]にあった。その植物がカリブ海諸島を経て北アメリカに渡って進化しブルーベリーとなった<ref name="協会"/>。
ブルーベリーの祖先植物は[[南アメリカ]]に自生していた。その植物が[[カリブ海]]諸島を経て北アメリカに渡って進化しブルーベリーとなった<ref name="協会"/>。

[[北アメリカ]]原産{{sfn|亀田龍吉|2014|p=49}}<ref name="鈴木ほか2014"/>。野生種(近縁種)はヨーロッパ、[[東アジア]]などにみられ<ref name="平凡百科-bb"/>、[[ヨーロッパ]]・[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では古くから食用に供し<ref name="JBB-基礎" /><ref name="平凡百科-bb" />、日本でも近縁種の[[クロマメノキ]]・[[ナツハゼ]]・[[シャシャンボ]]・[[クロウスゴ]]など野生種の果実を食用とした<ref name="JBB-基礎" /><ref name="平凡百科-bb" />。栽培用園芸品種群の登場は19世紀の末に遡り<ref name="平凡百科-bb" />、[[北アメリカ大陸]]の[[インディアン]]が利用していた各地の野生種を基にして創出された<ref name="平凡百科-bb"/>。これら北アメリカ産の園芸用ブルーベリーが、食用品種としてヨーロッパや日本に伝播した<ref name="平凡百科-bb"/>。
<!--記事内では「6系統」「重要なのは3系統」「七大品種」「数百種」など多様な記述があり、整合性が難しい。東京農工大サイトによると「野生種+栽培種5系統」(≒6系統?)、『世界大百科事典』では「産業上重要なのは3群」、『日本大百科全書』では「20数種がよく知られる」など。おそらく、生物分類学的な「種」の話と、園芸産業商品としての「品種・商業名」とがまぜこぜになっている。東京農工大にしたがうと、(A)野生種(ローブッシュ)を別にすると、産業用種が(1)ハイブッシュ、(2)北部ハイブッシュ・(3)南部ハイブッシュ・(4)半樹高ハイブッシュ、(5)ラビットアイとなる。(2)-(4)は(1)の子系統。-->

果実は北アメリカでは古くから食用とされており、さらに[[20世紀]]に入り果樹としての[[品種改良]]が進み、ハイブッシュ系、ラビットアイ系、ハーフハイブッシュ系、ローブッシュ系の[[交配]]により多くの品種が作出された。(詳細は後述の「[[ブルーベリー#種と品種|種と品種]]」節を参照。)

== 種と品種 ==
主として[[ビルベリー]](bilberry)などを改良したもので、アメリカ原産の背の低いローブッシュ・ブルーベリーと、背の高いハイブッシュ・ブルーベリーとがある{{sfn|辻井達一|2006|p=168}}。細かく見ると数百種あるブルーベリーの品種の多くは[[アメリカ合衆国]]で作られたが、[[日本]]や[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]などで作られた品種もある。日本で導入されている品種は100種にも及び多くはアメリカ産品種だが、日本で開発された品種も栽培されている<ref>『ブルーベリー全書』pp.60-61</ref>。

1960年に[[アメリカ農務省]](USDA)が七大品種を選定したが、日本の気候に必ずしも合わないことが指摘されている。また、日本に導入された品種名に誤りがあったことが明らかになっている<ref>『ブルーベリー大図鑑』</ref>。

=== ハイブッシュブルーベリー系統(栽培種) ===
高さ50センチメートルから、高いものでは3メートル以上になり、果実は青色から黒紫色になる{{sfn|辻井達一|2006|p=168}}。
このタイプはさらにノーザンハイブッシュ系とサザンハイブッシュ系、ハーフハイハイブッシュ系の3グループに分けられ、それぞれのグループにたくさんの品種がある。
*ハイブッシュ・ブルーベリー
**[[北部ハイブッシュ系|北部ハイブッシュ系ブルーベリー]] ''{{lang|la|[[:en:Northern highbush blueberry|Vaccinium corymbosum]]}}''
***{{lang|en|Spartan}}(スパルタン)
*** {{lang|en|Herbert}}(ハーバート)
*** {{lang|en|Berkeley}}(バークレー)
*** {{lang|en|Blueray}}(ブルーレイ)
***''{{lang|la|Vaccinium boreale}}''(ノーザン・ブルーベリー
**[[南部ハイブッシュ系|南部ハイブッシュ系ブルーベリー]] ''{{lang|la|[[:en:Vaccinium darrowii|Vaccinium darrowii]]}}''
***''{{lang|la|[[:en:Vaccinium elliottii|Vaccinium elliottii]]}}''(エリオット・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium formosum}}''(サザン・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium fuscatum}}''(ブラック・ハイブッシュ・ブルーベリー、{{lang|en|[[シノニム|syn.]]}} ''{{lang|la|V. atrococcum}}'')
***''{{lang|la|Vaccinium hirsutum}}''(ヘアリー・フルーテッド・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium simulatum}}''(アップランド・ハイブッシュ・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium tenellum}}''(サザン・ブルーベリー)

=== ラビットアイブルーベリー系統(栽培種) ===
ラビットアイブルーベリーにもたくさんの栽培品種がある。このタイプは、果実が成熟する前にウサギの目のようにきれいなピンク色になることから名付けられた<ref>{{Cite web|和書|title=一般社団法人 日本ブルーベリー協会|url=http://japanblueberry.com/|website=一般社団法人 日本ブルーベリー協会|accessdate=2020-06-01|language=ja}}</ref>。
*ラビットアイ系ブルーベリー'' {{lang|la|[[:en:Rabbiteye blueberry|Vaccinium virgatum]]}}''({{lang|en|[[シノニム|syn.]]}} ''{{lang|la|V. ashei}}'')
** {{lang|en|Tifblue}}(ティフブルー)
** {{lang|en|Homebell}}(ホームベル)

=== ローブッシュブルーベリー(野生種) ===
高さ15 - 50センチメートル程度の灌木で、果実は明るいブルー色である{{sfn|辻井達一|2006|p=168}}。
*''ローブッシュ系ブルーベリー'' {{lang|la|[[:en:Lowbush blueberry|Vaccinium angustifolium]]}}<ref name="協会">『ブルーベリー全書』p.35</ref>

=== その他(および未分類・不明) ===
*''{{lang|la|Vaccinium caesariense}}''(ニュー・ジャージー・ブルーベリー)
*{{lang|en|Lateblue}} (レイトブルー)
*''{{lang|la|Vaccinium koreanum}}''(コリアン・ブルーベリー)
*''{{lang|la|Vaccinium myrsinites}}''(エバーグリーン・ブルーベリー)
*''{{lang|la|[[:en:Canadian blueberry|Vaccinium myrtilloides]]}}''(カナディアン・ブルーベリー)
*''{{lang|la|Vaccinium pallidum}}''(ドライランド・ブルーベリー)


== 栽培 ==
== 栽培 ==
[[ファイル:Some blueberries 2007 1.JPG|thumb|180px|ブルーベリーの木。]]
[[ファイル:Some blueberries 2007 1.JPG|thumb|180px|ブルーベリーの木。]]
栽培においては[[酸性土壌]]で水捌けが良い土質を好み{{sfn|亀田龍吉|2014|p=49}}、[[農薬]]を一切使わずに栽培することも可能である。乾燥にも過湿にも弱いため、培土の管理に注意する必要がある。(ただし、地植えであればほとんど気を使う必要はない)ラビットアイ系の品種は自家[[受粉]]しにくく、1本だけ植え付けても実つきが悪い傾向にある。同じラビットアイ系で別の品種を一緒に植え付けることで受粉がうまく行われるようになる。ハイブッシュ系のブルーベリーには1本でも結実する品種もあるが、同じハイブッシュ系の異なる品種を一緒に植えることで、より実付きが良く、そして大きな果実が実るようになる<ref name=":1">{{Cite web|和書|title=ブルーベリーの育て方。コツとお手入れを一挙紹介します|url=https://gardenstory.jp/gardening/32844|website=GardenStory (ガーデンストーリー)|accessdate=2020-06-01}}</ref>。


<!-- ハイブッシュ系は自家受粉し自家結実率の高い品種もあるが、ラビットアイ系は他家受粉性であるため、収量を増すためには開花時期の重なる二品種以上を植える事が必要である。受粉は系統に関わらず相互受粉が可能である。--><!-- 出典の注釈が無く、別の情報と内容が一部矛盾するのでコメントアウトします。 -->ブルーベリーは[[挿し木]]で増やすのが一般的である。ブルーベリーの挿し木には、挿し木に用いる枝によって新梢を用いる「緑枝挿し(りょくしざし)」、休眠時期の枝を用いる「休眠枝挿し(きゅうみんしざし)」がある<ref name=":1" />。
栽培においては[[酸性土壌]]で水はけが良い土質を好み、[[農薬]]を一切使わずに栽培することも可能である。乾燥に弱いが過湿にも弱く、培土の管理に注意する必要がある。(地植えであれば殆ど気を使う必要は無い)ラビットアイ系の品種は自家受粉しにくく、1本だけ植え付けても実つきが悪い傾向にある。同じラビットアイ系で別の品種を一緒に植え付けることで受粉がうまく行われるようになる。ハイブッシュ系のブルーベリーは1本でも結実する品種もあるが、同じハイブッシュ系で異なる品種を一緒に植えることで、より実付きが良く、そして大きな果実が実るようになる<ref name=":1">{{Cite web|title=ブルーベリーの育て方。コツとお手入れを一挙紹介します|url=https://gardenstory.jp/gardening/32844|website=GardenStory (ガーデンストーリー)|accessdate=2020-06-01}}</ref>。

<!-- ハイブッシュ系は自家[[受粉]]し自家結実率の高い品種もあるが、ラビットアイ系は他家受粉性であるため、収量を増すためには開花時期の重なる二品種以上を植える事が必要である。受粉は系統に関わらず相互受粉が可能である。--><!-- 出典の注釈が無く、別の情報と内容が一部矛盾するのでコメントアウトします。 -->ブルーベリーは挿し木で増やすのが一般的である。ブルーベリーの挿し木には、挿し木に用いる枝によって新梢を用いる「緑枝挿し(りょくしざし)」、休眠時期の枝を用いる「休眠枝挿し(きゅうみんしざし)」がある<ref name=":1" />。


栽培適地はハイブッシュ系が寒冷地向き、ラビットアイ系が暖地向きとされる。また、サザンハイブッシュ系が作られ暖地でも食味のよいハイブッシュ系の栽培ができるようになった。関東地方の気候は全ての系統の栽培に好適であり、関東地方が日本国内ブルーベリーの主産地となっている。
栽培適地はハイブッシュ系が寒冷地向き、ラビットアイ系が暖地向きとされる。また、サザンハイブッシュ系が作られ暖地でも食味のよいハイブッシュ系の栽培ができるようになった。日本では[[関東地方]]の気候は全ての系統の栽培に好適であり、関東地方が日本国内ブルーベリーの主産地となっている。


== 食用 ==
== 食用 ==
{{See also|ビルベリー#医薬用途の可能性}}
{{See also|ビルベリー#医薬用途の可能性}}
果実は夏から秋にかけて熟し、甘酸っぱい。生食用の他、[[ジャム]]や果実酒、ジュース、菓子などに用いる<ref name=":0" />。一部の品種には[[アントシアニン]]が豊富に含まれている
果実は夏から秋にかけて熟し、甘酸っぱい。生食用の他、[[ジャム]]や[[果実酒]][[ジュース]][[菓子]]材料などに用いる<ref name=":0" />。


ブルーベリーや[[ビルベリー]]を使用した[[健康食品]]や[[サプリメント]]が「い」と謳われて広く市販されているが、[[国立健康・栄養研究所]]の論文調査では、ブルーベリーではデータが見つからず、[[ビルベリー]]ではランダム化比較試験が複数存在するが、目の諸機能の改善を一貫して示してはいない<ref name="hfnet65">{{hfnet|65|ブルーベリー}} 2018/03/09更新</ref><ref>{{hfnet|67|ビルベリー}} 2018/09/20更新</ref>。コレステロールや血圧では3つのメタ分析で効果を示していなかった<ref name="hfnet65"/>。
一部の品種には[[アントシアニン]]が豊富に含まれ、ブルーベリーや[[ビルベリー]]を使用した[[健康食品]]や[[サプリメント]]が「視力回復い」「動脈硬化や老化を防ぐ」「炎症をふせぐ」などと謳われて広く市販されているが、人での有効性・安全性については、質の高い[[臨床試験]]は、ほとんど行われていない<ref name="eJIM0405">{{Cite web |url=https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c04/05.html |title=ビルベリー |publisher =厚生労働省eJIM |date=2021-03-12 |accessdate=2024-03-17}}</ref><ref name="gijika-blue">{{Cite web |url=https://gijika.com/rate/hf_blueberry_extract.html |title=ブルーベリーエキス |publisher =疑似科学を科学的に考える Gijika.com |date=2019-12-10 |accessdate=2024-03-17}}</ref>。[[食品科学#食品化学|食品化学]]からも、食事から摂取したアントシアニンがそのまま吸収され、目に到達することは考えにくい<ref name="book-kinousei">{{Cite book|和書|author=中村宜督 |title=食品でひく 機能性成分の事典 |publisher=[[女子栄養大学]]出版部 |date=2022-7-28 |page=122-128 |isbn=978-4789509268}}</ref>。アントシアニン酸化・分解しやすく、中性からアルカリ性では容易に分解する<ref name="book-kinousei" />。また、[[水溶性]]であるため、体内ではほとんど吸収されない(胃や腸などの消化管を通過できない)<ref name="book-kinousei" />。[[国立健康・栄養研究所]]の論文調査では、ブルーベリーではデータが見つからず、[[ビルベリー]]では[[ランダム化比較試験]]が複数存在するが、目の諸機能の改善を一貫して示してはいない<ref name="hfnet65">{{Cite web|url=https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/k096.pdf |title=ブルーベリー |format=PDF |publisher =[[国立健康・栄養研究所]] |accessdate=2024-03-17}}</ref><ref name="sozai">{{Cite web|url=https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/k100.pdf |title=ビルベリー |format=PDF |publisher =[[国立健康・栄養研究所]] |accessdate=2024-03-17}}</ref>。[[コレステロール]][[血圧]]では3つの[[メタ分析]]で効果を示していなかった<ref name="hfnet65"/>。


;研究例
ブルーベリーから抽出されたアントシアニンを使った72人と59人での偽薬対照クロスオーバー試験2研究では、暗順応と夜間視力の改善は見られず、光退縮後の視力の回復は早くなっていた<ref name="pmid25335781">{{cite journal |authors=Kalt W, McDonald JE, Fillmore SA, Tremblay F |title=Blueberry effects on dark vision and recovery after photobleaching: placebo-controlled crossover studies |journal=J. Agric. Food Chem. |volume=62 |issue=46 |pages=11180-9 |date=November 2014 |pmid=25335781 |doi=10.1021/jf503689c |url=}}</ref>。ビルベーリー由来のアントシアニンが、[[VDT作業]]の眼精疲労を徐々に軽減する作用を示したランダム化比較試験は7研究ある<ref>小川健二郎、原英彰、[http://id.nii.ac.jp/1076/00013010/ ビルベリー由来アントシアニンが目に与える機能性 -ヒト臨床試験と機能性表示食品-] 岐阜薬科大学薬紀要論文 岐阜薬科大学紀要 2016年 65巻 p.20-27</ref>。<!--厳格な試験ではない:[[東京農業大学]]の研究者らによる試験において、乾燥ブルベリーを摂取し3週間後、順応時間などの眼機能改善効果は見い出せなかったと報告されているがこの研究には偽薬対象群が設けられていない<ref>若菜宣明、中林敦代、本間和宏 ほか、[https://doi.org/10.20685/kenkouigaku.16.2_44 ブルーベリーの眼機能改善効果] 日本健康医学会雑誌 2007年 16巻 2号 p.44-48, {{doi|10.20685/kenkouigaku.16.2_44}}</ref>。-->
いくつかの小規模な研究では、有益な効果の可能性が示唆されているが、規模の小さい研究は偶然に得られた可能性が大きいため、これらの知見を裏付けるためにはさらに多くの研究が必要である<ref name="eJIM0405" /><ref name="satoru">{{Cite web|和書|url=https://satoru-blog.com/post-397/ |title=どんな論文が本当に治療効果を証明しているのか? |publisher =大須賀覚 |date=2018-07-13 |accessdate=2022-02-28}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://hfnet.nibiohn.go.jp/fundamental-knowledg/detail771/ |title=その情報は「確かな情報」ですか? |publisher =[[国立健康・栄養研究所]] |date=2021-04-15 |accessdate=2024-03-17}}</ref>。


ブルーベリーから抽出された[[アントシアニン]]を使った72人と59人での[[偽薬]]対照クロスオーバー試験2研究では、暗順応と夜間視力の改善は見られず、光退縮後の視力の回復は早くなっていた<ref name="pmid25335781">{{cite journal |authors=Kalt W, McDonald JE, Fillmore SA, Tremblay F |title=Blueberry effects on dark vision and recovery after photobleaching: placebo-controlled crossover studies |journal=J. Agric. Food Chem. |volume=62 |issue=46 |pages=11180-9 |date=November 2014 |pmid=25335781 |doi=10.1021/jf503689c |url=}}</ref>。
7つのランダム化比較試験からブルーベリーの抽出物や粉末(クランベリージュースでも)は、12週間後までに2型糖尿病の血糖制御に有益な効果が示されていた<ref name="pmid29345498">{{cite journal |authors=Rocha DMUP, Caldas APS, da Silva BP, Hermsdorff HHM, Alfenas RCG |title=Effects of blueberry and cranberry consumption on type 2 diabetes glycemic control: A systematic review |journal=Crit Rev Food Sci Nutr |volume= |issue= |pages=1-13 |date=January 2018 |pmid=29345498 |doi=10.1080/10408398.2018.1430019 |url=}}</ref>。6つのランダム化比較試験をメタアナリシスし、ブルーベリーのサプリメントは血圧への影響はなかった<ref name="pmid27654329">{{cite journal |authors=Zhu Y, Sun J, Lu W, Wang X, Wang X, Han Z, Qiu C |title=Effects of blueberry supplementation on blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials |journal=J Hum Hypertens |volume=31 |issue=3 |pages=165-171 |date=March 2017 |pmid=27654329 |doi=10.1038/jhh.2016.70 |url=}}</ref>。


2019年レビューでは認知機能と気分に対して冷凍ブルーベリー、まるごとブルーベリー、濃縮物の合計11つのランダム化比較試験があり、対象とする年齢や摂取量様々で8つの試験短期記憶や長期記憶、空間記憶改善、気分の改善ありは1研究だった4研究で影響はなかった<ref name="pmid30999017">{{cite journal |authors=Travica N, D'Cunha NM, Naumovski N, Kent K, Mellor DD, Firth J, Georgousopoulou EN, Dean OM, Loughman A, Jacka F, Marx W |title=The effect of blueberry interventions on cognitive performance and mood: A systematic review of randomized controlled trials |journal=Brain Behav. Immun. |volume= |issue= |pages= |date=April 2019 |pmid=30999017 |doi=10.1016/j.bbi.2019.04.001 |url=}}</ref>。同じく2019年のレビューは、11件のランダム化比較試験があり子供と健康な高齢者記憶と実行機能、軽度認知障害成人の精神運動に利益を示していた<ref name="pmid30941401">{{cite journal |authors=Hein S, Whyte AR, Wood E, Rodriguez-Mateos A, Williams CM |title=Systematic review of the effects of blueberry on cognitive performance as we age |journal=J. Gerontol. A Biol. Sci. Med. Sci. |volume= |issue= |pages= |date=April 2019 |pmid=30941401 |doi=10.1093/gerona/glz082 |url=}}</ref>。
7つランダム化比較試験からブルーベリーの抽出物や粉末([[クランベリー]]ジュースも)は、12週間後まに2型[[糖尿病]]血糖制御に有益な効果示されていた<ref name="pmid29345498">{{cite journal |authors=Rocha DMUP, Caldas APS, da Silva BP, Hermsdorff HHM, Alfenas RCG |title=Effects of blueberry and cranberry consumption on type 2 diabetes glycemic control: A systematic review |journal=Crit Rev Food Sci Nutr |volume= |issue= |pages=1-13 |date=January 2018 |pmid=29345498 |doi=10.1080/10408398.2018.1430019 |url=}}</ref>。6つのランダム化比較試験をメタ分析しブルーベリーサプリメントは血圧へ影響はなかった<ref name="pmid27654329">{{cite journal |authors=Zhu Y, Sun J, Lu W, Wang X, Wang X, Han Z, Qiu C |title=Effects of blueberry supplementation on blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials |journal=J Hum Hypertens |volume=31 |issue=3 |pages=165-171 |date=March 2017 |pmid=27654329 |doi=10.1038/jhh.2016.70 |url=}}</ref>。


=== 栄養素 ===
=== 栄養素 ===
63行目: 110行目:
== 生産と流通 ==
== 生産と流通 ==
[[ファイル:Gepflückte Wald-Heidelbeeren.JPG|thumb|収穫されたブルーベリー。]]
[[ファイル:Gepflückte Wald-Heidelbeeren.JPG|thumb|収穫されたブルーベリー。]]
{| class="wikitable" style="float:right; clear:right; text-align:center;"

|+ブルーベリー生産量 - 2020
長期輸送・市場流通に充分耐えうる品質のものが世界中から[[日本]]の市場へ供給され、[[通関]]は通常検査で行われる。
|-

! 国
=== 世界的な代表産地 ===
! トン
* [[アメリカ合衆国|アメリカ]](4 - 10月)
|-
| {{USA}} || 294,000
|-
| {{PER}} || 180,300
|-
| {{CAN}} || 146,370
|-
| {{MEX}} || 50,293
|-
| {{ESP}} || 48,520
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| '''世界''' || '''850,886'''
|-
| colspan="2" |<small>出典: 国連のFAOSTAT<ref name="fao">{{Cite web |title=Blueberry production in 2020; Crops/Regions/World list/Production Quantity (pick lists) |url=http://www.fao.org/faostat/en/#data/QC|date=2022 |access-date=16 May 2022 |publisher=UN Food and Agriculture Organization, Corporate Statistical Database (FAOSTAT) }}</ref></small>
|}
=== 主要生産国 ===
* [[アメリカ合衆国|米国]](4 - 10月)
* [[オーストラリア]](9 - 3月)
* [[オーストラリア]](9 - 3月)
* [[ニュージーランド]](11 - 3月)
* [[ニュージーランド]](11 - 3月)
* [[チリ]](11 - 4月)
* [[チリ]](11 - 4月)


他に[[カナダ]]、[[メキシコ]]、[[アルゼンチン]]、[[中華人民共和国|中国]]などにもある。
他に[[カナダ]]、[[メキシコ]]、[[アルゼンチン]]、[[中華人民共和国|中国]]などにも産地がある。


=== 日本の生産の歴史 ===
=== 日本 ===
国内産に加え、長期輸送・市場流通に十分耐えうる品質のものが世界中から日本の市場へ供給され、[[通関]]は通常検査で行われる。
日本にブルーベリーが導入されたのは1951年で、当時の農林水産省北海道農業試験場が米国からハイブッシュ・ブルーベリー(比較的冷涼な気候を好む栽培種)を導入したのが始まりである。一方、暖地に対応するラビットアイブルーベリーは1962年に農林水産省によって導入された<ref>{{Cite web|title=ブルーベリー - 先進植物工場研究施設|url=http://web.tuat.ac.jp/~plant-f/blueberry.html|website=web.tuat.ac.jp|accessdate=2020-06-01}}</ref>。このラビットアイ系品種は1962年に[[ジョージア州]]から導入され、1968年より[[東京都]][[小平市]]で経済栽培が始まった。1971年、[[長野県]]にハイブッシュ系品種が導入され、栽培に適した高冷地のある[[群馬県]]、[[新潟県]]、[[山梨県]]、[[宮城県]]などを中心に各県で生産されるようになった。東北地方では、[[岩手県]]の[[岩手大学]]で行われた公開講座により経済栽培が広まった。[[石川県]][[鳳珠郡]][[能登町]]の旧[[柳田村]]域では、土地の事情からラビットアイ系品種が栽培されている<ref>『ブルーベリー大図鑑-品種読本-』p.299-307</ref>。


==== 日本の生産の歴史 ====
1990年以降、パン食文化の浸透や健康ブーム(健康食品としての宣伝効果のほか、外国産農産物に対する不安視)などを受け、関東近郊に摘み取り目的の[[観光農園]]や産地が急増した。関東地方でブルーベリー栽培が盛んになった理由は、元々小平市で試験栽培が行われたことで栽培ノウハウを持っていたこと、比較的寒冷で過湿でないこと、[[関東ローム層]]([[火山灰土]])はブルーベリーが好む酸性土壌であり、砂礫も含んでいるため水はけも良いこと、また社会的な理由として、摘み取り果樹園での栽培が主流であること、出荷が難しく鮮度が重要視されることから大消費地に近いことへの優位性、その他休耕地の活用目的、灌木のため、子供にも果実を手に取れるなど観光農園として適性であったことなどが理由となっている。
日本にブルーベリーが導入されたのは1951年で、当時の[[農林水産省]][[北海道立農業試験場|北海道農業試験場]]が米国からハイブッシュ・ブルーベリー(比較的冷涼な気候を好む栽培種)を導入したのが始まりである。一方、暖地に対応するラビットアイブルーベリーは1962年に農林水産省によって導入された<ref>{{Cite web|和書|title=ブルーベリー - 先進植物工場研究施設|url=http://web.tuat.ac.jp/~plant-f/blueberry.html|website=web.tuat.ac.jp|accessdate=2020-06-01}}</ref>。このラビットアイ系品種は1962年に米国[[ジョージア州]]から導入され、1968年より[[東京都]][[小平市]]で商業栽培が始まった。
<ref name=読売20221219>[https://www.yomiuri.co.jp/local/tokyotama/feature/CO037511/20221220-OYTAT50000/ 【東京探Q】ブルーベリー なぜ都内が収穫量日本一?立地生かし観光農園発展:日持ちしない特徴 近さ有利に]『[[読売新聞]]』朝刊2022年12月19日(都民面)2022年12月28日閲覧</ref>。「ブルーベリー栽培発祥の地」を掲げる島村ブルーベリー園経営者の島村速雄によると、[[東京農工大学]]時代の恩師で、「日本のブルーベリーの父」と呼ばれる岩垣駛夫(はやお)教授から約130本の[[苗木]]を託されたのが始まりだが、当初は日本での認知度が低く、青果市場に持ち込んでも取引を渋られたという<ref name=読売20221219/>。


1971年、[[長野県]]にハイブッシュ系品種が導入され、栽培に適した高冷地のある[[群馬県]]、[[新潟県]]、[[山梨県]]、[[宮城県]]などを中心に各県で生産されるようになった。[[東北地方]]では、[[岩手県]]の[[岩手大学]]で行われた公開講座により経済栽培が広まった。[[石川県]][[鳳珠郡]][[能登町]]の旧[[柳田村]]域では、土地の事情からラビットアイ系品種が栽培されている<ref>『ブルーベリー大図鑑-品種読本-』pp.299-307</ref>。
=== 日本の主な産地 ===

2014年現在の収穫量国内1位は長野県、2位は茨城県、群馬県、東京都で争っており、神奈川県を除く1都5県が10位以内、神奈川県も15位以内と関東地方に産地が集中している。その他生産が盛んなのは岩手県を中心とした東北地方のほか滋賀県、兵庫県、愛媛県、熊本県など、西日本でも高原地帯を中心に栽培が盛んとなっている。加工品は頭打ちだが、生食での人気で年々需要が高まっており、2014年の収穫量は1989年(平成元年)の6倍以上の約2700トンとなっている(輸入量の1970トンを上回る)。農林水産省では特産果樹として統計をとっている。
1990年以降、パン食文化の浸透や健康ブーム(健康食品としての宣伝効果のほか、外国産農産物に対する不安視)などを受け、関東近郊に摘み取り目的の観光農園や産地が急増した。都道府県別収穫量は、1981年から2014年まで長野県が首位を保っていたが、2015年から東京都が追い抜いている<ref name=読売20221219/>。東京都など関東でブルーベリー栽培が増えた理由としては、追熟で美味しくなる果物と逆に生食用は日持ちがしないうえ、観光農園での摘み取り体験向きであり大消費地との近さが有利に働いたことが大きい<ref name=読売20221219/>。栽培に適した酸性土壌<ref name=読売20221219/>として[[火山灰土]]の[[関東ローム層]]が広がっていること、砂礫も含んでいるため水はけも良いことなども挙げられる。東京都[[練馬区]]では[[都市農業]]を残すために補助金で宣伝でブルーベリー栽培を支援している<ref name=読売20221219/>。

==== 日本の主な産地 ====
2015年以降は東京都が生産量首位となっている<ref name=読売20221219/>。2014年時点の収穫量国内1位は長野県、2位は[[茨城県]]、群馬県、東京都だった。[[神奈川県]]を除く1都5県が10位以内、神奈川県も15位以内と関東地方に産地が集中している。その他生産が盛んなのは岩手県を中心とした東北地方のほか[[滋賀県]]、[[兵庫県]]、[[愛媛県]]、[[熊本県]]など[[西日本]]でも高原地帯を中心に栽培が盛んとなっている。加工品は頭打ちだが、生食での人気で年々需要が高まっており、2014年の収穫量は1989年([[平成]]元年)の6倍以上の約2700トンとなっている(輸入量の1970トンを上回る)。[[農林水産省]]では特産果樹として統計をとっている。
*北海道
*北海道
**余市町、仁木町
**[[余市町]][[仁木町]]
*青森県
*青森県
**中泊町(旧中里町)
**[[中泊町]](旧[[中里町]]
*岩手県 …国内5-8位。歴史の古い産地で、1976年に長野果樹試験場より[[苗木]]が送られ、冷害対策の作物として広まった<ref>[http://www.ja-iwate.or.jp/iwatenosyun/1007/index.html JA岩手県中央会 岩手の旬夏編 ブルーベリー]</ref>以後、関東地方でブルーベリー栽培が盛んになる以前は長野に次ぐ国内2位の産地となっていた。加工品が主流で、他県への出荷も多い。
*岩手県 …国内5-8位。歴史の古い産地で、1976年に長野果樹試験場より苗木が送られ、[[冷害]]対策の作物として広まった<ref>[http://www.ja-iwate.or.jp/iwatenosyun/1007/index.html 岩手の旬夏編 ブルーベリー] JA岩手県中央会</ref>以後、関東地方でブルーベリー栽培が盛んになる以前は長野に次ぐ国内2位の産地となっていた。加工品が主流で、他県への出荷も多い。
**岩手町、奥州市(旧胆沢町)、一関市
**[[岩手町]][[奥州市]](旧[[胆沢町]])、[[一関市]]
*宮城県
*宮城県
**栗原市(旧若柳町)、[[大崎市]](旧[[鳴子町]])、[[蔵王町]]
**[[栗原市]](旧[[若柳町]])、[[大崎市]](旧[[鳴子町]])、[[蔵王町]]
*山形県
*山形県
**鶴岡市、寒河江市
**[[鶴岡市]][[寒河江市]]
*福島県
*福島県
**三春町、棚倉町
**[[三春町]][[棚倉町]]
*茨城県 …収穫量国内2-4位。つくばは三大産地と呼ばれる国内有数の産地で、「ブルーベリーシティー」宣言を行っている。
*茨城県 …収穫量国内2-4位。[[つくば市]]は三大産地と呼ばれる国内有数の産地で、「ブルーベリーシティー」宣言を行っている。
**つくば市、かすみがうら市(旧千代田町)、小美玉市(旧美野里町)
**つくば市、[[かすみがうら市]](旧[[千代田町 (茨城県)|千代田町]])、[[小美玉市]](旧[[美野里町]]
*栃木県
*栃木県
**佐野市、大田原市、日光市
**佐野市、[[大田原市]][[日光市]]
*群馬県 …収穫量国内2-4位。1990年以降は、長野に次ぐ主産地の一つで、桑畑からの転作で広まった。高原の気候を利用したハイブッシュ種のほか、県独自の品種も育成している。
*群馬県 …収穫量国内2-4位。1990年以降は、長野に次ぐ主産地の一つで、桑畑からの転作で広まった。高原の気候を利用したハイブッシュ種のほか、県独自の品種も育成している。
**川場村、沼田市、前橋市
**[[川場村]][[沼田市]][[前橋市]]
*埼玉県 …国内5-8位。美里町は荒廃した桑畑を利用したブルーベリー栽培で注目された町であり、多彩な品種を育成している。
*埼玉県 …国内5-8位。[[美里町 (埼玉県)|美里町]]は荒廃した桑畑を利用したブルーベリー栽培で注目された町であり、多彩な品種を育成している。
**美里町、熊谷市(旧江南町)
**美里町、[[熊谷市]](旧[[江南町]]
*千葉県 …国内5-8位。木更津が中心産地。木更津では市場出荷も多く、ハウス栽培も行われている。
*千葉県 …国内5-8位。[[木更津市]]が中心産地。木更津では市場出荷も多く、ハウス栽培も行われている。
**木更津市、富津市、睦沢町、千葉市
**木更津市、[[富津市]][[睦沢町]][[千葉市]]
*東京都 …収穫量国内1-4位。小平は国内ブルーベリー栽培発祥地で、土壌が適性であること、スプリンクラー、噴霧器などの農機具の制限も受けないことで、1990年代以降他作物に代わり、次第に農地が増加し、2010年以降は国内上位となり、2015年の収穫量は1位となっている<ref>特産果樹生産動態等調査2015年による</ref>。また、小平は三大ブルーベリー産地と呼ばれたが、近年は都内の他産地の方が収穫量が多い。
*東京都 …収穫量国内1-4位。小平は国内ブルーベリー栽培発祥地<ref name=読売20221219/>で、土壌が適性であること、スプリンクラー、噴霧器などの農機具の制限も受けないことで、1990年代以降他作物に代わり、次第に農地が増加し、2010年以降は国内上位となり、2015年の収穫量は1位となっている<ref>特産果樹生産動態等調査2015年による</ref>。また、小平は三大ブルーベリー産地と呼ばれたが、近年は都内の他産地の方が収穫量が多い。
**八王子市、練馬区、日野市、小平市、国分寺市、立川市など
**[[多摩地域]]([[八王子市]][[日野市]]、小平市、[[国分寺市]][[立川市]]や練馬区など
*神奈川県
*神奈川県
**小田原市、相模原市
**[[小田原市]][[相模原市]]
*新潟県 …かつての主要産地で100トンをす収穫量があったが、2015年の収穫量は10数トン程度となっている。<!-- 収穫量が激減、県内で衰退した理由を御存知の方、また出典を提供できる方、ぜひお願いします -->
*新潟県 …かつての主要産地で100トンをす収穫量があったが、2015年の収穫量は十1数トン程度となっている。<!-- 収穫量が激減、県内で衰退した理由を御存知の方、また出典を提供できる方、ぜひお願いします -->
**新潟市南区(旧白根市)、新発田市など
**[[新潟市]]南区(旧[[白根市]])、[[新発田市]]など
*長野県 …収穫量国内1-3位。ハイブッシュ種の主産地で、収穫量はほぼ毎年国内トップ。全県で生産しているが、信濃町が一大産地となっている。
*長野県 …収穫量国内1-3位。ハイブッシュ種の主産地で、収穫量はほぼ毎年国内トップ。全県で生産しているが、信濃町が一大産地となっている。
**信濃町、大町市、長野市
**[[信濃町 (代表的なトピック)|信濃町]][[大町市]][[長野市]]
*山梨県 …北杜市(旧明野村)はつくば、小平とともに三大ブルーベリー産地と呼ばれたが、2014年の収穫量は10数トンと後発県より少なくなっている。
*山梨県 …[[北杜市]](旧[[明野村]])はつくば、小平とともに三大ブルーベリー産地と呼ばれたが、2014年の収穫量は数トンと後発県より少なくなっている。
**北杜市(旧明野村)
**北杜市(旧明野村)
*滋賀県
*滋賀県
**高島市(旧マキノ町)、米原市(旧米原町)
**[[高島市]](旧[[マキノ町]])、[[米原市]](旧米原町)
*兵庫県
*兵庫県
**丹波市(旧氷上町、旧市島町)
**[[丹波市]](旧[[氷上町]]、旧[[市島町]]
*愛媛県 …国内6-8位。
*愛媛県 …国内6-8位。
**松山市、砥部町、内子町、西条市
**[[松山市]][[砥部町]][[内子町]][[西条市]]
*熊本県
*熊本県
**山都町(旧蘇陽町)
**[[山都町]](旧[[蘇陽町]]
*鹿児島県
*[[鹿児島県]]
**霧島市ほか
**[[霧島市]]ほか


== ヨウシュヤマゴボウの実の誤食リスク ==
== 種と品種 ==
北米原産で日本では[[帰化植物]]として[[雑草]]化している[[ヨウシュヤマゴボウ]]は、[[ヤマゴボウ]]に似た根だけでなく、ブルーベリーのように見える果実にも毒を含むため誤食しないよう注意が必要で、見つけ次第抜き取ることが望ましい<ref>[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079871.html 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ヨウシュヤマゴボウ] [[厚生労働省]](2022年12月28日閲覧)</ref><ref>「[https://www.chunichi.co.jp/article/110807 ブルーベリー似でも食べないで!有毒ヨウシュヤマゴボウ、揖斐川で繁殖]」[[中日新聞]](2020年8月27日)2022年12月28日閲覧</ref>。ヨウシュヤマゴボウは[[多年生]][[草本]]であり、ブルーベリーのような[[木|木本植物]]ではないが、草丈が2000mm位まで生長するためにブルーベリーと似た外観に見える可能性がある。
1960年にアメリカ農務省(USDA)が七大品種を選定したが、日本の気候に必ずしもあわないことが指摘されている。また、日本に導入された品種名に誤りがあったことが明らかになっている<ref>『ブルーベリー大図鑑』</ref>。


ただし、一箇所に複数、青紫色の実が着くブルーベリーとは異なり、一つの果軸に多くの黒紫色の実が生ることや、茎が赤みを呈してブルーベリーのような幹ではないことから、見分けは容易である。
*ハイブッシュ・ブルーベリー
**[[北部ハイブッシュ系|北部ハイブッシュ系ブルーベリー]] ''{{lang|la|[[:en:Northern highbush blueberry|Vaccinium corymbosum]]}}''
***{{lang|en|Spartan}} (スパルタン)
*** {{lang|en|Herbert}} (ハーバート)
*** {{lang|en|Berkeley}} (バークレー)
*** {{lang|en|Blueray}} (ブルーレイ)
***''{{lang|la|Vaccinium boreale}}'' (ノーザン・ブルーベリー
**[[南部ハイブッシュ系|南部ハイブッシュ系ブルーベリー]] ''{{lang|la|[[:en:Vaccinium darrowii|Vaccinium darrowii]]}}''
***''{{lang|la|[[:en:Vaccinium elliottii|Vaccinium elliottii]]}}'' (エリオット・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium formosum}}'' (サザン・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium fuscatum}}'' (ブラック・ハイブッシュ・ブルーベリー、{{lang|en|[[シノニム|syn.]]}} ''{{lang|la|V. atrococcum}}'')
***''{{lang|la|Vaccinium hirsutum}}'' (ヘアリー・フルーテッド・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium simulatum}}'' (アップランド・ハイブッシュ・ブルーベリー)
***''{{lang|la|Vaccinium tenellum}}'' (サザン・ブルーベリー)

*ラビットアイ系ブルーベリー'' {{lang|la|[[:en:Rabbiteye blueberry|Vaccinium virgatum]]}}''({{lang|en|[[シノニム|syn.]]}} ''{{lang|la|V. ashei}}'')
** {{lang|en|Tifblue}} (ティフブルー)
** {{lang|en|Homebell}} (ホームベル)

*''ローブッシュ系ブルーベリー'' {{lang|la|[[:en:Lowbush blueberry|Vaccinium angustifolium]]}}

*その他(および未分類・不明)
**''{{lang|la|Vaccinium caesariense}}'' (ニュー・ジャージー・ブルーベリー)
**{{lang|en|Lateblue}} (レイトブルー)
**''{{lang|la|Vaccinium koreanum}}'' (コリアン・ブルーベリー)
**''{{lang|la|Vaccinium myrsinites}}'' (エバーグリーン・ブルーベリー)
**''{{lang|la|[[:en:Canadian blueberry|Vaccinium myrtilloides]]}}'' (カナディアン・ブルーベリー)
**''{{lang|la|Vaccinium pallidum}}'' (ドライランド・ブルーベリー)
== 外観の似た植物 ==
*帰化をして野草となって生えている[[ヨウシュヤマゴボウ]]の果実を,ブルーベリーと間違えて収穫したり食し,事故が起きている.ヨウシュヤマゴボウは[[多年生]][[草本]]でありブルーベリーの様な[[木本]]ではないのであるが,草丈が2000mm位迄生長するので間違いをするようである.果実も黒紫色になり一つの果軸に多くの実が成るので,一箇所に幾つづつかの実が着くブルーベリーと違うし,茎が赤みを呈する茎でありブルーベリーの様な幹ではないので,気を付けて観察をすれば見分けが着く筈である.


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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{{ウィキポータルリンク|果物|[[画像:Illustration des fruits en pays Bassa.jpg|50px|Portal:果物]]}}
{{ウィキポータルリンク|果物|[[画像:Illustration des fruits en pays Bassa.jpg|50px|Portal:果物]]}}

=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* 『ブルーベリー大図鑑』 渡辺順司 マルモ出版 2006年 ISBN 978-4944091416
* 『ブルーベリー大図鑑』渡辺順司 マルモ出版 2006年 ISBN 978-4944091416
* 『ブルーベリー全書』日本ブルーベリー協会、創森社、2005年 ISBN 9784883401949
* 『ブルーベリー全書』日本ブルーベリー協会、創森社、2005年 ISBN 9784883401949
* {{Cite book|和書|author =鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|title =樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種|date=2014-10-10|publisher =[[誠文堂新光社]]|series=ネイチャーウォチングガイドブック|isbn=978-4-416-61438-9|page =72|ref=harv}}
* 半沢早苗 ほか、『[https://hdl.handle.net/10748/4085 東京都練馬区におけるブルーベリー観光農園の 立地とその現状]』 観光科学研究(3) , pp.155 - 168 , 2010-03-30, {{hdl|10748/4085}}
* {{Cite book|和書|author =[[辻井達一]]|title =続・日本の樹木|date =2006-02-25|publisher =[[中央公論新社]]|series =中公新書|isbn =4-12-101834-6|pages =167 - 171|ref=harv}}
* 半沢早苗 ほか「[https://hdl.handle.net/10748/4085 東京都練馬区におけるブルーベリー観光農園の 立地とその現状]」『観光科学研究』(3) , pp.155 - 168 , 2010-03-30, {{hdl|10748/4085}}
*{{Cite book|和書|author=中村宜督 |title=食品でひく 機能性成分の事典 |publisher=[[女子栄養大学]]出版部 |date=2022-7-28 |page=122-128 |isbn=978-4789509268}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commons&cat|Vaccinium corymbosum}}
{{Commons&cat|Vaccinium corymbosum}}
* [[ブルーム (果実)]] - 果粉。着果後に果皮表面を覆う白い粉状の蝋物質農薬ではなく天然物質であり無害。
* [[ブルーム (果実)]] - 果粉。着果後に果皮表面を覆う白い粉状の[[]]物質。[[農薬]]ではなく天然物質で無害である
* [[スーパーフード]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/k096.pdf ブルーベリー] - [[国立健康・栄養研究所]]
*{{cite journal |authors=Ma L, Sun Z, Zeng Y, Luo M, Yang J |title=Molecular Mechanism and Health Role of Functional Ingredients in Blueberry for Chronic Disease in Human Beings |journal=Int J Mol Sci |volume=19 |issue=9 |pages= |date=September 2018 |pmid=30223619 |pmc=6164568 |doi=10.3390/ijms19092785 |url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmid/30223619/}}
* [https://gijika.com/rate/hf_blueberry_extract.html ブルーベリーエキス | 疑似科学を科学的に考える] [[石川幹人#「疑似科学」に対する情報拠点サイト|Gijika.com]] - 「ヒトの眼に良い」という主張について評定、評価は論理性以外は全て最低評価のE([[疑似科学]])
*[http://web.tuat.ac.jp/~plant-f/blueberry.html 「ブルーベリー」(東京農工大学先進植物工場研究施設ウェブサイトより)]
* [http://web.tuat.ac.jp/~plant-f/blueberry.html 「ブルーベリー」(東京農工大学先進植物工場研究施設ウェブサイトより)]
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[[Category:ブルーベリー|*]]
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2024年8月28日 (水) 08:13時点における最新版

ブルーベリー
ブルーベリー
ブルーベリー
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
キク類 asterids
: ツツジ目 Ericales
: ツツジ科 Ericaceae
亜科 : スノキ亜科 Vaccinoideae
: スノキ属 Vaccinium
: シアノコカス Cyanococcus
和名
ブルーベリー、ヌマスノキ、
アメリカスノキ
品種

ブルーベリー: blueberry)は、ツツジ科スノキ属シアノコカス節に分類される落葉低木およびその果実ベリー)の総称[1][2][3][4]。果実は生食・加工いずれにも用いられる[5]。別名はヌマスノキ[6]。英名のブルーは果実の青紫色に由来し、ベリーは「小さな実」の意味である[7]。いくつかの系統と品種があり、果樹庭木として植えられる[8]

ブルーベリーは大別して6系統(種・タイプ)あるが、食用として重要なのはハイブッシュ系・ラビットアイ系・ローブッシュ系の3系統(種・タイプ)である。そのうち、栽培種にはハイブッシュ系とラビットアイ系の2系統ある[7]。細かい品種は数百種にも及ぶ。

植物としての形態・生態

[編集]

成木の樹高は品種によって違うが、概ね1 - 3メートル (m) になる[8]。北アメリカ大陸でのみ栽培される野生種に近い品種は数十cm程度の低木である。幹は単生、あるいは株立ちすることもある[8]樹皮は灰褐色で縦に筋があり、やがて裂けて剥がれる[8]。若い枝は淡灰褐色で毛がある[8]。花期は4 - 5月(日本の場合)[8]。春に、ドウダンツツジに似た白またはピンク色の釣鐘状の花を咲かせ、花後に0.5 - 1.5センチメートル (cm) ほどの青紫色の小果実が生る。

は秋に紅葉して美しい[9]。葉や果実に含まれるアントシアニンという物質が、葉を赤く紅葉させる主要色素でもある[7]。枝ごとに葉色が異なったり、他の葉の陰の部分が黄色になるなど一枚の葉の中でも濃淡があったり、紅葉の色幅は豊かである[7]冬芽は卵形で紅紫色、6 - 10枚の芽鱗に包まれていて、芽鱗の縁は褐色である[8]。枝先に仮頂芽がつき、側芽は枝に互生し、枝に下の方の側芽は小さい[8]。葉痕は半円形で、維管束痕が1個つく[8]

歴史

[編集]

ブルーベリーの祖先にあたる植物は南アメリカに自生していた。その植物がカリブ海諸島を経て北アメリカに渡って進化し、ブルーベリーとなった[10]

北アメリカ原産[7][8]。野生種(近縁種)はヨーロッパ、東アジアなどにみられ[5]ヨーロッパアメリカでは古くから食用に供し[3][5]、日本でも近縁種のクロマメノキナツハゼシャシャンボクロウスゴなど野生種の果実を食用とした[3][5]。栽培用園芸品種群の登場は19世紀の末に遡り[5]北アメリカ大陸インディアンが利用していた各地の野生種を基にして創出された[5]。これら北アメリカ産の園芸用ブルーベリーが、食用品種としてヨーロッパや日本に伝播した[5]

果実は北アメリカでは古くから食用とされており、さらに20世紀に入り果樹としての品種改良が進み、ハイブッシュ系、ラビットアイ系、ハーフハイブッシュ系、ローブッシュ系の交配により多くの品種が作出された。(詳細は後述の「種と品種」節を参照。)

種と品種

[編集]

主としてビルベリー(bilberry)などを改良したもので、アメリカ原産の背の低いローブッシュ・ブルーベリーと、背の高いハイブッシュ・ブルーベリーとがある[11]。細かく見ると数百種あるブルーベリーの品種の多くはアメリカ合衆国で作られたが、日本オーストラリアニュージーランドなどで作られた品種もある。日本で導入されている品種は100種にも及び多くはアメリカ産品種だが、日本で開発された品種も栽培されている[12]

1960年にアメリカ農務省(USDA)が七大品種を選定したが、日本の気候に必ずしも合わないことが指摘されている。また、日本に導入された品種名に誤りがあったことが明らかになっている[13]

ハイブッシュブルーベリー系統(栽培種)

[編集]

高さ50センチメートルから、高いものでは3メートル以上になり、果実は青色から黒紫色になる[11]。 このタイプはさらにノーザンハイブッシュ系とサザンハイブッシュ系、ハーフハイハイブッシュ系の3グループに分けられ、それぞれのグループにたくさんの品種がある。

  • ハイブッシュ・ブルーベリー

ラビットアイブルーベリー系統(栽培種)

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ラビットアイブルーベリーにもたくさんの栽培品種がある。このタイプは、果実が成熟する前にウサギの目のようにきれいなピンク色になることから名付けられた[14]

  • ラビットアイ系ブルーベリー Vaccinium virgatumsyn. V. ashei
    • Tifblue(ティフブルー)
    • Homebell(ホームベル)

ローブッシュブルーベリー(野生種)

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高さ15 - 50センチメートル程度の灌木で、果実は明るいブルー色である[11]

その他(および未分類・不明)

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  • Vaccinium caesariense(ニュー・ジャージー・ブルーベリー)
  • Lateblue (レイトブルー)
  • Vaccinium koreanum(コリアン・ブルーベリー)
  • Vaccinium myrsinites(エバーグリーン・ブルーベリー)
  • Vaccinium myrtilloides(カナディアン・ブルーベリー)
  • Vaccinium pallidum(ドライランド・ブルーベリー)

栽培

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ブルーベリーの木。

栽培においては酸性土壌で水捌けが良い土質を好み[7]農薬を一切使わずに栽培することも可能である。乾燥にも過湿にも弱いため、培土の管理に注意する必要がある。(ただし、地植えであればほとんど気を使う必要はない)ラビットアイ系の品種は自家受粉しにくく、1本だけ植え付けても実つきが悪い傾向にある。同じラビットアイ系で別の品種を一緒に植え付けることで受粉がうまく行われるようになる。ハイブッシュ系のブルーベリーには1本でも結実する品種もあるが、同じハイブッシュ系の異なる品種を一緒に植えることで、より実付きが良く、そして大きな果実が実るようになる[15]

ブルーベリーは挿し木で増やすのが一般的である。ブルーベリーの挿し木には、挿し木に用いる枝によって新梢を用いる「緑枝挿し(りょくしざし)」、休眠時期の枝を用いる「休眠枝挿し(きゅうみんしざし)」がある[15]

栽培適地はハイブッシュ系が寒冷地向き、ラビットアイ系が暖地向きとされる。また、サザンハイブッシュ系が作られ暖地でも食味のよいハイブッシュ系の栽培ができるようになった。日本では関東地方の気候は全ての系統の栽培に好適であり、関東地方が日本国内ブルーベリーの主産地となっている。

食用

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果実は夏から秋にかけて熟し、甘酸っぱい。生食用の他、ジャム果実酒ジュース菓子材料などに用いる[9]

一部の品種にはアントシアニンが豊富に含まれ、ブルーベリーやビルベリーを使用した健康食品サプリメントが「視力回復によい」「動脈硬化や老化を防ぐ」「炎症をふせぐ」などと謳われて広く市販されているが、人での有効性・安全性については、質の高い臨床試験は、ほとんど行われていない[16][17]食品化学からも、食事から摂取したアントシアニンがそのまま吸収され、目に到達することは考えにくい[18]。アントシアニン酸化・分解しやすく、中性からアルカリ性では容易に分解する[18]。また、水溶性であるため、体内ではほとんど吸収されない(胃や腸などの消化管を通過できない)[18]国立健康・栄養研究所の論文調査では、ブルーベリーではデータが見つからず、ビルベリーではランダム化比較試験が複数存在するが、目の諸機能の改善を一貫して示してはいない[19][20]コレステロール血圧では3つのメタ分析で効果を示していなかった[19]

研究例

いくつかの小規模な研究では、有益な効果の可能性が示唆されているが、規模の小さい研究は偶然に得られた可能性が大きいため、これらの知見を裏付けるためにはさらに多くの研究が必要である[16][21][22]

ブルーベリーから抽出されたアントシアニンを使った72人と59人での偽薬対照クロスオーバー試験2研究では、暗順応と夜間視力の改善は見られず、光退縮後の視力の回復は早くなっていた[23]

7つのランダム化比較試験からブルーベリーの抽出物や粉末(クランベリージュースでも)は、12週間後までに2型糖尿病の血糖制御に有益な効果が示されていた[24]。6つのランダム化比較試験をメタ分析し、ブルーベリーのサプリメントは血圧への影響はなかった[25]

栄養素

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ブルーベリーの栄養価
ブルーベリー、生
100 gあたりの栄養価
エネルギー 240 kJ (57 kcal)
14.49 g
糖類 9.96 g
食物繊維 2.4 g
0.33 g
飽和脂肪酸 0.028 g
一価不飽和 0.047 g
多価不飽和 0.146 g
0.74 g
トリプトファン 0.003 g
トレオニン 0.02 g
イソロイシン 0.023 g
ロイシン 0.044 g
リシン 0.013 g
メチオニン 0.012 g
シスチン 0.008 g
フェニルアラニン 0.026 g
チロシン 0.009 g
バリン 0.031 g
アルギニン 0.037 g
ヒスチジン 0.011 g
アラニン 0.031 g
アスパラギン酸 0.057 g
グルタミン酸 0.091 g
グリシン 0.031 g
プロリン 0.028 g
セリン 0.022 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
3 µg
(0%)
32 µg
80 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.037 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.041 mg
ナイアシン (B3)
(3%)
0.418 mg
パントテン酸 (B5)
(2%)
0.124 mg
ビタミンB6
(4%)
0.052 mg
葉酸 (B9)
(2%)
6 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(1%)
6 mg
ビタミンC
(12%)
9.7 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(4%)
0.57 mg
ビタミンK
(18%)
19.3 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(2%)
77 mg
カルシウム
(1%)
6 mg
マグネシウム
(2%)
6 mg
リン
(2%)
12 mg
鉄分
(2%)
0.28 mg
亜鉛
(2%)
0.16 mg
マンガン
(16%)
0.336 mg
セレン
(0%)
0.1 µg
他の成分
水分 84.21 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

生産と流通

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収穫されたブルーベリー。
ブルーベリー生産量 - 2020
 トン
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 294,000
ペルーの旗 ペルー 180,300
カナダの旗 カナダ 146,370
メキシコの旗 メキシコ 50,293
スペインの旗 スペイン 48,520
世界 850,886
出典: 国連のFAOSTAT[26]

主要生産国

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他にカナダメキシコアルゼンチン中国などにも産地がある。

日本

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国内産に加え、長期輸送・市場流通に十分耐えうる品質のものが世界中から日本の市場へ供給され、通関は通常検査で行われる。

日本の生産の歴史

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日本にブルーベリーが導入されたのは1951年で、当時の農林水産省北海道農業試験場が米国からハイブッシュ・ブルーベリー(比較的冷涼な気候を好む栽培種)を導入したのが始まりである。一方、暖地に対応するラビットアイブルーベリーは1962年に農林水産省によって導入された[27]。このラビットアイ系品種は1962年に米国ジョージア州から導入され、1968年より東京都小平市で商業栽培が始まった。 [28]。「ブルーベリー栽培発祥の地」を掲げる島村ブルーベリー園経営者の島村速雄によると、東京農工大学時代の恩師で、「日本のブルーベリーの父」と呼ばれる岩垣駛夫(はやお)教授から約130本の苗木を託されたのが始まりだが、当初は日本での認知度が低く、青果市場に持ち込んでも取引を渋られたという[28]

1971年、長野県にハイブッシュ系品種が導入され、栽培に適した高冷地のある群馬県新潟県山梨県宮城県などを中心に各県で生産されるようになった。東北地方では、岩手県岩手大学で行われた公開講座により経済栽培が広まった。石川県鳳珠郡能登町の旧柳田村域では、土地の事情からラビットアイ系品種が栽培されている[29]

1990年以降、パン食文化の浸透や健康ブーム(健康食品としての宣伝効果のほか、外国産農産物に対する不安視)などを受け、関東近郊に摘み取り目的の観光農園や産地が急増した。都道府県別収穫量は、1981年から2014年まで長野県が首位を保っていたが、2015年から東京都が追い抜いている[28]。東京都など関東でブルーベリー栽培が増えた理由としては、追熟で美味しくなる果物と逆に生食用は日持ちがしないうえ、観光農園での摘み取り体験向きであり大消費地との近さが有利に働いたことが大きい[28]。栽培に適した酸性土壌[28]として火山灰土関東ローム層が広がっていること、砂礫も含んでいるため水はけも良いことなども挙げられる。東京都練馬区では都市農業を残すために補助金で宣伝でブルーベリー栽培を支援している[28]

日本の主な産地

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2015年以降は東京都が生産量首位となっている[28]。2014年時点の収穫量国内1位は長野県、2位は茨城県、群馬県、東京都だった。神奈川県を除く1都5県が10位以内、神奈川県も15位以内と関東地方に産地が集中している。その他生産が盛んなのは岩手県を中心とした東北地方のほか滋賀県兵庫県愛媛県熊本県など西日本でも高原地帯を中心に栽培が盛んとなっている。加工品は頭打ちだが、生食での人気で年々需要が高まっており、2014年の収穫量は1989年(平成元年)の6倍以上の約2700トンとなっている(輸入量の1970トンを上回る)。農林水産省では特産果樹として統計をとっている。

ヨウシュヤマゴボウの実の誤食リスク

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北米原産で日本では帰化植物として雑草化しているヨウシュヤマゴボウは、ヤマゴボウに似た根だけでなく、ブルーベリーのように見える果実にも毒を含むため誤食しないよう注意が必要で、見つけ次第抜き取ることが望ましい[32][33]。ヨウシュヤマゴボウは多年生草本であり、ブルーベリーのような木本植物ではないが、草丈が2000mm位まで生長するためにブルーベリーと似た外観に見える可能性がある。

ただし、一箇所に複数、青紫色の実が着くブルーベリーとは異なり、一つの果軸に多くの黒紫色の実が生ることや、茎が赤みを呈してブルーベリーのような幹ではないことから、見分けは容易である。

脚注

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出典

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  1. ^ 東京農工大学ブルーベリー研究会、ブルーベリーとは。2023年5月15日閲覧。
  2. ^ 小学館日本大百科全書 ニッポニカ』「ブルーベリー」(飯塚宗夫)
  3. ^ a b c 一般社団法人日本ブルーベリー協会、ブルーベリーの基礎知識。2023年5月15日閲覧。
  4. ^ 地方独立行政法人北海道立総合研究機構、農業研究本部、小果樹類の特性と栽培技術、III ブルーベリー、2023年5月15日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 平凡社世界大百科事典』「ブルーベリー」(松井仁)。2023年5月15日、JapanKnowledgeにより閲覧。
  6. ^ ブルーベリーとは|育て方がわかる植物図鑑”. 株式会社NHK出版. 2024年8月17日閲覧。
  7. ^ a b c d e f 亀田龍吉 2014, p. 49.
  8. ^ a b c d e f g h i j 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 72
  9. ^ a b 中川重年『日本の樹木 下』(小学館、1991年)42頁
  10. ^ a b 『ブルーベリー全書』p.35
  11. ^ a b c 辻井達一 2006, p. 168.
  12. ^ 『ブルーベリー全書』pp.60-61
  13. ^ 『ブルーベリー大図鑑』
  14. ^ 一般社団法人 日本ブルーベリー協会”. 一般社団法人 日本ブルーベリー協会. 2020年6月1日閲覧。
  15. ^ a b ブルーベリーの育て方。コツとお手入れを一挙紹介します”. GardenStory (ガーデンストーリー). 2020年6月1日閲覧。
  16. ^ a b ビルベリー”. 厚生労働省eJIM (2021年3月12日). 2024年3月17日閲覧。
  17. ^ ブルーベリーエキス”. 疑似科学を科学的に考える Gijika.com (2019年12月10日). 2024年3月17日閲覧。
  18. ^ a b c 中村宜督『食品でひく 機能性成分の事典』女子栄養大学出版部、2022年7月28日、122-128頁。ISBN 978-4789509268 
  19. ^ a b ブルーベリー” (PDF). 国立健康・栄養研究所. 2024年3月17日閲覧。
  20. ^ ビルベリー” (PDF). 国立健康・栄養研究所. 2024年3月17日閲覧。
  21. ^ どんな論文が本当に治療効果を証明しているのか?”. 大須賀覚 (2018年7月13日). 2022年2月28日閲覧。
  22. ^ その情報は「確かな情報」ですか?”. 国立健康・栄養研究所 (2021年4月15日). 2024年3月17日閲覧。
  23. ^ Kalt W, McDonald JE, Fillmore SA, Tremblay F (November 2014). “Blueberry effects on dark vision and recovery after photobleaching: placebo-controlled crossover studies”. J. Agric. Food Chem. 62 (46): 11180-9. doi:10.1021/jf503689c. PMID 25335781. 
  24. ^ Rocha DMUP, Caldas APS, da Silva BP, Hermsdorff HHM, Alfenas RCG (January 2018). “Effects of blueberry and cranberry consumption on type 2 diabetes glycemic control: A systematic review”. Crit Rev Food Sci Nutr: 1-13. doi:10.1080/10408398.2018.1430019. PMID 29345498. 
  25. ^ Zhu Y, Sun J, Lu W, Wang X, Wang X, Han Z, Qiu C (March 2017). “Effects of blueberry supplementation on blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials”. J Hum Hypertens 31 (3): 165-171. doi:10.1038/jhh.2016.70. PMID 27654329. 
  26. ^ Blueberry production in 2020; Crops/Regions/World list/Production Quantity (pick lists)”. UN Food and Agriculture Organization, Corporate Statistical Database (FAOSTAT) (2022年). 16 May 2022閲覧。
  27. ^ ブルーベリー - 先進植物工場研究施設”. web.tuat.ac.jp. 2020年6月1日閲覧。
  28. ^ a b c d e f g h 【東京探Q】ブルーベリー なぜ都内が収穫量日本一?立地生かし観光農園発展:日持ちしない特徴 近さ有利に読売新聞』朝刊2022年12月19日(都民面)2022年12月28日閲覧
  29. ^ 『ブルーベリー大図鑑-品種読本-』pp.299-307
  30. ^ 岩手の旬夏編 ブルーベリー JA岩手県中央会
  31. ^ 特産果樹生産動態等調査2015年による。
  32. ^ 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ヨウシュヤマゴボウ 厚生労働省(2022年12月28日閲覧)
  33. ^ ブルーベリー似でも食べないで!有毒ヨウシュヤマゴボウ、揖斐川で繁殖中日新聞(2020年8月27日)2022年12月28日閲覧

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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