「反グローバリゼーション」の版間の差分
153.221.69.94 の一連の更新をRV。出典皆無、「がなりを上げた」「血を流した」「議論できない」等、NPOVかつ編集者個人の見解表明の羅列。 |
保護貿易について |
||
(25人の利用者による、間の30版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
[[Image:Anti_WEF_graffiti_Lausanne.jpg|thumb|350px|[[ローザンヌ]]での反[[世界経済フォーラム|WEF]](反ダボス会議)を訴える落書き。 ''La croissance est une folie'' (経済成長こそが狂気だ). |
[[Image:Anti_WEF_graffiti_Lausanne.jpg|thumb|350px|[[ローザンヌ]]での反[[世界経済フォーラム|WEF]](反ダボス会議)を訴える落書き。 ''La croissance est une folie'' (経済成長こそが狂気だ).]] |
||
'''反グローバリゼーション''' |
{{読み仮名_ruby不使用|'''反グローバリゼーション'''|はんグローバリゼーション|{{lang-en-short|anti-globalization}}}}または'''反グローバリズム'''(はんグローバリズム、{{lang-en-short|anti-globalism}})は、[[グローバリゼーション]]に反対する主張や運動などを指す呼称。 |
||
== |
==概要== |
||
反グローバリゼーションは必ずしも統一された思想ではなく、[[グローバル資本主義]]に反対する様々な社会運動を包括した呼び名である。こうした考えや運動は、環境・開発などの[[非政府組織|NGO]]や学生・労働者・農業団体などから幅広く支持を集めている。また、支持者の政治指向も従来の[[リベラル]]と[[保守]]の域を超え、例えば、[[不法滞在]]・[[治安]]悪化への危惧という右派的な主張や、移民の増加により国内労働者の仕事が奪われるなど左派的な主張がある。90年代以降、主に左派によるグローバル資本主義、新自由主義批判と被抑圧労働者としての移民労働者との連帯を掲げる運動であった。近年、移民流入反対を唱える排外主義的右派ポピュリズムを反グローバリぜーションとして呼称する場合があるが、資本主義そのものへの批判的視点がなく全くの別物、むしろ紛い物と言える<ref>{{Cite web|和書|url=http://www2.jiia.or.jp/pdf/research/H30_World_Economy/01-nakajima.pdf|title=第1章 反グローバリズムについて ―世界経済からの視点―|accessdate=2020/09/21|publisher=|author=[[中島厚志]]}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.iti.or.jp/kikan49/49tanakat.pdf|title=反グローバリズム、反統合、高失業、難民・不法移民 EU 政治潮流の右傾化の要因を読み解く|accessdate=2020/09/21|publisher=|author=[[田中友義]]|work=季刊 国際貿易と投資 Autumn2002/No.49}}</ref>。 |
|||
反グローバリゼーションは必ずしも統一された[[イデオロギー|理念]]や運動ではなく、[[グローバル資本主義]]に反抗する様々な理念や社会運動を包括した呼称である。こうした理念や運動は、環境・開発などの[[非政府組織|NGO]]や学生・労働者・農業団体などから幅広く支持を集めている。 |
|||
反グローバリゼーションの嚆矢になった出来事は、 |
反グローバリゼーションの嚆矢になった出来事は、1999年11月30日~12月2日に[[シアトル]]で開かれた[[第3回世界貿易機関閣僚会議|WTO総会]]反対デモである。この時期は、他にも2000年4月15日~4月16日の[[国際通貨基金|IMF]]年次総会反対デモなど、ワシントンD.C.の世界機関が主導するグローバリゼーションに抗議するデモが特徴である。 |
||
2008年秋の[[世界金融危機 (2007年-)|世界同時不況]]を経て、2010年代後半には自由貿易など地球規模の枠組みや移民受入れを否定し、自国本位とする風潮が表面化した。2016年、イギリスでは[[イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票|欧州連合からの離脱の是非を問う国民投票]]が行われ、移民流入制限などを唱えた離脱派が勝利した。[[2016年アメリカ合衆国大統領選挙]]で勝利した[[ドナルド・トランプ]]も[[環太平洋連携協定]](TPP)などの枠組みを否定し、米国第一を掲げる[[保護貿易|保護主義]]的政策を打ち出した結果、グローバル化を嫌悪する有権者の投票を集めた。 |
|||
しかしながら、反[[グローバリゼーション]]の |
しかしながら、反[[グローバリゼーション]]のレッテルを張られたグループはしばしばこれを否定しており、その代わりに"Global Justice Movement" や"Movement of Movements"、または「下からのグローバリゼーション」といった用語を用いている。また、特に[[フランス]]では「もう一つの世界を志向する人たち」という意味で"Altermondialiste"(アルテルモンディアリストゥ、彼らの思想や行動はAltermondialisme―[[アルテルモンディアリスム]])という用語も頻繁に使われる。 |
||
== |
==活動== |
||
1990年代以降、国際会議の開催地に結集し、集会や[[デモンストレーション]]などを行い[[グローバル化]](globalization)に反対する<ref>警察庁 2010年APECの成功に向けて [http://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/apec/text/p03-1.html 反グローバリズムを掲げる過激な勢力の脅威] 活動が列挙されている。活動の背景や動機は書かれていない。</ref>。反グローバリズム運動が広く注目されるようになったきっかけは、1999年に[[シアトル]]で開催されたWTO閣僚会議([[第3回世界貿易機関閣僚会議]])の際に、[[人間の鎖]]による会場包囲で開会式が中止となり、約5万人が参加したデモの最中に一部暴徒化した参加者が商店を破壊し警察と衝突したことにより緊急事態宣言が出され、これが主要メディアで報道されたことによる<ref>[https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten275/pdf/P08-P11.pdf 反グローバリズムを掲げる団体による過激な行動]北海道洞爺湖サミット開催成功に向けて、警察庁、平成19年12月</ref>。 |
|||
== |
==識者の見解== |
||
=== |
===特徴=== |
||
[[経済学者]]の[[伊藤元重]]は「グローバル化の動きが、世界の[[経済成長]]に大きな貢献をしたことは否定できない事実であるが、一方で国家間の格差を広げ、地球環境悪化の原因にもなっているという厳しい批判が出ている。批判は途上国の政府だけでなく、先進国のNPOのような[[市民団体]]も反グローバル化活動の中心となっている」と指摘している<ref>伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、27頁。</ref>。 |
[[経済学者]]の[[伊藤元重]]は「グローバル化の動きが、世界の[[経済成長]]に大きな貢献をしたことは否定できない事実であるが、一方で国家間の格差を広げ、地球環境悪化の原因にもなっているという厳しい批判が出ている。批判は途上国の政府だけでなく、先進国のNPOのような[[市民団体]]も反グローバル化活動の中心となっている」と指摘している<ref>伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、27頁。</ref>。 |
||
経済学者の[[ジャグディーシュ・バグワティー]]は、反グローバル化運動の参加者たちは、新興国・途上国から低価格の商品が入ることで雇用が脅かされると懸念する先進国の[[労働組合]]関係者、グローバル化が地球環境を破壊すると主張する人々、グローバル化によって途上国の[[労働者]]が搾取されていると主張する人々、[[市場経済]]にそもそも反対な[[共産主義者]]など |
経済学者の[[ジャグディーシュ・バグワティー]]は、反グローバル化運動の参加者たちは、新興国・途上国から低価格の商品が入ることで雇用が脅かされると懸念する先進国の[[労働組合]]関係者、グローバル化が地球環境を破壊すると主張する人々、グローバル化によって途上国の[[労働者]]が搾取されていると主張する人々、[[市場経済]]にそもそも反対な[[共産主義者]]などさまざまなバックグラウンドをもっていると指摘している<ref>[https://diamond.jp/articles/-/41346 伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論 TPP反対論に決定的に欠けている「マクロ」の視点]ダイヤモンド・オンライン 2013年9月9日</ref>。 |
||
経済学者の[[ジョセフ・E・スティグリッツ]]は、グローバリゼーションの必要性は認めた上、反グローバリゼーションはむしろ[[G8]]・[[WTO]]合意など[[ワシントン・コンセンサス]]に対する反対を示すものと見ている<ref>『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 p313、また「[[ル・モンド・ディプロマティーク]]」編集長[[イグナシオ・ラモネ]]の2003年5月号巻頭言より。</ref>。 |
経済学者の[[ジョセフ・E・スティグリッツ]]は、グローバリゼーションの必要性は認めた上、反グローバリゼーションはむしろ[[G8]]・[[WTO]]合意など[[ワシントン・コンセンサス]]に対する反対を示すものと見ている<ref>『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 p313、また「[[ル・モンド・ディプロマティーク]]」編集長[[イグナシオ・ラモネ]]の2003年5月号巻頭言より。</ref>。 |
||
24行目: | 24行目: | ||
[[三橋貴明]]は一概に「自由」「保護」と区分できるわけではなく、ある国が置かれた環境も考慮すべきと述べている<ref>[http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2011/05/26/012802.php 三橋貴明の「もう経済記事にはだまされない!」 第103回 自由貿易と経済成長(3/3)]Klugクルーク 2011年5月26日</ref>。 |
[[三橋貴明]]は一概に「自由」「保護」と区分できるわけではなく、ある国が置かれた環境も考慮すべきと述べている<ref>[http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2011/05/26/012802.php 三橋貴明の「もう経済記事にはだまされない!」 第103回 自由貿易と経済成長(3/3)]Klugクルーク 2011年5月26日</ref>。 |
||
=== |
===思想=== |
||
[[経済学]]者の[[野口旭]]は「反グローバリズム派によるグローバリズム批判は、国内経済・地域経済の自律性を確保すべきという性質を持っている<ref>野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、44頁。</ref>」「世界中の根強い『反グローバリズム』の根底にあるのは、自国の経済が貿易という捉えどころの無いものによって変えられていく嫌悪感なのかもしれない<ref>野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、204頁。</ref>」「グローバル化それ自体への感情的な反発は、ある種の排外主義と言わざるを得ない<ref name="keizaironsen319">野口旭 『経済論戦―いまここにある危機の虚像と実像』 日本評論社、2003年、319頁。</ref>」と指摘している。 |
[[経済学]]者の[[野口旭]]は「反グローバリズム派によるグローバリズム批判は、国内経済・地域経済の自律性を確保すべきという性質を持っている<ref>野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、44頁。</ref>」「世界中の根強い『反グローバリズム』の根底にあるのは、自国の経済が貿易という捉えどころの無いものによって変えられていく嫌悪感なのかもしれない<ref>野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、204頁。</ref>」「グローバル化それ自体への感情的な反発は、ある種の排外主義と言わざるを得ない<ref name="keizaironsen319">野口旭 『経済論戦―いまここにある危機の虚像と実像』 日本評論社、2003年、319頁。</ref>」と指摘している。 |
||
野口は「グローバル化の中で、[[比較劣位]]の産業が厳しい構造調整を強いられてきた。絶えざる構造調整のしわ寄せを受け続けてきた労働者・農業生産者がグローバリゼーションを制限することで苦痛から逃れたいと運動することは、当事者にとっては当然の行動である」と指摘している<ref>野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、42頁。</ref>。 |
野口は「グローバル化の中で、[[比較劣位]]の産業が厳しい構造調整を強いられてきた。絶えざる構造調整のしわ寄せを受け続けてきた労働者・農業生産者がグローバリゼーションを制限することで苦痛から逃れたいと運動することは、当事者にとっては当然の行動である」と指摘している<ref>野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、42頁。</ref>。 |
||
[[中野剛志]]は |
[[中野剛志]]は[[リーマンショック]]による世界同時不況で[[ユーロ]]バブルが崩壊すると、[[ギリシャ]]の[[デフォルト (金融)|デフォルト]]問題が生じたが、EUは財政的に統合されていないため、ドイツなどの財政上余裕がある国の判断でデフォルトの救済が決定した<ref>中野剛志・柴山桂太 『グローバル恐慌の真相』 127頁。</ref>。その際にドイツ国民がギリシャ救済に拒否感を示したことについて、グローバル化にナショナリズムや民主主義が抵抗している構図であったと述べている。また、[[ブリュッセル]]に集まる[[ヨーロッパ]]のエリートには[[コスモポリタニズム|コスモポリタン]]の伝統があり、グローバル化を推進したが、[[民主主義]]主体である一般層にはその国の文化や伝統に密接に関っており、そう簡単に国境を越えられず、[[フランス]]の農家・[[ジョゼ・ボヴェ]]の例を出し、民主主義の民主的な声というのはアンチグローバル化であるとしている<ref>中野剛志・柴山桂太 『グローバル恐慌の真相』 127、130-132頁。</ref>。 |
||
⚫ | |||
<!--又、経済学者の[[エマニュエル・トッド]]は、以下のように主張する。「ビジネスに放縦(無制限の自由、やりたい放題)さえ与えれば、富も雇用も創出され、最大限の成長があると信じられて来たが、それは偽だった。冷戦後のグローバル経済は国による規制を敵視しているが、実はアメリカにしても日本にしても、国による産業保護という規制が経済成長を生んだ。資本主義市場は、国などのルールによってしっかりと統治されて、初めて機能する。」<ref>エマニュエル・トッド『グローバリズムが世界を滅ぼす』 頁</ref>--> |
|||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
==脚注== |
==脚注== |
||
<references/> |
<references/> |
||
== |
==関連項目== |
||
* |
*[[アルテルモンディアリスム]] |
||
*[[過激派保守主義]] |
|||
* |
*[[ガラパゴス化]] |
||
* |
*[[モンロー主義]] - [[アジア・モンロー主義]] |
||
* [[鎖国]] |
|||
* |
*[[鎖国]] |
||
*[[三色同盟]] |
|||
⚫ | |||
*[[イギリスの欧州連合離脱]] |
|||
⚫ | |||
*[[アメリカ・ファースト]] |
|||
⚫ | |||
⚫ | |||
*[[新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-)|新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的流行]] |
|||
{{グローバリゼーション}} |
{{グローバリゼーション}} |
||
{{オルタナ右翼}} |
|||
{{Normdaten}} |
|||
{{DEFAULTSORT:はんくろはりせしよん}} |
{{DEFAULTSORT:はんくろはりせしよん}} |
||
[[Category:反グローバリゼーション|*]] |
[[Category:反グローバリゼーション|*]] |
||
[[Category:イスラーム原理主義]] |
|||
[[Category:陰謀論]] |
|||
[[Category:オルタナ右翼]] |
|||
[[Category:国際関係]] |
[[Category:国際関係]] |
||
[[Category:新左翼]] |
[[Category:新左翼]] |
||
[[Category:スターリニズム]] |
|||
[[Category:排外主義]] |
|||
[[Category:反ユダヤ主義]] |
|||
[[Category:ファシズム]] |
|||
{{Poli-stub}} |
{{Poli-stub}} |
2024年11月28日 (木) 20:39時点における版
英: anti-globalization)または反グローバリズム(はんグローバリズム、英: anti-globalism)は、グローバリゼーションに反対する主張や運動などを指す呼称。
(はんグローバリゼーション、概要
反グローバリゼーションは必ずしも統一された思想ではなく、グローバル資本主義に反対する様々な社会運動を包括した呼び名である。こうした考えや運動は、環境・開発などのNGOや学生・労働者・農業団体などから幅広く支持を集めている。また、支持者の政治指向も従来のリベラルと保守の域を超え、例えば、不法滞在・治安悪化への危惧という右派的な主張や、移民の増加により国内労働者の仕事が奪われるなど左派的な主張がある。90年代以降、主に左派によるグローバル資本主義、新自由主義批判と被抑圧労働者としての移民労働者との連帯を掲げる運動であった。近年、移民流入反対を唱える排外主義的右派ポピュリズムを反グローバリぜーションとして呼称する場合があるが、資本主義そのものへの批判的視点がなく全くの別物、むしろ紛い物と言える[1][2]。
反グローバリゼーションの嚆矢になった出来事は、1999年11月30日~12月2日にシアトルで開かれたWTO総会反対デモである。この時期は、他にも2000年4月15日~4月16日のIMF年次総会反対デモなど、ワシントンD.C.の世界機関が主導するグローバリゼーションに抗議するデモが特徴である。
2008年秋の世界同時不況を経て、2010年代後半には自由貿易など地球規模の枠組みや移民受入れを否定し、自国本位とする風潮が表面化した。2016年、イギリスでは欧州連合からの離脱の是非を問う国民投票が行われ、移民流入制限などを唱えた離脱派が勝利した。2016年アメリカ合衆国大統領選挙で勝利したドナルド・トランプも環太平洋連携協定(TPP)などの枠組みを否定し、米国第一を掲げる保護主義的政策を打ち出した結果、グローバル化を嫌悪する有権者の投票を集めた。
しかしながら、反グローバリゼーションのレッテルを張られたグループはしばしばこれを否定しており、その代わりに"Global Justice Movement" や"Movement of Movements"、または「下からのグローバリゼーション」といった用語を用いている。また、特にフランスでは「もう一つの世界を志向する人たち」という意味で"Altermondialiste"(アルテルモンディアリストゥ、彼らの思想や行動はAltermondialisme―アルテルモンディアリスム)という用語も頻繁に使われる。
活動
1990年代以降、国際会議の開催地に結集し、集会やデモンストレーションなどを行いグローバル化(globalization)に反対する[3]。反グローバリズム運動が広く注目されるようになったきっかけは、1999年にシアトルで開催されたWTO閣僚会議(第3回世界貿易機関閣僚会議)の際に、人間の鎖による会場包囲で開会式が中止となり、約5万人が参加したデモの最中に一部暴徒化した参加者が商店を破壊し警察と衝突したことにより緊急事態宣言が出され、これが主要メディアで報道されたことによる[4]。
識者の見解
特徴
経済学者の伊藤元重は「グローバル化の動きが、世界の経済成長に大きな貢献をしたことは否定できない事実であるが、一方で国家間の格差を広げ、地球環境悪化の原因にもなっているという厳しい批判が出ている。批判は途上国の政府だけでなく、先進国のNPOのような市民団体も反グローバル化活動の中心となっている」と指摘している[5]。
経済学者のジャグディーシュ・バグワティーは、反グローバル化運動の参加者たちは、新興国・途上国から低価格の商品が入ることで雇用が脅かされると懸念する先進国の労働組合関係者、グローバル化が地球環境を破壊すると主張する人々、グローバル化によって途上国の労働者が搾取されていると主張する人々、市場経済にそもそも反対な共産主義者などさまざまなバックグラウンドをもっていると指摘している[6]。
経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは、グローバリゼーションの必要性は認めた上、反グローバリゼーションはむしろG8・WTO合意などワシントン・コンセンサスに対する反対を示すものと見ている[7]。
三橋貴明は一概に「自由」「保護」と区分できるわけではなく、ある国が置かれた環境も考慮すべきと述べている[8]。
思想
経済学者の野口旭は「反グローバリズム派によるグローバリズム批判は、国内経済・地域経済の自律性を確保すべきという性質を持っている[9]」「世界中の根強い『反グローバリズム』の根底にあるのは、自国の経済が貿易という捉えどころの無いものによって変えられていく嫌悪感なのかもしれない[10]」「グローバル化それ自体への感情的な反発は、ある種の排外主義と言わざるを得ない[11]」と指摘している。
野口は「グローバル化の中で、比較劣位の産業が厳しい構造調整を強いられてきた。絶えざる構造調整のしわ寄せを受け続けてきた労働者・農業生産者がグローバリゼーションを制限することで苦痛から逃れたいと運動することは、当事者にとっては当然の行動である」と指摘している[12]。
中野剛志はリーマンショックによる世界同時不況でユーロバブルが崩壊すると、ギリシャのデフォルト問題が生じたが、EUは財政的に統合されていないため、ドイツなどの財政上余裕がある国の判断でデフォルトの救済が決定した[13]。その際にドイツ国民がギリシャ救済に拒否感を示したことについて、グローバル化にナショナリズムや民主主義が抵抗している構図であったと述べている。また、ブリュッセルに集まるヨーロッパのエリートにはコスモポリタンの伝統があり、グローバル化を推進したが、民主主義主体である一般層にはその国の文化や伝統に密接に関っており、そう簡単に国境を越えられず、フランスの農家・ジョゼ・ボヴェの例を出し、民主主義の民主的な声というのはアンチグローバル化であるとしている[14]。
反論
野口旭は「グローバリゼーションの波はいくつか残っている『閉じられた社会』にも、二十一世紀の早い段階に必ず及んでくる。マルクスはかつて、その過程を『資本の文明開化作用』と呼んだ。行うべきは、その作用を阻害するのではなく、むしろ推進することである」と指摘している[11]。
経済学者の八代尚宏は「若者の雇用機会減少や賃金格差の拡大を改善するためには、政治的圧力のみならず、市場の活用を推進するべきである。世界的に貿易が拡大する中で、労働生産性・賃金の差の拡大が生じている。反グローバリズムを唱えても、世界の潮流から取り残されじり貧になるだけである」と指摘している[15]。
脚注
- ^ 中島厚志. “第1章 反グローバリズムについて ―世界経済からの視点―”. 2020年9月21日閲覧。
- ^ 田中友義. “反グローバリズム、反統合、高失業、難民・不法移民 EU 政治潮流の右傾化の要因を読み解く”. 季刊 国際貿易と投資 Autumn2002/No.49. 2020年9月21日閲覧。
- ^ 警察庁 2010年APECの成功に向けて 反グローバリズムを掲げる過激な勢力の脅威 活動が列挙されている。活動の背景や動機は書かれていない。
- ^ 反グローバリズムを掲げる団体による過激な行動北海道洞爺湖サミット開催成功に向けて、警察庁、平成19年12月
- ^ 伊藤元重 『はじめての経済学〈上〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、27頁。
- ^ 伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論 TPP反対論に決定的に欠けている「マクロ」の視点ダイヤモンド・オンライン 2013年9月9日
- ^ 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 p313、また「ル・モンド・ディプロマティーク」編集長イグナシオ・ラモネの2003年5月号巻頭言より。
- ^ 三橋貴明の「もう経済記事にはだまされない!」 第103回 自由貿易と経済成長(3/3)Klugクルーク 2011年5月26日
- ^ 野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、44頁。
- ^ 野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、204頁。
- ^ a b 野口旭 『経済論戦―いまここにある危機の虚像と実像』 日本評論社、2003年、319頁。
- ^ 野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、42頁。
- ^ 中野剛志・柴山桂太 『グローバル恐慌の真相』 127頁。
- ^ 中野剛志・柴山桂太 『グローバル恐慌の真相』 127、130-132頁。
- ^ 日本経済新聞社編 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、66頁。
関連項目
- アルテルモンディアリスム
- 過激派保守主義
- ガラパゴス化
- モンロー主義 - アジア・モンロー主義
- 鎖国
- 三色同盟
- イギリスの欧州連合離脱
- アメリカ・ファースト
- ダーウィンの悪夢 - グローバリズムの悪夢を描いた2004年のドキュメンタリー映画。
- サパティスタ国民解放軍 - 1994年1月1日のNAFTA発効に際して、NAFTAはメキシコの農民や、インディオを著しく貧困化させる協定であったため、反グローバリゼーションを掲げて蜂起した。
- 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的流行