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「冠動脈」の版間の差分

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[[image:Gray492.png|thumb|200pixel|心臓を前から見た図。右冠動脈および左冠動脈の前部の下行枝を示す。]]
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'''冠動脈'''(かんどうみゃく、coronary artery)は、[[大動脈]]起始部の[[上行大動脈|バルサルバ洞]]からおこり、[[心筋]]に[[酸素]]を供給する[[動脈]]のことである。冠状動脈ともいう。


'''冠動脈'''(かんどうみゃく、{{lang-la|Arteriae coronariae}}、{{lang-en|coronary artery}})は、[[大動脈]]基底(大動脈弁直上)の[[上行大動脈|バルサルバ洞]]に端を発し、[[心筋]]にエネルギーを供給する[[動脈]]のことである。肝動脈との区別をつけるために、一般的には'''冠状動脈'''(かんじょうどうみゃく)う。
==概要==
[[心臓]]を取り囲むようにして状に走っており主に'''右冠動脈'''(Right coronary artery; RCA)、'''左冠動脈前下行枝'''(Left anterior descending coronary artery; LAD)'''左冠動脈回旋枝'''(Left circumflex coronary artery; LCX)であり、特にLADとLCXに分かれる前の冠動脈を'''左冠動脈主幹部'''(Left main trunk; LMT or LM or MT)と呼ぶ。


== 概要 ==
*右冠動脈(RCA)は[[洞房結節]]、[[房室結節]]、[[右心室]]、心臓の後壁および下壁栄養している。
*左冠動脈前下行枝(LAD)は[[心室中隔]]、心臓前壁、心尖部栄養している。
冠動脈は[[心]]の上に[[冠]]のように乗っている[[血管]](動脈)で、心取り囲むようにして走行している。
*左冠動脈回旋枝(LCX)は心臓の左側壁、左後壁栄養している。


動脈は、'''右冠動脈''' (Right coronary artery; RCA) と'''左冠動脈'''に分かれておりさらに左冠動脈は'''左冠動脈前下行枝''' (Left anterior descending coronary artery; LAD) および'''左冠動脈回旋枝''' (Left circumflex coronary artery; LCX) 分岐する。また、LADとLCXに分かれる前の冠動脈を'''左冠動脈主幹部''' (Left main trunk; LMT or LM or MT) と呼ぶ。
これらの各枝の栄養領域についてはある程度の個人差があり、右冠動脈優位型(60%)、左冠動脈優位型(30%)、左右均衡型(10%)の3つのパターンに大別される。


* 右冠動脈 (RCA) は[[洞房結節]]、[[房室結節]]、[[右心室]]、心臓の後壁および下壁栄養分を供給している。
心臓は[[脳]]と並んで、人体の中でも最も酸素の需要が激しい臓器のひとつである。冠動脈[[動脈硬化]]を起こすと狭窄や閉塞が起こ[[狭症]]や[[心筋梗塞]]の原因となる。
* 左冠動脈前下行枝 (LAD) は[[心室中隔]]、心臓の前壁、心尖部に栄養分を供給している。
* 左冠動脈回旋枝 (LCX) は心臓の左側壁、左後壁栄養分を供給している。


これらの各枝の栄養領域についてはある程度の個人差がある。特に後下行枝 (PD) と後側壁枝 (PL) の分岐パターンから以下の3つのパターンに大別される。

* 左右均衡型(約10-20%):最も典型的な分岐パターンで、PDはRCAから、PLはLCXより分枝する。
* 右冠動脈優位型(約70-80%):LCXの発達がやや弱く、PDとPLが共にRCAより分枝する。
* 左冠動脈優位型(約5-10%):RCAの発達がやや弱く、PDとPLが共にLCXから分枝する。

また、これら以外にも細かい分枝のパターンや冠動脈の起始部の分枝パターン、さらには本数に至るまで多数のパターンが存在する。

全身に血液を送るポンプのような役割を果たす心臓は[[脳]]と並んで、人体の中でも[[酸素]]の需要がい臓器の1つである。もし心臓に酸素を送る冠動脈[[動脈硬化]]を起こしたなら、冠動脈の狭窄や閉塞が起こると、心筋へ十分な酸素が供給できなくなるため、[[虚血性疾患]]を発症する。

== 血液の流れ方の特徴 ==
冠動脈は、他の動脈と違い、心臓の収縮期にその血流は減少し、拡張期に血流が流れる、という性質を持つ。これは、
冠動脈は、他の動脈と違い、心臓の収縮期にその血流は減少し、拡張期に血流が流れる、という性質を持つ。これは、

* 心筋収縮により血管が圧迫され循環抵抗が増すこと
* 心筋収縮により血管が圧迫され循環抵抗が増すこと
* [[大動脈]]からのバックラッシュで戻って来た血液が、閉じた[[大動脈弁]]に遮られ、冠動脈に流入して
* [[大動脈]]からのバックラッシュで戻って来た血液が、閉じた[[大動脈弁]]に遮られ、冠動脈に流入して
などの理由による。後者の理由により、[[心臓弁膜症]](大動脈弁閉鎖不全症)や大動脈の[[動脈硬化]]は、[[うっ血性心不全]]へと至りやすい。

==関連項目==
などの理由による。なお、後者の理由により、[[心臓弁膜症]](大動脈弁閉鎖不全症)や大動脈の[[動脈硬化]]は、血性[[心不全]]へと至りやすい。
*[[天皇制批判の常識]]

== 関連項目==
* [[虚血性心疾患]]
** [[狭心症]]
** [[心筋梗塞]]
*** [[冠動脈大動脈バイパス移植術]]
* [[冠動脈疾患]]
* [[急性冠症候群]]
* [[川崎病]]
* [[大動脈解離]]

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[[ur:تاجی دوران]]
[[zh:冠状血管]]

2022年8月29日 (月) 02:25時点における最新版

心臓を前から見た図。右冠動脈および左冠動脈の前部の下行枝を示す。

冠動脈(かんどうみゃく、ラテン語: Arteriae coronariae英語: coronary artery)は、大動脈基底部(大動脈弁直上)のバルサルバ洞に端を発し、心筋にエネルギーを供給する動脈のことである。肝動脈との区別をつけるために、一般的には冠状動脈(かんじょうどうみゃく)と言う。

概要

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冠動脈は、心臓の上にのように乗っている血管(動脈)で、心臓を取り囲むようにして走行している。

冠動脈は、右冠動脈 (Right coronary artery; RCA) と左冠動脈に分かれており、さらに左冠動脈は左冠動脈前下行枝 (Left anterior descending coronary artery; LAD) および左冠動脈回旋枝 (Left circumflex coronary artery; LCX) に分岐する。また、LADとLCXに分かれる前の冠動脈を左冠動脈主幹部 (Left main trunk; LMT or LM or MT) と呼ぶ。

  • 右冠動脈 (RCA) は洞房結節房室結節右心室、心臓の後壁および下壁に栄養分を供給している。
  • 左冠動脈前下行枝 (LAD) は心室中隔、心臓の前壁、心尖部に栄養分を供給している。
  • 左冠動脈回旋枝 (LCX) は心臓の左側壁、左後壁に栄養分を供給している。

これらの各枝の栄養領域についてはある程度の個人差がある。特に後下行枝 (PD) と後側壁枝 (PL) の分岐パターンから以下の3つのパターンに大別される。

  • 左右均衡型(約10-20%):最も典型的な分岐パターンで、PDはRCAから、PLはLCXより分枝する。
  • 右冠動脈優位型(約70-80%):LCXの発達がやや弱く、PDとPLが共にRCAより分枝する。
  • 左冠動脈優位型(約5-10%):RCAの発達がやや弱く、PDとPLが共にLCXから分枝する。

また、これら以外にも細かい分枝のパターンや冠動脈の起始部の分枝パターン、さらには本数に至るまで多数のパターンが存在する。

全身に血液を送るポンプのような役割を果たす心臓はと並んで、人体の中でも酸素の需要が多い臓器の1つである。もし心臓に酸素を送る冠動脈で動脈硬化を起こしたなら、冠動脈の狭窄や閉塞が起こると、心筋へ十分な酸素が供給できなくなるため、虚血性心疾患を発症する。

血液の流れ方の特徴

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冠動脈は、他の動脈と違い、心臓の収縮期にその血流は減少し、拡張期に血流が流れる、という性質を持つ。これは、

  • 心筋収縮により血管が圧迫され循環抵抗が増すこと。
  • 大動脈からのバックラッシュで戻って来た血液が、閉じた大動脈弁に遮られ、冠動脈に流入してゆく。

などの理由による。なお、後者の理由により、心臓弁膜症(大動脈弁閉鎖不全症)や大動脈の動脈硬化は、鬱血性心不全へと至りやすい。

関連項目

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