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[[アメリカ軍]]により[[第二次世界大戦]]で使用された車両のために状態が悪いものが多く、供与された後にまず[[オーバーホール]]が必要であったが、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]製の[[軍用車両]]に見られる合理的な設計はオーバーホールを請け負った[[三菱重工業]]共々、創設間もない陸上自衛隊にとって以後の国産装軌車両開発にあたり大いに参考となったという。旧式化しつつある車両のために予備部品の調達が困難であり、稼働率の維持に苦労したりと難点も多かったものの、[[中央観閲式]]にも毎回登場し、[[自衛隊]]の装備としてはメジャーな車両であった。 |
2024年8月11日 (日) 14:45時点における最新版
M5高速牽引車 | |
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オランダの博物館に展示中のM5 幌が装着されている | |
種類 | 砲兵トラクター |
原開発国 | アメリカ合衆国 |
運用史 | |
配備先 | アメリカ軍及びアメリカの同盟国軍 |
関連戦争・紛争 | 第二次世界大戦、朝鮮戦争 |
開発史 | |
開発期間 | 1942年 |
製造業者 | インターナショナル・ハーベスター |
諸元 | |
重量 | 13.791t |
全長 | 5.03m(16ft 6in) |
全幅 | 2.54m(8ft 4in) |
全高 | 2.69m(8ft 10in) |
要員数 | 1+10 |
| |
装甲 | none |
主兵装 | 12.7mm M2重機関銃1丁 |
エンジン |
コンチネンタル R6572 six-cylinder ガソリン |
出力重量比 | 15.0hp/t |
懸架・駆動 |
垂直渦巻スプリング(VVSS)式 / 水平渦巻スプリング(HVSS)式 ※M5A2/A3/A4 前輪駆動 |
行動距離 | 290km(180mi) |
速度 | 48km/h(30mph) |
M5トラクター(M5 Tractor)は、アメリカ合衆国で開発された砲兵トラクターである。アメリカ軍における制式名称はM5 High-Speed Tractor(M5高速牽引車)、また、陸上自衛隊では13tけん引車 M5の制式名称で運用した。
概要
[編集]第1次世界大戦の戦訓から、アメリカ軍は陸上戦力の機動力向上の一環として砲兵の機動力を向上させる事が重要であると結論し、そのために必要な装備の開発と配備を計画した。その実施は戦間期の軍縮による予算の抑制から停滞していたが、第二次世界大戦の勃発により軍備の拡大が急務となり、野戦砲の大口径化(必然的に大重量化する)が進んでいる状況に対処するため、砲の自走化(自走砲化)に加えて牽引砲であっても移動手段は馬による牽引から砲牽引車によるものへと移行することが必要とされ、砲兵用高速牽引車[注釈 1]の開発が求められた。
それら高速牽引車はその目的により7 / 13 / 18 / 38 トンの車重が必要であると結論づけられ、このうち13トンの車格を持ち150mmクラスの重砲を牽引して機甲部隊に追随することが可能な高速牽引車として開発されたのが本車である[注釈 2]。
当初この目的のためには"T13"の名称で、25,000 ポンド(約 11.34 トン)の車重を持つ、M3軽戦車の車台とサスペンションおよびエンジンを共用したものが1942年より開発されていたが、T13の開発計画は更に能力を向上させたものへと発展し[1]、発展型の車両は「M5 HSP」の名称で1942年10月に制式化された。
M5はG162の供給カタログ指定番号[注釈 3]が与えられ、生産はインターナショナル・ハーベスター社が担当して1943年5月-1945年5月にかけ生産された。
第二次世界大戦の後には朝鮮戦争でも用いられ、アメリカ軍においては比較的早期に運用が終了したが、陸上自衛隊やオーストラリア、パキスタン国軍など、アメリカの同盟国を始めとした諸国に供与・売却され、それらの国では戦後も長らく運用された。
特徴
[編集]M5は主にM101 105mm榴弾砲、M59 155mmカノン砲などを牽引し、同時に操作人員、弾薬も運搬する。
後半部分のみ鋼鈑製の天井をもつ半開放式キャビン方式の車両で、開放部には状況に応じて幌が取り付けられる。キャビンの上部には輪状(リングマウント)式のM49機銃架を装備するが、基本的に非戦闘車両であり、自衛のための火器のみを装備する。
最大 8.23 トンの牽引力を持ち[2]、火砲の牽引用に牽引具を装備する他、車体前面にはウィンチ(最大牽引力 7.7 トン[1])を装備している。
陸上自衛隊における運用
[編集]日本の陸上自衛隊では155mmりゅう弾砲M1及び155mm加農砲M2の牽引用として、M1/M2を装備する特科部隊に13tけん引車 M5として配備された。
アメリカ軍により第二次世界大戦で使用された車両のために状態が悪いものが多く、供与された後にまずオーバーホールが必要であったが、アメリカ製の軍用車両に見られる合理的な設計はオーバーホールを請け負った三菱重工業共々、創設間もない陸上自衛隊にとって以後の国産装軌車両開発にあたり大いに参考となったという。旧式化しつつある車両のために予備部品の調達が困難であり、稼働率の維持に苦労したりと難点も多かったものの、中央観閲式にも毎回登場し、自衛隊の装備としてはメジャーな車両であった。
1953年にM4 HST(高速牽引車)と合わせて17両が供与され、以後順次供与・配備が進められている。1970年代に入り後継の73式けん引車の配備に伴い、73式に更新される形で退役した。
各型
[編集]※陸上自衛隊においてはM5とM5A1が混在していたが、両者は特に区別されることなく「13tけん引車 M5」として使用されていた[3]。
- T21
- 試作型。開放式キャビンを持つ。
- M5
- 基本型。最初の量産型。初期の生産車はキャビン後半部の鋼製天板及びM49リングマウントがなく、全開放式キャビンとなっている。
- M5A1
- 改良型。キャビンがM4高速牽引車のものに類似した全鋼製のものとなり、操縦士席も左側配置となっている。589両生産。
- M5A2
- M5の懸架装置を垂直懸架式(VVSS)から水平懸架式(HVSS)に変更した型。
- M5A3
- M5A1の懸架装置を垂直懸架式(VVSS)から水平懸架式(HVSS)に変更した型。
- M5A4
- 前線から回収され、オーバーホールのために後送された初期生産型車両を改修し、懸架装置を水平式懸架装置(HVSS)に換装した改修型。アメリカ軍において第二次世界大戦後も継続して使用されたM5及びM5A2は順次A4型に改修されている。
- 原型車との外観上の差異は、履帯が拡幅アダプター付きのものに統一されていること、それに伴いフェンダーが拡幅され、拡幅部上に収納箱が増設されていることである。
諸元
[編集]※M5、陸上自衛隊仕様のもの
- 全長:4,850mm
- 全幅:2,540mm
- 全高:2,640mm
- 乗員:11名
- 総重量:12,950kg
- 行動距離:242km
- 最高速度:48.5km/h
- 牽引能力:9t
- エンジン:コンチネンタル社製 R6572 空冷V型6気筒ガソリン
- 出力:207ps/2900rpm
- 武装:12.7mm重機関銃M2 1丁
登場作品
[編集]陸上自衛隊の車両は『ゴジラ』を始めとした特撮映画に使用され、実写映像に登場している [4]。
海外ではアメリカ軍その他から退役して民間に放出された車両がコレクターによって個人所有されている他、放出車両の車体部分のみを使用してレプリカ車両として改造されたものがあり、日本の九五式軽戦車を模したものが『ウインドトーカーズ(原題:Windtalkers)』(2002年)、『硫黄島からの手紙(英題:Letters from Iwo Jima)』(2006年)などに登場している。
脚注・出典
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b RUSSIAN-TANKS>HIGH SPEED TRACTOR - HIGH SPEED TRACTORS (continuation) ※2022年12月24日閲覧
- ^ WARDRAWINGS>M5 High Speed Tractor ※2022年12月24日閲覧
- ^ 陸上自衛隊の戦闘車両 2016, p. 101.
- ^ 超最新ゴジラ大図鑑 1992, pp. 166–167, 「陸上兵器」
参考文献
[編集]- TM 9-2800
- SNL G162
- 朝雲新聞社 '74自衛隊装備年鑑
- 『戦後日本の戦車開発史―特車から90式戦車へ』(ISBN 978-4906124497/ISBN 978-4769824725) 林磐雄:著 かや書房/光人社 2002/2005年
- 佐野 顕 他『陸上自衛隊の戦闘車両 1950~2015』アルゴノート社、2016年。ISBN 978-4-914974-14-5。
- Trewhitt, Philip (1999). Armoured Fighting Vehicles. p 308: Dempsey-Parr. ISBN 1-84084-328-4
- 『増補改訂新版 超最新ゴジラ大図鑑』企画・構成・編集 安井尚志(クラフト団)、バンダイ〈エンターテイメントバイブルシリーズ50〉、1992年12月25日。ISBN 4-89189-284-6。