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== 特徴 ==
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[[ファイル:M32-ARV-HVSS-latrun-1.jpg|right|200px|thumb|クレーンを展開してM4戦車の砲塔を吊り上げようとする状態で展示されるM32 イスラエルの博物館に展示中の車両]]
[[ファイル:M32-ARV-HVSS-latrun-1.jpg|right|200px|thumb|クレーンを展開してM4戦車の砲塔を吊り上げようとする状態で展示されるM32<br />[[イスラエル]]の博物館に展示中の車両]]
[[M4中戦車]]の砲塔を撤去して簡単な円筒形状の戦闘室を増設し、[[ウィンチ]]とAフレーム形と呼ばれる枠形クレーンを装備したもので、主ウィンチは最大で27トンの牽引力を、クレーンはフレームを展開した状態で最大9トンの物を吊り上げる事ができる。車両の任務性格上、車体や戦闘室の側面には各種予備部品がマウントされ、各所に工具箱や備品箱が増設されている。<br />
[[M4中戦車]]の砲塔を撤去して簡単な円筒形状の戦闘室を増設し、[[ウィンチ]]とAフレーム形と呼ばれる枠形クレーンを装備したもので、主ウィンチは最大で27トンの牽引力を、クレーンはフレームを展開した状態で最大9トンの物を吊り上げる事ができる。車両の任務性格上、車体や戦闘室の側面には各種予備部品がマウントされ、各所に工具箱や備品箱が増設されている。<br />
戦闘中に回収作業を行う状況に備えてM2 12.7mm[[機関銃]]の銃架と、煙幕弾投射用のM2 60mmもしくはM1 81mm[[迫撃砲]]を搭載している。車体前部右側のM1919 7.62mm機関銃用のマウントはほとんどの車両がそのまま装備している(鋼板で塞いでいる車両もある)が、車体機銃自体は装備していない車両が多い。<ref>車体機銃に限らず武装に関しては搭載していない車両も多く、戦後の使用車両はほとんどが武装していないが、イスラエル軍を始め車体機銃も含めて武装している記録写真も多く存在する。また、アメリカ軍以外で使用された車両では、煙幕展開用に迫撃砲ではなく専用の煙幕弾発射装置を追加装備しているものも多い。</ref>
戦闘中に回収作業を行う状況に備えて[[ブローニングM2重機関銃|M2 12.7mm機関銃]]の銃架と、煙幕弾投射用の[[M2 60mm 迫撃砲|M2 60mm]]もしくは[[M1 81mm 迫撃砲|M1 81mm迫撃砲]]を搭載している。車体前部右側の[[ブローニングM1919重機関銃|M1919 7.62mm機関銃]]用のマウントはほとんどの車両がそのまま装備している(鋼板で塞いでいる車両もある)が、車体機銃自体は装備していない車両が多い。<ref>車体機銃に限らず武装に関しては搭載していない車両も多く、戦後の使用車両はほとんどが武装していないが、[[イスラエル国防]]を始め車体機銃も含めて武装している記録写真も多く存在する。また、アメリカ軍以外で使用された車両では、煙幕展開用に迫撃砲ではなく専用の煙幕弾発射装置を追加装備しているものも多い。</ref>


それ以外の部分は基本的にM4戦車と同一だが、上記のように車体や懸架装置が個々の車両によって異なっている事が多く、資料によって異なる外観の車両が同じ「M32」として掲載されていることが多々ある。<ref>車両の分類・判別には車体形状の差異は考慮されない。</ref>
それ以外の部分は基本的にM4戦車と同一だが、上記のように車体や懸架装置が個々の車両によって異なっている事が多く、資料によって異なる外観の車両が同じ「M32」として掲載されていることが多々ある。<ref>車両の分類・判別には車体形状の差異は考慮されない。</ref>
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== 派生型及びバリエーション ==
== 派生型及びバリエーション ==
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クレーンの吊上能力とウィンチの牽引能力をそれぞれ23/41トンに強化し、回収用機材を油圧作動式に改良、車体前面に作業時の安定性向上の為に駐鋤(スペード)を装備し、戦闘室が円筒形状のものから角型形状のものとなった。前照灯等の細部装備品も更新され、赤外線前照灯と暗視装置を装備している。
クレーンの吊上能力とウィンチの牽引能力をそれぞれ23/41トンに強化し、回収用機材を油圧作動式に改良、車体前面に作業時の安定性向上の為に駐鋤(スペード)を装備し、戦闘室が円筒形状のものから角型形状のものとなった。前照灯等の細部装備品も更新され、赤外線前照灯と暗視装置を装備している。


M74は[[1952年]]より主に[[M47パットン|M47 パットン]]を装備する部隊に配備され、アメリカ軍以外にもいくつかの西側諸国に供与された。後に、[[スペイン]]等ではエンジンをデトロイト・ディーゼル社製 8V-71T 液冷[[ディーゼルエンジン]]に換装する改良が行われている。<br />
M74は[[1952年]]より主に[[M47パットン|M47 パットン]]を装備する部隊に配備され、[[アメリカ軍]]以外にもいくつかの[[西側諸国]]に供与された。後に、[[スペイン]]等ではエンジンをデトロイト・ディーゼル社製 8V-71T [[液冷エンジン|液冷]][[ディーゼルエンジン]]に換装する改良が行われている。<br />


アメリカ軍以外で使用された車両には、[[1980年代]]まで現役で使用されたものも存在する。
アメリカ軍以外で使用された車両には、[[1980年代]]まで現役で使用されたものも存在する。
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*出力:350ps/2400rpm
*出力:350ps/2400rpm
*武装:*脚注[2]を参照のこと
*武装:*脚注[2]を参照のこと
**[[12.7mm重機関銃M2|M2 12.7mm機関銃]]
**[[ブローニングM2重機関銃|M2 12.7mm機関銃]]
**[[ブローニングM1919重機関銃|M1919 7.62mm機関銃]]
**[[ブローニングM1919重機関銃|M1919 7.62mm機関銃]]
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**[[M2 60mm 迫撃砲|M2 60mm]]もしくは[[M1 81mm 迫撃砲|M1 81mm迫撃砲]]
*主クレーン最大吊上能力:9t
*主クレーン最大吊上能力:9t
*主ウインチ最大牽引能力:27t
*主ウインチ最大牽引能力:27t
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== 関連項目 ==
== 登場作品 ==
*[[西武新宿戦線異状なし DRAGON RETRIEVER]]
{{Commonscat|M32 ARV}}
:作中に準同型車両が登場

*[[M4中戦車]]
*[[70式戦車回収車]]
*[[78式戦車回収車]]

*[[装甲回収車]]
*[[回収戦車]]

*[[西武新宿戦線異状なし DRAGON RETRIEVER]]*作中に準同型車両が登場


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
*[[朝雲新聞社]] '74[[自衛隊装備年鑑]]
*[[朝雲新聞社]] '74[[自衛隊装備年鑑]]
*[[上田信 (イラストレーター)|上田信]] 『戦車メカニズム図鑑』([[1997|1997年]]) [[グランプリ出版]] ISBN 4-87687-179-5
*[[上田信 (イラストレーター)|上田信]] 『戦車メカニズム図鑑』([[1997|1997年]]) [[グランプリ出版]] ISBN 4-87687-179-5

== 関連項目 ==
*[[装甲回収車]]
*[[回収戦車]]
*[[M4中戦車]]
*[[70式戦車回収車]]
*[[78式戦車回収車]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
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* [http://rightwing.sakura.ne.jp/equipment/jgsdf/armor/m32tkr/m32tkr.html 自衛隊装備品図鑑]
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2010年12月19日 (日) 12:43時点における版

M32 TRV 戦車回収車

M32 戦車回収車(Tank Recovery Vehicle M32)は、アメリカ陸軍装甲回収車。ベース車両はM4中戦車

概要

懸架装置がHVSS型のM32A型

M4中戦車の車体を流用した装甲回収車両で、機甲部隊に追随し故障戦車の救出、応急処置を行うための装備である。 M3中戦車改造のM31 TRVの後継として開発され、第二次世界大戦後半から朝鮮戦争にかけて使用された。

基本的には損傷もしくは故障などで後方に送られてきたM4戦車を改造して製作された車両がほとんどのため、同じ「M32」という制式名称で呼ばれている車両でも車体や足廻りの形式は多岐に渡っている。基本的にはM4 もしくはM4A1型をベースとしているものがほとんどであるが、懸架装置がVVSS(垂直渦巻スプリング式サスペンション)ではなくHVSS(水平渦巻スプリング式サスペンション)のものはM32A、M4A3型と同じフォード社製GAA液冷V型8気筒エンジン(450馬力)を搭載しているものはM32Bとして区別される。[1]

第二次大戦後、M4中戦車が世界各国に供与されたのと併せてM32も広く世界各国に供与され、陸上自衛隊にも供与されて使用されたが、装備としては70式戦車回収車78式戦車回収車に更新され全車退役済みである。

特徴

クレーンを展開してM4戦車の砲塔を吊り上げようとする状態で展示されるM32
イスラエルの博物館に展示中の車両

M4中戦車の砲塔を撤去して簡単な円筒形状の戦闘室を増設し、ウィンチとAフレーム形と呼ばれる枠形クレーンを装備したもので、主ウィンチは最大で27トンの牽引力を、クレーンはフレームを展開した状態で最大9トンの物を吊り上げる事ができる。車両の任務性格上、車体や戦闘室の側面には各種予備部品がマウントされ、各所に工具箱や備品箱が増設されている。
戦闘中に回収作業を行う状況に備えてM2 12.7mm重機関銃の銃架と、煙幕弾投射用のM2 60mmもしくはM1 81mm迫撃砲を搭載している。車体前部右側のM1919 7.62mm重機関銃用のマウントはほとんどの車両がそのまま装備している(鋼板で塞いでいる車両もある)が、車体機銃自体は装備していない車両が多い。[2]

それ以外の部分は基本的にM4戦車と同一だが、上記のように車体や懸架装置が個々の車両によって異なっている事が多く、資料によって異なる外観の車両が同じ「M32」として掲載されていることが多々ある。[3]

派生型及びバリエーション

  • M32:M4 及びM4A1を基体とした型
  • M32A:HVSS(水平渦巻スプリング式サスペンション)型の懸架装置を持つ型
    • M32A1B3:HVSS型懸架装置でありM4A3型と同じエンジンを搭載した型
  • M32B:M4A3型と同じGAA液冷V型8気筒エンジン(450馬力)を搭載した型
  • M34:クレーン等の回収用機材を下ろして装甲牽引車に改装した型、主に砲兵部隊で重砲牽引及び支援等に使用。使用数は少数 

M74 TRV

M74 TRV 西ドイツ軍の使用車両

M32の後継として、基本的な構成はほぼ同じだがベースとなる車体をM4A3E8型に統一し、回収用機材の能力を強化した M74 TRV が開発されている。

クレーンの吊上能力とウィンチの牽引能力をそれぞれ23/41トンに強化し、回収用機材を油圧作動式に改良、車体前面に作業時の安定性向上の為に駐鋤(スペード)を装備し、戦闘室が円筒形状のものから角型形状のものとなった。前照灯等の細部装備品も更新され、赤外線前照灯と暗視装置を装備している。

M74は1952年より主にM47 パットンを装備する部隊に配備され、アメリカ軍以外にもいくつかの西側諸国に供与された。後に、スペイン等ではエンジンをデトロイト・ディーゼル社製 8V-71T 液冷ディーゼルエンジンに換装する改良が行われている。

アメリカ軍以外で使用された車両には、1980年代まで現役で使用されたものも存在する。 また、民間に払い下げられて装軌式のクレーン車や重牽引車としても使用されている。

諸元(M32)

  • 全長:7.32m
  • 全幅:2.68m
  • 全高:2.74m
  • 乗員:5名
  • 総重量:27.98t
  • 最低地上高:0.46m
  • 回転半径:9.5m
  • 行動距離:161km
  • 最高速度:42km/h
  • エンジン:コンチネンタル社製R975-C1星型エンジン (航空用)
  • 出力:350ps/2400rpm
  • 武装:*脚注[2]を参照のこと
  • 主クレーン最大吊上能力:9t
  • 主ウインチ最大牽引能力:27t

脚注

  1. ^ 懸架装置がHVSSであり且つGAA液冷V型8気筒エンジンを搭載している車両は、M32A*B* という形式番号となる。
  2. ^ 車体機銃に限らず武装に関しては搭載していない車両も多く、戦後の使用車両はほとんどが武装していないが、イスラエル国防軍を始め車体機銃も含めて武装している記録写真も多く存在する。また、アメリカ軍以外で使用された車両では、煙幕展開用に迫撃砲ではなく専用の煙幕弾発射装置を追加装備しているものも多い。
  3. ^ 車両の分類・判別には車体形状の差異は考慮されない。

登場作品

作中に準同型車両が登場

参考文献

関連項目

外部リンク