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2022年10月9日 (日) 07:51時点における版

難波作之進（なんばさくのしん、慶應元年5月21日^[1]（1865年 6月14日） - 大正14年（1925年）5月25日）は、日本の実業家、政治家。1923年の虎ノ門事件で死刑となった難波大助は四男^[2]。

来歴

代議士当選まで

慶応元年周防国に生まれる。難波市蔵の長男^[3]。備中清水氏の後裔であり、地元では有名な名家であった。

幼いころから尊王思想を強く受け、子供たちにも厳しく教えてきたという。周防村の村長、県会議員などを経て、防長農工銀行取締役となる^[2]。1920年、第14回衆議院議員総選挙に山口8区から出馬し、立憲政友会の加納庫三らを破って衆議院議員に当選^[4]。庚申倶楽部に所属する。

このころから、四男・大助の共産主義思想への傾倒が激しくなり、度々激しい論争をするようになる。

虎ノ門事件

1923年 12月27日、大助が虎ノ門において皇太子・摂政宮裕仁親王を狙撃するという事件を起こす（虎ノ門事件）。銃弾は外れ、皇太子は難を逃れるが、作之進は即日衆議院議員の辞表を提出し、同月28日に辞職が許可された^[5]。地元へ帰り蟄居した。周防村の村民は、難波家を見れば目が汚れる、と周りに高い土手を築いたといわれる。また、難波家は毛利輝元から拝領したとされる刀と感状などの文化財を多数所蔵していたが、持ち主の分かるものについては全て返還している（この時津山立石家との間で交わされた1925年4月8日付の葉書が残っている）。

大助は1924年 11月15日に死刑を執行された。作之進は遺体の引き取りを拒み、自邸の門に青竹を打ちすべての戸を針金でくくって、三畳間に閉じこもり食を断ったという。その後、約半年後に餓死した。61歳没。選挙の地盤はのちに松岡洋右が引き継いだ。

難波家屋敷

難波家の屋敷は2015年現在も光市立野宮河内に存在するが、長らく住人はおらず、難波家は事実上断絶している。屋敷傍に難波家の墓地があり、作之進らも葬られているが、墓碑に大助の名はない。作之進が大助の遺体の引き取りを拒んだため、大助は無縁仏として他所へ埋葬された。

屋敷の土蔵である「向山文庫跡」（こうざんぶんこあと）は、先祖の難波覃庵が1883年に開設した文庫であり、1906年には一般開放し私立図書館となった。山口県初の図書館として1976年、光市指定史跡となっている。しかし整備はされておらず、解説板は立てられているが常駐の管理人等はいない^[6]。土蔵は往時の姿を辛うじて留めているものの、屋敷全体の廃墟化が進んでおり、母屋は荒れ果て、板塀は倒壊、庭は自然に還りつつあるなど状態は悪い。｢向山文庫｣の扁額は三条実美、その下方に位置する｢仰高｣の額は萩藩主毛利元徳の筆である。なお向山文庫旧蔵書はすべて山口県立図書館、ついで山口県文書館に移され、1980年には光市文化センターに寄託された。

家族・親族

難波家

（山口県熊毛郡周防村（現在の光市））

父・市蔵^[3]
妻・ロク
明治4年（1871年）7月生^[3] - 没

山口県平民、国光左衛門の長女^[3]
男・正太郎（黒川正太郎）^[3]
明治24年（1891年）9月生^[3] - 没

1926年、作之進の弟・黒川本蔵の家籍に入り、1927年に分家する^[7]。1916年、東京帝国大学法科大学英法科を卒業し、久原鉱業（現・ENEOSホールディングス）勤務を経て、1936年に弁護士を開業^[8]。後に東満セメント代表、東満州産業専務取締役、琿春炭鉱取締役を歴任^[9]。趣味は園芸^[7]。宗教は神道^[7]。
- 同妻・ヤス^[10]
  明治27年（1893年）12月生 - 没
  
  山口県人、市川清の妹、防府高女卒^[9]
三男・義人（吉田義人）^[11]
明治29年（1896年）8月生^[11] - 昭和37年（1962年）2月26日^[12]没

吉田駒三郎の長女である登代の婿養子となる。1920年に京都帝国大学法学部政治科を卒業後、三菱造船会社営業課に入り、後に長崎製鋼所に転じる^[13]。戦後、GHQの指令で三菱重工が23社に細分されかけた時、高官に接近して贈賄し、東日本・中日本・西日本の3社にとどまらせた^[14]。後に新三菱重工業社長。

四男・大助^[3]
明治32年（1899年）11生 - 大正13年（1924年）11月没
五男・健亮（黒川健亮）^[3]
明治35年（1902年）9月生^[3] - 没

1927年、京都帝国大学経済学部卒業^[15]。1946年9月、白木産業（白木屋の子会社）専務に就任。1956年6月、蛇の目ミシン工業に転じ、のち常務取締役に就任^[16]^[17]。趣味は碁^[15]。宗教は神道^[15]。
- 同妻・辰子
  明治43年（1910年）4月生 - 没
  
  山口県人、弘中武一の長女、日本女高専卒^[15]
次女・安喜子
明治39年（1906年）11月生^[3] - 没

山口県人、吉賀忠夫の妻^[7]
五女・弥代子^[18]
大正2年（1913年）3月生^[18] - 没
弟・本蔵（黒川本蔵）^[3]^[7]
明治6年（1873年）8月生^[3] - 没
- 同妻・フサ
  明治14年（1881年）1月生^[3] - 没
  
  山口県人、山本梅治の女^[3]
- 同三男・恒勝^[18]
  明治41年（1908年）9月生^[18] - 没
- 同四男・正文^[18]
  明治44年（1911年）3月生^[18] - 没
- 同長女・ハル^[18]
  大正3年（1914年）1月生^[18] - 没
- 同次女・朝子^[18]
  大正6年（1917年）4月生^[18] - 没
妹・マサ
明治9年（1876年）2月生^[18] - 没

山口県士族、妻木忠太の妻^[18]

脚注

[脚注の使い方]

^ 『第43回帝国議会衆議院議員名簿〈衆議院公報附録〉』衆議院事務局、1920年、p.28
^ ^a ^b 難波作之進とは - コトバンク
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ 『人事興信録 4版』人事興信所、1915年、p.な91
^ 『第14回衆議院議員総選挙一覧附大正十二年施行府県会議員選挙一覧』衆議院事務局、1924年、pp.24-25
^ 『官報』第3407号、大正12年12月29日。
^ 光市指定文化財「向山文庫」市指定史跡
^ ^a ^b ^c ^d ^e “人事興信録. 第13版上 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。
^ “帝国大学出身録 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。
^ ^a ^b “大衆人事録. 第14版外地・満支・海外篇 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。
^ “市川清 (第8版) - 『人事興信録』データベース”. jahis.law.nagoya-u.ac.jp. 2021年9月13日閲覧。
^ ^a ^b 『人事興信録.6版』（大正10年）な一一四
^ Yusōyō kikai kigu seizōgyō. Yumani Shobō. Henshūbu, ゆまに書房. 編集部.. Tōkyō: Yumani Shobō. (2001). ISBN 4-89714-931-2. OCLC 48141809
^ “帝国大学出身録 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。
^ 草柳大蔵『実力者の条件』p.195（文藝春秋社、1970年）
^ ^a ^b ^c ^d “人事興信録. 第15版上 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。
^ “蛇の目ミシン工業(株)『蛇の目ミシン創業五十年史』(1971.10) | 渋沢社史データベース”. shashi.shibusawa.or.jp. 2021年9月18日閲覧。
^ Ushijima, Hidehiko、牛島秀彦『Shōwa Tennō to Nihonjin』（Shohan）Kawade Shobō Shinsha、Tōkyō、1989年、111-112頁。ISBN 4-309-47186-2。OCLC 22799952。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l “人事興信録. 6版 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年8月24日閲覧。

[1] 『第43回帝国議会衆議院議員名簿〈衆議院公報附録〉』衆議院事務局、1920年、p.28

[kotobank-2] 難波作之進とは - コトバンク

[zinzi4pな94-3] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ 『人事興信録 4版』人事興信所、1915年、p.な91

[4] 『第14回衆議院議員総選挙一覧附大正十二年施行府県会議員選挙一覧』衆議院事務局、1924年、pp.24-25

[5] 『官報』第3407号、大正12年12月29日。

[6] 光市指定文化財「向山文庫」市指定史跡

[:1-7] “人事興信録. 第13版上 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。

[8] “帝国大学出身録 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。

[:2-9] “大衆人事録. 第14版外地・満支・海外篇 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。

[10] “市川清 (第8版) - 『人事興信録』データベース”. jahis.law.nagoya-u.ac.jp. 2021年9月13日閲覧。

[zinzi6pな114-11] 『人事興信録.6版』（大正10年）な一一四

[12] Yusōyō kikai kigu seizōgyō. Yumani Shobō. Henshūbu, ゆまに書房. 編集部.. Tōkyō: Yumani Shobō. (2001). ISBN 4-89714-931-2. OCLC 48141809

[13] “帝国大学出身録 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。

[kusa-14] 草柳大蔵『実力者の条件』p.195（文藝春秋社、1970年）

[:3-15] “人事興信録. 第15版上 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年9月13日閲覧。

[16] “蛇の目ミシン工業(株)『蛇の目ミシン創業五十年史』(1971.10) | 渋沢社史データベース”. shashi.shibusawa.or.jp. 2021年9月18日閲覧。

[17] Ushijima, Hidehiko、牛島秀彦『Shōwa Tennō to Nihonjin』（Shohan）Kawade Shobō Shinsha、Tōkyō、1989年、111-112頁。ISBN 4-309-47186-2。OCLC 22799952。

[:0-18] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l “人事興信録. 6版 - 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2021年8月24日閲覧。

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 == 難波家屋敷 ==
-難波家の屋敷は[[2015年]]現在も[[光市]]立野宮河内に存在するが、長らく住人はおらず、難波家は事実上断絶している。 屋敷傍に難波家の墓地があり、作之進らも葬られているが、墓碑に大助の名はない。
+難波家の屋敷は[[2015年]]現在も[[光市]]立野宮河内に存在するが、長らく住人はおらず、難波家は事実上断絶している。 屋敷傍に難波家の墓地があり、作之進らも葬られているが、墓碑に大助の名はない。作之進が大助の遺体の引き取りを拒んだため、大助は[[無縁仏]]として他所へ埋葬された。
 屋敷の[[土蔵]]である「[[向山文庫]]跡」（こうざんぶんこあと）は、先祖の難波覃庵が[[1883年]]に開設した文庫であり、[[1906年]]には一般開放し[[私立図書館]]となった。山口県初の[[図書館]]として[[1976年]]、光市指定[[史跡]]となっている。しかし整備はされておらず、解説板は立てられているが常駐の管理人等はいない<ref>[http://www.city.hikari.lg.jp/kyouiku/bunka/bunkazaiitiran.html#si 光市指定文化財] 「向山文庫」市指定史跡</ref>。土蔵は往時の姿を辛うじて留めているものの、屋敷全体の[[廃墟]]化が進んでおり、母屋は荒れ果て、板塀は倒壊、庭は自然に還りつつあるなど状態は悪い。｢向山文庫｣の[[扁額]]は[[三条実美]]、その下方に位置する｢仰高｣の額は[[萩藩]]主[[毛利元徳]]の筆である。なお向山文庫旧蔵書はすべて[[山口県立図書館]]、ついで[[山口県文書館]]に移され、[[1980年]]には[[光市文化センター]]に寄託された。