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:European Reptile & Amphibian Specialist Group. 1996. ''Zootoca vivipara'' ssp. ''pannonica''. The IUCN Red List of Threatened Species 1996: e.T61742A12552947. {{doi|10.2305/IUCN.UK.1996.RLTS.T61742A12552947.en}}, Downloaded on 26 September 2018.
:European Reptile & Amphibian Specialist Group. 1996. ''Zootoca vivipara'' ssp. ''pannonica''. The IUCN Red List of Threatened Species 1996: e.T61742A12552947. {{Doi|10.2305/IUCN.UK.1996.RLTS.T61742A12552947.en}}, Downloaded on 26 September 2018.
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|属 = '''コモチカナヘビ属'''<br />''Zootoca'' Wagler, 1830<ref name="hoj">[http://herpetology.jp/index_j.php 日本爬虫両棲類学会] (2018) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2018年7月19日版). http://herpetology.jp/wamei/ (2018年9月26日閲覧)</ref>
|属 = '''コモチカナヘビ属'''<br />''Zootoca'' Wagler, 1830<ref name="hoj">[http://herpetology.jp/index_j.php 日本爬虫両棲類学会](2018) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2018年7月19日版). http://herpetology.jp/wamei/(2018年9月26日閲覧)</ref>
|種 = '''コモチカナヘビ''' ''Z. vivipara''
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|学名 = ''Zootoca vivipara''<!-- 原記載のVon Jacquin, 1787を無効名とする説があるようなので保留 -->
|学名 = ''Zootoca vivipara''<!-- 原記載のVon Jacquin, 1787を無効名とする説があるようなので保留 -->
|和名 = コモチカナヘビ<ref name="hoj" /><ref name="fn1">海老沼剛 「CLOSE UP CREEPERS -注目の爬虫両生類-」『クリーパー』第48号、クリーパー社、[[2009年]]、99-100頁。</ref><ref name="fn2">池田純 「コモチカナヘビ」『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』千石正一監修 長坂拓也編著、ピーシーズ、[[2002年]]、317頁。</ref><ref name="takenaka">竹中践 「コモチカナヘビ」『レッドデータブック2014 日本の絶滅のおそれのある野生動物-3 爬虫類・両生類』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、株式会社[[ぎょうせい]]、[[2014年]]、56-57頁。</ref>
|和名 = コモチカナヘビ<ref name="hoj" /><ref name="fn1">海老沼剛 「CLOSE UP CREEPERS -注目の爬虫両生類-」『クリーパー』第48号、クリーパー社、[[2009年]]、99 - 100頁。</ref><ref name="fn2">池田純 「コモチカナヘビ」『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』千石正一監修 長坂拓也編著、ピーシーズ、[[2002年]]、317頁。</ref><ref name="takenaka">竹中践 「コモチカナヘビ」『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-3爬虫類・両生類』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、株式会社[[ぎょうせい]]、[[2014年]]、56 - 57頁。</ref>
|英名 = European common lizard<ref name="reptile_database">[http://reptile-database.reptarium.cz/species?genus=Zootoca&species=vivipara ''Zootoca vivipara'']. Uetz, P. & Jiri Hošek (eds.), The Reptile Database, http://www.reptile-database.org, accessed 8 July 2018.</ref><br />[[:en:Viviparous lizard|Viviparous lizard]]<ref name="reptile_database" />
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|生息図=[[ファイル:Mapa Zootoca vivipara.png|250px|分布域]]
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'''コモチカナヘビ'''子持金蛇、''Zootoca vivipara''は、[[有鱗目 (爬虫類)|有鱗目]][[カナヘビ科]]コモチカナヘビ属に分類されるトカゲ。本種のみでコモチカナヘビ属を構成する。

'''コモチカナヘビ'''(子持金蛇、''Zootoca vivipara'')は、[[有鱗目_(爬虫類)|有鱗目]][[カナヘビ科]]コモチカナヘビ属に分類されるトカゲ。本種のみでコモチカナヘビ属を構成する。


== 分布 ==
== 分布 ==
ヨーロッパおよびアジアに広く分布しており、トカゲ類の中では最も分布域が広い<ref name=tomita2007>富田京一、山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ、山と渓谷社、2007年7月15日初版、pp. 134-135、ISBN 978-4-635-07010-2{{出典無効|date=2018年9月}}</ref>。分布は[[メキシコ湾流]]が北部まで達し比較的温暖である[[北極圏]]北部の[[北ヨーロッパ]]にまで及び、トカゲ類の中では最も北部に生息する種となっている<ref name=tomita2007 />。また、[[アイルランド]]や[[北海道]]、[[樺太|サハリン]]などにも分布する。地中海地方の大部分には分布しないものの、[[スペイン]]北部、[[イタリア]]北部、[[セルビア]]、[[マケドニア共和国]]や[[ブルガリア]]などにも分布するが、[[黒海]]周辺地域には分布しない。
ヨーロッパおよびアジアに広く分布しており、トカゲ類の中では最も分布域が広い<ref name="tomita2007">富田京一、山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ、山と渓谷社、2007年7月15日初版、pp. 134 - 135、ISBN 978-4-635-07010-2{{出典無効|date=2018年9月}}</ref>。分布は[[メキシコ湾流]]が北部まで達し比較的温暖である[[北極圏]]北部の[[北ヨーロッパ]]にまで及び、トカゲ類の中では最も北部に生息する種となっている<ref name="tomita2007" />。また、[[アイルランド]]や[[北海道]]、[[樺太|サハリン]]などにも分布する。地中海地方の大部分には分布しないものの、[[スペイン]]北部、[[イタリア]]北部、[[セルビア]]、[[マケドニア共和国]]や[[ブルガリア]]などにも分布するが、[[黒海]]周辺地域には分布しない。


日本では1961年に発見され、北海道の[[サロベツ原野]]周辺から[[稚内市]]・[[猿払村]]・[[浜頓別町]]にかけて分布する<ref name="takenaka" /><ref>竹中践、[https://doi.org/10.5358/hsj1972.14.2_79 北海道産コモチカナヘビの生殖の記録] 爬虫両棲類学雑誌 1991年 14巻 2号 p.79-80, {{doi|10.5358/hsj1972.14.2_79}}</ref>。
日本では1961年に発見され、北海道の[[サロベツ原野]]周辺から[[稚内市]]・[[猿払村]]・[[浜頓別町]]にかけて分布する<ref name="takenaka" /><ref>竹中践、[https://doi.org/10.5358/hsj1972.14.2_79 北海道産コモチカナヘビの生殖の記録] 爬虫両棲類学雑誌 1991年 14巻 2号 p.79-80, {{Doi|10.5358/hsj1972.14.2_79}}</ref>。


== 形態 ==
== 形態 ==
全長14 - 18センチメートル<ref name="takenaka" />。頭胴長5.5 - 7.5センチメートル<ref name="takenaka" />。頭胴長は最大12cm、通常は5.5-7.5cm程度で、全長は12-18cmになる<ref name=tomita2007 />。尾長は頭胴長の1.25-2倍であるが、尾は自切を行うためしばしば部分的、もしくはほぼ全部を失っている個体がある。頭部は小型で、丸みを帯びる<ref name="fn2"/>。大腿部にある小さい孔の空いた鱗(鼠径孔)の総数は約10対<ref name="takenaka" />。オスはメスよりもほっそりとしている。首や尾は厚みがある。頸部や他の鱗はぎざぎざとしている。日本国内に生息するカナヘビ類では頭胴長では大きい部類である<ref name=tomita2007 />。四肢は短い<ref name="fn2"/>。
全長14 - 18センチメートル<ref name="takenaka" />。頭胴長5.5 - 7.5センチメートル<ref name="takenaka" />。頭胴長は最大12cm、通常は5.5 - 7.5cm程度で、全長は12 - 18cmになる<ref name="tomita2007" />。尾長は頭胴長の1.25 - 2倍であるが、尾は自切を行うためしばしば部分的、もしくはほぼ全部を失っている個体がある。頭部は小型で、丸みを帯びる<ref name="fn2"/>。大腿部にある小さい孔の空いた鱗(鼠径孔)の総数は約10対<ref name="takenaka" />。オスはメスよりもほっそりとしている。首や尾は厚みがある。頸部や他の鱗はぎざぎざとしている。日本国内に生息するカナヘビ類では頭胴長では大きい部類である<ref name="tomita2007" />。四肢は短い<ref name="fn2"/>。


本種の体色は多種多様である。主な体色は褐色であるが、灰色、オリーブ褐色や黒色になることもある。メスはしばしば濃褐色の条が、脇腹や背面後部に見られることがある。また、淡色の条で濃褐色もしくは淡褐色の斑が背面の両脇にあることもある。大部分のオスおよび一部のメスは腹部に濃褐色の斑がある。オスの腹部は通常黄色かオレンジ色、稀に赤色の鮮やかな色をしている。メスはより淡く、腹部は白色である。のどは白色で、ときおり青みを帯びた個体もある。
本種の体色は多種多様である。主な体色は褐色であるが、灰色、オリーブ褐色や黒色になることもある。メスはしばしば濃褐色の条が、脇腹や背面後部に見られることがある。また、淡色の条で濃褐色もしくは淡褐色の斑が背面の両脇にあることもある。大部分のオスおよび一部のメスは腹部に濃褐色の斑がある。オスの腹部は通常黄色かオレンジ色、稀に赤色の鮮やかな色をしている。メスはより淡く、腹部は白色である。のどは白色で、ときおり青みを帯びた個体もある。


== 分類 ==
== 分類 ==
''Lacerta vivipara''として1787年に記載されたが、これを無効名とし''Lacerta vivipara''は1823年に記載されたとする説もある<ref name="reptile_database" />。以下の分類はReptile Database(2018)に従う<ref name="reptile_database" />。
''Lacerta vivipara''として1787年に記載されたが、これを無効名とし''Lacerta vivipara''は1823年に記載されたとする説もある<ref name="reptile_database" />。以下の分類はReptile Database(2018)に従う<ref name="reptile_database" />。
* ''Zootoca vivipara vivipara''
* ''Zootoca vivipara vivipara''
* ''Zootoca vivipara carniolica'' (Mayer, Böhme, Tiedemann & Bischoff, 2000)
* ''Zootoca vivipara carniolica''(Mayer, Böhme, Tiedemann & Bischoff, 2000)
* ''Zootoca vivipara louislantzi'' Arribas, 2009
* ''Zootoca vivipara louislantzi'' Arribas, 2009
* ''Zootoca vivipara pannonica'' (Lac & Kluch, 1968)
* ''Zootoca vivipara pannonica''(Lac & Kluch, 1968)


== 生態 ==
== 生態 ==
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[[昆虫]]、[[クモ]]などを食べる<ref name="fn2"/><ref name="takenaka" />。大きな獲物は咀嚼し飲み込む前に口の中で振り回す。昼行性で、早春や晩秋、夏の寒い日には体温が活動に最適な約30度になるまで、日光浴を行う。繁殖期は4月から5月にかけて。オスは交尾の前にメスをあごで捕まえる。メスがオスに興味がなかった場合、激しくオスをかむ。子はメスの体内で約3ヶ月間発達する。
[[昆虫]]、[[クモ]]などを食べる<ref name="fn2"/><ref name="takenaka" />。大きな獲物は咀嚼し飲み込む前に口の中で振り回す。昼行性で、早春や晩秋、夏の寒い日には体温が活動に最適な約30度になるまで、日光浴を行う。繁殖期は4月から5月にかけて。オスは交尾の前にメスをあごで捕まえる。メスがオスに興味がなかった場合、激しくオスをかむ。子はメスの体内で約3ヶ月間発達する。


繁殖形態は[[胎生]]だが、ピレネー山脈産亜種''Z. v. louislantzi''には卵生の個体群がいる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。和名は繁殖形態に由来する<ref name="fn2"/>。1回に3-15頭の幼体を産む<ref name="fn2"/>。幼体は黒色で約3cmで、生まれたばかりの時は卵の薄膜に覆われており、数日後に剥離する。オスは2年で、メスは3年で性成熟する。卵生および卵胎生の個体群が混ざり合う地域の個体は雑種ができるが、胎児の奇形が伴う<ref>Heulin, B., Arrayago, M. J., and Bea, A. 1989. Experience d'hybridation entre les souches ovipare et vivipare du lezard Lacerta vivipara. ''Comp. Rend. Acad. Sci.'' Series 3 '''308''': 341-346.</ref>。
繁殖形態は[[胎生]]だが、ピレネー山脈産亜種''Z. v. louislantzi''には卵生の個体群がいる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。和名は繁殖形態に由来する<ref name="fn2"/>。1回に3 - 15頭の幼体を産む<ref name="fn2"/>。幼体は黒色で約3cmで、生まれたばかりの時は卵の薄膜に覆われており、数日後に剥離する。オスは2年で、メスは3年で性成熟する。卵生および卵胎生の個体群が混ざり合う地域の個体は雑種ができるが、胎児の奇形が伴う<ref>Heulin, B., Arrayago, M. J., and Bea, A. 1989. Experience d'hybridation entre les souches ovipare et vivipare du lezard Lacerta vivipara. ''Comp. Rend. Acad. Sci.'' Series 3 '''308''': 341 - 346.</ref>。


北部の個体群は9 - 10月頃から、地中や倒木の下などで[[冬眠]]を行う。冬眠は2月中旬頃に終わる。南部の個体群は一年中活動する。
北部の個体群は9 - 10月頃から、地中や倒木の下などで[[冬眠]]を行う。冬眠は2月中旬頃に終わる。南部の個体群は一年中活動する。
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都市開発や農地開発・観光開発などによる生息地の破壊により、生息数は減少している<ref name="iucn" />。分布が非常に広いことから、種として絶滅のおそれは低いと考えられている<ref name="iucn" />。一方でオランダやスイスなどの個体群単位では絶滅のおそれがある地域もあり、イタリア低地部などのように絶滅した個体群もいる<ref name="iucn" />。
都市開発や農地開発・観光開発などによる生息地の破壊により、生息数は減少している<ref name="iucn" />。分布が非常に広いことから、種として絶滅のおそれは低いと考えられている<ref name="iucn" />。一方でオランダやスイスなどの個体群単位では絶滅のおそれがある地域もあり、イタリア低地部などのように絶滅した個体群もいる<ref name="iucn" />。
; ''Z. v. pannonica''
; ''Z. v. pannonica''
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: 分布が限定的であることに加えて、農地開発による生息地の破壊により生息数は減少している<ref name="takenaka" />。生息地である湿原での木道設置による捕食者の侵入、および木道で日光浴を行う本種の発見が容易になることで捕食や人間による採集の増加などが懸念されている<ref name="takenaka" />。生息地の一部は国立公園に指定され、浜頓別町では町の天然記念物に指定されている<ref name="takenaka" />。
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== ギャラリー ==
== ギャラリー ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* E. N. Arnold, J. A. Burton (1978). ''A Field Guide to Reptiles and Amphibians of Britain and Europe''
* E. N. Arnold, J. A. Burton(1978). ''A Field Guide to Reptiles and Amphibians of Britain and Europe''
* Jiří Čihař (1994). ''Amphibians and reptiles''. Wingston: Magna. ISBN 1-85422-788-2
* Jiří Čihař(1994). ''Amphibians and reptiles''. Wingston: Magna. ISBN 1-85422-788-2
* {{ARKive|3=viviparous lizard}}
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* 竹中践、[https://doi.org/10.14880/hrghsj1999.2006.22 北海道のコモチカナヘビが帰化分布とは?] 爬虫両棲類学会報 2006年 2006巻 1号 p.22-24, {{doi|10.14880/hrghsj1999.2006.22}}
* 竹中践、[https://doi.org/10.14880/hrghsj1999.2006.22 北海道のコモチカナヘビが帰化分布とは?] 爬虫両棲類学会報 2006年 2006巻 1号 p.22 - 24, {{Doi|10.14880/hrghsj1999.2006.22}}


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2023年6月24日 (土) 15:29時点における版

コモチカナヘビ
コモチカナヘビ
コモチカナヘビ Zootoca vivipara
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 有鱗目 Squamata
: カナヘビ科 Lacertidae
: コモチカナヘビ属
Zootoca Wagler, 1830[2]
: コモチカナヘビ Z. vivipara
学名
Zootoca vivipara
和名
コモチカナヘビ[2][3][4][5]
英名
European common lizard[6]
Viviparous lizard[6]

分布域

コモチカナヘビ(子持金蛇、Zootoca vivipara)は、有鱗目カナヘビ科コモチカナヘビ属に分類されるトカゲ。本種のみでコモチカナヘビ属を構成する。

分布

ヨーロッパおよびアジアに広く分布しており、トカゲ類の中では最も分布域が広い[7]。分布はメキシコ湾流が北部まで達し比較的温暖である北極圏北部の北ヨーロッパにまで及び、トカゲ類の中では最も北部に生息する種となっている[7]。また、アイルランド北海道サハリンなどにも分布する。地中海地方の大部分には分布しないものの、スペイン北部、イタリア北部、セルビアマケドニア共和国ブルガリアなどにも分布するが、黒海周辺地域には分布しない。

日本では1961年に発見され、北海道のサロベツ原野周辺から稚内市猿払村浜頓別町にかけて分布する[5][8]

形態

全長14 - 18センチメートル[5]。頭胴長5.5 - 7.5センチメートル[5]。頭胴長は最大12cm、通常は5.5 - 7.5cm程度で、全長は12 - 18cmになる[7]。尾長は頭胴長の1.25 - 2倍であるが、尾は自切を行うためしばしば部分的、もしくはほぼ全部を失っている個体がある。頭部は小型で、丸みを帯びる[4]。大腿部にある小さい孔の空いた鱗(鼠径孔)の総数は約10対[5]。オスはメスよりもほっそりとしている。首や尾は厚みがある。頸部や他の鱗はぎざぎざとしている。日本国内に生息するカナヘビ類では頭胴長では大きい部類である[7]。四肢は短い[4]

本種の体色は多種多様である。主な体色は褐色であるが、灰色、オリーブ褐色や黒色になることもある。メスはしばしば濃褐色の条が、脇腹や背面後部に見られることがある。また、淡色の条で濃褐色もしくは淡褐色の斑が背面の両脇にあることもある。大部分のオスおよび一部のメスは腹部に濃褐色の斑がある。オスの腹部は通常黄色かオレンジ色、稀に赤色の鮮やかな色をしている。メスはより淡く、腹部は白色である。のどは白色で、ときおり青みを帯びた個体もある。

分類

Lacerta viviparaとして1787年に記載されたが、これを無効名としLacerta viviparaは1823年に記載されたとする説もある[6]。以下の分類はReptile Database(2018)に従う[6]

  • Zootoca vivipara vivipara
  • Zootoca vivipara carniolica(Mayer, Böhme, Tiedemann & Bischoff, 2000)
  • Zootoca vivipara louislantzi Arribas, 2009
  • Zootoca vivipara pannonica(Lac & Kluch, 1968)

生態

草原湿原・林縁・開けた森林・海岸・農耕地などに様々な環境に生息する[1]。日本では湿原内の低木のある草地に生息する[5]。南部に生息する個体群は、アルプス山脈の3000m以上の高標高地に分布する。北部の個体群は疎林や牧草地、原野、ヒース、湿地帯、砂丘、岩石地帯、道路脇、生け垣や庭等を含む、より乾燥した低地で見ることができる。地上性であるが、石や倒木、低木植生などに上ることもある。

昆虫クモなどを食べる[4][5]。大きな獲物は咀嚼し飲み込む前に口の中で振り回す。昼行性で、早春や晩秋、夏の寒い日には体温が活動に最適な約30度になるまで、日光浴を行う。繁殖期は4月から5月にかけて。オスは交尾の前にメスをあごで捕まえる。メスがオスに興味がなかった場合、激しくオスをかむ。子はメスの体内で約3ヶ月間発達する。

繁殖形態は胎生だが、ピレネー山脈産亜種Z. v. louislantziには卵生の個体群がいる[3][4]。和名は繁殖形態に由来する[4]。1回に3 - 15頭の幼体を産む[4]。幼体は黒色で約3cmで、生まれたばかりの時は卵の薄膜に覆われており、数日後に剥離する。オスは2年で、メスは3年で性成熟する。卵生および卵胎生の個体群が混ざり合う地域の個体は雑種ができるが、胎児の奇形が伴う[9]

北部の個体群は9 - 10月頃から、地中や倒木の下などで冬眠を行う。冬眠は2月中旬頃に終わる。南部の個体群は一年中活動する。

人間との関係

都市開発や農地開発・観光開発などによる生息地の破壊により、生息数は減少している[1]。分布が非常に広いことから、種として絶滅のおそれは低いと考えられている[1]。一方でオランダやスイスなどの個体群単位では絶滅のおそれがある地域もあり、イタリア低地部などのように絶滅した個体群もいる[1]

Z. v. pannonica
VULNERABLE (IUCN Red List Ver. 2.3 (1994))[1]
日本
分布が限定的であることに加えて、農地開発による生息地の破壊により生息数は減少している[5]。生息地である湿原での木道設置による捕食者の侵入、および木道で日光浴を行う本種の発見が容易になることで捕食や人間による採集の増加などが懸念されている[5]。生息地の一部は国立公園に指定され、浜頓別町では町の天然記念物に指定されている[5]
絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト[5]

ギャラリー

脚注

  1. ^ a b c d e f Agasyan, A., Avci, A., Tuniyev, B., Crnobrnja Isailovic, J., Lymberakis, P., Andrén, Dan Cogalniceanu, C., Wilkinson, J., Ananjeva, N., Üzüm, N., Orlov, N., Podloucky, R., Tuniyev, S., Kaya, U., Böhme, W., Nettmann, H.K., Crnobrnja Isailovic, J., Joger, U., Cheylan, M., Pérez-Mellado, V., Borczyk, B., Sterijovski, B., Westerström, A. & Schmidt, B. 2010. Zootoca vivipara. The IUCN Red List of Threatened Species 2010: e.T61741A12552141. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2010-4.RLTS.T61741A12552141.en. Downloaded on 26 September 2018.
    European Reptile & Amphibian Specialist Group. 1996. Zootoca vivipara ssp. pannonica. The IUCN Red List of Threatened Species 1996: e.T61742A12552947. doi:10.2305/IUCN.UK.1996.RLTS.T61742A12552947.en, Downloaded on 26 September 2018.
  2. ^ a b 日本爬虫両棲類学会(2018) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2018年7月19日版). http://herpetology.jp/wamei/(2018年9月26日閲覧)
  3. ^ a b 海老沼剛 「CLOSE UP CREEPERS -注目の爬虫両生類-」『クリーパー』第48号、クリーパー社、2009年、99 - 100頁。
  4. ^ a b c d e f g 池田純 「コモチカナヘビ」『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』千石正一監修 長坂拓也編著、ピーシーズ、2002年、317頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k 竹中践 「コモチカナヘビ」『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-3爬虫類・両生類』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、株式会社ぎょうせい2014年、56 - 57頁。
  6. ^ a b c d Zootoca vivipara. Uetz, P. & Jiri Hošek(eds.), The Reptile Database, http://www.reptile-database.org, accessed 8 July 2018.
  7. ^ a b c d 富田京一、山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ、山と渓谷社、2007年7月15日初版、pp. 134 - 135、ISBN 978-4-635-07010-2[出典無効]
  8. ^ 竹中践、北海道産コモチカナヘビの生殖の記録 爬虫両棲類学雑誌 1991年 14巻 2号 p.79-80, doi:10.5358/hsj1972.14.2_79
  9. ^ Heulin, B., Arrayago, M. J., and Bea, A. 1989. Experience d'hybridation entre les souches ovipare et vivipare du lezard Lacerta vivipara. Comp. Rend. Acad. Sci. Series 3 308: 341 - 346.

参考文献

関連項目

外部リンク