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2023年9月6日 (水) 12:46時点における版
渡り鳥(わたりどり)とは、食糧、環境、繁殖などの事情に応じて定期的に長い距離を移動(渡り)する鳥のこと。翻って、1年を通じて同一の地域やその周辺で繁殖も含めた生活を行う鳥を留鳥という。
鳥の渡り(英語:Bird migration)の解明は、鳥類学の研究テーマのひとつで、鳥を捕獲して刻印のついた足環を付ける鳥類標識調査(バンディング)が日本を含め世界各国で行われている[1]。また、大型の鳥では、超小型の発信機を付け、人工衛星を使って経路を調べることも行われている[2]。
渡り鳥は地磁気を感じ取るセンサーを持ち、このセンサーを用いたナビゲーション能力を持っているとされる[3]。海馬に認知地図を持つとも考えられている[3]。オオミズナギドリの場合、何らかのにおいを頼りにしているとする研究結果がある[4]。
渡り鳥の種類
地域をどの範囲まで広げる(狭める)かによって、同一の鳥でも異なる分け方になる場合があるが、日本を基準とした場合、以下のような分け方となる。
- 夏鳥
- 春に南方から渡来して、秋に再び南方に渡去する鳥を指す[5]。ツバメ、アマサギ、オオルリ、キビタキ、クロツグミ、ハチクマ、サシバなど。
- 冬鳥
- 秋に北方より渡来して、春に再び北方に渡去する鳥を指す[5]。ツグミ、ジョウビタキ、ユリカモメ、マガモ、オオハクチョウ、マナヅル、オオワシ、キンクロハジロ [6] [7] [8]など。日本語では春に北を目指す渡りをさして「北帰行」と表現することがある[9]。
- 旅鳥
- 春と秋の一時期だけ日本を通過する鳥を指す[5]。シギ、チドリの仲間に多い。
距離
キョクアジサシ(北極圏ツンドラ地帯から南極周辺海域まで(約32,000km))や、ハシボソミズナギドリ(オーストラリアから北太平洋を右回りしオーストラリアへ戻る(約32,000km))など、非常に長い渡りを行う鳥がいる[要出典]。
日本の記録では、南極で足環をつけられたオオトウゾクカモメが12,800kmの距離を移動した後、北海道の近海で発見された記録が最長記録である[10]。
比喩表現
定住せずにあちこちを渡り歩いて生活する人を渡り鳥と呼ぶ[11]。
政界においては、省庁や地方自治体の高級官僚が役所を退職した後、天下りで公社、公団、特殊法人、第三セクターなどを渡り歩いて退職金を稼ぐことを「渡り鳥」と呼ぶ[12][13][14]。また、常に多数派であるために各政党を渡り歩く政治家は「政界渡り鳥」と呼ばれる[15][16]。
文学と渡り鳥
俳句において、渡り鳥に関する季語がいくつかある[17]。例えば、「鳥帰る」「引鳥(ひくとり)」などは春の季語、「鳥渡る」「色鳥」「小鳥来る」「燕帰る(つばかえる)」などは秋の季語である[17]。また、「雁風呂」「雁供養」は夏の季語で[18]、次のような「雁風呂」「雁供養」という伝説が青森県に伝わると言われていた[18]。
月の夜、雁は木の枝を口に咥えて北国から渡ってきて、飛び疲れると波間に枝を浮かべ、その上に停まって羽根を休める。そうやって津軽の浜までたどり着くと、要らなくなった枝を浜辺に落とす。日本で冬を過ごした雁は早春の頃、浜の枝を拾って北国に戻って行く。雁が去ったあとの浜辺には、生きて帰れなかった雁の数だけ枝が残っている。浜の人たちは、その枝を集めて風呂を焚き、不運な雁たちの供養をしたという。
しかし、この話は1974年のテレビCMで広まったものであり、青森県内で伝承されたものではない[18]。また、この話の初出は四時堂其諺『滑稽雑談』(1713年(正徳3年)成立)巻16で、他国の島での話として収められた話と判明した[18]。
脚注
- ^ “渡り鳥と足環|鳥類標識調査 Bird Banding|山階鳥類研究所”. 渡り鳥と足環|目次|山階鳥類研究所. 2021年12月17日閲覧。
- ^ “渡り鳥と足環|電波を利用した標識調査|山階鳥類研究所”. 渡り鳥と足環|目次|山階鳥類研究所. 2021年12月17日閲覧。
- ^ a b “渡り鳥は迷わない!?――驚くべきナビゲーション能力に迫る!(ブルーバックス編集部)”. ブルーバックス | 講談社 (2018年3月31日). 2021年12月17日閲覧。
- ^ “海鳥の一部、嗅覚を頼りに飛行進路を決定か 実験”. www.afpbb.com. 2021年12月17日閲覧。
- ^ a b c 千葉県. “野鳥における鳥インフルエンザについて”. 千葉県. 2021年12月17日閲覧。
- ^ [1] 2023年9月6日閲覧。
- ^ [2] 2023年9月6日閲覧。
- ^ [3] 2023年9月6日閲覧。
- ^ デジタル大辞泉『北帰行』 - コトバンク
- ^ “渡り鳥と足環|一番長い距離を渡る鳥は?|山階鳥類研究所”. 渡り鳥と足環|目次|山階鳥類研究所. 2021年12月17日閲覧。
- ^ 日本国語大辞典第2版編集委員会『日本国語大辞典第2版』小学館、2002年1月、1315頁。
- ^ “第156回国会 総務委員会 第11号(平成15年4月15日(火曜日))”. www.shugiin.go.jp. 衆議院. 2021年12月17日閲覧。
- ^ ““渡り鳥”で 4億円懐に 公益法人への天下り官僚 小池議員追及”. www.a-koike.gr.jp. 日本共産党. 2021年12月17日閲覧。
- ^ “天下り 続々/政権交代の直前に/玉突き、渡り鳥…”. www.jcp.or.jp. 日本共産党. 2021年12月17日閲覧。
- ^ “信念か戦略か 政党コロコロ「政界渡り鳥」候補に聞く:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年12月17日閲覧。
- ^ “政界渡り鳥「小池都知事」の可能性はあるのか | 国内政治”. 東洋経済オンライン (2016年7月2日). 2021年12月17日閲覧。
- ^ a b “「知って得する季語」秋の風物詩「渡り鳥」とは、どんな鳥をいうの?(tenki.jpサプリ 2018年10月21日)”. tenki.jp. 2021年12月17日閲覧。
- ^ a b c d “こんなレファレンスがありました(第12回)”. 青森県立図書館. 2021年12月17日閲覧。
参考文献
- 樋口広芳『鳥たちの旅 渡り鳥の衛星追跡』日本放送出版協会、2005年。ISBN 4-140-91038-0。
関連項目
- 渡り
- 回遊
- 留鳥
- 漂鳥
- 迷鳥
- 渡り鳥条約
- ラムサール条約
- トリインフルエンザ
- WATARIDORI - 渡り鳥をテーマにしたドキュメンタリー映画。
- 磁覚
- 貯食行動、冬眠 - 渡りを行わない鳥に見られる習性
外部リンク
- 水鳥と渡りについて(渡り鳥生息地ネットワーク) - ウェイバックマシン(2016年1月12日アーカイブ分)