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酸素濃縮器

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酸素濃縮器さんそのうしゅくき)とは、空気を吸気し、高濃度の酸素を排気する機械のことである。

おもに呼吸器疾患などの患者が自宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(home oxygen therapy 略称HOT)のために使われ、PSA式(後述)の製品が多い。また松下電器産業は、健康増進向けに酸素富化膜式(後述)の家庭用酸素濃縮器を販売。近年、健康目的で、酸素バーや自宅などで高濃度酸素を吸入することが流行している。

酸素濃縮器といっても酸素と窒素を分離する物なので、逆の構造に作れば窒素濃縮器になる。

流通

医療用酸素濃縮器は日本国内では50万円から80万円程度で流通しており、個人が購入する際もこの程度の価格であるが、米国内では900ドルから2500ドル程度(10万円から30万円)で流通しており、個人輸入業者を使用するなどの方法で日本国内へも無関税で輸入できる(電圧区分に注意)。なお日本国内で流通している製品は、個人向け販売をしない場合も多い。たとえば帝人フクダ電子などの主要メーカーでは、販売ではなく患者向けのレンタル業務を主体にしている。

医療用以外の用途

大規模な化学プラントなどで酸素を自家使用するのに使われたり、燃焼関連の設備で効率上昇のために使われたりもしている。

分類

PSA式

シリンダー内に窒素を吸着する機能のある特殊なゼオライトモレキュラーシーブ)を入れ、加圧と減圧を繰り返すことにより空気中の酸素と窒素を分離する方式(Pressure Swing Adsorption 略称PSA)。酸素97%程度まで濃縮が可能である。騒音が気になる場合もある。室温が高いほど酸素濃度は低くなる。

医療用酸素濃縮器の主流はこのタイプ。一般的な製品の性能は酸素87%から95%程度であるが、意図的に酸素濃度を40%程度に抑えた製品もある。吐出量は毎分3リットルから5リットルの製品が多いが、10リットルの製品もある。酸素ボンベ酸素ボトルと比較するとランニングコストが安いので、自宅では酸素濃縮器、外出時は酸素ボトルと使い分ける場合も多い。

PSA方式は、このほかにも各種ガスの分離に使用されている。

酸素富化膜式

酸素富化膜とは、酸素と窒素を分離する膜で、空気を通すと窒素より酸素が多く透過する特徴がある。原理的にはコンプレッサー真空ポンプ)などの空気圧のみで機能できるが、濾過前の部分に高濃度の窒素が蓄積されるので、排気ファンが必要。コンプレッサーによる加圧・減圧の往復運動がないので、騒音が少ないなどの利点があるが、原理上、濃縮性能は条件にもよるが酸素28%から40%程度である。室温が高いほど吐出量は高く、酸素濃度は低くなる。なお、酸素富化膜を多段使用すればより高濃度の酸素吐出も可能。松下製品は、松下の精密キャパシタ事業部が開発したらしい。

酸素富化膜式の製品例としては、松下電器産業が家庭用健康機器として酸素濃縮器「酸素エアチャージャー」や、酸素エアコンや、酸素給湯器を発売した。松下製品は酸素約30%。またヤマハ発動機の関連会社ワイムアップも家庭用健康機器として酸素濃縮器「オキシクール32」を発売した。ヤマハ製品は酸素約29%。

酸素発生器

このほかに、薬剤を利用して酸素を発生する酸素発生器もある。これは酸素濃縮器ではないが、安価なので健康増進分野などでそこそこ売れている。ランニングコストは高い。

周辺用品

  • パルスオキシメーター
    指を挟んで、血中酸素濃度を測定する機械。
  • 酸素濃度計
    空気中の酸素濃度を測定する機械。ガルバニ電池式・ジルコニア式などがある。
  • カニューラ/カニューレ
    酸素を吸入するときに使用する、鼻腔にあてがうノズル、およびそれにつながっているチューブのこと。一部の機器では、カニューラが折れて酸素の供給が止まると警告する機能がある。一部では音楽用ヘッドホンに装着した製品もある。
  • 加湿ボトル
    数百ccの水を入れ、水中に酸素を通して加湿し、乾燥による鼻の傷みをなくする器具。酸素濃縮器の吐出部に装着される場合が多い。

酸素濃縮器裁判

1998年10月末、酸素濃縮器日本国内最大手の帝人は「フクダ電子製の酸素濃縮器(クリーンサンソFH-15(PDF末尾に画像あり))は自社製品(ハイサンソTO-90-2L(画像))の模倣であり、登録意匠権の侵害である」としてフクダ電子や関連会社に対して製造金型の破棄や販売停止などを求めて起訴した。1999年11月30日、帝人側が東京地裁請求棄却された。

関連項目

外部リンク

英語サイト