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医業類似行為

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医業類似行為(いぎょうるいじこうい)とは、「医師」「歯科医師」「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」以外が行う医業又は類似する診察・治療行為のことをいう。

一部、法で医業類似行為を行うことが認められているのは、「あん摩マッサージ指圧師」、「はり師」、「きゅう師」、「柔道整復師」という説が広まっているが「あはき等の免許行為は医業類似行為に含まれない」と厚生省が文書で回答。

分類


医業歯科医業あん摩マッサージ指圧はりきゅう柔道整復を行う者は、それぞれの免許を受けた者でなければならないとされている。これを無免許で業として施術を行えば、法律の規定により処罰を受けることになる。

医師法
第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」
歯科医師法
第17条「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない」
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(通称:あはき法
第一条 「医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない」
柔道整復師法
第十五条 「医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なつてはならない」

無届医業類似行為業

医師・歯科医師・あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復以外の医業については、医師法、歯科医師法、あはき法で禁止されており、あはき法第十二条には「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。」とあり、違反した場合は刑罰の対象となる。

このように包括的に医業類似行為を業とすることを禁止しているのは、人の健康に害を及ぼす恐れがあるためである。また、「医発第二四七号の一各都道府県知事あて厚生省医務局長通知」においては、「無届の医業類似行為業者の行なう施術には、医師法違反にわたるおそれのあるものもあるので注意すること」と通知されている。

立法の沿革

明治時代以降、公認されたもの以外の医業類似行為を直接規制する統一的な法令は長い間存在せず、軽犯罪法の前身である警察犯処罰令(昭和41年内務省令第16号)2条18号により「病者ニ対シ禁厭、祈禱、符呪等ヲ為シ又ハ神符、神水等ヲ与ヘ医療ヲ妨ケタル者」に対して刑罰を科していたに過ぎなかった。そして、警察犯処罰令の対象とならない行為については、国家として明確な取締方針を採っておらず、府県令に委ねる方針を採っていた。

そのため、地域により取締の対象になったりならなかったりするという問題があったところ、1947年に至り、「あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法」が制定され、その中で医業類似行為を業として行うことを一括して禁止・処罰することになったものである。

最高裁判例

以上の法律の趣旨について最高裁判所は、日本国憲法22条が保障している職業選択の自由との関係で、禁止の対象となる行為を次のとおり限定的に解釈している。すなわち、HS式無熱高周波療法を業として行った者を被告人とする刑事事件において、医業類似行為を業とした者が処罰されるのは、これらの業務行為が人の健康に害を及ぼす恐れがあるからであり、法律が医業類似行為を業とすることを禁止するのも、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないと判断した(最大判昭和35年1月27日刑集14巻1号33頁)。つまり、有罪判決を出すためには、問題となる医業類似行為が人の健康に害を及ぼす恐れがあることを認定しなければならない。

この最高裁判決を受けて審理のために差し戻された仙台高等裁判所は、HS式無熱高周波療法は人の健康に害を及ぼす恐れのあるものと認定して有罪判決を出したため、被告人側から再度上告されたが、上告は棄却され有罪判決が確定した(最一決昭和39年5月7日刑集18巻4号144頁)。

しかし、この判例に対しては、人の健康に害を及ぼす恐れがあるか否かは一概に判断できない場合が多く、法は抽象的に有害である可能性があるものを一律に禁止しているのであり、健康に害を及ぼす恐れがあることを認定する必要はなく、そのように理解しても憲法22条に違反しないという批判も強い。もっとも、この判決が出た当時は憲法訴訟論が本格的に論じられておらず、違憲審査基準につき不十分な議論しかされていなかった当時のものであるとして、先例としての価値がどれだけあるか疑問であるとの指摘もされている(無登録で医薬品を販売していたとして旧薬事法違反で起訴された事案につき、最大判昭和40年7月14日刑集19巻5号554頁を参照)。

最高裁判例後の解釈

最高裁判例により、無届医業類似行為は 「当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、 人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となる」が 「実際に禁止処罰を行なうには、 単に業として人に施術を行なったという事実を認定するだけでなく、 その施術が人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要」 となった。 (昭和三五年三月三〇日付医発第247号の一各都道府県知事あて厚生省医務局長通知を参照)

しかし、同判決には「単に治療に使用する器具の物理的効果のみに着眼し、その有効無害であることを理由として、これを利用する医業類似の行為を業とすることを放置すべしとする見解には組し得ない」という一文があるので注意が必要である。

いわゆる「資格」について

カイロプラクティックを中心に、無届医業類似行為に関する「資格」を取得するための学校等が存在している。しかし、取得する「資格」はあくまでも民間資格であり、免許ではない。近年は、国際基準を謳う団体も増えている。

届出医業類似行為業

1947年12月20日に「あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法」(あはき法の旧名)が公布された際に3カ月以上医業類似行為を業としていた者については、救済措置として、所定の届出をすれば業務を続けることができるとされている(あはき法12条の2)[1]

関連項目

脚注

  1. ^ あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律等の施行について

外部リンク