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光療法

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光療法(ひかりりょうほう)とは、一部の睡眠障害うつ病に有効とされる治療法の一種である。また、生体リズムを整える効果があるとして、健康法の一種としても用いられることがある。高照度の光を浴びる治療法を高照度光照射療法(こうしょうどひかりしょうしゃりょうほう)と呼ぶ場合もあるが、光を遮ることを治療法に盛り込む場合もあるため、ここでは光療法の呼び名で両者を合わせて説明する。

歴史

精神科医ノーマン・E・ローゼンタールを含む複数人のグループによって、季節によって症状が出る時期と出ない時期があるうつ病患者の研究を行った成果として、1982年に高照度光照射療法が確立された。

光療法の適用

睡眠障害

睡眠障害(非器質性睡眠障害)のうち、とくに概日リズム睡眠障害全般に有効とされている。人間には、明るい光を浴びると体内時計がリセットされ、それとともにメラトニンの分泌が抑制され、一定時間後(約15時間後)に再び分泌される。眠気を司るメラトニンの分泌タイミングを光を用いてコントロールすることで、外界環境と睡眠相とのずれを補正することを主軸とした治療法である。[1]

睡眠相後退症候群は、外部環境に対して睡眠相が遅れたまま進められない状態とされている。また、非24時間睡眠覚醒症候群は、人間が本来持っている25時間周期の睡眠周期を、24時間周期の外部環境に合わせることができない(差の1時間の遅れを取り戻せない)状態とされている。光療法では、起床直後に高照度の光を浴びることで、外部時間に対する睡眠相の遅れや睡眠周期による生体リズムの遅れをリセットする効果を持つと考えられている。

睡眠相前進症候群は、外部環境に対して睡眠相が進んだまま遅らせられない状態とされている。光療法では、就寝前の時間帯に高照度の光を浴びることで、睡眠相を遅らせる効果を持つと考えられている。また、午前中に、サングラスを掛けるなどの方法で意図的に光を浴びる量を減らす治療を併用する場合もある。

冬季うつ病 (季節性情動障害)

季節性情動障害(季節性うつ病)のうち、冬季うつ病にとくに有効とされる。冬季うつ病は、セロトニンの欠乏による受容体の感受性が亢進することが原因であるとする「セロトニン仮説」があり、高照度の光を長時間浴びることでこれが改善されることによるものと考えられている。但し、軽い躁状態の場合は躁転する可能性があるため、光治療を避ける場合もある。

うつ病(非季節性情動障害)

光療法は非季節性のうつ病の治療にも有効であることが実証された[2]。光療法がうつ病に効果があるかどうかは古くから検討されてきたものの、有効、無効の両方の報告があり、有効であることの決定的な証拠はなかったが、最新の研究成果によりその有効性が実証されるに至っている。

照射光

照度と時間については諸説があり、医療機関によって指示される照度と時間は異なるが、2,500ルクス以上で有効との意見が多い。しかし、実際の治療では、5,000-10,000ルクス程度の照度を30分-1時間程度照射するケースが多い。有効/無効に個人差はあるが、有効の場合は数日-2週間程度で効果が現れると言われる。また、改善した状況を維持するため、効果発生後も定期的に実施するように指示される場合もある。

自然光でもよいが、光の照射時間を変えられる点(睡眠障害治療では夜間に照射するケースがある)、照度調整が可能である点(明るすぎる場合、人によっては不快に感じる)、室内使用可能である点(うつ状態では、そもそも戸外に出たがらない)などから、治療目的では人工光が用いられるケースが多い。

自然光を用いる場合、とくに健康法を目的とする場合、「朝日を浴びる」という表現が用いられることがあるが、曇り空は約10,000ルクス、雨空であっても約5,000ルクスと光療法としての照度は充分あるため、必ずしも日光を浴びる必要はない。もちろん約10,000ルクスの照度を持つ「朝日を浴びる」ことができるなら、それが最高の光療法である。

関連項目

脚注

  1. ^ 高照度光療法の総合サイト - 光療法とは
  2. ^ 「8.うつ病の時間生物学的治療」 睡眠医療 第2巻 第1号 2007 (株)ライフサイエンス

参考文献

外部リンク