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ファンサブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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ファンサブ(fansub)は、英語の造語で、日本語のアニメ作品に手製の英語の字幕をつけること。または、その活動をいう。アニメ作品以外でもファンサブが作られることはあるし、また、英語以外の言語の字幕がつけられる場合もあるが、ほとんどが日本製アニメに英語の字幕がつけられる。これらの活動は当然ながら両国の著作権法上、問題のある行為とされているが、実際の活動者たちは、告発例などが皆無に近いことから、自らの活動は黙認されていると主張している。

早いものでは、日本でテレビ放映されたものが、翌週には字幕が入った状態で視聴されていることもある。

北米でのファンサブ活動

1975年にアメリカで家庭用ビデオデッキが発売されると、これを利用して録画したアニメ作品の交換を行う活動がさかんに行われるようになった。アメリカは国土が広いため、ある地域で放映されていた番組が他の地方では放映されないようなことが多かったためである。

これらのアニメの熱心なファンの中には、放映されている作品や、北米でソフト化されている作品だけに飽き足らず、日本で放映中のものや、アメリカで放映予定のないものをすぐに見たいという欲求を持つものが多くいた。このような趣味者たちは、日本でテレビ録画された番組に、自ら独自に字幕をつけて複製し、同じような趣味者にほぼ無料で配布するという活動をはじめるものがいた。これがファンサブ活動のはじまりといわれる。

初期は大学サークルが学内のホールを借りてささやかに上映会を行うといった形式の活動が主であったが、21世紀になるとそれらの字幕入りのアニメが、データの形でインターネットを通して流通するという事態にもなっている。これらの活動を行っているファンたちは、告発例などが皆無に近いことから、自分たちの活動は黙認されていると主張しているが、日本国内のアニメ製作スタジオの見解は明らかに異なる。また、これらファンサブ活動によって作成されたデータが、違法に全世界で流通している。

ファンサブの活動はまた、アメリカで放映されている作品が大幅に改編されたものであるということをファン層に知らしめることにもなった。アメリカ人のファンたちは、ファンサブ活動で編集されていない日本版『科学忍者隊ガッチャマン』や『宇宙戦艦ヤマト』を見、自分達が見せられていたものがまがい物であるという認識を強く持つようになった。実際にはこれらの改変は日本側の了解のもとに行われたものがほとんどだが、ファン層はオリジナル日本版のほうがはるかに高品質な作品であり、それらがまともな形で導入されないのは日本文化に対する冒涜であると主張している。輸出の際の改変は現在も行われているため、これらの批判は現在でも行われている。

ファンサブと言う文化と可能性

アニメの権利を持つ日本企業及びその他海外で放映、販売権を握る企業はファンサブ活動に対する対応に困っている。 ファンサブと言う活動は企業に代わってアニメを宣伝し、アニメ市場や関連市場(キャラクターグッズ市場)の拡大を担っている。 だが、ファンサブの活動は非常に違法に近い物もあり、現時点の日本また日本以外の有力なアニメ市場である北米でも著作権法はこれらファンサブ活動に対して黙認状態であり、もし仮に一部の企業が権利主張を声高に叫び始めた途端にファンサブは崩壊する可能性が非常に高く、また脆い存在である。

ファンサブの画期的あるいは象徴的出来事は幾つか見られた。 ファンサブが翻訳したアニメの字幕と、そのアニメがライセンス契約され企業が翻訳した字幕が異なっていることが一時期話題になった。 ファンサブ側はアニメの一部のセリフを別のアニメのオマージュを絡め翻訳していた。 だが実際にオリジナルのアニメのそのセリフは無く、企業側が翻訳した字幕の方が正確であった。 それにも関わらず、アニメの消費者はファンサブ側の「よりコアでオタクなセリフ」に高い評価を与えた。

また、あるアニメの英語版ファンサブが出回るとそれを見た各国のアニメファンが字幕データをつけて配布するようになった。 それらが繰り返し行われ、その流通したファンサブ製アニメには16カ国のも言語の字幕データが含まれる国際色豊かな物に出来上がった。 驚くべきことはこれらの翻訳は全て無償で行われ、熱心なファンが行った事である。

まだ少数ではあるが、これらのファンサブによる字幕版を企業側が営利的に考えたとしてももっと有効利用できるはずだと言う意見がある。 だが企業側にしてみれば、無断で著作物に字幕を付けたファンサブと手を握ることは「勝手に字幕をつけてインターネット上で配布する」と言う一連の行為を認める事になるのではないか、またこの条件で合意した場合、もし仮に権利問題で法的にファンサブ側と争った場合は企業側に不利に働くのでは、と危惧している。