ジャンボリー
スカウト運動において、ジャンボリー(英: Jamboree)は、全国的に、もしくは国際的に行われるボーイスカウトやガールスカウトの大規模な集会のことである。
歴史
[編集]第1回世界スカウトジャンボリーは1920年にイギリスで開催された。2024年時点で世界スカウトジャンボリーは24回開催されており、通常は4年ごとに開催されている。第26回世界スカウトジャンボリーは2027年にポーランドで開催される予定である。
標準的なスカウト生活は比較的短いものであり、各世代のスカウトたちが少なくとも1回は大規模な集会に参加することは良いことだ。なぜなら、それにより少年たちは本当に偉大な兄弟愛の一員であることを実感できると同時に、他の地区や他の国の兄弟スカウトたちと個人的に知り合うことができるからだ。[注釈 1]—ロバート・ベーデン=パウエル、(1932年9月)
また、世界中で国内及び大陸規模のジャンボリーが開催されている。これらのジャンボリーの多くは、海外のスカウトも参加する。
その他の集会
[編集]ジャンボリーのコンセプトの誕生によって、特定の部門のスカウトを対象とした大規模な集会も全国スカウト組織によって組織されるようになった。
- ムート – ローバースカウトのキャンプ大会もしくは集会。
- ベンチャー – ベンチャー(シニア)スカウト部門の若者の集会。
- インダバ – 成人スカウト指導者のキャンプ大会もしくは集会。
- アグーナリー – 障害をもつスカウトのキャンプ大会。
- COMDECA – Community Development Camp(コミュニティ開発キャンプ)の略称、コミュニティ開発プロジェクトを実施する若者の大規模な集会[要出典]。
語源
[編集]ジャンボリー(jamboree)の語源は不詳である。これは多くの辞書の項目に反映されている。例として、カナダオックスフォード辞典によると、語源は「19世紀、起源不明」となっている。オックスフォード英語辞典(OED)は、この語源はアメリカの俗語であるとし、1868年のニューヨーク・ヘラルド紙や19世紀後半のアイルランド語の文書で使用されていることを確認している[1]。
スカウティングでは、「ジャンボリー」はベーデン・パウエルによって作られたとよく信じられているが、ベーデン・パウエルやスカウティングの出版物によるこの言葉の語源についての記録はなく、この言葉は数十年前から使用されていた[2]。
スカウティング以前の使用
[編集]ベーデン=パウエルは、「ジャンボリー」を選んだ理由について尋ねられたことがあった。ベーデン=パウエルは「What else would you call it?(他に何と呼ぶか)」と答えた。「ジャンボリー」が既に特定の意味を持っていたと仮定した場合、この返答が軽い口答え以外に意味を成す可能性がある[要出典]。
複数の作家は、スカウティングで使用される前の20世紀初頭の時点で、「ジャンボリー」を「豪華もしくは騒々しい祝賀会やパーティー」を指す用語として使用していた[2][3]。詩人のロバート・W・サーヴィスは、1912年に出版された詩『Athabaska Dick』の中でこの用語を、「They are all a-glee for the jamboree, and they make the Landing ring(彼らはみんなジャンボリーに大喜びで、ランディングリングを作る」として使用していた[4]。L・M・モンゴメリは1915年に、1880年代を舞台にした本『アンの愛情』の中でこの用語を3回使用している。例として本には、「There was quite a bewildering succession of drives, dances, picnics and boating parties, all expressively lumped together by Phil under the head of “jamborees”(ドライブ、ダンス、ピクニック、ボートパーティーが次々と行われ、フィルはそれをすべて「ジャンボリー」という見出しの下に表現豊かにまとめていた)」と表現されている[5]。
ロバート・グレーヴスは1954年に、ベーデン=パウエルがこの単語をアメリカの俗語ではなく、ベーデン=パウエルの連隊にあったアイルランドとのつながりを通じて知っていた可能性があると示唆した[6]。
その他の説
[編集]「ジャンボリー」という言葉には、ヒンディー語やスワヒリ語、アメリカ先住民の言語など、さまざまな起源があると主張されており、ベーデン=パウエルが使用した意味をさらに分かりにくくさせている[7][8]。
一説によると「ジャンボリー」という言葉は、スワヒリ語でこんにちはを意味する「Jambo!(ジャンボ)」という言葉から派生したのではないかと考えられている。ベーデン=パウエルは1880年代と1890年代後半に東アフリカで多くの時間を過ごしていた[9][10][11]。
スカウティングでの使用
[編集]「ジャンボリー」という言葉は、1920年に開催された最初のボーイスカウトのジャンボリー以降のスカウティング・プログラムで主に使用されている。ベーデン=パウエルは、この最初のボーイスカウトの集会や会合に参加した人々が「jambo(ジャンボ)」という言葉とともに温かく歓迎されたことから、意図的に「ジャンボリー」という名前を選んだ。
英語の「jamboree(ジャンボリー)」という単語は、語尾に「-ree」が付く借用語として使用されている。「jamboree」という単語は名詞としても他動詞としても使われており、語根は「jambo(ジャンボ)」である[12]。例えば、「jambo」に参加する人は「jamboree」である 。
この最初の「ジャンボリー」、つまりスカウトの集まりに参加した多くの人は、当時新しいコンセプトや挨拶を十分に理解していなかった。1920年にロンドンのオリンピアで開催された最初の世界ジャンボリーで、ベーデン=パウエルは次のように述べた。
「この言葉は人によって意味が異なるが、今年からジャンボリーは特別な意味を持つようになる。ジャンボリーは史上最大の若者の集まりと結び付けられるようになるだろう。[注釈 2][13]
オレブ・ベーデン=パウエルは、異なる言語や文化習慣を持つスカウトの間で使われるリングワ・フランカ(共通語)を指して「jamborese(ジャンボレーゼ)」という言葉を作り出した。この言葉は、多様なスカウトが出会うことで発展し、世界中のスカウトの間で友情と理解を育む。また、時には「jamborette(ジャンボレット)」という言葉が、地域的または国際的な小規模な集会を指すのに使用される[14]。
スカウティングでよく使用される「camporee(キャンポリー)」という単語も、昔のイギリスで使われていた言葉が反映されている。「キャンポリー」とは、スカウト隊がキャンプや共通の活動のために地元や地方に集まることを意味している[15]。キャンポリーと同様に、ジャンボリーの開催頻度は少なく、国内や世界中からスカウトが集まる[16][17][18]。
国際ジャンボリー
[編集]- 世界スカウトジャンボリー – 世界スカウト機構が主催する世界中のスカウトが集まるイベントである。参加者は3万 - 4万人である。
- ジャンボリー・オン・ジ・エア(JOTA)– アマチュア無線による交流行事。
- ジャンボリー・オン・ジ・インターネット(JOTI)
- ジャンボリー・オン・ザ・トレイル(JOTT) - 国際ハイキングデー
- アフリカ地域スカウトジャンボリー
- アラブ地域スカウトジャンボリー
- アジア太平洋地域スカウトジャンボリー
- カリブ地域スカウトジャンボリー – カリブ海地域のスカウトの集会。
- 中央ヨーロッパジャンボリー – 中央ヨーロッパのスカウトの集会。
- ヨーロッパスカウトジャンボリー – ヨーロッパ各地のスカウトの集会。
- インターアメリカ地域スカウトジャンボリー – インターアメリカスカウト地域のスカウトの集会。
- バルトジャンボリー – リトアニア、ラトビア、エストニアのスカウトとガイドが他国からの国際ゲストとともに集まるイベントである[19]。
- エセックス国際ジャンボリー – 1927年から開催されており、世界中から7,000 - 9,000人のスカウトとガイドが集まる。
- 世界独立スカウト連盟世界ジャンボリー – 世界独立スカウト連盟のスカウトの集会。
- ジャンボリー2008 (ノーサンバーランド)
- Homenetmen General Jamboree(ホームネットメン・ジェネラル・ジャンボリー)
- 国際文化ジャンボリー
国内ジャンボリー
[編集]- ナショナルスカウトジャンボリー - ボーイスカウトアメリカ連盟
- カナダスカウトジャンボリー - カナダのスカウトの集会。
- リトアニアナショナルジャンボリー - リトアニアのスカウトが5年ごとに集まる大会[20]。
- オーストラリアスカウトジャンボリー - オーストラリアとアジア太平洋地域のスカウトが集まるイベント。
- オーストラリアガールガイドジャンボリー - オーストラリアと世界各地からガールガイドが集まるイベント。
- 日本スカウトジャンボリー - 日本のスカウトの集会。
- ナワカ - オランダのシースカウトの集会。
- アイルランドスカウトジャンボリー
- ニュージーランドスカウトジャンボリー
- ガールスカウトシニアラウンドアップ
- インドにおけるスカウトとガイドの集会[21]
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 原文: The average Scout Life of a boy is a comparatively short one, and it is good for each generation of Scouts to see at least one big rally, since it enables the boy to realize his membership of a really great brotherhood, and at the same time brings him into personal acquaintance with brother Scouts of other districts and other countries.
- ^ 原文: "People give different meanings for this word, but from this year on, jamboree will take a specific meaning. It will be associated to the largest gathering of youth that ever took place."
出典
[編集]- ^ "jamboree, n.". OED Online. オックスフォード大学出版局. September 2013. 2013年10月7日閲覧。
- ^ a b "Jamboree". The Concise Oxford University Dictionary (10th ed.). Oxford University Press. 1999.
- ^ "Jamboree". Collins English Dictionary. Dictionary.com (10th Edition – Complete & Unabridged ed.). HarperCollins. 2015年11月2日閲覧。
- ^ Service, Robert W. (1912). “Athabaska Dick”. Rhymes of a Rolling Stone. Dodd, Mead and company
- ^ Montgomery, L.M. (1915) (英語). Anne of the Island 2006年3月8日閲覧。
- ^ Graves, Robert (1956). The Crowning Privilege. The Clark Lectures, 1954–1955. Doubleday. p. 199. LCCN 56--6542
- ^ Ashton, E. O. (1947). Swahili Grammar: Including intonation. Longman House. ISBN 0-582-62701-X
- ^ Nurse, Derek; Hinnebusch, Thomas J. (1993). Swahili and Sabaki: a linguistic history. University of California Publications in Linguistics. 121
- ^ Begbie, Harold (1900). The story of Baden-Powell: The Wolf that never Sleeps. London: Grant Richards
- ^ Prins, A.H.J. (1961). “Swahili the Swahili-speaking peoples of Zanzibar and the East African Coast (Arabs, Shirazi, and Swahili)”. In Forde, Daryll. Ethnographic Survey of Africa. London, UK: International African Institute
- ^ Prins, A.H.J. (1970). A Swahili Nautical Dictionary. Preliminary Studies in Swahili Lexicon. 1. Dar es Salaam
- ^ Hopper, Paul J; Thompson, Sandra A (June 1980). “Transitivity in grammar and discourse”. Language 56 (2): 251–299. doi:10.1353/lan.1980.0017 24 January 2016閲覧。.
- ^ Wilson, John S. (1959). Scouting Round the World (First ed.). Blandford Press. p. 238
- ^ Wilson, John S. (1959). Scouting Round the World (First ed.). Blandford Press. p. 122
- ^ “Camporee”. 2024年10月26日閲覧。
- ^ “US Jamboree”. 2017年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月15日閲覧。
- ^ “The Summit, US Jamboree”. BSA. 2024年10月26日閲覧。
- ^ “World Jamboree”. Scouting.org. 2012年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月15日閲覧。
- ^ “The Baltic Jamboree 2022 "Back to the Balts" is going to be held in Lithuania! – Naujienos | Skautai – geresniam pasauliui” (英語). Skautai. 2023年3月23日閲覧。
- ^ “Scouts - Lithuanian Jamboree "Between Three Waters"” (英語). www.scouts.org.uk. 2023年3月23日閲覧。
- ^ “NATIONAL JAMBOREES” (英語). BSGIndia. Bharat Scouts and Guides. 2011年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月2日閲覧。
外部リンク
[編集]- “Jamboree history”. Scout.org. 2013年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月7日閲覧。
- “Klíč 2008 – Czech national jamboree in Pilsen”. 2008年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月29日閲覧。
- “Flamboree – Flemish National Jamboree in Belgium”. 2008年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月15日閲覧。
- “Lithuanian Scouts Jamboree”. 2008年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月3日閲覧。
- “C-Jam 2008 – New Zealand National Jamboree in Christchurch”. 2008年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月23日閲覧。
- BSA 2010 100th Anniversary Jamboree
- “K2BSA at the 2010 National Scout Jamboree”. 2010年7月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月16日閲覧。
- “Canadian Jamboree Badge”. 2024年10月26日閲覧。