コンテンツにスキップ

フーヴァー研究所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フーバー研究所から転送)
フーヴァー研究所
標語 思想は自由社会を明確にする。
設立 1919年
種類 公共政策シンクタンク
所在地
代表 コンドリーザ・ライス
ウェブサイト hoover.org
テンプレートを表示

フーヴァー研究所(Hoover Institution)は、アメリカ合衆国保守系公共政策シンクタンクスタンフォード大学附属。創設者はハーバート・フーヴァー

正式名称は、フーヴァー戦争・革命・平和研究所(Hoover Institution on War, Revolution and Peace)。

概要

[編集]

1919年に後の大統領でスタンフォード大学卒業生のハーバート・フーヴァーが大学内部に創設した、公共政策シンクタンクである。

単にフーヴァー研究所ともいう。同研究所は公式にスタンフォード大学のユニットであり同大学敷地内にあるが、研究の公共性・中立性を保つために同大学とは別の独立した監査を受けており、同大学に付属する研究・教育機関としての影響を受けない。設立以来より2020年代の現代にいたるまで米国歴代政権御用達のシンクタンクとして大きな影響力を持つ。

研究所の図書館では、フーヴァー大統領自身や第一次世界大戦第二次世界大戦に関する大量の文書を保管している。(英語版も参照

フーヴァー研究所は保守リバタリアニズムに大きな影響を及ぼしている。研究所では長らく政治経験のある経験豊かな保守主義者にとっての学術の場となってきた。多くのフーヴァー研究所研究員は、ブッシュ政権などの共和党政権に参画していた。高官となったエドウィン・ミーズコンドリーザ・ライスジョージ・シュルツトーマス・ソウェルシェルビ・スティールエイミー・ゼガートは、全てフーヴァー研究所の研究員である。アメリカ中央軍司令官を経験した米陸軍のジョン・アビゼイドは、最近研究所で初めてアネンバーグ高等客員研究員に任命された。

使命

[編集]

研究所の使命に代議政体、私企業、平和、個人の自由、アメリカの制度の保護を主義として掲げている[1]。フーヴァー研究所に関するスタンフォード大学理事会に対するハーバート・フーヴァーの声明は、その思想を示し、活動を定義づけ続けている。

この研究所は合衆国憲法権利法代議政体の手法を支持する。社会と経済の双方の制度は、進取の気象と工夫をばねにする私企業の上に成り立っている。(中略)この国の制度は、地方政府や国民が自身の為に政治的、社会的、経済的活動を行えない場合を除いて連邦政府はその活動を行うべきではないという制度である。(中略)研究所の使命は、その記録から戦争を行うことに対する経験選択権を思い起こし、この記録や出版物の研究により平和を構築し維持する人類の努力を思い起こし、アメリカの生活の保護をアメリカのために続けることにある。当研究所は単なる記録保管所ではなく、そうであってはならない。しかし、この目的と目標と共に研究所自体が平和個人の自由、アメリカの制度の保護に対する道を絶えず精力的に示さなければならない。

フーヴァー研究所のウェブサイトによると、「知識を集積し、思想を生起し、この両方を広めることにより研究所は平和を守り保護し人類の状態を改善し個人の生活に政府の介入を制限することを求めている」。[1]

気候変動懐疑論

[編集]

フーヴァー研究所は、現在の気候変動人為的であることを認めているものの、対策を即座に行うことには反対している[2]。上級研究員の中には気候変動を軽視する者もいる[2]

歴史

[編集]
スタンフォード大学フーヴァー塔

フーヴァー研究所は後に第31代アメリカ合衆国大統領になる、スタンフォード大学初代卒業生の一人ハーバート・フーヴァーが設立した。第一次世界大戦後にアメリカによる欧州救済に尽力した。フーヴァーの明確な目的は、現に起きている現代史の記録を収集することにあった。フーヴァーの協力者は、たびたび文書や希少な印刷物、特にナチスや共産主義者の支配する国のものを守るために命の危険に晒された。ローザ・ルクセンブルクヨーゼフ・ゲッベルスの日記、パリのロシア秘密警察の記録を入手するのに成功した。必然的に有力者、フーヴァー、主催する大学の間で争いが起きたが、研究機関もフーヴァーの影響力によって設立された[3]

1919年、フーヴァーは第一次世界大戦に関連する第一級の収集資料を守るため、スタンフォード大学に5万ドルを寄付した。1922年、コレクションはフーヴァー戦争ライブラリーとして知られることとなり、一般の書架と分けられてスタンフォード図書館に保管された。1926年までにフーヴァー戦争ライブラリーは大戦を専門とした世界最大のライブラリーとして知られた。1929年までに140万点を数え、図書館は手狭になってしまった。フーヴァー戦争ライブラリーは図書館から独立した永続的な保管場所となるべく、1938年フーヴァー塔建設計画を発表。塔はスタンフォード大学40周年に当たる1941年に完成した[4]

1946年までにフーヴァー戦争ライブラリーの活動は、研究活動を含むまでに拡大し、研究所ではフーヴァー戦争・革命・平和研究図書館と改名した。この時、ハーバート・フーヴァーはニューヨーク市に住んでいたが、寄付者・寄付募集者・顧問として研究図書館に関わり続けた。

1956年、フーヴァーは研究図書館の援助を受け、シンクタンクや文書保管所として当時の形式を研究所が実現できる基金募集の一大キャンペーンを開始した。1957年、研究図書館は現在まで続くフーヴァー戦争・革命・平和研究所と改名した[5]

1960年、W.グレン・キャンベルが代表に任命され、予算が増加することでまもなく、入手図書と関連する研究事業は増大し、特に中国ロシア関連の収集物において顕著となった。1960年代には学生運動が興隆したが、研究所はスタンフォード大学との密接な関係を深め続けた。1980年頃からはワシントンと結び付いた保守的なシンクタンクという傾向が強まった。研究所は現在もスタンフォード大学の「一部」であり続けている[6]

関係者

[編集]

下記の一覧は、フーヴァー研究所の現職と嘗ての代表や著名な研究者の一覧である。なお、大学に付属する教育機関ではないため、教授、助教授等の役職は存在しない。

代表

[編集]
  • エプレイム・D・アダムス (1920年 – 1925年)
  • ラルフ・H・ルツ (1925年 – 1944年)
  • ハロルド・H・フィッシャー (1944年 – 1952年)
  • C・イーストン・ロスウェル (1952年 – 1959年)[7]
  • W・グレン・キャンベル (1960年 – 1989年)[8]
  • ジョン・レイジアン (1989年 – 2015年)
  • トマス・W・ギリガン(2015年 - 2020年)
  • コンドリーザ・ライス(2020年 - )

名誉研究員

[編集]

高等研究員

[編集]

上級研究員

[編集]

出典[11]

一般研究員

[編集]

出典[12]

高等客員研究員

[編集]

出典[13]

メディア研究員

[編集]

出典[14]

出版物

[編集]

フーヴァー研究所内の出版部フーヴァー研究所出版部では季刊誌のHoover DigestEducation NextChina Leadership MonitorDefining Ideasなどの公共政策に関する論題を扱う多くの出版物を発行している。フーヴァー研究所では2001年にヘリテージ財団から引き継いだ隔月刊誌『ポリシー・レビュー』も発行している。

これに加えてフーヴァー研究所出版部ではフーヴァー研究所研究員や研究所と密接な関係のある学者による本やエッセイを刊行している。

機動的な活動

[編集]

下記のフーヴァー研究所の機動的な活動は、フーヴァー研究所研究員や他の学術機構の学者の両方から成り立っている。研究所の機動的な活動は、公共政策の具体的な分野での共同研究を促進している。[17]

  • K-12教育
  • 公安と法律
  • 財産権、自由、繁栄
  • 自由社会の長所
  • 経済発展
  • 連邦政府の税と予算政策
  • 健康保険改革
  • イデオロギーとテロ
  • エネルギー政策
  • 政府の手続き改革[18]

資金源

[編集]

フーヴァー研究所では慈善財団法人などの財団法人から多くの資金提供を受けている。最近の資金提供者に次のものがある。

文献

[編集]
  • Paul, Gary Norman. "The Development of the Hoover Institution on War, Revolution, and Peace Library, 1919–1944". PhD dissertation U. of California, Berkeley. Dissertation Abstracts International 1974 35(3): 1682-1683-A, 274p.

脚注

[編集]
  1. ^ a b Hoover Institution - Mission Statement”.hoover.org
  2. ^ a b Hoover Institution on War, Revolution and Peace”. DeSmog. 2024年9月22日閲覧。
  3. ^ Peter Duignan, "The Library of the Hoover Institution on War, Revolution and Peace. Part 1: Origin and Growth," Library History 2001 17(1): 3-19
  4. ^ Hoover Institution Library and Archives: Historical Background”.hoover.org Archived 2008年7月19日, at the Wayback Machine.
  5. ^ Hoover Institution - About Hoover - About Herbert Hoover and the Hoover Institution”.hoover.org Archived 2008年11月5日, at the Wayback Machine.
  6. ^ Peter Duignan, "The Library of the Hoover Institution on War, Revolution and Peace. Part 2: the Campbell Years," Library History 2001 17(2): 107-118.
  7. ^ “Yacht club to host celebration of Virginia Rothwell”. Stanford Report. (September 1, 2004). http://news-service.stanford.edu/news/2004/september1/obit-rothwell-91.html March 25, 2008閲覧。 
  8. ^ Trei, Lisa (November 28, 2001). “Glenn Campbell, former Hoover director, dead at 77”. Stanford Report. http://news-service.stanford.edu/news/2001/november28/campbellobit-1128.html March 25, 2008閲覧。 
  9. ^ Honorary Fellow”. Hoover Institution Stanford University (2010年). 2010年11月9日閲覧。
  10. ^ Distinguished Fellow”. Hoover Institution Stanford University (2010年). 2010年11月9日閲覧。
  11. ^ Senior Fellows”. Hoover Institution Stanford University (2010年). 2010年11月9日閲覧。
  12. ^ Research Fellows”. Hoover Institution Sutanford University (2010年). 2010年11月9日閲覧。
  13. ^ Distinguished Visiting Fellows”. Hoover Institution Stanford University (2010年). 2010年11月9日閲覧。
  14. ^ William and Barbara Edwards Media Fellows”. Hoover Institution Stanford University (2010年). 2010年11月9日閲覧。
  15. ^ a b William and Barbara Edwards Media Fellows by year (2008)”. hoover.org. 2011年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月26日閲覧。
  16. ^ William and Barbara Edwards Media Fellows by year (2004)”. hoover.org. 2011年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月26日閲覧。
  17. ^ Hoover Institution - Task Force”. hoover.org. 2010年12月26日閲覧。
  18. ^ Hoover Institution - Task Forces”.hoover.org Archived 2010年5月1日, at the Wayback Machine.
  19. ^ Media Matters: Recipient Grants: Hoover Institution on War, Revolution and Peace”. mediamattersaction.org. 2010年12月26日閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]