コンテンツにスキップ

デポジット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
保証金から転送)

デポジット英語: deposit)、または保証金(ほしょうきん)、預かり金(あずかりきん)とは、サービスを利用する際に、利用者が担保保証)として支払う代金のこと。一般に、利用者がサービス利用を返上した場合には支払った額が払い戻されるが、課金を怠るなど契約を履行しなかった場合には払い戻されないと取り決められている。

サービスに必要な物資(容器カードなど)の使い捨てを防止する観点から、利用者がそれらを借りる代金として設定される場合もある。この場合サービス提供元に物資を返却することで支払った額が払い戻されるが、物資を破損・紛失した場合には払い戻されないと取り決められている。

語義

[編集]

預り金・預託金

[編集]
  • 証券分野
    1. 証券会社において、顧客の入出金用途に使用する無利息のプール口座。株式投資信託等金融商品の購入資金として充当され、売却すると入金される。残高は手続を行う事で、窓口や証券カードを用いてATMで出金(換金)が出来る。無利息で当座預金と同質ではあるが、証券会社の自己勘定で資金運用されており、経営破綻した場合は財務状況によって銀行預金のペイオフとは無関係に減損される可能性があり、投資者保護基金の保護対象に含まれている。1990年代より大手証券会社での証券総合口座やネット証券各社では、プール口座として「預り金」ではなく、MRFの採用が普及している。なお銀行での投資信託販売では通常、顧客の普通預金口座がこの役割をしている。
    2. 商品先物外国為替証拠金取引専業業者においては、先述と同様のプール口座として使用されており、顧客の注文に応じて商品買付代金・取引証拠金へ振替される。
  • 環境分野 - リサイクル預託金など
  • 交通分野 - ICカードの保証金など
  • その他
    • 携帯電話事業者が、一定期間内に複数回線を契約しようする場合と、他事業者に未払い料金がある場合、支払いを保証させるために預かる金銭。

デポジット(deposit)

[編集]
  • ICカード乗車券のICカードに対する預り金(発行事業者から貸与する形態を採っており、貸主への返却時に返還される。)
  • コインロッカーの鍵 - 日帰り入浴施設博物館等では施錠時に投入した硬貨が解錠時に返却されるため。
  • スキー場のリフト券 - ICチップ化されたリフト券は、スキー場側で再利用できるように、通常1,000円を預かり金として貸している。リフト券返却時は預かり金は返還される。
  • 音声ガイド(イヤホンガイド) - 博物館美術館など。

なお、以下のように厳密には「前受金」とされるものもある。

  • ホテル等でのチェックイン時に支払う前金(宿泊料金相当)。チェックアウト時に料金へ充当される。

環境分野

[編集]

 環境分野では、使用済み製品や容器の回収を促進する制度である「デポジット制度」(このように略称されるが、正確には「デポジット・リファンド制度」という。)を指す用語として用いられる。

 製品購入時に製品本来の価格に一定額を預り金(デポジット)として上乗せして販売し、使用後に使用済みの製品を所定の場所に返却すれば、購入時に徴収した預り金の全部もしくは一部を返却者に払い戻す(リファンド)するという制度である。 例えば、飲料の販売時に容器代金を上乗せしておき、容器を販売店や専用の機械などに返却するとそのお金が返却される[1]。使用済み製品や容器の回収率が上がりリサイクルや適正処理が進む、ごみの散乱を防ぐことができるなどの利点がある(利点や課題については、国立環境研究所の報告書[2]の第2章などを参照)。

各国での導入例

[編集]

日本

[編集]

一定条件を満たすと預り金が返還されるものでは、

などがある。他にも飲料の自動販売機で使用した紙コップ、缶、ペットボトルを機械へ返却すると飲料の料金に上乗せされている容器代10円が戻ってくるシステムがある。

欧米

[編集]

米国の一部の州や北欧では、炭酸飲料等の容器に対するデポジットがある。法制度としては、米国の1971年en:Oregon Bottle Billが最初のもの。(en:Container-deposit legislationを参照)

中国

[編集]

中国では、2015年から2017年にかけて自転車シェアリングが急成長した後、一気に衰退した。短期間で倒産した中小企業の中には、最初からデポジット料金の横領を目的とした企業もあったと見られている[3]

海外での導入事例のリスト

[編集]

海外のデポジット制度のうち、法令等にもとづく強制デポジット制度の一覧を国立環境研究所が公開している[4]

課題

[編集]

一部の飲料にデポジットが導入されているドイツではエネルギー負荷の少ないリユース容器の利用を促すため、リユース容器よりもリサイクル容器に高いデポジットを設定したもののリサイクル容器の使用率が増えている[1]

交通分野

[編集]

日本

[編集]

シンガポール

[編集]

シンガポールMRTなど、乗車券が再使用可能なIC乗車券で、自動改札機で出場する際に乗車券が回収されない場合、乗車券を回収するために、運賃に保証金分を上乗せして発売する場合がある。MRTでは、券売機に保証金返還機能がある。

脚注

[編集]
  1. ^ a b ドイツの3R(リデュース、リユース、リサイクル)”. 一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター. 2020年5月8日閲覧。
  2. ^ 田崎智宏、沼田大輔、松本津奈子、東條なお子 (2010年). “経済的インセンティブ付与型 回収制度の概念の再構築 〜 デポジット制度の調査と回収ポイント制度の検討から〜”. 2021年6月18日閲覧。
  3. ^ 半年で日本撤退のシェア自転車ofoに破産準備報道。「中国新四大発明」の倒産ラッシュ”. businessinsider (2018年11月6日). 2019年9月5日閲覧。
  4. ^ 海外におけるデポジット・リファンド制度の調査結果”. 国立環境研究所. 2021年6月18日閲覧。