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「ホウ酸」の版間の差分

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== 用途 ==
== 用途 ==
* [[水酸化カリウム]]水溶液の中和剤としても用いられる。工業用メーカーは、[[アメリカ合衆国]]、[[トルコ]]、[[ロシア]]、[[チリ]]、[[ペルー]]、[[アルゼンチン]]。[[日本]]は全量を輸入に依存。用途はホウ酸塩[[ガラス]]、[[ガラス繊維]]、ホウ素系合金鉄、目に入った場合の中和(後述)。
* [[水酸化カリウム]]水溶液の中和剤としても用いられる。工業用メーカーは、[[アメリカ合衆国]]、[[トルコ]]、[[ロシア]]、[[チリ]]、[[ペルー]]、[[アルゼンチン]]。[[日本]]は全量を輸入に依存。用途はホウ酸塩[[ガラス]]、[[ガラス繊維]]、ホウ素系合金鉄、目に入った場合の中和(後述)。
* [[ホウ素]]の高い[[中性子]]捕獲能力を利用して、[[原子炉]]の核分裂で生成する[[熱中性子]]への[[毒物質 (原力)|毒物質]]<ref group="注">[[減速材]]は中性子のもつエネルギーを低くするためのもので核反応を促進する役割があり、[[冷却材]]は発生する熱を吸収する役割のものであり、この場合はいずれとも役割が異なる。</ref>として利用される。この場合は容易に水溶するホウ酸として利用することが多く、ホウ酸水の場合は[[冷却材]]も兼ねる。なお、放射性核種の[[原子核崩壊]]は熱中性子がなくても自発的に起こるものであるため、吸収剤としてのホウ素は役に立たない。従って、[[崩壊熱]]で原子炉が高温となる状態は、別の手段で冷却を行う必要がある。
* [[ホウ素]]の高い[[中性子]]捕獲能力を利用して、[[原子炉]]の核分裂で生成する[[熱中性子]]への[[中性|毒物質]]<ref group="注">[[減速材]]は中性子のもつエネルギーを低くするためのもので核反応を促進する役割があり、[[冷却材]]は発生する熱を吸収する役割のものであり、この場合はいずれとも役割が異なる。</ref>として利用される。この場合は容易に水溶するホウ酸として利用することが多く、ホウ酸水の場合は[[冷却材]]も兼ねる。なお、放射性核種の[[原子核崩壊]]は熱中性子がなくても自発的に起こるものであるため、吸収剤としてのホウ素は役に立たない。従って、[[崩壊熱]]で原子炉が高温となる状態は、別の手段で冷却を行う必要がある。
* 小学校5年の理科の実験(物の溶け方)で[[溶解度]]の実験を行なう際、食塩([[塩化ナトリウム]])と並ぶ代表的な[[試薬]]。ホウ酸のほうが溶解度が低いため、水に良く溶ける塩化ナトリウムと溶解度を比較したり、水温を上げた場合に両薬品の溶け方がどう変化するかなどの実験で用いられる。
* 小学校5年の理科の実験(物の溶け方)で[[溶解度]]の実験を行なう際、食塩([[塩化ナトリウム]])と並ぶ代表的な[[試薬]]。ホウ酸のほうが溶解度が低いため、水に良く溶ける塩化ナトリウムと溶解度を比較したり、水温を上げた場合に両薬品の溶け方がどう変化するかなどの実験で用いられる。
* [[ゴキブリ]]駆除の食毒剤として、ホウ酸団子(10%~50%)が使用される場合がある。完成された市販品があるほか、[[タマネギ]]、[[糠|米ぬか]]、[[ジャガイモ]]をペースト状にして、ホウ酸を混入させることで自作することも可能だが、[[ペット]]が誤飲すると、脱水で死に至る場合がある。誤飲を防止するため、防護カバーを設けた市販品「ゴキブリキャップ」も存在する。ホウ酸濃度が高いと(50%以上)二次駆除も可能となる。
* [[ゴキブリ]]駆除の食毒剤として、ホウ酸団子(10%~50%)が使用される場合がある。完成された市販品があるほか、[[タマネギ]]、[[糠|米ぬか]]、[[ジャガイモ]]をペースト状にして、ホウ酸を混入させることで自作することも可能だが、[[ペット]]が誤飲すると、脱水で死に至る場合がある。誤飲を防止するため、防護カバーを設けた市販品「ゴキブリキャップ」も存在する。ホウ酸濃度が高いと(50%以上)二次駆除も可能となる。

2020年1月25日 (土) 01:29時点における版

ホウ酸
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識別情報
CAS登録番号 10043-35-3 チェック
PubChem 7628
ChemSpider 7346 チェック
UNII R57ZHV85D4 チェック
EC番号 233-139-2
E番号 E284 (防腐剤)
特性
化学式 B(OH)3
モル質量 61.833 g mol−1
外観 White crystalline solid
密度 1.435 g cm−3, 固体
融点

169°C (分解)

への溶解度 5.7 g/100 cm3 (25°C)
酸解離定数 pKa 9.24
構造
分子の形 平面三角形
双極子モーメント 0
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −1094.33 kJ mol−1
標準モルエントロピー So 88.83 J mol−1K−1
標準定圧モル比熱, Cpo 81.38 J mol−1K−1
危険性
NFPA 704
0
1
0
引火点 無し
関連する物質
関連物質 酸化ホウ素
ホウ砂
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ホウ酸(ホウさん、硼酸、Boric acid)もしくはオルトホウ酸化学式H3BO3またはB(OH)3で表わされるホウ素オキソ酸である。温泉などに多く含まれ、殺菌剤殺虫剤医薬品眼科領域)、難燃剤原子力発電におけるウラン核分裂反応の制御、そして他の化合物の合成に使われる。常温常圧では無色の結晶または白色粉末で、水溶液では弱い酸性を示す。ホウ酸の鉱物硼酸石(サッソライト)と呼ばれる。メタホウ酸四ホウ酸などホウ素のオキソ酸を総称してホウ酸と呼ばれることもある[1]

合成

ホウ酸は主にホウ酸塩鉱物に硫酸を反応させて作られる。世界最大のホウ酸塩の産出地はトルコのEti Mine Worksである[2]

酸性酸化物である三酸化二ホウ素(B2O3)を水に溶解しても生成する。

これらの方法で得られたホウ酸溶液から、ホウ酸の溶解度が温度によって大きく異なることを利用した再結晶法を利用してホウ酸の結晶が分離される[3]

化学的性質

無色の結晶であり、水に対する溶解は吸熱的である[4]。そのため、10℃の冷水に対する溶解度は3.65 g/100 mLでしかないが、100℃の熱湯に対する溶解度は37.9 g/100 mLと、温度上昇に伴い溶解度が大幅に上昇する[1]

,   

加熱により順次水を失い、まず130℃付近からメタホウ酸(HBO2)を生成し、更なる加熱により酸化ホウ素となる。メタホウ酸は単純なHBO2分子ではなく、BO4四面体を酸素原子が架橋したポリ酸である[5]。過去にはメタホウ酸から酸化ホウ素に変化する過程の中間生成物として四ホウ酸(H2B4O7)が生成すると考えられていたが、これは誤りであることが判明している。四ホウ酸は遊離酸としてはホウ酸溶液中にわずかに存在するのみであり、多くは四ホウ酸ナトリウムなどの塩の形で存在する[6]

化学式からは 3 価の酸と予想されるが、水溶液中ではそのような酸解離は認められず、ルイス酸として働き、水酸化物イオンを受け取り、4配位となる化学平衡が存在する[5]

, pKa

酸解離に関する標準エンタルピー変化、ギブス自由エネルギー変化、エントロピー変化の値が報告されており[4]、解離に伴いエントロピーの減少が起こるのは、電荷の増加に伴い、イオンの水和の程度が増加し、電縮が起こり、分子の水素結合による秩序化の度合いが増加するからである[7]

14.12 kJ mol−1 52.71 kJ mol−1 −129.7 J mol−1K−1 −192 J mol−1K−1
水酸化ナトリウム水溶液による中和滴定曲線

酸解離定数が小さいため、中和滴定曲線において当量点は不明瞭となり、塩基による中和滴定は困難であるが、エチレングリコールなどを加えるとエステルを形成し酸解離定数が大きくなり、中和滴定が可能となる[5]

また、ホウ酸を純硫酸に溶解すると硫酸水素イオン錯体を形成し、硫酸中で強酸として働く数少ない物質となる[5]

毒性

半数致死量(LD50)は 5 g/kg 程度で人間にとっては食塩と同程度の急性毒性であり、体重60kgでは約300gで半数致死量となる[8]。継続してホウ酸を摂取すると下痢など消化器系の不良が生じる可能性がある[9]。 腎臓機能で排泄できない昆虫には毒性が強く現れ、通常殺虫剤として利用される[10]

濃度にもよるが植物では1年草全般で有害であり、樹木によってはギンモクセイゴールドクレストなどはホウ酸に弱い。逆に少量では必須栄養素となり肥料として市販もある。土壌から抜けにくいため施肥濃度には注意を要する(食塩と似ている)。作物から人体への影響はほとんどない。

その濃度毒性を利用し、欧米では建築用木材で、シロアリや菌類への防虫防腐剤として塗布されている事が多い。近年では日本でも毒性の低さと長期有効性から優良住宅認可/認定され始め注目を集めている。

用途

  • 水酸化カリウム水溶液の中和剤としても用いられる。工業用メーカーは、アメリカ合衆国トルコロシアチリペルーアルゼンチン日本は全量を輸入に依存。用途はホウ酸塩ガラスガラス繊維、ホウ素系合金鉄、目に入った場合の中和(後述)。
  • ホウ素の高い中性子捕獲能力を利用して、原子炉の核分裂で生成する熱中性子への毒物質[注 1]として利用される。この場合は容易に水溶するホウ酸として利用することが多く、ホウ酸水の場合は冷却材も兼ねる。なお、放射性核種の原子核崩壊は熱中性子がなくても自発的に起こるものであるため、吸収剤としてのホウ素は役に立たない。従って、崩壊熱で原子炉が高温となる状態は、別の手段で冷却を行う必要がある。
  • 小学校5年の理科の実験(物の溶け方)で溶解度の実験を行なう際、食塩(塩化ナトリウム)と並ぶ代表的な試薬。ホウ酸のほうが溶解度が低いため、水に良く溶ける塩化ナトリウムと溶解度を比較したり、水温を上げた場合に両薬品の溶け方がどう変化するかなどの実験で用いられる。
  • ゴキブリ駆除の食毒剤として、ホウ酸団子(10%~50%)が使用される場合がある。完成された市販品があるほか、タマネギ米ぬかジャガイモをペースト状にして、ホウ酸を混入させることで自作することも可能だが、ペットが誤飲すると、脱水で死に至る場合がある。誤飲を防止するため、防護カバーを設けた市販品「ゴキブリキャップ」も存在する。ホウ酸濃度が高いと(50%以上)二次駆除も可能となる。
  • アリ駆除にホウ酸液が使用される場合がある。ホウ酸1:砂糖1:水適量(約10)※お湯でなければ溶けない。
  • 眼科領域においては、結膜嚢の洗浄と消毒に、また目薬の保存料としても用いられる。特に、塩基性の薬品が目に入った際の中和剤として用いられる。
  • ホウ酸は単独では溶解度が低いが、ホウ砂と一定割合で混合すると水への溶解度が大きく増加する。この濃い水溶液は木材用の難燃剤として用いられ、処理した木材は不燃木材として市販されている[11]
  • 販売されなかった新聞を繊維状に加工し、ホウ酸を塗したものが、セルロースファイバーとして住宅用断熱材として利用される。日本では数パーセントの住宅に使用されているに過ぎないが、アメリカでは住宅用断熱材として40%前後のシェアを占めている。駆虫性、透湿性、耐水性、防火性、防音性を兼ね備えているが、施工に専用の機材を必要とするなどの欠点もある[12]

結晶構造

ホウ酸の結晶は水素結合による層状構造からなる。層同士の距離は318ピコメートルである。

ホウ酸の結晶構造
ホウ酸同士の水素結合

脚注

注釈

  1. ^ 減速材は中性子のもつエネルギーを低くするためのもので核反応を促進する役割があり、冷却材は発生する熱を吸収する役割のものであり、この場合はいずれとも役割が異なる。

出典

  1. ^ a b 丸内 (2005) p.103。
  2. ^ Eti Mine Works.
  3. ^ 丸内 (2005) p.104。
  4. ^ a b Wagman et al. (1982).
  5. ^ a b c d コットン、ウィルキンソン (1987)。
  6. ^ 千谷 (1959) p.369。
  7. ^ 田中 (1981).
  8. ^ safety data ホウ酸”. 日本医薬品添加剤協会. 2014年10月21日閲覧。
  9. ^ Nielsen, Forrest H. (1997). Plant and Soil 193 (2): 199. doi:10.1023/A:1004276311956. 
  10. ^ Klotz, J. H.; Moss, JI; Zhao, R; Davis Jr, LR; Patterson, RS (1994). “Oral toxicity of boric acid and other boron compounds to immature cat fleas (Siphonaptera: Pulicidae)”. J. Econ. Entomol. 87 (6): 1534–1536. PMID 7836612. 
  11. ^ 露本 第 3 回特許ビジネス市。
  12. ^ 山本 (2009).

参考文献

関連項目

外部リンク