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オオカミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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タイリクオオカミ
タイリクオオカミ Canis lupus
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目 : イヌ亜目 Caniformia
: イヌ科 Canidae
亜科 : イヌ亜科 Caninae
: イヌ属 Canis
: タイリクオオカミ C. lupus
学名
Canis lupus
Linnaeus1758
和名
オオカミ
タイリクオオカミ
ハイイロオオカミ
英名
Wolf
Gray wolf
Timber wolf
オオカミの分布図
(緑:現在、赤:過去)

オオカミ(狼、: wolf学名Canis lupus)は、ユーラシア大陸北アメリカに生息する大型のイヌ属哺乳動物で、ハイイロオオカミタイリクオオカミとも呼ばれている。30以上の亜種が認識されており、口語的に理解されているハイイロオオカミは、家畜化されていない野生の亜種で構成されている。オオカミは現存するイヌ科の動物の中で最大の動物である。また、他のイヌ科の動物とは、耳やマズルがあまり尖っていないこと、胴体が短く、尾が長いことで区別される。しかし、オオカミはコヨーテゴールデンジャッカルなどの小型のイヌ科動物と近縁であり、それらの動物との間に生殖能力のある交配種を生み出している。オオカミの帯状の毛皮は通常、白色、茶色、灰色、黒色が混ざっているが、北極圏の亜種はほとんど白であることもある。

オオカミはイヌ属の中で最も協力的な狩猟に特化しており、大きな獲物に挑むための身体的適応や、より社会的な性質、高度な表現行動などがそれを示している。オオカミは、交尾したペアとその子供からなる核家族で移動する。子は性的に成熟すると、また群れの中での餌の奪い合いに応じて、それぞれの群れを形成するために離れることがある。また、オオカミには縄張り意識があり、縄張りをめぐる争いがオオカミの主な死亡原因となっている。オオカミは主に肉食性で、を持つ大型哺乳類のほか、小動物、家畜、腐肉、生ゴミなどを食べる。単独のオオカミやつがいのオオカミは、一般的に大きな群れよりも狩りの成功率が高くなる。狂犬病ウイルスをはじめとする病原体や寄生虫がオオカミに感染する可能性がある。

世界の野生オオカミの個体数は2003年には30万頭と推定され、国際自然保護連合(IUCN)では「軽度懸念」とされている。

イヌとの関係

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従来はオオカミの近縁種とされていたイヌ(イエイヌ)は、近年ではオオカミの一亜種 Canis lupus familiaris とする見方が主流になりつつある。ただし、日常語としての「オオカミ」には通常、イヌは含まれない。イヌはオオカミが飼い馴らされて家畜化したものと考えられている。

イヌとオオカミの違いが出る部分として胸郭を挙げる。オオカミの胸郭はイヌの胸郭よりも幅が狭く、深い(上下の高さが高い)。オオカミの胸郭が深いのは肋骨が比較的長く、狭いのは肋骨が後方に寝ているためだという。具体的には肋骨頸(肋骨上部の胸椎と関節する部分)が前方に曲がっているために、肋骨体(肋骨の主部)が立ち上がっている形状になっているイヌの胸郭に対して、オオカミの胸郭は肋骨頸の曲がりが殆どないため後ろに寝てしまうのだという。オオカミの胸郭は幅が狭くても深さがあるためにイヌの胸郭と容積的には大差がないが、深呼吸をする際にはオオカミの胸郭は普段は肋骨を寝かせている分だけ、一層胸郭の容積を大きくすることができ、イヌよりも深い呼吸が出来るのだという[2]

分布・亜種

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亜種の分布

北半球に広く分布する。分布域が広いタイリクオオカミは多くの亜種に細分化される。現存の亜種は33(絶滅種含め39亜種)に分類されてきたが、近年の研究で現存13亜種、絶滅2亜種への統合が提案されている。

各亜種の画像

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形態

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頭骨

大きさは亜種、地域によって異なる。体胴長100 - 160cm、肩までの体高60 - 90cm、体重は25 - 50kg。大きい個体では50kgを超えるものもいるが、雄でも54キロを超えるのは稀である。一般に雌は雄の体重より10 - 20パーセント程度小さい。現生のイヌ科のなかで最大。高緯度ほど大きくなる傾向がある(ベルクマンの法則)。記録上では1938年アラスカで捕獲された体重79.3kgの雄、ユーラシア大陸ではウクライナで殺された 86キログラムのものが最大としている。体色は灰褐色が多く、個体により白から黒まである。子供の時期は体色が濃い。北極圏に住む亜種はより白い。体毛は二層に分かれ保温や防水に優れ、夏毛と冬毛がある。また、姿勢においては頭部の位置がイヌに比べて低く、頭部から背中にかけては地面に対して水平である。

オオカミの足跡

歯式は3/3·1/1·4/4·2/3 = 42で、上顎には6本の門歯、2本の犬歯、8本の小臼歯、および4本の大臼歯があり、下顎には6本の門歯、2本の犬歯、8本の小臼歯、および6本の大臼歯を持ち、何れもイヌより大きく丈夫である。頭から鼻にかけての頭骨のラインはイヌより滑らかで、イヌよりも顎の筋肉量が多く、頬骨の位置が高いため、イヌと比較して吊り目になっている。また、尾の付け根上部にスミレ腺英語版を持つ。

ほとんどのイヌ科のように陰茎骨を持つ[3]

生態

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オオカミは雌雄のペアを中心とした平均4‐8頭ほどの社会的な群れパック英語版)を形成する。群れはそれぞれ縄張りを持ち、広さは食物量に影響され100‐1000平方キロメートルに及ぶ。

群れと順位

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群れは雌雄別の順位制を伴い、通常は繁殖ペアが最上位であるが、順位交代もする。最上位から順にアルファ、ベータと呼び、最下位の個体をオメガと呼ぶ。順位は常に儀式的に確認しあい維持される。群れはたいてい繁殖ペアの子孫や兄弟で血縁関係にあることが多い。他の群れを出た個体が混ざることもある。狼の群れの頭数は最多で42頭にもなったという記録があるものの、平均して概ね3-11頭の間である。しかし、大規模な群れでも主に仕事を行うのはペアであり、最も効率が良いのはペアの狼とされている。

狩り

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ヘラジカを狩る2頭のオオカミ

オオカミは肉食で、シカイノシシ、野生のヒツジヤギバイソンなどの有蹄類、ウサギ齧歯類などの小動物を狩る。餌が少ないと人間の生活圏で家畜や残飯を食べる。シカなどの大きな獲物を狩る時は群れで行動する。健康体を狩る場合もあるが、通常は長時間の追跡を行い獲物の群れのうち弱い個体(病気、高齢、幼体)を捕まえる。上位の個体が、獲物を先に食べる。

カナダ太平洋岸ブリティッシュコロンビア州ではサケを捕食していることがサンプルで判明しているほか、サケが遡上しないその沖合の離島では海岸付近の甲殻類ニシンの卵、漂着したクジラの死骸などを餌としている[4]

最高速度の時速70キロメートル[5]なら20分間、時速30キロメートル前後なら7時間以上獲物を追い回す事ができる。追いかける途中で諦める事が多く、リカオン などと比べると諦めやすい性格といえる。狩猟成功率は生息密度や環境に左右される。アラスカのデナリ国立公園1977年にカリブーを仕留めようと追いかけた回数が16回であり、そのうち殺したのが9頭で成功率は56%という報告例がある。1972年オンタリオ[要曖昧さ回避][どこ?]では35回獲物に狙いを定めそのうちの16頭の鹿を殺す事に成功している所が観察された。

繁殖

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幼獣
  • 繁殖は一夫一妻型で群れの最上位のペアのみが行うが、例外的に他の個体が繁殖することもある。交尾 は一般に1月~3月頃に行われる。妊娠期間は60 - 63日、平均4 - 6頭の子を産む。雌は巣穴を作りそこで子育てを行う。父親や群れの仲間も子育てを手伝う。
  • 子は生後12 - 14日で目を開き、生後20 - 24日で動き回るようになり、生後20 - 77日の間で群れを認識する社会性が育ち離乳する。固形食は大人が吐き戻して与える。8週ほどで巣穴を離れるようになる。
  • 子は1年も経てば成体と同じ大きさになるが、性的に成熟するには2年ほどかかる。成熟したオオカミは群れに残るか、群れを出て新たな場所に移り、配偶者を見つけ(この過程で1匹になることを一匹狼という)、新たな群れを形成する。

コミュニケーション

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遠吠え英語版はオオカミのコミュニケーションの一つ。

オオカミはボディランゲージ、表情、遠吠えなどで群れの内外とコミュニケーションを取る。表情やしぐさは群れの順位を確認する際に良く使われる。

遠吠えは、群れの仲間との連絡、狩りの前触れ、縄張りの主張などの目的で行われ、目的に応じて吠え方が異なるといわれる。合唱のように共同で遠吠えすることもある。

なお幼少時には驚いた時などに鳴くことがある(「キャンキャン」など)が、成長すると通常は吠えたり鳴いたりすることはない(遠吠えを除く)。

寿命

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飼育下での平均寿命は15年ほどである。動物園で20年生きた記録がある。野生では、他の動物と同様に幼齢時の死亡率が高いが、成熟個体は5 - 10年ほど生き、時には10年以上生きる個体もいる。

化石記録

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オオカミに限らず古代の脊椎動物の化石出土はまれであり、断片的な情報や形態学的な分析から類推することが常であるため、研究者間でも見解が異なることがままある[6]。およそ6500万年前に起こった白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅は恐竜種の絶滅と肉食哺乳類の出現をもたらした[7]:p.8。主として昆虫を捕食するアードウルフのような種を除き、これらの種は肉を裂き骨を砕くためのエナメル質の裂肉歯を持ち、長い期間をかけて環境に適合するよう進化してきた。イヌ科とネコ科の肉食動物の祖先はおよそ恐竜が滅んだ直後に誕生し、別々の進化を遂げてきたが、イヌ科の最初の仲間が登場するのはおよそ4000万年前のことである[7]:p.16。オオカミは150万年前ごろに、その初期の小型のイヌ科動物の集団から発生したと考えられており[8]:p.241、形態学的、遺伝子的、化石標本上の類推からもコヨーテと同じ祖先から進化したことを示唆している[8]:p.239ジャッカルをはじめとするイヌ属の祖先とはこれよりも前に分岐していたと考えられている[8]:p.240

絶滅地域への再導入

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オオカミの住処や獲物である草食動物を人間が奪ったため、オオカミは人間に駆除される危険を冒してまで家畜を襲うようになった。そのため家畜を襲う害獣であるとして人間がオオカミを駆逐し、絶滅させてしまった地域がある。そうした地域のなかにはオオカミの絶滅の後、天敵を失った大型の草食動物が異常に増加し、地域の植物が食べ尽くされたことによって森林が消滅し、逆に大量の草食動物が餓死し既存の生態系を攪乱せしめたという例がある。こうした撹乱された生態系を以前のものに戻す対策として、アメリカ合衆国のイエローストーン国立公園では、絶滅したオオカミが再導入されている。しかし、再導入後に当該地域に生息する大型草食獣であるエルクが減少していたのは、オオカミによる捕食よりも人間の捕獲や気象条件で説明できることが示されている[9]。また、再導入に伴うアスペンの回復も偏りのある調査設計によって得られた結果であることが示されており[10]、再導入が生態系の回復に与える影響は明確でないことが知られている。

日本

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日本固有のオオカミのうち、本州四国九州に分布していたものは、ニホンオオカミCanis lupus hodophilax または Canis hodophilax)と呼ばれる。オオカミの中では小型で(中型の日本犬ぐらい)、毛色は白茶けており、夏と冬では毛色が変わったとされる。

ニホンオオカミ1905年明治38年)に奈良県東吉野村鷲家口(わしかぐち)にて捕獲された若いオスの個体を最後に目撃例がなく、絶滅したと見られる。1910年(明治43年)8月に福井城址にあった農業試験場(松平農試場)で捕獲されたイヌ科動物がニホンオオカミであった」との論文が発表された[11][12]が、この個体は標本が現存していない(福井空襲により焼失。写真現存)ため、最後の例と認定するには学術的には不確実である[12]

ニホンオオカミの標本は、頭骨はある程度残っているが、剥製や全身骨格の標本が極めて少なく、日本国内では数点しか知られていない。日本国外では、鷲家口で捕獲された個体の仮剥製と頭骨が、ロンドン自然史博物館に保管されている[13]。また、シーボルトが長崎の出島で飼育していたニホンオオカミの剥製1体が、オランダ国立自然史博物館に保存されている。

日本では関東中部地方において秩父三峯神社奥多摩武蔵御嶽神社でオオカミを眷属として祀っており、山間部を中心とした狼信仰が存在する[注 2]。オオカミを「大神」と当て字で表記していた地域も多い。日本各地に残る送り犬の伝承はニホンオオカミの習性を人間が都合の良く解釈したという説がある。

眷属としてのオオカミのご利益は山間部においては五穀豊穣や獣害よけ、都市部においては火難・盗賊よけなどで、19世紀以降には憑き物落としの霊験も出現する。眷属信仰は江戸時代中期に成立し、幕末には1858年安政5年)にコレラが大流行し、コレラは外国人により持ち込まれた悪病であると考えられ、憑き物落としの霊験を求め眷属信仰は興隆した。そのため憑き物落としの呪具として用いられる狼遺骸の需要が高まり、また同時期に流行した狂犬病ジステンパーの拡大によって狼の獣害も発生し、明治以降、家畜を襲う害獣として懸賞金まで懸けられた徹底的な駆除などの複合的な原因によって絶滅したと思われている。

エゾオオカミ

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一方、北海道および樺太千島に生息した亜種は、エゾオオカミ (Canis lupus hattai) と呼ばれている。ニホンオオカミよりも大型で(シェパードほど)、褐色の毛色だったとされている。アイヌではエゾオオカミを「狩りをする神(オンルプシカムイ)」「ウォーと吠える神(ウォセカムイ)」など地域によって様々な呼び名があるが、雅語としての「大きな口の神(ホロケウカムイ)」は北海道全域で通じた。伝承では英雄を助ける、主人公を騙して夫にしようとする、いたずら好きなど様々な性格で語られるが、カムイのオオカミは白い毛を持つとされる[14]。明治以降、入植者により毛皮や肉目的の狩猟で獲物のエゾシカが一時激減し、入植者が連れてきた牛馬などの家畜を襲って害獣とされ、懸賞金まで懸けられた徹底的な駆除により数が激減し、ジステンパーなどの飼い犬の病気の影響や1879年(明治12年)の大雪によるエゾシカ大量死が重なった結果、1900年(明治33年)頃に絶滅したと見られる。

更新世オオカミ

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シベリアに生息していた大型の亜種で、日本の本州でも化石が見つかっている。ニホンオオカミよりも古い時代に日本へ渡った。

文化

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魚の釣りのように返しがついた罠道具ヴォルフスアンゲル。返しのついた部分に餌を付けて、オオカミがジャンプしないと食べられない高さに設置して、食べたオオカミが吊り下げられるようにした罠である。
牝狼の乳を吸うロームルスレムス
『ロームルスとレムスの発見』(ピーテル・パウル・ルーベンス作)

ヨーロッパ中国など牧畜が盛んであった地域では家畜を襲う害獣として忌み嫌われる傾向にあり、逆に日本(北海道を除く)のように農業が盛んであった地域では、農作物へ被害をあたえるシカなどの害獣を駆除する益獣として、怖れをもたれると同時に慕われもした。また、アイヌやネイティブアメリカンなどのように、狩猟採集生活が盛んであった民族でも神格化されることがある。

狩り

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飼育

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オオカミは人間に懐くことはほぼなく、幼いころから育てたとしても従属させるのは難しいといわれる[15]

日本

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オオカミは特定動物に指定されており、都道府県知事や政令市の長の許可が得られれば、法律上は飼育することは可能。ただし、商業目的で輸入することは禁止されているため、ペットとして飼育することは不可能である[16]

神話、伝説、民俗

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  • 中世ヨーロッパにおいては、狼はしばしば死や恐怖の対象として描写される。北欧神話では巨大な狼であるフェンリルが神々の敵として描かれている。童話の『赤頭巾』では、狼は赤頭巾を食べようとする悪役として描かれている。18世紀中旬には、「ジェヴォーダンの獣」と呼ばれる巨大な狼(大山猫とも)が出現したとされ、フランス中部地方を震撼させた。しかし、オオカミは一匹だけで大きな獲物を狩る習性はなく、臆病な動物であるため、科学的に見てこの事件にオオカミは関わっていないとされている。
  • キリスト教でも、狼は邪悪な害獣として扱われることが多く、七つの大罪では、ユニコーンドラゴンと同じく『憤怒』を象徴する動物として扱われることがある。
  • 人間が狼に変身する人狼についての記述が古代よりしばしば見られる。ヨーロッパで狼を忌み嫌うのは中世キリスト教が、土着の信仰を駆逐するため人狼伝説を利用してきた影響も大きい。中世のヨーロッパでは、人狼の存在が信じられており、昼間は人間の姿をしている人狼が、夜間には狼の姿で他の人間を襲い、の武器(銀の弾丸など)でなければ倒すことが出来ないなどとされた。古代ローマの博物学者であるプリニウスは著書『博物誌』において、人狼が現われたという噂を紹介したうえで、このような変身の存在はでたらめであると否定している。イギリス本土の諸島では早い段階で狼が駆逐されたために、人狼の伝説は外国起源のものであり、魔法使いや巫女はたいてい猫や兎に化けることになってしまった、という説をセイバイン・ベアリング=グールドが唱えている[17]
  • インドにはオオカミが子供を育てたという噂が多数あり(狼っ子)、特にアマラとカマラという少女の事例が知られる。
  • 長野県佐久市猿久保では、オオカミがお産する穴を発見したら、赤飯重箱に詰め村人が巣穴の前に供えた。オオカミはお産を無事に終えると空になった重箱を村人の家まで返却したという民話がある[18]
  • 科学的観察に基づく話としてシートン動物記狼王ロボが有名である。
  • カムチャツカ半島では、双子の父親はオオカミであるとされた[19]

指導者や神

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山津見神社の白狼像

軍事

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題材とした作品など

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赤頭巾とオオカミ

その他の狼を題材とした作品

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小説
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漫画
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映画
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アニメーション
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脚注

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注釈

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  1. ^ インドネパールパキスタンブータン個体群はワシントン条約附属書I。
  2. ^ ただしヤマイヌと呼んだ上でのニホンオオカミ以外のイヌ科動物との混同、未分類のままの崇拝も見られる。

出典

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  1. ^ Boitani, L., Phillips, M. & Jhala, Y. 2018. Canis lupus (errata version published in 2020). The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T3746A163508960. doi:10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T3746A163508960.en. Downloaded on 10 April 2020.
  2. ^ 今泉忠明『絶滅野生動物事典』(KADOKAWA<角川ソフィア文庫>、2020年ISBN 978-4-04-400527-6)p.85
  3. ^ W. Chris Wozencraft: Wolf. In: Andrew T. Smith, Yan Xie: A Guide to the Mammals of China. Princeton University Press, Princeton NJ 2008, ISBN 978-0-691-09984-2, S. 416–418.
  4. ^ 「海辺のオオカミ」『ナショナルジオグラフィック日本版』2015年10月号
  5. ^ 今泉忠明『野生イヌの百科』(第2版)データハウス〈動物百科〉、2007年、15頁。ISBN 9784887189157 
  6. ^ Sardella, Raffaele; Bertè, Davide; Iurino, Dawid Adam; Cherin, Marco; Tagliacozzo, Antonio (2014). “The wolf from Grotta Romanelli (Apulia, Italy) and its implications in the evolutionary history of Canis lupus in the Late Pleistocene of Southern Italy”. Quaternary International 328–329: 179–195. Bibcode2014QuInt.328..179S. doi:10.1016/j.quaint.2013.11.016. 
  7. ^ a b Wang, Xiaoming; Tedford, Richard H. (2008). Dogs: Their Fossil Relatives and Evolutionary History. Columbia University Press, New York. pp. 1–232. ISBN 978-0-231-13529-0. OCLC 502410693. https://books.google.co.jp/books?id=LnWdpK7ctI0C 
  8. ^ a b c R.M. Nowak (2003). “Chapter 9 - Wolf evolution and taxonomy”. In Mech, L. David; Boitani, Luigi. Wolves: Behaviour, Ecology and Conservation. University of Chicago Press. pp. 239–258. ISBN 978-0-226-51696-7 
  9. ^ Vucetich, John A.; Smith, Douglas W.; Stahler, Daniel R. (2005-11). “Influence of harvest, climate and wolf predation on Yellowstone elk, 1961‐2004” (英語). Oikos 111 (2): 259–270. doi:10.1111/j.0030-1299.2005.14180.x. ISSN 0030-1299. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.0030-1299.2005.14180.x. 
  10. ^ Winnie, John A. (2012-12). “Predation risk, elk, and aspen: tests of a behaviorally mediated trophic cascade in the Greater Yellowstone Ecosystem” (英語). Ecology 93 (12): 2600–2614. doi:10.1890/11-1990.1. ISSN 0012-9658. https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1890/11-1990.1. 
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関連項目

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外部リンク

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