【PCゲーム極☆道】第169回『Valley Peaks』 かわいいカエルが強靱なマッスルで断崖絶壁を登る、癒やし系オープンワールドクライミングゲーム

『A Short Hike』の影響も感じられるゲーム

【PCゲーム極☆道】第169回『Valley Peaks』 かわいいカエルが強靱なマッスルで断崖絶壁を登る、癒やし系オープンワールドクライミングゲーム
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現代人はとにかく疲れている。

なので、ゲームにも癒やしとか安らぎとかを求めがちです。たしかに楽しいですが、ランクマッチとか、高難度死にゲーとか、そういうのばっかりだと疲れとストレスで爆発してしまいますからね。当然の需要と行ったところでしょう。

ですが、ゲームというものは基本的にチャレンジをプレイヤーに求めるものです。ということで、皆さんのまだ知らないかもしれないPCゲームの世界を紹介する「PCゲーム極☆道(きわめみち)」。今回は癒やし系だけどガチンコでチャレンジを要求してくる『Valley Peaks』を紹介します。癒やしとチャレンジは対極にあるようにも感じますが、果たして?

『Valley Peaks』はスコットランドに拠点を置くTub Clubが開発したゲームです。本作は元々Abertay Universityが同学の学生向けに主催しているゲームコンテストに出展されていた作品で、学生チームによる作品となっています。

もっとも学内向けコンテスト・学生チームと言っても、欧州のゲームクリエイター教育はかなり実践的で、就職やビジネスに直結していることで知られています。このコンテストも厳しい選考を勝ち抜いた参加チームには開発資金の援助に加え、業界人のメンターによる多様なサポートも受けられるようになっています。つまりビジネスとして本気も本気。端から作品を売ることを目指している学生作品というわけです。

そんなコンテスト(Abertay Dare Academy 2021)で優勝を果たし、さらなる資金援助やチームの法人化サポートなどなどさまざまな副賞を送られ、世に出てきたのが本作なんですね。すごいぜ!

深夜、ハイウェイを走る車。

とある会社に勤める主人公は、父の残した登山の仕事を引き受け、目的地へと向かっていた。クライミングの名所であるバレーピークスの山、そのすべての頂上にラジオタワーを設置するという仕事だ。名峰が軒を連ねる自然豊かなバレーピークスが、君を待っている。

そんな出だしで始まる『Valley Peaks』は、タイトルにもなっているバレーピークスでクライミングに挑戦するアクションゲームです。プレイヤーはこの登山業務を引き受けた主人公となり、さまざまな山を登っていきます。

ただ、このゲームでプレイヤーを待ち受けている山は、どれも巨大な岩みたいで、山と言うにはあまりにも険しすぎるものばかりです。もはや壁。誰がどう見ても歩いて登ることは不可能です。飛び出た岩を掴んで登るクライミングしか、頂上へ到達するルートはありません。

このゲームは一人称視点となっており、キーボードとマウス、もしくはコントローラーで主人公を操作していきます。このゲームにはつかめるモノが設定されており、マウスの左クリック(左トリガー)で左手を、右クリック(右トリガー)で右手をFPSよろしく画面中央のクロスヘアへと伸ばしてつかみ、掴んだ手を起点に体を上下左右へと移動できるので、これを使ってさらに上へのモノをつかみ、登っていきます。

山には3つのクライミングルートが用意されており、このどれかのルートで頂上を目指します。プレイヤーキャラクターの握力・腕力はとんでもなく、掴んでさえいれば落ちることはなくスタミナ切れで手を離してしまうようなこともありません。腕をピンと伸ばした状態でも保持が可能で自由自在に動けるのはもちろん、掴んだ手でジャンプも可能で、これを使えば遠い突起へと容易に飛び移ることも可能です。あとジャンプや落下でどれだけ勢いがついていたとしても、突起を掴むことさえできればビタリと止まります。マッスルがヤバい。

それもそのはずで、このゲームの世界はカエルの世界。プレイヤーもカエルならば、バレーピークスでアウトドアを楽しんでいる人たちもカエルです。カエルなので、どれだけ高いところから落ちても自慢の足なら大丈夫! 壁面をグイグイ進むビタリと貼り付くグリップ力も納得! というわけです。さすがはカエルです。

……それでこのすべてを説明するというのは強引すぎるような気もしますが、メルヘンでいいでしょう。ゲームのグラフィックもイラスト調のレンダリングを行ってかわいらしく仕立てており、絵本のような可愛らしい世界観が魅力のゲームとなっています。

かわいいカエルたちの世界で、自然に囲まれてクライミングに興じる。そういう癒やし系ゲームの文脈に沿った作品が『Valley Peaks』というわけです。バレーピークス全体はオープンワールドとなっており、山登り以外にもバレーピークスにいるカエルのお願いを聞くサブミッションや、各所に配置されたジュースやきのこを集める要素もあります。大ヒット作である癒やし系オープンワールド山散策ゲーム『A Short Hike』の影響が感じられ、まさに癒やし系ゲームといった雰囲気です。ゲームBGMもそれに合わせて落ち着いた雰囲気の曲が用意されています。

なるほど。クライミングというハードなスポーツを描いているものの、それは題材がそうというだけでリラックスして楽しめるのが『Valley Peaks』なんだな。……とここまでの説明を読むと思われるはずです。実際リラックスして楽しめるとは思います、最初だけは。

驚くのはここからです。たとえばこのゲームでは1つの山に用意された3つのクライミングルートをすべてクリアすると、タイムアタックチャレンジが解禁されます。規定のクリアタイム以内でルートを登り切るとタイムアタックチャレンジ達成となり、とバレーピークスに点在する設備を修理するネジを手に入れられます。やりこみ要素ではありますが、ぜひクリアしたいところです。

では上のSSにある1番最初の難易度☆1の山、さらにその中でもっとも簡単なルートのタイムアタック目標を見てみましょう。

クリアタイム9秒。……9秒!?

突然ガチすぎる要求タイムにびっくりしますよね? いちばん簡単な山でコレです。今後もバシバシ厳しいタイムアタックを要求してくることは想像に難くありません。

そう、このこのゲームはかわいい癒やし系ゲームの皮を被りながら、けっこうガチなアクションを要求してくるゲームなんです! ちなみにゲーム終盤まで遊んだワタシのようなプレイヤーにとってもこの9秒の壁は高く、なかなかクリアできるものではありません。コレを突破するためだけに小一時間粘り、プレイを詰める必要があります。マジできつい。

タイムアタック要素がガチなら、山自体もどんどん難易度を上げていくこともまた当然です。一定時間握っていると崩れてしまう突起なんてものは序の口で、揺れ動くランタンや、信号機石(緑だと掴める、黄色だと掴めない、赤になると掴んでいても離してしまう)、取ると空中ジャンプが1回できるオーブ、そしてあまりにも殺意の高いトゲ(当たると弾き飛ばされて落ちる)など難しいギミックがどしどし登場し始めます。

しまいにはどでかい振り子にトゲが生えた、登山者を地面へと叩き落とすことだけを考えた見た目からして凶悪なトラップも登場します。

そんなモノを! クライミングルートに! わざわざ配置するな!! かわいい癒やし系な雰囲気とはまったく似つかわしくないギミックがプレイヤーを苦しめ始めます。この山を管理している登山協会のカエルたちは何を思ってこんなモノを配置したのでしょうか。泣くぞ。

いくらどんな高さから落ちても無傷の最強カエルだとしても、落ちてまた最初から登りなおしになるのはツライ! しかも結構な高さまで登るので、落ちるときけっこう怖い! 難しすぎて絶対クリアできないというような人を突き放した高難度ゲームではないものの、しっかりとした難易度で遊びごたえを作っており、先述したタイムアタックも合わせてアクションゲーム好きにはたまらないゲームでしょう。

……癒し系を求めて買った人は泣いちゃうのでは?

そういう悲しすぎるマッチアップを防ぐために、このゲームにはイージーモードとなるコージーモードも実装されています。こちらならゲームのルックスから想像されるような、イライラのない癒やしを体験できます。ちなみに体験版にはコージーモードは存在していませんでした。このモードの実装はマジで英断だと思います。だって、あまりにアクションゲームとしてちゃんとしているんですもの。

一応それに加えて、通常難易度も先に紹介した厳しいタイムアタックについてはオプション目標となっておりクリアせずともゲームは進行できます。マップにはタイムアタッククリア報酬でもらえるネジが普通に落ちているので、まったく挑まなくともある程度はアンロックを進めることができるようにもなっています。また、ゲームを進めるだけなら頂上にラジオタワーを立てるのが主目的なので、クライミングルートをすべて踏破していく必要もありません。

先にも説明しましたがこのゲームはオープンワールドなので、挑戦する山の順番も、ルートも、プレイヤーが自由に決められます。難易度はしっかりしたものですがゆるく遊べる仕様になっているので、通常難易度でも癒やし系としても成り立つようにはできています。

逆にチャレンジを求める方にとってみると、このゲームは本当に楽しいゲームです。難しい山であればあるほど、その高さは増してルートも長くなっていきます。たった一度のミスでまた最初から登り直しになるハラハラ感と、難所をくぐり抜けたときの達成感は気持ちの良いものです。

ルートをクリアすればするほど、時間の進みをスローにするスローモーウォッチや、落ちてしまったときのリカバリや遠い突起を狙えるパラグライダー、コースを事前に確認できるドローンといったガジェットが手に入り、ゲームプレイにさらなる幅を与えてくれるところも楽しいところです。もちろん、これらガジェットをまったく使わずとも、クライミングルートは基本的に踏破可能です。

さて、ゲームは中盤大変なことが起こり、山は割れ、岩は空中へと浮き上がり、すべての登山ルートが一新されます。なぜこんな事が起こったのかは触れないでおきますが、とにかくすべての新ルートが難易度をドカンと上げて、さらなる挑戦をプレイヤーに投げかけてくるわけです。はたして、バレーピークスの運命はいかに? その行く末はプレイヤーの手に委ねられます。

癒し系と思いきや、困難と挑戦をプレイヤーに投げかけ、山の小さな英雄を目指す『Valley Peaks』にあなたもぜひチャレンジしてみてください。

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