やれやれ、やっと解放されたか…

寧子に車椅子を押してみらい、良人は黙り込んだまま、善行たちに

背を向ける。

するといきなり…

「おじいちゃん!」

女の子の声がする。

「なんだ?」

 誰だ、誰のことだ?

彼は車椅子を止めると、クルリと首を回す。

すると良人だけでなく、その場に居合わせた人たちもみんな、

ポカンとした顔で、互いの顔を見合わせている。

(なんだ、どうした?)

良人には、まったくわけがわからない。

 

 だが善行は…オバサンと目を見合わせると

「あの子?」

「うん、あの子だね」

小声でひそひそと、話している。

 なんだ、どうしたんだ?

キョトンとしている良人を尻目に、2人がグータッチをしているのが見えた。

やけにデレデレと、相好を崩している善行を見ると

「なんだ、アイツ」

だが…何だか、心がポカポカしている。

 あのミツキちゃん、という女の子が、どういう子なのかよく知らないし、

何で善行が、喜んでいるのかも知らない。

「やったな」

幸次郎が、善行の肩をたたくと、

「うん」

善行は目を潤ませる。

それを見ると、きっといいことに違いない…

良人はそう感じる。

「たまには、アイツに、顔を見せろ…と伝えてくれないか?」

背後にいる寧子に向かって、声をかける。

「そうですねぇ」

柔らかな声でうなづくと…再び2人は、今度こそ店の外へと向かった。

 

 

 

 

 

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