風俗の話③ | 未知なる心へ

未知なる心へ

統一教会入信から脱会までの日々と、脱会後の魂の彷徨。

ストリップの次にわたしが目指したのは、ヘルスだった。当時はまだ新しくて「ファッションヘルス」とか「ファッションマッサージ」と呼ばれていた。

 

 

ヘルスというのは簡単に言えば、本番のないソープである。いや、湯舟やマットプレイなどはないから、ソープの簡略版というべきか。

 

 

当時はインターネットなどないから、風俗の情報を得る手段は限られていた。主に友人からの伝聞によって、情報を得ていたのである。それでも、ソープランドが高いということは分かっていたから、より手軽に女体に触れることができるヘルスに行こう、となるのは、学生にとっては自然な流れだった。

 

 

ストリップに行ってから、およそ三か月後。1990年の1月に、わたしは友人と二人で名古屋の繁華街、栄に向かった。というか、最初は「今池に本番をやらせてくれるヘルスがある」という情報を得て、今池へ向かったのだが、行ってみたらそこはただのキャバクラだった。当てが外れたので、栄に行ってヘルスを探そう、ということになったのである。

 

 

なので、事前に決めていた店はなかったが、風俗街をうろついているうちに「30分6千円」という店を見つけた。店舗もきれいだし、まあまあ流行っている様子である。だが、なかなか中に入る勇気が出ず、店の前を友人と二人で、何度も行ったり来たりした。

 

 

しかし、ここまで来て引き返すことはできない。わたしは意を決して店の扉を開いた。とにかく初めてだから、指名も何もない。ただただ緊張して、女性が現れるのを待っていた。わたしに当たった女性は、背の低いわたしよりも小柄で、特別美人ではないが、まあまあかわいらしいお姉さんだった。わたしはお姉さんに連れられて、個室へ入った。

 

 

まずはお互い裸になって、一緒にシャワーを浴びる。全裸のお姉さんが向かいに立って、わたしの身体を洗ってくれた。家族以外の女性と全裸で向かい合うなんて、まったく初めての体験だ。

 

 

お姉さんは細身だったが、胸には適度な盛り上がりがあった。「ちょっと、胸に触ってもいいですか?」と許可を得てから、おっぱいに手を伸ばした。

 

 

夢にまで見た女性のおっぱいに、初めて触れる瞬間が来た! わたしにとっては人生最大級の感激だった。だが、いざお姉さんのおっぱいを揉んでみても、いまひとつピンとこない。想像していたような感激、興奮がないのだ。

 

 

それはある意味、当然である。わたしは前にも書いたように、女性のおっぱいが大好きだった。いわゆる「おっぱいフェチ」である。なので、オナニーする時にはいつも、おっぱいを揉んだり吸ったりすることを想像しながら、ペニスをしごいていた。

 

 

ここで、ある種の錯覚が起こるのである。おっぱいを見て興奮するのは事実だが、オナニー中に実際の快感を与えているのは、おっぱいではなく「右手」である。右手でペニスをしごくから気持ちよいのであって、おっぱいを触るだけでは、興奮はしても快感はないのである。

 

 

しかし、あまりにもオナニーをしてきた期間が長いので「おっぱい=快感」という錯覚が形成されている。なので、実際におっぱいを触ってもピンとこないのは当然である。現実には、おっぱいを触られて気持ちいいのは女性であって、男性ではないのだから。

 

 

(単純な話である。肩を揉まれて気持ちいいのは揉まれる人だ。揉んでいる方が気持ちいいということは、基本的にはあり得ないだろう)

 

 

やがてシャワーを終えると、小さな寝台のようなベッドに横になった。お姉さんはまず、わたしの乳首を舐めてきた。女性に体を舐められるなんて、童貞のわたしにとっては、それだけでも興奮ものである。舌の感触はとても気持ち良くて、ゾクゾクした。やがて、お姉さんの口は徐々に下に向かい、コンドームを付けると、わたしのペニスを口に含んだ。

 

 

この時わたしは、あまりの気持ちよさにイキそうになってしまった。しかし、ここでイってしまってはもったいない。「ああ、お姉さん、イっちゃいそうだから、ちょっと待って!

 

 

お姉さんはいったん、口の動きを止めた。しかし、これが大いなる間違いだった。一度、絶頂に達しかけたのだが、この後、急激に感覚が鈍くなってしまったのである。今度は逆に、お姉さんがいくら一生懸命しゃぶっても、行かなかった。行くどころか逆に「ふにゃっ」となる始末である。

 

 

そうなると、精神的に焦る。焦るとますます起たなくなる。途中からお姉さんは手で懸命にしごいてくれたが、結局、そのまま無念のタイムアウト。わたしは射精できないまま、店を去ることになってしまった。

 

 

お姉さんは最後まで気を遣ってくれて「出ないと、気分悪いでしょ?」と言ってくれた。しかし、出そうなときに止めさせたのはわたしである。お姉さんの責任ではない。わたしは申し訳なかったので帰り際に「またお姉さんのことを指名してもいい?」と言って、名刺をもらった。

 

 

一緒に店に入った相方は、どうやら射精できたようだった。わたしはすぐにでもリベンジしたかったが、親から仕送りをもらっている身分では、6千円だって大金である。そうそう何度も行けるわけもない。

 

 

こうして、わたしのヘルス初体験は終わった。しかし、後になって振り返ってみれば、お姉さんのおっぱいも舐めてないし、クンニもしていない。やり残したことはいっぱいあった。今回はまったく初めてだったので、完全に受け身だったのだ。まあ、たったの30分でできることは限られているし、仕方ない。わたしは捲土重来を期した。

 

 

(つづく)