ここでは、英検1級1発合格術を少し離れて、「英語」学習にためになる、役立つと筆者が考える本をご案内しています。
50冊目は、この本です。
タイトルからすると、もしかするとこの本は「勉強云々の前に、まずお行儀良くしなさい」と説教する類の本ではないか、この本の著者は、戦前の修身教育復活論者ではないか、と思わないでもないでしょう。しかし、実際には、そういう類の本ではありません。
まず、この著者は早稲田の大学、大学院と教育学を専攻し、研究してきた人であり、また、小学校の教師も経験している人です。当然、優秀な子、そうでない子、そして親との関係をつぶさに見てきた人です。
おいおい、そんな小学生の、いわば子育ての本がなぜ英語学習に役立つのか、といぶかる方も少なくないかもしれません。
しかし、この本を読めば読むほど、ここに書かれている事実、観察、そこからもたらされる提案は、大人の学習にも活用できるのではないかと思えるのです。
以下、2点にわたり説明していきます。
1.抽象化という頭脳活動が、子どもにとっては非常に難しく、大人にとっても難しいのではないかということに気づかされる。
この本で本ブログ筆者が最もおもしろいと感じたところは、ここでした。以下引用してみます。
次に挙げるのは、小学1年生の足し算の例です。二つの問題を比べてみてください。
①すくすく公園に子どもが3人います。のびのび公園に子どもが2人います。二つの公園に子どもは何人いますか。
⓶すくすじゅ公園に子どもが3人います。あとから子どもが2人遊びに来ました。すくすく公園には子どもが何人いますか。
式にして答えを求めてみると、同じ「3+2」ですね。(中略)でも、小さな子どもであれば、頭を抱えることもあります。そんな姿を前にしたときに、親は「なぜこんな簡単な問題もできないのかしら…」と途方に暮れるのです。
以上引用しましたが、いかがでしょうか。
本の著者によれば、この二つを同じように「+」として考えていいのか、子どもが頭を抱えてしまうケースが少なくないのだそうです。
その結果、教え方として①のときは先生が「両手をバンザイするように掲げて、くっつける動作」そして⓶のときは、片方の手を挙げ、あとからもう片方の手をくっつける」ことをして、「動きは違うけれど、結果として同じことになるね」と説明するそうです。
このあたり、本ブログ筆者は、英語学習者、特に英検でいえば準1級や、1級の試験を受けようとしながら、長文読解にいまひとつ自信が持てない方のヒントになると思うのです。
すなわち、子どもが頭を抱えているのは、抽象能力が未成熟だからです。
のびのび公園だの、子どもだのといった具体的なものは抜きにして、根幹のところで何が起きているのかを見通す、そういうものの見方が身に付いていないために正解に到れないのです。
そして、この抽象化という知的能力は英語のReadingでも問われている点で全く同じです。
個々具体的な例にこだわらず、そこから導かれること、そのパラグラフで「なにがいいたいねん」「何がとわれてるんや」、その中心事実を捕まえることなのです。
つなり、長文読解が苦手な方は、この抽象化能力がもちろん大人の領域にはあるけれど、まだまだ足りない状況で、あえて例えるなら、この「2+3」を①⓶両方同じだと見なせない小学生のような状況なのです。
しかも、この抽象化能力が日本語の段階でいまひとつであれば、英語でもいまひとつどころかいまさん?にもなってしまうことは、十分あり得ることと言えるでしょう。
より詳しく知りたい方は↓もご一読ください。
2.見直しとは何かを考えさせられる。
その次に興味深く読んだのが、テストの「見直し」についてでした。親は「本当に見直したの?」と聞くのに対して子どもは「見直したよ」と反応する。結局押し問答になってしまう。
この現象に対して、この本の著者はこう分析します。すなわち、親の「見直したの?」は「検算したのですか?」なのに、そうは言っていないし、子どもの「見直したよ」は「眼で式や数値をもう一回見たよ」で済ませている。したがって、親として「見直したの?」といったぞんざいな問いかけではなく、足し算なら、引き算にして確かめるとか、割り算なら掛け算をしてチェックするとかそういった具体的なやりかたを指導しなければ意味がない、と説きます。
これも、大人の英語学習に十分通じるところがあるのではないでしょうか。
1日、寝る前に「英語勉強したっけ?」と自分に問いかけ「ああ、通勤の時、ヘッドホンで聞き流しはしたもんね」では足らないでしょう。
もちろん、やらないよりはましですが、5分でも10分でもいいから、聞いた英語を文章と並行して読んで、聞き取れなかったところをチェックするとか、口に出して発音してみるとかを加えなければ、本当に学習したことにはならないでしょう。
「見直したよ」と口をとがらせて親に反抗する小学生とほとんど変わりません。
大人になれば、もう「見直したの?」と聞いてくれる人は殆どいなくなります。
それがために自己流に偏ってしまい、いや自己流そのものが悪いわけではありませんが、結局結果を出せないとしたら、一度この本を手に取って考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、この本の著者は、別のページで親はテストの点数を見る前に「なまえ」をていねいに書いているかどうかチェックするように促しています。
ものごとに対処する時、いかにていねいに対応するかが、学力を大人になってからは、仕事の能力に係わるとも解いています。
もちろん、英検などの試験用紙の名前をていねいに書いたからと言って点数が上がるわけではありませんが、ぞんざいなやり方では、英語の上級者になりにくい、というのは、結構当たっていると思います。経験上、そう申し上げます。
以上、英語の参考書には書いてありませんが、あなたの英語学習の一助になればと思います。