サラリーマン時代、結構あちこち海外出張に行く機会がありました。外資系に勤めていた時は当然ですが、日本企業にいた時もチャンスがあれば常に海外出張を狙っていましたので、色んな国に行って仕事をすることができました。
そんなワタシが最初に海外出張に行ったのはイタリアのピサで、もう30年近く前のことです。斜塔で有名なピサですが、国内企業の時担当したプロジェクトがピサの会社とのものでしたし、その後転職した外資系企業でもピサに工場があったため何度も出張した縁のある街です。
初めてイタリアに行った時は、まだ通貨がユーロではなく「リラ」でした。リラ円レートがすごくて、確か1リラは0.07円くらいだったので、10,000リラでも700円にしかなりませんでした。10万リラ紙幣とかもあるので、タクシー代を払う時とかゼロがいっぱいで計算するのがすごくややこしかったです。ちなみに当時日本から欧州へ出張する際には、欧州域内で何回移動しても周遊チケットみたいに航空券代が大きく変わらなかったため、一度出張するとあちこちの国を回って来いと言われることがよくありました。当然各国の通貨はバラバラでレートも異なるので、出張時のお金の扱いにとても苦労したことを覚えています。英ポンド、仏フラン、独マルク、伊リラ・・・財布がいくつ合っても足らない・・・。当時欧州では、まだクレジットカードが使える場所も限られていました（ホテルくらいかな？）。ユーロ通貨が導入されてからは本当に楽になりました。
イタリアというと一番印象に残っているのは、何と言ってもあの美味しいごはんです！最初の出張では同じ会社の海外営業部長さんが、毎晩いろいろなレストランに連れて行ってくれました。どこもとても美味しかったのですが、店のオープンが遅いのがタマニキズでした。まだ若かったので夕方が近づくとお腹がペコペコなのですが、ほとんどのレストランは早くても20時、遅いと21時にならないと開かないのです。カジュアルなレストランでも、食前酒、前菜、パスタ、メイン料理、スイーツ、コーヒーと、フルコースを3時間くらい掛けてゆっくり食べるので、終わるのは毎晩深夜24時ごろになります。ピサには小さなレストランが多く、オープンして数卓のテーブルが埋まると、その晩はもう客が回転しません。これでよく利益が出るもんだな〜と不思議でした。
本格的にEU（欧州連合）が機能し始めてからはだいぶマシになった気がしますが、1990年代のイタリアは随所にいい加減さを見せていました。例えば、ホテルの電気コンセント。当時から欧州共通の形がありましたが、イタリアのホテルでは部屋中に数か所あるコンセントがすべて違う形で、持っていた欧州向けアダプターはテレビ用の1カ所（しかもテレビ台の裏に隠れている）しか使えませんでした。シャワーも多くの人が使うゴールデンタイムではお湯が水になるとか、そんなことが当たり前に起きました。最後までお湯のシャワーを使いたかったら、朝一番に使うしかありませんでした。しかもドライヤーは、壁に固定されているそよ風しか出ないアレです。朝の集合時間に間に合わせるのに苦労しました。
また、わずか1週間程度の出張だったと記憶していますが、その間に2回もトイレに閉じ込められました。1回目は訪問先の会社の会議室近くのトイレ、2回目は街のレストランのトイレです。個室に入って中からカギを掛けるのですが、このカギが昔の細い真鍮でできたカギ（カギと言われて絵にするとこうなるって形のもの）なのです。だいたい最初からうまくロックできているかよくわからない代物なのですが、用を済ませたあとにこのカギを開けようとしてもうんともすんとも回らないのです。会議を抜け出して会社のトイレに入った時は、なんとカギが真っ二つに折れて、先端が鍵穴の中に残ってしまったのです。もう顔面蒼白です！トイレのドアも上下に隙間がなくピッタリ詰まっていて、まったくの密室に閉じ込められてしまいました。会議室近くのトイレで、その会社の従業員があまり使わない場所だったので、なかなか人も来ないし会議は進んでいるし・・・。10分以上経ってようやく誰かがトイレに入ってくる音がして、「Help!!」と叫んでメンテナンスの方を呼んでもらい、ようやく救出されました。
その後もレストランのトイレで同じ目に遭遇しましたが、この時は同僚たちと一緒だったので比較的早く救出してもらえました。もう本当に信用ならないカギなのですが、まさか掛けないわけにもいかず・・・。外出先ではできるだけトイレを使わないように注意していました。どうしてもの時は、こうドアを片手で引っ張った状態で・・・笑！
以降、何度も仕事でイタリアを訪れていますが、こんな信じられないことが頻発する国でも、あの美味しい料理を口にするとすべて許せてしまうんですよね〜・・・あっ、思い出すとヨダレが！
いつかプライベートで、必ず訪れたいと思う国のひとつです。
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