10日に投開票された参院選。前回2019年に比べて候補者は175人増えて545人に上ったものの、当選する見込みがほとんどない候補が乱立しているようにも見えた。政党はタレントや暴露系ユーチューバーらを公認し、「良識の府」と呼ばれる参院にふさわしい論戦が展開されたとは言えない状況だった。こんな選挙でよいのだろうか。そんなモヤモヤを、東京都知事選に3回出馬し、真面目な論戦で存在感を見せた元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児さん(75)にぶつけてみた。【田中裕之】
供託金は値上げすべきか
まず供託金制度について考えてみたい。
日本では公職選挙法の定めによって、選挙に立候補するには供託金が必要だ。参院選では選挙区は300万円、比例代表は600万円を納め、一定の得票を満たすことができれば返却されるが、達しなかった場合は没収される。その目的は「売名や泡沫(ほうまつ)候補を抑制し、候補者の乱立を防ぐため」とされる。
ところが、今回の参院選を見ると供託金の効果は薄いようだ。候補者の中には「超能力で公約を実現したい」などと荒唐無稽(むけい)な政見放送をする人や、過去にヘイトスピーチで有罪判決を受けた活動家までいた。皇族への不敬罪復活など極端な保守的政策を掲げる政治団体があったほか、ある団体は代表者が仮面をかぶった浴衣姿でダンサーと路上パフォーマンスを講じた。
候補者の政見放送やメディアへの露出などによって「供託金で得られる広告効果は計り知れない」(NHK党の立花孝志党首)という指摘もある。ならばと、記者がまず思い浮かんだ対策は供託金の値上げだ。
「供託金はできるだけ低額にするか、排除した方がいいんです」
値上げへの賛否を尋ねると、宇都宮さんは供託金制度そのものに反対の立場を強調した。…
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