やられたら何十倍返し イスラエルの徹底的な報復戦略
パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が続いています。イスラエルは以前から、敵対勢力から攻撃されると多くの民間人も巻き添えに徹底報復をしてきました。国際的な非難をものともせず、ここまでやる彼らの理屈はなんなのか? ハマスを支援するイランはどう動くのか? ロシアとイスラエルの微妙な関係は? イスラエルの政治と安全保障が専門の池田明史・東洋英和女学院大前学長に聞きました。【聞き手・鈴木英生】
ハマスへの報復は「草刈り」
やられたら何十倍にしてやり返す。イスラエル軍は、自国への攻撃に対して速戦即決で大規模に反撃する大量報復戦略をとってきた。彼らは、この戦略に抑止効果があると信じている。実際、レバノンの親イラン系イスラム教シーア派組織ヒズボラとは2006年の大規模衝突以来、本格的に戦わず済んでいる。一方、ガザ地区のハマスとは数年おきに大きな戦闘をしてきた。だが、もしきちんと報復しなければ、もっと頻繁にハマスから攻撃されたはずだと考えている。
イスラエルの安全保障関係者は、ハマスに対する攻撃を「草刈り」と呼んできた。ガザ地区の直接占領は面倒だから統治主体としてのハマスはあってよいが、本格的には刃向かわせない。ハマスがある程度力を付けたらたたくが、崩壊はさせない。ガザ地区への空爆や侵攻は芝の手入れのようなもので、現状維持の必要コストというわけだ。
大量報復の原点は建国時にある
大量報復戦略の原点は、1948年のイスラエル建国時にある。数十倍の人口を抱える周辺国のすべてと敵対したが、自国は人口が少ないから大きな常備軍を持てなかった。一朝ことあらば予備役を大量動員するほかない。予備役は現役世代でもあるので長期間動員すると社会や経済がもたない。動員期間を短くするために、短期決戦で、国境の外で徹底的に戦って相手の継戦能力をそぎ、簡単には再び攻撃できなくさせる…
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