「宝塚はなくなるしかない」 歌劇団の元演出助手が見た搾取の構図
<ずっと、なぜわたしは死なずに生きていて、彼女は死んだのかを考えています>
宝塚歌劇団の劇団員の女性が死亡して間もない2023年10月。かつて歌劇団で演出助手を務めたアキさん(仮名)は、木場健之(こばけんし)理事長(当時)に1通の手紙を送った。
アキさんは5年前、長時間労働や上司からのパワーハラスメントで心身に不調をきたし、退団した。改革に乗り出しつつある歌劇団に対し、「なくなるしかない」とまで口にする。アキさんが見た「立場の弱い人へのしわ寄せで利益を生む」という搾取の構図とは。
「机を蹴られた同期も」
アキさんは16年春、契約社員として歌劇団に入団した。芸術系の大学で学び、演出家になるのが夢だった。
だが入団してすぐ、期待は裏切られた。契約は1日実働8時間を基本とする専門業務型裁量労働制。労働者が仕事の進め方を決めるのを前提に、労使で事前に決めた時間を働いたとみなす制度だ。だが実際の仕事は上司からの指示で決められ、裁量などなかった。
公演の稽古(けいこ)に入ると、労働時間は1日16時間にも及んだ。公式稽古は午後1~10時だが、機材の運び込み、スタッフとの打ち合わせは午前中から始まる。稽古が終わった後は自主的な稽古に励む劇団員の帰りを待ち、午前2時ごろまで翌日の準備に追われた。
「休憩も演出家の使い走りや打ち合わせ、音源の録音作業で休めない。座ったり、寝転んだりしたらしばらく立ち上がれないほど具合が悪くなりました」
先輩演出家の言動にも苦しめられた。ミスをすると劇団員の前でも怒鳴られた。「論理的ではなく感情的。机を蹴られた同期もいました」。稽古後の飲み会にも参加を強いられ、ダメ出しが続いた。
入団から半年が過ぎたころ、アキさんはX(ツイッター)に悲痛な投稿をしている。
<二徹から…
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