国語教育 文学的文章の受験戦略 石原千秋

『大学受験のための小説講義』石原 千秋 | 筑摩書房

P164では、以下の5法則が成り立つことが多いと述べています。

 

1 気持ちを問う設問では、道徳的に正しいことが正解

2 道徳的に健全な物語が出題、それに否定的な表現の選択肢はダミー

3 その結果正解は曖昧記述が多い

4 気持ちを問う設問 傍線部前後の状況についての情報処理

5 正解は似ている選択肢のどちらか

(1~5いずれも「であることが多い」という表現になっていることに注意)

 

法則3の理由

p138 

 選択肢は本文の暴力的な書き換え

→明快な断言は本文とずれる

→曖昧に書いてずれをなくす

(49現実らしい表現を抽象表現に「翻訳」→得たイメージを二元論的な思考の枠組みで世界のどこかに位置づける→同時に自分の立っている位置が見える。  50「翻訳」は「変形」を伴う。)

 

法則4の理由

 p159気持ちの説明として適当でないものを選べ、という問題

→出題者はここで複数の気持ちが発生したと理解したのだろう

→しかし作者は気持ちを書かずに状況だけ書いた

→選択肢は主人公の状況説明ばかり

→気持ちを問う設問の多くは状況の情報処理問題

 

法則5の理由

 p79 正解選択肢に似た選択肢には無関係な記述がある

→これは誤答のサイン

→正解選択肢に似た誤答を作ったと分析、法則5を見出す。

 

ブログ主の思ったこと。

法則3 解答は本文の書き換えということは指導案でも意識したい。

法則4 気持ちを問う問題の解き方は他にもないか。状況から感情を読む方法をどうやって教えるか。

法則5 記述式でどうして無関係な記述を入れるか?生徒の答案を分析せねば。

評論文の誤答分析では

国語教育 舟口の記述式 - sazaesansazaesan’s diary

で紹介した

大学受験Nシリーズ『船口の最強の現代文記述トレーニング』 | 学研出版サイト

が便利でした。

 

以上です。

国語教育 文学的文章の読み方(堀裕嗣を中心に)

文学的文章の読み方指導(言語技術)については、

主体的に読む力をつける 国語授業10の原理・100の原則 文学初級編:堀 裕嗣 著 - 明治図書オンライン

の目次  「設定」「構成」「描写」「主題」の各原則が参考になります。

構成については 

冒頭部・展開部・終末部: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

主題については

人(登場人物): 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

 

THE教師力ハンドブック 国語科授業づくり入門:堀 裕嗣 著 - 明治図書オンライン

読むこと(文学的文章)の言語技術

pp82-83 視点読み〈文芸研〉

pp84-85批評読み(語り手の評価)

では、田中実の語り手の自己表出という概念を提示。

 

視点読みは

西郷文芸学における「視点論」の変化に関する考察 | 学術機関リポジトリデータベース

田中実は

google schlarで“田中実” “語り手の自己表出”と入れると多数ヒットするが、

「読み」を意識させる授業  (山月記を使った実践)

「語り手」という「学習用語」の登場   (少年の日の思い出を使う)

文学教育における「内容と形式」の分裂を如何に超えるか 宮沢賢治『注文の多い料理店』における〈語り〉の問題に着目して

はとくに参考になる。

 

なお、描写は

『大学受験のための小説講義』石原 千秋 | 筑摩書房p211でも指摘があるが、文学研究では定義がある。ひとまず以下を参考。

文章表現におけるサスペンスについて(2) ――サスペンスとしての描写――

 

以上です。

評論文の背景 石原千秋氏による読書案内

読書案内 - sazaesansazaesan’s diary

 で紹介した 世界のいまを知り未来をつくる評論文読書案内 | 晶文社につづき、

『教養としての大学受験国語』石原 千秋 | 筑摩書房

という本の各章参考文献をあげておきます。

 

第1章

『ヨーロッパ「近代」の終焉』(山本 雅男):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

『近代性の構造』(今村 仁司):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部

『パラサイト・シングルの時代』山田 昌弘 | 筑摩書房

(p35では

近代合理主義の光と影 / 竹内啓 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

も推奨している)

 

第2章

『現代思想の冒険』竹田 青嗣 | 筑摩書房

『異文化としての子ども』本田 和子 | 筑摩書房

第3章

『じぶん・この不思議な存在』(鷲田 清一):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

『〈私〉探しゲーム』上野 千鶴子 | 筑摩書房

僕って何 :三田 誠広|河出書房新社

 

第4章

悲鳴をあげる身体 | 鷲田清一著 | 書籍 | PHP研究所

『ひとはなぜ服を着るのか』鷲田 清一 | 筑摩書房

『モードの迷宮』鷲田 清一 | 筑摩書房

 

共通感覚論 - 岩波書店

(共通感覚論 - Wikipedia

792夜 『共通感覚論』 中村雄二郎 − 松岡正剛の千夜千冊)

『精神としての身体』(市川 浩):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部

 

『もてない男』小谷野 敦 | 筑摩書房

 

第5章

『群衆』今村 仁司 | 筑摩書房

都市の政治学 - 岩波書店

大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史 -苅谷剛彦 著|中公新書|中央公論新社

『「家族」と「幸福」の戦後史』(三浦 展):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

 

第6章

『TV 魔法のメディア』桜井 哲夫 | 筑摩書房

『デジタル産業革命』(山根 一眞):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

ネットワ-ク社会の深層構造 / 江下 雅之【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

 

第7章

日本の無思想 - 平凡社(増補改訂して平凡社ライブラリーに)

『戦後の思想空間』大澤 真幸 | 筑摩書房

『「世間」とは何か』(阿部 謹也):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

 

8章

『異人論序説』赤坂 憲雄 | 筑摩書房

『吉里吉里人〔上〕』 井上ひさし | 新潮社

『吉里吉里人〔下〕』 井上ひさし | 新潮社

 

以上です。

教採対策 内田樹『下流志向』

CiNii 図書 - しょうせつ教育原論202X

でよく参照されている

『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』(内田 樹):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

という本の記述と共通する記述を、内田氏のブログから見つけました。

 

下流』p31,37は

オレ様化する子どもたち - 内田樹の研究室

下流』pp111-116は

階層化=大衆社会の到来 - 内田樹の研究室

と一部重なります。

 

なお、『下流』が出て以後だが

「学力と階層」解説 - 内田樹の研究室

でも苅谷氏に言及。

 

内田氏の文章は国語教科書にもよく載ります。

以上です。

教採対策 発表前に堀裕嗣氏の話すことの技術 

堀裕嗣氏の話すこと指導は、生徒に発表させるときに役立つ。

 

総合的学習を支え活かす国語科2 教室プレゼンテーションの20の技術:堀 裕嗣 他 編著 - 明治図書オンライン

では声の出し方から話す内容の構成や聴衆とのやりとりを含めた話し方のやり方を提案。

(なお、この本の一部は

THE教師力ハンドブック 国語科授業づくり入門:堀 裕嗣 著 - 明治図書オンライン

にも取り入れられた)

 

両書で提唱された話すことの技術については、

プレゼンテーションスキルの向上をねらいとしたピア・ラーニングの実践――学生の能動的な学びを授業外学習で鍛える――

という発表要旨にそのまとめあり。

 

このうち、

基礎系列の1 姿勢は姿勢: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

も参考になる。

 

構成系列の、9 IBCは

書くことについての記事

文章構成: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

も参考になる。

また、社員研修の会社のサイトの記事だが、

プレゼンテーションの構成はIBC法で考える

にも紹介あり。

 

10ナンバリング 11ラベリング は

一斉授業10の原理・100の原則 - 学事出版株式会社

pp113-114発現指導を機能させる10の原理4,5によると、

 藤岡信勝編・上條晴夫著『中高生のためのやさしいディベート入門』 学事出版 1996

  を参考したという。

 

聴衆系列の19ダイアローグ 20ユーモア では、

ダイアログ/ユーモア: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

も参考になる。

 

以上です。

国語教育 系統性

THE教師力ハンドブック 国語科授業づくり入門:堀 裕嗣 著 - 明治図書オンライン

3章国語科授業の学力形成 

 2:指導事項を明確化せよ!では、

p46「教材を読むという言語活動ばかりを考えて、その活動でどんな言語能力が培われるのかということに無自覚です。」p47「(前略)登場人物の行動を読み、心情を考えてまとめるという作業が繰り返されます。何の系統性もありません。」

という現状が指摘される。

 

中学校学習指導要領解説:文部科学省

の国語編では、

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_002.pdf

1章総説 2 国語科の改訂の趣旨及び要点 (3)学習の系統性の重視 で、

p9「国語科の指導内容は,系統的・段階的に上の学年につながっていくとともに, 螺旋的・反復的に繰り返しながら学習し,資質・能力の定着を図ることを基本としている。」

 

 

前に習ったことが次に生きるためには、堀氏前掲書や堀氏のブログの他に、以下も参考になる。

 

説明文教材の基本的な扱い方をマスターしよう ―「筆者」という概念を活用する― - 堀江式 国語授業のワザ - 明治図書オンライン「教育zine」

「筆者がどのように〈内容・題材〉を選び、それにふさわしい〈形式・構成〉を用いたかを考えさせていく」ことを提案。

 →文学的文章でも使えるかも。

 

以上です。

(10/12追記 前掲堀氏の指摘に関しては以下も参考。

指導事項を明確化せよ!: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

指導事項を板書せよ!: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

1時間の形成学力を一つに絞れ!: 裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com

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歴史 民国時代の教育史3 モンロー、啓蒙

歴史学 民国時代の教育史 - sazaesansazaesan’s diary

歴史学 民国時代の教育史2 - sazaesansazaesan’s diary

の続きです。

 

Paul Monroe - Wikipedia

wikiによると、近代中国の教育史では有名らしい。

 

世界教育史要 - 国立国会図書館デジタルコレクション

という教育思想史(明治時代に翻訳された)を書いた。

 

なお、世界教育史要の原著を

森有礼の啓蒙と教育(上) | 学術機関リポジトリデータベース

p24で参考している。

前掲翻訳書では、10章の啓蒙時代の節にあたる。

 

以上です。