第17回 日経能楽鑑賞会
能「野宮」・狂言「清水」
能では金剛流二十六世宗家・金剛永謹と観世流シテ方・片山九郎右衛門が『野宮(ののみや)』を、狂言では和泉流の野村萬、野村万作が『清水』をそれぞれ競演します。
2023年6月29日(木)、30日(金)午後6時開演国立能楽堂
概要
現代一流の能楽師が一堂に会し、名曲・大曲を披露する日経能楽鑑賞会も今年で17回目を迎えました。能では金剛流二十六世宗家・金剛永謹と、観世流・片山九郎右衛門という異なる流派の名手が同じ曲『野宮(ののみや)』を日替わりで上演します。『野宮』は「源氏物語 賢木の巻」を典拠とする、光源氏と六条御息所の別れの物語。源氏との恋をあきらめようとする思いと、なおも慕わずにはいられない思いの間で揺れ動く御息所を晩秋の京・嵯峨野の風景と重ね合わせて、物寂しくも優雅に描く鬘物の大作にご期待ください。
狂言では共に人間国宝の野村萬・野村万作兄弟が『清水』を競演します。水汲みに行きたくないばかりにいろいろと嘘をつく太郎冠者と、それを見破らんばかりに策を練る主人の掛け合いが笑いを誘います。
室町時代に生まれ、激動の時代を乗り越えてきた日本文化の精髄、能楽。確固たる技術と情趣豊かな表現力を持つ、まさに現代日本の最高峰の能楽師による至芸にご期待ください。
2023年6月29日(木) 狂言「清水」野村万作、能「野宮」片山九郎右衛門
午後6時開演
2023年6月30日(金) 狂言「清水」野村萬、能「野宮」金剛永謹
午後6時開演
国立能楽堂
渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
ホームページはこちら各日A席 8,000円 B席 7,000円 C席 6,000円 (S席10,000円は完売)
2公演セット券S席 19,000円 A席 15,000円 B席 13,000円 C席 11,000円セット券完売
日経公演事務局03-5227-4227(平日10:00-18:00)
番組
6月29日(木)午後6時開演
狂言(和泉流)
清水
シテ(太郎冠者) | 野村 万作 |
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アド(主人) | 野村 萬斎 |
後見 | 中村 修一 |
能(観世流)
野宮
前シテ(里の女) 後シテ(六条御息所の霊) |
片山 九郎右衛門 | |
---|---|---|
ワキ(旅僧) | 宝生 欣哉 | |
アイ(所の者) | 石田 幸雄 | |
笛 | 竹市 学 | |
小鼓 | 成田 達志 | |
大鼓 | 國川 純 | |
後見 | 大江 信行 大江 広祐 |
|
地謡 | 小早川 泰輝 武田 宗典 坂井 音晴 武田 文志 |
観世 淳夫 馬野 正基 浅井 文義 浅見 慈一 |
6月30日(金)午後6時開演
狂言(和泉流)
清水
シテ(太郎冠者) | 野村 萬 |
---|---|
アド(主人) | 野村 万蔵 |
後見 | 野村 拳之介 |
能(金剛流)
野宮
前シテ(里の女) 後シテ(六条御息所の霊) |
金剛 永謹 | |
---|---|---|
ワキ(旅僧) | 宝生 欣哉 | |
アイ(所の者) | 野村 万之丞 | |
笛 | 杉 市和 | |
小鼓 | 観世 新九郎 | |
大鼓 | 山本 哲也 | |
後見 | 廣田 幸稔 豊嶋 幸洋 廣田 泰能 |
|
地謡 | 元吉 正巳 宇髙 徳成 宇髙 竜成 惣明 貞助 |
坂本 立津朗 金剛 龍謹 今井 清隆 豊嶋 晃嗣 |
あらすじ
狂言 清水
茶会を開く事になった主人は、太郎冠者に秘蔵の手桶を持たせ、野中の清水へ水を汲みに行くよう言いつける。水汲に行きたくない太郎冠者は一計を案じ、手桶を隠すと屋敷へ戻り、大騒ぎで「清水に鬼が出たので手桶を投げつけ逃げ帰った」と報告する。すると、主人は手桶を惜しがり、自ら取り返しに行くと言う。太郎冠者は先回りして待っていると…。
能 野宮
晩秋の嵯峨野を訪れた旅の僧が昔の野宮の旧跡を拝んでいると、一人の女が現れる。女が言うには、今日九月七日は、光源氏が野宮にいた六条御息所のもとを訪れた日。女は往時の様子を語り、手にしていた榊の枝を神前に手向けると、その時の御息所の心の内を明かす。彼女は、自分こそ御息所の霊だと告げると、姿を消してしまうのだった。
その夜、僧の夢の中に、牛車に乗った一人の貴婦人が現れる。彼女こそ、御息所の幽霊であった。御息所は、賀茂祭の車争いで負った心の傷を語り、寂しげな野宮の様子を見て感傷に浸りつつ、舞の袖を翻す。しかしやがて、彼女は再び車に乗ると、ひとり去ってゆくのであった。
出演者
片山九郎右衛門(かたやま・くろうえもん)
能楽シテ方観世流。1964年、片山幽雪(九世片山九郎右衛門・人間国宝)の長男として京都市に生まれる。祖母は京舞井上流四世家元井上八千代(人間国宝)、姉は五世家元井上八千代(人間国宝)。父及び八世観世銕之亟(人間国宝)に師事。1970年「岩船」で初シテ。父とともに片山定期能楽会を主宰。全国各地で多数の公演に出演する他、ヨーロッパ、アメリカでの海外公演にも積極的に参加。また、学校公演及び学校における能楽教室の開催、能を題材にした『能の絵本』の制作(「天狗の恩がえし」等)、能舞台のCG化、能楽公演のインターネット動画配信など、若年層のための能楽の普及活動も手掛ける。京都府文化賞奨励賞、京都市芸術新人賞、文化庁芸術祭新人賞、日本伝統文化振興財団賞、京都府文化賞功労賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、観世寿夫記念法政大学能楽賞を受賞。公益社団法人京都観世会会長、公益財団法人片山家能楽・京舞保存財団理事長。2011年1月、十世片山九郎右衛門を襲名。重要無形文化財(総合指定)保持者。
金剛流二十六世宗家 金剛永謹(こんごう・ひさのり)
1951年、二十五世宗家金剛巌の長男として京都に生まれる。重要無形文化財総合指定保持者。幼少より、父・金剛巌に師事。1998年9月、能楽金剛流二十六世宗家を継承する。2003年5月、金剛能楽堂を京都御所の西向かいに移転、竣工。古くは法隆寺の坂戸座に由来し、長年培われてきた伝統と山紫水明の自然の中で育まれてきた金剛流は、能楽シテ方五流の中で唯一関西を本拠地とする。「舞金剛」と呼ばれる華麗で躍動感溢れる独特の芸風に、「京金剛」といわれる優美で雅やかさが加わった芸風を特徴とする。金剛流第1回の海外公演であるカナダ・アメリカ公演団長を皮切りに、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ロシアなどでの海外公演も多数行う。京都市芸術新人賞、京都府文化賞新人賞、京都府文化賞功労賞受賞。京都市文化功労者表彰。第67回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2018年紫綬褒章受章。公益財団法人金剛能楽堂財団理事長。金剛会理事長。社団法人日本能楽会常務理事。京都市立芸術大学客員教授。著書に『金剛家の面』、『金剛宗家の能面と能装束』がある。
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