【★4.3】火入れとテロワールにこだわる若き俊英【2700】 : くるますし

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おまかせコース（25,000円、内税）滞在時間：約2時間40分（追加分を含む）

東京から愛媛県に来ております。

高平康司親方が腕を奮う同店（4.36）。
1976年に愛媛県愛南町出身の先代（73歳）が松山にて創業。
2代目となる親方は高校卒業後にミシュラン三つ星（現在は二つ星）鮨よしたけ（3.97）で修業。

東京で8年の研鑽を重ね2016年に跡を継ぐや2018年に27歳の若さでミシュラン二つ星を獲得。
2024年には食べログSilverアワード獲得、四国で最も勢いのある飲食店かも知れません。
ネット予約サイトOMAKASEで空き枠を見つけてお邪魔しました。

店内はツケ場前の直線カウンター8席のみというシェフズテーブル。
親方、先代、調理補助の男性2名、ホールスタッフの女性2名、計6名でお店を切り盛り。
2回転目の遅い時間（20時30分）スタートということもあるのか今回は6席。
1回転目（18時スタート）よりもカウンター席の配置がゆったり。

卓上に、箸、箸置き、布おしぼり、お手洗いはパナソニックの洋式ビューティートワレ。
5分前に着いたのですが1回転目のお客さんが未だ食事中のため待合室へ。
時間きっちりに追い出したりはしないようで2回転目のスタートは10分ぐらい遅れて。

お店を出るの23時過ぎとなってしまいましたが、
ホテルに泊まるのが前提となる県外客は2回転目のほうがゆっくり楽しめそうです。
地方都市の松山かつ2回転制ということで食べログSilverにしては予約を取りやすいと思います。

同店の特長を挙げるとまず火入れへのこだわりが鮨店のレベルを超越しています。
フレンチかと思うぐらいメリハリあって絶妙な火入れ。
都心の食べログSilverに輝くような鮨店でも火入れに関しては残念に思うことがありますが、
同店はその点が別格で、握りだけでなくおつまみも非凡。

そして同店最大の特長が愛媛テロワール。
本鮪、穴子、蛤（今回は入荷無かったですが小鰭も）、薬味のわさびは流石に県外ですが、
それ以外は地物にこだわっており同地でしか味わえないであろうコース構成に。

愛媛県といえば今治のカリスマ漁師「藤本純一」さんが全国的に有名ですが、
（都内に限らず日本全国のアワード店で藤本さんの魚に出会います）
もちろん藤本さんからも仕入れており地元ゆえ鮮度という点で東京より圧倒的に有利でしょう。
下記の通り飲み食いして、お支払い総額33,300円でした。

・おまかせ日本酒（半合ずつ）

0.和らぎ水
1.愛媛県 石鎚酒造 石鎚 純米大吟醸 愛
2.島根県 富士酒造 出雲富士 雪雲 YUKIMO にごり生原酒
3.高知県 仙頭酒造 土佐しらぎく 斬辛 特別純米 八反錦
4.愛媛県 石鎚酒造 石鎚 純米吟醸 山田錦50
5.愛媛県 石鎚酒造 石鎚 純米吟醸 緑ラベル

・おまかせコース（25,000円）

～おつまみ～
01.宮窪産ナゴヤフグ（ショウサイフグ）湯引き わかめ トラフグの白子 ポン酢
02.宮窪産真鯛のお出汁
03.宮窪産真鯛皮霜造り
04.愛南町産7kgサイズ活け越し当日〆ヤイトハタ炭火炙り
05.二神島産あわび
06.藁で炙ってから炭火で焼き上げた長浜産鰆（さわら）
07.二神島産海鼠（なまこ）このこ 酢橘と山葵のジュレ
～握り～
08.八幡浜産2kgサイズ白甘鯛
09.愛南町産アオリイカ
10.愛南町産1kgサイズ神経〆釣り真鰺
11.瀬戸内産アシアカエビ（クマエビ）
12.塩釜産本鮪霜降り（大トロ）
13.西条産ワタリガニ
14.宮窪産神経〆鮃（ひらめ）
15.地物鳥貝
16.地物赤貝
17.地物1kgサイズ伊勢海老
18.八幡浜産ムラサキウニ軍艦
19.対馬産500gサイズ煮穴子
20.お椀（お味噌汁）
21.芝海老と大和芋入り玉子焼き
追加：赤貝のヒモ
追加：藤本さんの真鯛
追加：鹿嶋産煮蛤

食べた料理の寸評は以下の通り、【】内は個別の採点、表示価格は内税です

【3.8】宮窪産ナゴヤフグ（ショウサイフグ）湯引き わかめ トラフグの白子 ポン酢

ナゴヤフグ（ショウサイフグ）の身＆トラフグの白子というダブル河豚な酒肴。
先代が親方の指示で盛り付けていました（先代は握らず裏方に徹しています）。
宮窪（今治市）ということで藤本さんからの仕入れ。

プリプリに変質したショウサイフグに裏漉したような白子餡という組み合わせ。
予算に制限なければ天然トラフグの身を使うほうが美味しくはなるのでしょうけど、
25,000円コースで豪快にフグを楽しむのならショウサイフグ。
火入れと白子餡でショウサイフグの昇華を感じます。

【3.7】宮窪産真鯛のお出汁

こちらも藤本さんから仕入れた真鯛で、昼まで生きていたという鮮度抜群な個体。
食べログGOLD西麻布蒼（4.53）も藤本さんの真鯛コンソメを最初に出すのが定番ですが、
アラだけでも美味しく楽しめてしまうのが藤本さんの真鯛。

【4.6】宮窪産真鯛皮霜造り

アラから取ったお出汁だけでも美味しい真鯛ですが真打ちは皮霜造り。
手前が腹側で奥が背側の身となります。
塩（高知県の田野屋塩二郎）と本わさびで。

ブリブリ活かったような歯応えを楽しめながら旨味抜群。
昼まで生きていた個体なので熟成なんてされていませんが、
東京で好まれる熟成タイプの真鯛より旨味が強くて歯応えもまた魅力的。
こういう真鯛は東京ではまず食べられない四国や九州ならではの味わい。

愛媛県では定食百名店の愛南市場食堂（3.57）でふかうら真鯛（ブランド養殖マダイ）、
そごうマートという地場スーパーでも養殖真鯛の刺身を買って食べてみたのですが、
スーパーマーケットの真鯛すらブリブリ活かっており東京とは別格。
同店はそれより更に異次元な「藤本さんの真鯛」の〆立てを楽しめて驚愕しました。

【4.5】愛南町産7kgサイズ活け越し当日〆ヤイトハタ炭火炙り

7kgアップというヤイトハタにしては小振りな個体ですが、
炭火でレアーに炙ることで身からジュワジュワ脂が溢れ出ており、
そこに醤油を塗って、本わさびで脂を緩和しながら楽しみます。

沖縄県ではミーバイとも呼ばれる高級魚。
数日泳がせておいて当日に〆たのだそう。
レアー感を残す火入れでブリンブリンに身が変質しており抜群に美味しい。

【4.1】二神島産あわび

松山沖の地物あわびがドカーンと大振りカットで登場。
これだけ大振りなあわびを都心で食べたらいくら取られるか恐ろしくなります。
水は加えずにあわびから出てくる体液だけで火を入れたのだそう。

足が早い食材なので都内で食べても割高感のほうが気になるあわび（干しあわびは除く）。
テロワールで楽しむほうが圧倒的に有利な食材なのです。
肝ソースは残しておいて、酢飯玉と合わせて「肝リゾット」のように。

【4.0】藁で炙ってから炭火で焼き上げた長浜産鰆（さわら）

フレンチで言うところのミキュイな火入れの鰆。
魚に春と書いて鰆ですが冬のほうが美味しいというのが親方の持論。
（アッサリした春の鰆を好むお店もありますが脂ノリを求めるのであれば冬でしょう。）

柵で焼き上げ中骨の部分は取り除いて厚切りカット。
玉葱のポン酢漬けと薬味の芥子（地芥子と塩麹をブレンド）で。
ソースはフレンチほど手が込んではいないですが、
フレンチのような火入れで昇華した鰆の美味しさが圧巻。

【3.8】二神島産海鼠（なまこ）このこ 酢橘と山葵のジュレ

このこ（海鼠の卵巣）に生臭みを感じてしまった点だけ画竜点睛を欠いたのですが、
大振りカットながらフルフル食感の海鼠自体は抜群に美味しい。
ゆっくり低温で火を入れたという海鼠本体に関しては評価4.0以上。

【4.0】八幡浜産2kgサイズ白甘鯛

握りの前に生姜（ガリ）が出てきますが薄切り甘さ控えめタイプ。
ブランド産地として東京はもちろん日本全国から引き合いがある八幡浜産の白甘鯛。
3種類の甘鯛（赤、黄、白）の中でも別格な存在。
同店の酢飯はどちらかと言えば大振りで、米粒と酸味がしっかり立っていました。

【4.0】愛南町産アオリイカ

ネットリした口当たりで酢飯との親和性が高いです。
高めの温度で1日寝かせたという地物。
パキパキに活かっている身にステンレスの包丁を細かく入れて食べやすく下処理。
親方曰くステンレスの包丁は臭いを消してしまうのでマグロには向かないそうですが、
イカには適しており調理道具にもかなりのこだわりをお持ちのようです。

【3.8】愛南町産1kgサイズ神経〆釣り真鰺

2日寝かせているそうですが熟成の旨味よりフレッシュ感のほうが強いような印象。

【4.2】瀬戸内産アシアカエビ（クマエビ）

生の状態からヅケにしており身が活かっているのですが酢飯との相性悪くないです。
こういう地元ならではの海老を活かす握りとしては過去トップクラスに好印象。

【3.6】塩釜産本鮪霜降り（大トロ）

やはり本鮪は東京で食べるほうが美味しいです（金額はもっと高くなりますけど）。

【3.5】西条産ワタリガニ

親方曰く瀬戸内で獲れる蟹と言えばワタリガニ。
その解し身、蟹味噌、半熟に火を入れた内子、酢飯を焼き海苔で巻いて。
調理補助の男性（お弟子さん）が七輪で火を入れた炙り立ての焼き海苔。

ホクホク甘い身を楽しめるのですがワタリガニにしては穏やか。
北海道や東北のワタリガニを生のまま紹興酒漬けにして食べたときのほうが、
もっと尖った味わいで個人的にはそちらのほうが好み。

【3.7】宮窪産神経〆鮃（ひらめ）

藤本さんの神経〆を1日寝かせておりヅケに。
どちらかと言えば瀬戸内は真子鰈（松山のアマテガレイや大分の城下鰈）のイメージで、
鮃は青森県のほうが強いように思います。

【3.9】地物鳥貝

2月と3月だけ今治から香川県のあたりで獲れるという地物。
やや小振りですがフレッシュ感あって貴重な食体験。

【3.9】地物赤貝

川之江あたりで獲れるという希少な地物。
ブランド産地として閖上、大分、山口あたりが有名な赤貝ですが、
同じ瀬戸内でも大分や山口に比べると獲れる量はかなり少ないのだそう。
こちらも貴重な食体験。

【3.5】地物1kgサイズ伊勢海老

愛南町から佐田岬のあたりで獲れた地物。
1kgアップという大振りな個体（イセエビの平均サイズは300gぐらい）。
剥いてから1日寝かせた身を叩いてタルタルのように。
仕上げに上空から炭火（網に炭を置いて）で炙り、最後に海老味噌をトッピング。

しかしワタリガニ同様に海老味噌の餡が穏やかで優しい味わい。
個人的にはタルタルのような身を煮切り醤油で、
海老味噌餡は味変アイテムや酢飯玉と合わせるような構成のほうが好みと合いそう。
（あわびの肝ソースと被ってしまいますけど。）

【3.8】八幡浜産ムラサキウニ軍艦

そういえば地場スーパーでも地物のウニを販売していたように、
意外と全国各地でウニは獲れたりします（数が揃わないので豊洲には入りません）。

【3.7】対馬産500gサイズ煮穴子

500g級という巨大な穴子。
天ぷら屋は一般的に100gぐらいのサイズを揚げますし、
食べログGOLDイタリアンは300gを超えると骨が硬くなるので使わないポリシーでした。

それに対して同店は骨を全部抜いてしまうという対応。
仕上げに笹の葉で蒸し焼きにしています。

【3.5】お椀（お味噌汁）

赤出汁ではなくて合わせ味噌。

【3.8】芝海老と大和芋入り玉子焼き

シュワッと溶けるカステラタイプ。

【3.8】赤貝のヒモ

せっかくなので追加候補3種類は全て注文しました（他に巻物も可能とのこと）。

【3.9】藤本さんの真鯛

お造りで食べたのは当日〆でしたが握りには3日寝かせた真鯛を使用。
ブリブリ活かっていると酢飯との親和性に課題を残すのでしょう。

【3.9】鹿嶋産煮蛤

レアーな火入れのニュータイプ。