鰻重も吸い物もアチアチなのが良い : 川京

「夕飯を何処でお世話になろうか」と思案して、思いついたのがこちらのお店。前回訪問時のアチアチでフワフワな鰻と辛めのタレのコンビネーション。加えて、アチアチなご飯と肝吸いにも大満足なカントナは「あの時の感動をもう一度！」と期待して夜の訪問を試みるのでありました。

「お酒もいただきたい」との雑念も混じったカントナは、小雨の中濡れながら、山手駅から徒歩で到着を果たすのであります。

時は１９時前。お客さんはゼロの貸し切り状態なのであります。以前と同じ場所に座らせてもらって、早速メニューを拝見いたします。

鰻重は特上で決まり。お酒は〆張鶴。アテには鰻のレバー煮のチョイスでオーダー完了であります。テレビを眺めながら待つ事数分でお酒が到着であります。

グラスになみなみと注がれたお酒をチビッとやりながら待たせていただきます。派手さは無い落ち着いた良いお酒。そんなお酒を嗜んでおりますと、間髪入れずにレバー煮の到着であります。

小さな容器にたっぷりの肝。いくつ入っているのか数えるのが大変なくらいたっぷりの肝なのであります。「これが２００円とは驚きであるな」と思いながらパクリといたしますと、甘めのタレで煮られた肝。タレは鰻のタレなのであろうかと思われるのではありますが、蕎麦つゆのようなサラッと軽い風味なのであります。しかしながら、「たっぷりの肝の選択は正解であったな」と自画自賛のカントナは、お酒チビリの肝パクリを長い時間を使って楽しむのでありました。

そんな肝がそろそろ終盤を迎えそうな頃、いよいよ鰻重の到着であります。調理場では掛け声が交わされており、ご飯を詰めたり吸い物をよそったりと忙しくなったのちに、カントナの前に到着であります。

鰻重と吸い物の蓋をパカーの儀を実行いたしますと、特上らしい重箱みっしりの鰻が目の前に広がるのであります。

まずは重箱の端っこの一角に箸を当ててカットしてみる事にいたしますと、ふんわり具合が以前よりもふんわりし過ぎかなと思うのであります。前回は外側のカリッと部分との対比が感じられたのでありましたが、今回は全体的にフワッとしているのが違和感と共に残念なのであります。

それでもご飯と一緒に持ち上げていただいてみますと、アチアチ具合は変わらぬ嬉しさなのであります。しかしながら、タレは前回味わった方がキリッとしていて美味しかった気がするのであります。

本日はあまり特徴を感じない鰻重なのでありましたが、ご飯も吸い物も火傷しそうなアチアチさは前回同様にとても嬉しいのであります。そして吸い物は、濃いめの味付けであるのも変わらず美味しいのでありました。

前回より感動が薄れたのは、舌が慣れたのか焼きのバラツキなのか。。いずれにしましても少し感動値は下がるのでありました。それでも、変わらぬアチアチ具合に感激値は変わらぬカントナなのでありました。

ドライブ時に良く通る道沿いで、ずっと前から認識はしていたお店。しかしながら、場所柄「細々と営まれている、地域密着系の鰻屋さんであろうな」と、その地味な印象に（失礼）あまり食指は動かなかったカントナなのでありました。

お店の近辺に業務上の用事があって出かけた土曜日のお昼時。「どこかの食事処で」と思った時に思い付いたのがこちらのお店。

「思い立ったら吉日」でありますので、早速車で向かうカントナなのであります。カーナビを頼りに訪問して、近隣に幾つか用意されているコインパーキングに駐車して、お店に向かうのであります。

やや近代的なコンクリート建築風の外観のお店。歴史を感じないと見るか、スタイリッシュと見るかでありますが、カントナは後者と見たいのであります。

暖簾を潜りますと、外観と異なって歴史を感じる店内。そして、早速薫るタレの良い匂い。それだけで高い成功の可能性を感じ取るカントナなのでありました。

「いらっしゃいませ！」の店員さんの大きな声で、更に成功の可能性は高くなった事を実感するカントナなのであります。

案内されたテーブル席に着席して、狙うは「うな重上」。地域密着系のお店であるからか、「上」が３０００円であるとはお値打ち価格なのであります。

安心感のある復唱を経由してオーダーが完了いたしましたので、しばし待ちの時間。静かに時が流れる心地良いひととき。調理場からは、手仕事で発生する作業音のみ。無駄話なんてのは全く無いのであります。お客さん同士の小さな会話とテレビの小さな音量が良いＢＧＭとなり、庶民的でリラックス出来る和む雰囲気が醸し出されているのであります。

カントナも、そんな素敵な雰囲気を構成する一員となるべく、スマホではなくて小説を取り出してしっとりしてみる事にいたします。

そんなこんなで１０分ちょっと経過いたしますと、調理場ではご飯をよそうような行為が確認されましたので、いよいよカントナの番なのであります。鰻らしく、しっかり待たせてくれるのが嬉しいのであります。

予想通りカントナのうな重が到着であります。うな重、吸物、香物のラインナップ。お重の蓋と吸物の蓋をオープンして、「いざ実食」であります。

焦げの少ない薄茶色で上品な仕上がりのうな重。早速箸を入れてみますと、外はパリッとで中はフワッとの教科書のような極上な鰻。箸による解体は容易で、口内では少しの反抗を経てサッと溶けて消えてゆく、快感な鰻なのであります。

タレはキリッと辛めでカントナ好み。それでいて鰻よりも前には出ない、わきまえたタレ。そんなタレの掛かり具合も丁度良くて、足りると足りないのギリギリの分量の見極めが、素晴らしいなと思うカントナなのでありました。

そして何よりも、鰻は当然、ご飯も肝吸いもアチアチなのが嬉しくて、それがますます美味しいのであります。とにかくアチアチで、ご飯は何度かフーフーしないと危険で、吸物は気を付けないとのたうち回ってしまいそうなくらい危険で嬉しい具合。それはまるで蕎麦の「三たて」ならぬ鰻の「三アチ」であり、カントナの好み通りのうな重なのでありました。

調理場に目をやりますと、燃料は炭ではなくて東京電力の様子。炭の香りが乗ったならば更に美味しいのであろうかなと思うのでありますが、そんな事はマイナス要素だとは思わない、とても気に入った良い鰻なのであります。

「車でなければ、お酒を嗜みながらゆっくり出来たな」と後悔のカントナは、「再訪は公共交通機関経由で」と心に決めるのでありました。